MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
045話
「まさかキメラやハロウィンまでやられるとは………13星座が聞いて呆れるな」
勝利したアランを称える城へと響く重圧な声、崩れ落ちそうな柱の上から全てを見下ろしている残忍な瞳。敗れ去った者達への配慮などなくゴミ同然と言いたげな口ぶり、13星座が作戦参謀。ファントムの補佐にあたる右腕的存在であるナイト"ペタ"。そしてその登場を待ちかねていた男が一人、ナナシが笑いと友に闘志を燃え上がらせた。
「漸く出てきたのォ。会いたかったでペタちゃん」
思い起こすはアジトで埋葬されている仲間達のこと、多くの仲間がこの男に惨殺されアジトは地獄絵図に変わっていた。その時から誓っていた。ルベリアの同士の仇は自分がとると。それがルベリアのボスとしての責任だと。
「ルベリアの同士の仇や」
「クク……良いだろう。おいポズン、このまま私とこの男のウォーゲームを始めるぞ」
「えっはっはい!!」
試合を終えてアンダータで転移しようとしていたポズンは慌ててもう一度競技台の上へと昇りにらみ合うナナシとペタを見つめる。
「あのトンガリ帽子がルベリアの仇ってのは知ってるけど」
「どのぐらい強いんすかね?」
「オイ!アラン!!あいつは何者じゃ?どんな技を使うんじゃ?」
「全く知らねー。あんな奴、6年前のウォーゲームじゃ戦っちゃいねー」
アランさえ知らない謎の男"ペタ"。実力素性全てが謎、チェスの兵隊の参謀である事だけが明らかになっているが。ナナシには倒すべき敵であるだけで十二分であると感じられている。漸く同士の仇を取る事が出来ると。
「さあウォーゲーム。泣いても笑っても残り二戦!!!好戦を見せて貰いましょう!!!メル ナナシ!!! チェスの兵隊 ペタ!!開始!!!」
「忠告はしたんだよ、ナナシ君。なのに逆上されてね。身に降る火の粉は払わなければならないだろう?」
ルベリアのアジトにて殆どのメンバーを惨殺した際のことを語りだすペタ。バッボの捜索及び強奪、それが不要となった為に断りを入れに行ったが今更キャンセルはないだろうと攻撃されたからやり返した。それがペタの言い分、だがナナシからしたらそれではすまない。
「グリフィンランス。女も……子供もおったんやで?」
「スイクルデス!悔しいかナナシ!!それがチェスの兵隊だ!!!」
互いに得物を出しじりじりと距離をつめていく。槍と大鎌。鋭利且つ強力な刃がぶつかり合うたびに空気は恐怖するように震撼する。槍を受け流されただけではなくそのまま懐に入り込まれ、斬りかかって来たペタを蹴り飛ばし渾身の突きを繰り出す。それを確実に防ぎ防御するペタ、だがその防御の速度を見てナナシは自分よりも遅い事を喜んだ。
「もろたで!!」
隙を見つけ大きくペタの鎌を弾き一閃!!ペタの体を大きく切り裂いた、そこから大きく出血しているが次第にペタの身体自体が解けていくかのように消えていく。
「ブラッドボディ。これから先は物理攻撃は効かぬ、ブラッドボディを使っている間はな」
身体を血液のような液体に変え物理攻撃を完全に無効化するARMを用いナナシの攻撃を防御したペタは不敵ね笑みを浮かべながらナナシを見ている。だがナナシにはラン水害にも強力な武器がある。それは
「ならこいつで如何や?エレクトリックアイ!!!!」
天井から降り注ぐ裁きの光、雷。ナナシの本当の武器とも言える物、一気にチャージした雷撃をペタへと放出する。
「ダークリフレクター!!」
「なんやて!?ってぐは――――ッ!!!」
雷が迫る中展開された透明な鏡のような空間、それはペタを貫こうとしていた雷を受け止めそれをそのまま反転させナナシへと向けて反射した。自分の雷撃を喰らってしまうが雷撃に対して高い耐性を持っているナナシは大したダメージを負っていなかったが状況的には宜しくない、如何した物かと冷静に考えていた。物理攻撃がブラッドボディで無効化され雷はダークリフレクターで反射されてしまう。
「うーん、自分どないしよ」
「今度はこちらから、ブラッド・スィリング!!」
ペタの周囲に展開されていく注射針のように鋭い棘が付いた球体が展開されていく。それはペタによって遠隔操作されナナシの身体へと突き刺さっていく。それは不気味な音を立てながらナナシの血液を吸い上げていく。
「ぐっ……!!こいつはきっついのォ………!!!おおおおおお!!!!」
魔力を練り上げ一気に放出し血液を通しブラット・スィリングへと魔力を送り込んでいく。既に血液で満たされている容器は魔力で血液が掻き乱され暴走し一気に破裂する。破裂し四散した血液はペタの元へと募っていき、矢のように凝固しナナシの体を貫いていく。隙が無く高い実力を発揮し続けるペタ、多くの血液を一気に失ったナナシはふら付き膝を付いてしまっている。
「ファントムは何れ必ずこの世界を手に入れるだろう。私はファントムと共にある、私は彼と同じなのだ」
そう言いながら捲った腕の袖、そこにはロランやアルヴィスと同じように生ける屍へと変じてしまう呪いの刻印"ゾンビタトゥ"が刻み込まれている。
「そんなん知らんがな………問題はルベリアの同士の無念を……晴らすっちゅうことや」
「くだらん、小さな事だ。ゴーストARM アビスカノン!!!」
発動された瞬間ペタの眼前に巨大な怨念の塊のような物が出現しナナシへと襲い掛かる。奈落に落ちた亡者の魂を収束させ打ち出す禁忌の技。死者を冒涜し自らの力として使う、この男も人間をごみとしてしか認識していない。
「エレクトリックチャージ!!!おらあああああ!!!!!」
亡者の声とその憎しみの感情を受け止めながらその身に雷撃を宿し身体能力を一気に引き上げるナナシ。爆発的に高められた力はアビスカノンを受け止めるだけではなく一気に砕き破壊する。
「まだまだやでぇ、ここからやペタァッ!!!」
「中々良い戦いね、ペタと互角」
「否それ以上だ」
闇に満ちる中に浮かぶ光は戦いの様子を映し出しその中に身を窶す者が二人。その二人が瞳に宿す光は赤黒く人間とは思えぬ輝きを放ち続けていた。
「さて此処からどうなるのか気になるけど。準備を始めましょうジーク」
「ああ。いよいよ俺も本当の意味で君の役に立つ事が出来るよ」
騎士は闇の女王から一つの剣を賜った、それを手にした途端茨のような触手が騎士へと伸びていく。邪悪且つ不気味な魔力を秘めたそれは騎士へと絡み付いていくがそれを容易く葬り腰へと納める。そこに刻まれているのは悪魔の顔だった。
「反転せしは己が為に。それが貴方の力になるわ」
「俺たちの、だろうディアナ」
「そうね、その通りだわ」
ページ上へ戻る