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異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。

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いも虫が怖い

 エイダの悲鳴が聞こえて焦って僕たちは洞窟の奥に走っていく。
 やがて立ち尽くしたまま小刻みに震えているエイダが見える。
 金色の髪が小刻みに揺れているのはいいとして。

 彼女の目前には、僕達から見て……何もいない。
 彼女の直ぐ側、左右を見ても何もいない。
 エイダがいる場所は洞窟の奥にある中継地点のような広々とした場所である。

 首の長い、胴体だけで僕の三倍がありそうな恐竜が三匹くらい眠れそうな広さと高さである。
 そんな広い場所だけれど天井と地面を更に見ても何もいない。
 だから彼女がなににそんなに怯えているのかがわからない。

 そう思いつつ更に近づき彼女の真後ろまで来て……僕達は彼女が恐れておののいているものか“何”なのかが分かった。
 エイダの目の前を這う、緑色で産毛の生えている毛虫が、自身の体をうねらせながら歩いていたのだ。
 よぎっているそれとエイダを見ながら僕は彼女の後ろで、

「なんだ、ただの毛虫か」
「! ただの毛虫って何よ! これはあの“ムラクモ毛虫”なのよ!」
「ムラクモ毛虫?」
「貴方、ムラクモ毛虫も知らないの!」

 そんなことを言われても僕はこの世界の人間ではないのでよく知らないのである。
 するとそこでリリアが何処か楽しそうに微笑みながら、

「相変わらず毛虫が苦手なのね、エイダは」
「! べ、別にこの程度の毛虫くらいちょっと驚いただけで心の準備がなかっただけですもの」
「そんなことを言ったって毛虫も貴方に見られたくて出てきたわけじゃないんだから、突然出てくるに決まっているでしょうが」
「う、うぐ。でもたった一匹程度、そしてもう遠くに行ったから大丈夫だわ!」

 そうエイダが言い切った所で、目の前を今度は二匹程度のイモムシが歩き始める。
 エイダは再び凍りついた。
 微動だにせず、顔から血の気が引いている――もともと肌が白いが更に白い――エイダに、リリアが肩を叩き、

「エイダ、一緒にいく?」
「! これは勝負なの、そして私が勝利するの! いつもいつもいつも貴方の手助けがないと何も出来ない子なわけじゃないんだからね!」

 何やらコンプレックスを抱えているらしい彼女。
 それを見ながら僕はため息を付いて、先ほどイモムシがきた先を見た。
 どうやらまだまだここを横切りそうだと思いつつ僕は、ふと疑問に思ったのでレイアに、

「そういえばこのイモムシ、どうしてこんなところにいるんだ? この世界のイモムシは洞窟に住むもの?」
「いえ、普通は外ですね。でもなんでこんなにこのイモムシがたくさんいるのでしょう」
「何処かに外とつながっている場所があるのかな? 随分お空書くまで下り坂を歩いt来たような気がしたけれど」
「……このムラクモ芋虫は“白光蝶”と夜間の灯りにもなる綺麗な夜光る蝶になるのですが、それを餌とする危険な魔物がいた気がします」
「危険な魔物?」
「はい。そしてその“白光蝶”は、体内に卵を持っていて、自身が食べられてもその玉子が一部消化されずに孵化する場合があると……まさか」

 レイアがふと何かに気付いたらしく口に手を当てっ小さく呟く。
 それと音もなく黒く大きな影が僕達の前に姿を現したのは同時だったのだった。

 

 
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