ソードアート・オンライン 『アブソリュート クイーン編』
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第1章-リンクスタート-
第6話『第1層ボス攻略会議』
「アスナ〜。遅れちゃうよー。」
寝坊したアスナが慌てて準備をしている。
「キリト君、どうして起こしてくれなかったのよー。」
昨日の疲れが残っているのか、アスナが珍しくぐっすり眠っていたため、キリトは起こすに起こせなかったのだ。
「お待たせーキリト君!」
いつもより綺麗めにオシャレをしてきたアスナの姿に、キリトの顔が紅くなる。
「アスナ、すっごく似合ってるよ。」
「えへへ〜。ほら、遅れちゃうから急がなきゃ!」
2人は宿屋を出て、ボス攻略会議が行われる《トールバーナ》に向かった。
《トールバーナ》には、すでに人だかりができていた。
「ねぇ、キリト君…人少なめじゃない?」
アスナの言葉に、すかさずキリトが周囲を見渡す。
確かに、以前のボス攻略会議よりも人数が少なくなっていた。
「モンスターの強さも以前とは比べ物にならないから、きっとその影響だろうな…。」
モンスターが強くなっていることから、安全マージンをきちんと取るプレイヤーが多くなり、それにつれあまりレベリングが進んでいない者が多いようだ。
だが、そのおかげで死者は今の所1人もでていなかった。
「はーい。それじゃあそろそろ始めさせてもらいまーす!」
ディアベルの声掛けに、集まった全員が耳を傾ける。
「俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺はディアベル、職業は気持ち的に…ナイトやってます。」
砕けた挨拶に周囲の雰囲気が和やかになる。
「実は、俺たちのパーティがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した。」
SAOには通常のフィールドの他に迷宮区というものがあり、そこに各階層のボスが待ち構えているのだ。
ディアベルのボス攻略に対する熱い決意を聞き、集まったプレイヤーの気持ちが一つにまとまる。
「まずは6人のパーティを組んでみてくれ。フロアボスは単なるパーティでは対抗できない。パーティを束ねた“レイド”を作るんだ。」
以前は、パーティメンバーが見つからず1人でいたアスナと2人だけのパーティを組んだのだった。
ー今回は敵の難易度が高くなっている分、大勢で組んだ方が良さそうだな…。ー
キリトはそう思い、周りを見渡す。
…しかし、すでにいくつかのパーティが出来上がりかけていた。
ー…やばい…早く探さないと…。ー
「俺をパーティに混ぜてはくれないか?少年。」
懐かしい深みのある声に、キリトが振り返る。
色黒でガタイのよく、ハートの熱い頼れる男の中の男…エギルだった。
「あぁ、もちろんだ!俺はキリト。こっちはアスナだ。」
「俺はエギル。力技には自信があるんだ。」
キリトは笑顔でエギルと握手を交わしパーティに加える。
「キリト…僕も君たちのパーティに混ぜてもらうよ。」
ディアベルの声かけに、キリトはパーティ申請を送る。
ーこれで4人揃ったな…。後は2人だけだ……。ー
その時辺り一帯に声を轟かせる人物がいた。
「ちょー待ってんかー!」
その人物は階段を一目散に駆け下りると、決めポーズをとりウィンクをした。
「わいはキバオウってもんや。ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある。」
ーキバオウ…彼は以前のSAO時代で、βテスターを恨んでいる第一人者だった。やはり今回もβテスターを恨んでいるのだろうか…。ー
「この中にβテスターはおらんかー?わいは感動したんや!」
ーど、どういうことだ……。βテスターを恨んでいないのか…。ー
キリトは少し困惑していた。
「道具屋で配布されとる、ガイドブック……
あれ作ったんはβテスターらしいわ。わいはあのガイドブックに命を二度も救われたんや。」
キバオウが声を荒げながら感謝の意を表明している。
「キバオウさん。僕はβテスターですよ?」
キバオウの問いかけにディアベルが答えた。
「やっと…やっと巡り会えたわ。ぜひあんたのパーティにいれてもらえんか…頼むわ、この通りや。」
キバオウの頭を下げる姿を前に、ディアベルがキリトの方を向き、了承を得るのを待っていた。
「キリト君、入れてあげましょ。この世界と昔の世界は違うもの…。」
アスナのその言葉に後押しされ、キリトはディアベルにYESのサインを送る。
「おおきに!ディアベルは〜ん!」
涙ぐむキバオウの姿に気持ち悪さを感じながらも、5人揃ったことに嬉しさを感じていた。
ー後一人…誰かいないのか……。ー
ふと端っこの方に、フード付きのマントを被り1人で座っている人がいた。
キリトは立ちあがり、声を掛けに行った。
ー体付きが少し華奢だな……。女の子なのか…。ー
キリトはそんなことを考えながら話しかけた。
「ねえ君。もし1人なんだったら…俺たちのパーティに入らないか?…人数が1人足りないんだ。」
フード付きのマントを着た人物はコクリと頷く。
キリトがパーティ申請を送ると、迷うことなく加入した。
「そろそろいいかな?」
ディアベルが全員に声をかける。
「ボスの情報だが、名前は《イルファング・ザ・コボルト・ロード》。それに《ルイン・コボルト・センチネル》。ボスの武器は斧とバックラー。4台あるボスのHPバーの最後の1段が赤くなると曲刀カテゴリーの《タルアール》に武器を持ち替え、攻撃パターンも変わる…と言うことだ。」
ディアベルの報告に全員が騒然とする。
そこまで分かってるんだったら、勝てるんじゃないか。…っという声が上がる。
「攻略会議は以上だ。最後にアイテム分配についてだが……。」
ー以前のβテストではタルアールだったが…正式版では野太刀だった…。今回はどうなるかは分からないが、武器が変化する可能性があることは伝えておかなければいけないな……。ー
キリトはそう思い、攻略会議の締めにかかるディアベルの話しを聞いた。
「今夜はパーティメンバーとの交流を深め、明日の戦いに備える。明日は朝の10時に迷宮区に向けて出発する。…では、解散!」
---------------------------------------------------
その夜キリトの一行は、少し賑やかな酒場で夜の食事を済ませた。
改めて自己紹介を行うのだが、フード付きのマントを被った人物だけはあまりパーティメンバーに打ち解けれていなかった。
「私に任せて。」
アスナがキリトにそう言い、そのプレイヤーと話す。
…すると、そのプレイヤーは意を決して自己紹介を始めた。
「あ、あの…ボク…ユウキっていいます。現実の世界ではあんまり人と関わることがなかったから…緊張しちゃって…。明日は…その…よろしくお願いします!」
ユウキと名乗る人物はフードを脱いだ。
長くて綺麗な黒髪の少女だった。
「あぁ!よろしくな、ユウキ。」
キリトはそう答え、手を差し伸べ握手を交わす。
即座にアスナが口を尖らせ、じれったい目でキリトを見つめた。
パーティーに女の子がいたことにアスナは嬉しさを示していたが、キリトが握手を催促した姿に、少しだけ妬きもちを妬いたようだ。
ーとりあえず、ようやくパーティメンバーが一丸となれたな……。明日は絶対に勝ってみせる…。ー
キリトはそう思いながら、酒場の窓から見える星空を見据えた。
第7話に続く
ページ上へ戻る