戦国異伝
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第二百三十話 本能寺へその八
「いや、これもまたな」
「敵をあえて誘い込む」
「本陣にな、しかしな」
「その本陣に敵が攻め込んだところで」
「わしは動くのじゃ」
「問題はどう攻めて来るかですか」
その相手がとだ、家康は言った。
「相手が」
「うむ、これまで何かと何処からか兵を出してきたが」
「あれも謎でしたな」
「天下には山の民もおるが」
「山の民は山の民ですな」
「害はない、闇ではな」
「全く別の者ですな」
家康も信長もこのことは察していた。
「やはり」
「わしもそう見ておる、とかく兵は何処からか出して来るか操ってきておる」
「浅い久政殿の時に様に」
「どちらで来るであろうな」
「それはわかりませぬが若し都に兵を向けるとなると」
「それもすぐにじゃな」
「その場所は限られています」
兵を送るそれはというのだ。
「近畿のです」
「その中でもじゃな」
「安土と大坂には常に兵を置いています」
「ではどちらかか」
「若しくは丹波か大和か」
家康はすぐにこの二国の名を出した。
「どちらかでしょうか」
「そうじゃな、どちらも考えられるな」
「しかしですな」
「うむ、例えどれだけの兵が攻めてきてもな」
それでもというのだ。
「わしは備えておる、だからな」
「それがしもですな」
「何かあれば逃げよ」
「駿府まで」
「その道は持っておるな」
「はい、半蔵が」
徳川家に仕える伊賀者の棟梁である彼がというのだ。
「あの者が」
「半蔵は忠義者、いざとなればな」
「それがしの為にですな」
「その道を案内して逃がしてくれる」
「さすれば」
「その時はすぐに堺を去りじゃ」
そしてというのだ。
「駿府まで逃げよ、よいな」
「わかり申した」
「わしも奇妙と共に逃げるからな」
「そういえば奇妙殿には」
「飛騨者に慶次、才蔵を置いておる」
彼の傍にはというのだ。
「どの者も一騎当千、だからな」
「去ることはですな」
「出来る、例えどの様な者がどれだけの数で来ようともな」
「それが出来ますな」
「あ奴にもそう伝えておる」
「逃げられると」
「だから何としても逃げよとな」
その時はというのだ。
「そう伝えておる、あ奴は二条城に入るが」
「あの城にですか」
「詳しい間取りも渡した」
二条城のそれをというのだ。
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