ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
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第4話まさかの再会
前書き
今回からアニメ第3話の赤鼻のトナカイの回とほぼ同時期のライリュウのオリジナルストーリーを数回に分けて投稿したいと思います。
2023年4月2日、第13層フィールド
「せいや!」
第1層のボス戦からもう4ヶ月はたつ。あれから攻略はそれまでと比べ物にならないくらい進んで、25層を先日クリアした。だがその戦いで多くの人間が死んだ。第1層のボス攻略に一緒に参加していたキバオウ、その彼が指揮をとっていたギルド、通称《軍》と呼ばれるギルドのたくさんのメンバーたちが犠牲になった。ボス攻略でここまで戦死者が出たのは初めてだったかもしれない。それまでのボス戦の比じゃないくらいその層のボスは強かった。《アインクラッド》の階層は全100層、この前の25層がちょうど全階層の4分の1だったために、別名《クォーターポイント》と呼ばれるようになった。
ところでどうしてオレがこんな中層で戦っているのかというとーーー
「ふう・・・。とりあえずこれで足りるか」
武器の強化素材を集めていた。これまで使用していた店で売っていた武器ではこの先を攻略するのが、最近厳しくなってきた。それでオレが思いついたのは《鍛冶》スキルを上げて自分の新しい武器を造ること。そりゃ最初は失敗も多かったけど、だんだん良い武器を造れるようになった。その中でも1番出来が良かったのは今のオレの愛剣、両手剣の《サイレント・ワイバーン》。意味は《無音の飛竜》だそうだ。ーーー自分で造っといてなんだが、もうちょっと良いネーミングなかったのかな。その《サイレント・ワイバーン》をさらにパワーアップするためにここに強化素材を集めにきた。
大方揃ったのでホームタウンに帰ろうと思ったらーーー
「きゃあ!」
「!?」
突然悲鳴が聞こえてその方向を振り向く。そこには男2人、女3人のパーティが3体の《リザードマン》と戦っていた。それもかなり苦戦している。このまえままでは全滅してしまう。オレはすぐに駆け付け、その《リザードマン》たちを斬り裂いた。
「はぁ!」
『!?』
オレが突然現れ《リザードマン》を倒したのを見て助けたパーティは驚いていた。そりゃ当たり前か、いきなり知らない人間が間に入って、自分たちが戦ってたモンスターを倒したんだから。とりあえず声だけでも掛けとくか。
「悪いな、獲物横取りしちまって。大丈夫か?」
「お兄・・・ちゃん・・・なの?」
「おまえ・・・神鳴か!?」
「?なんでオレの本名知って・・・!?」
彼らは何故かオレの本名を知っていた。しかも1人はオレを「お兄ちゃん」と呼んだ。オレはそれを疑問に思い彼らの顔を見て、理解した。オレがリザードマンから救ったのはーーー
「未来・・・!?それにみんな!なんで!?」
現実オレの妹「未来」と、オレが学校に行かなくなり家に引きこもって連絡すらしなくなった、学校のクラスメイトの5人。
「あ・・・えっと、今のリザードマンのドロップ品と金は置いていくよ。それじゃ「ちょっと待て!」・・・!」
オレはみんなに顔を合わせられなくなり、ドロップしたアイテムとコル(SAOの通貨)を置いてこの場を去ろうとすると当然呼び止められた。
「この層の主街区にオレたちの拠点にしてる宿がある。・・・寄ってかないか?」
「そうだよ。おいでよ、お兄ちゃん」
オレは妹たちが拠点にしている宿に招待され、渋々その拠点に今日はお世話になることになった。
******
その日の夜7時。
「それでは!我らの友、そして《ミラ》の兄、《神鳴竜》との再会を祝しまして!」
「「「「「かんぱーーーーい!!」」」」」
「か・・・乾杯・・・」
何故あの昼間の暗いやりとりから今晩は宴会ムードになるんだーーー。元々オレから距離を置いてみんなから離れたんだから急にそんな「かんぱーーーーい!!」なんて叫ばれても気まずいんだよーーーん?《ミラ》?
「なあ、《ミラ》ってもしかして・・・」
「そう!あたしのアバターネームだよ。お兄ちゃん!」
「ったく!久しぶりに会ったのにずいぶんテンション低いじゃねーか!もっと騒げよ神鳴!」
「うるせぇ、おまえらも昼間はこんなもんだっただろ!それと、一応この世界でその名で呼ぶな!ここでのオレの名前は《ライリュウ》だ、《明石》」
「ああ、そうだったな。じゃあ改め自己紹介しとこうか。《明石翼》こと、《ライト》だ!よろしく!」
「ひさしぶりだな、オレは《霧島弾》こと、《ミストガン》。また会えて嬉しいぜ」
「ウチは《雨宮かんな》こと、《キャンディ》や!よろしゅうな!ライリュウ!」
「ひさしぶり神鳴くん・・・いや、こっちじゃライリュウくんだね。《河村亜利沙》こと、《アリー》です」
オレたちはこの世界での名前・・・アバターネームで自己紹介を始めた。
テンションのやたら高いオレより少し背の高い白い着流しを着ている、《明石翼》こと《ライト》。
黒いマントを着て同じく黒い帽子と迷彩柄のスカーフで顔を隠していたために名前や声を聞かないと誰だか判別できなかった少年、《霧島弾》こと《ミストガン》。アバターネームといい格好といい、某人気バトルファンタジー漫画の中でかなり謎が多かった登場人物を意識している。ーーーこいつ、絶対オレが引きこもってる間に中二病こじらせたな。
関西弁の赤いスリットの深いチャイナドレスを着た小学生の時に東京に引っ越してきた少女、《雨宮かんな》こと《キャンディ》。
少し引っ込み思案に加えおしとやかで学年でも隠れファンが多かった、すみれ色のスカートタイプのくの一のような服を着た少女、《河村亜利沙》こと《アリー》。
そして紫色の巫女さんのような装束に身を包んだオレの妹、《神鳴未来》こと《ミラ》。
みんなひさしぶりに、それもこんなデスゲームで再会して、何も変わってないと少し安心感を感じた。霧島の中二病には驚いたけどーーー
「おまえ・・・ほんとに霧島か?なんでそんな格好?すごい見たことあるぞ。その漫画好きなの知ってるけど・・・、いくらなんでも影響受けすぎだろ。完全に中二病こじらせてんじゃん」
「せやろ?学校じゃ普通やったのにSAOに囚われてから偶然会ったんやけど・・・、ドン引きやで」
「酷い・・・」
「完全に黒歴史ですね、ミストガンさん」
オレが霧島・・・ミストガンの中二病を指摘してキャンディもオレと同じことを考えていたらしく心の内にしまっていたことをさらけ出し、当のミストガンはただ「酷い」とだけ口にし少し泣いている。ミラは黒歴史を産んだミストガンに哀れみの目を向けていた。
ん?そういえばキャンディ、ミストガンには偶然会ったって。
「なあ、偶然会ったって・・・、このデスゲームが始まってからすぐに会ったんじゃないのか?それになんで未来までこの世界に」
「・・・うん。神鳴くんが学校に来なくなってから、未来ちゃんに聞いたの。「お兄ちゃんがSAOのベータテストをしてる。」って。それでSAOを始めれば神鳴くんに会えるんじゃないかなって。でもみんなおんなじこと考えてたなんて・・・」
「おまえら・・・オレを追って?未来おまえ!なに余計なこと言ってんだ!」
「余計なことはないでしょ!お兄ちゃんが引きこもりになったから、みんな心配してくれたんじゃない!」
「・・・!おまえらがあんな目でオレを見るから・・・、オレは引きもった!おまえらが左腕をなくしたオレに前と変わらず接していたら、オレは変わらず学校に通ってたかも知れないし、ここにいるこのメンバーはオレを追ってここにいなかったかも知れないんだ!」
『!』
みんなはーーー、オレを追ってこのデスゲームに閉じ込められた。それを聞いて思わず未来に怒鳴りちらしてしまった。未来がオレがベータテストをしていたことを言わなかったら、みんなここにはいなかったかもしれない。ーーーいや、オレがキーになったんだ。オレがもっとあんな視線にもう少し耐えていたら、みんながここに来る理由はなかったかもしれない。未来のせいだと怒鳴った自分に、なんだか自己嫌悪感を感じた。
みんなの顔を見上げるとライトたちは複雑そうに顔を伏せていて、未来にいたっては涙ぐんでいた。
「ごめん・・・、言いすぎた。未来もみんなも全然悪くない。元はと言えばオレが・・・」
「いや、神鳴は悪くない。オレたちがナーヴギアを使ったから」
「ぐすん・・・違うよ、あたしがお兄ちゃんの気も知らずに、みんなに伝えたから」
「・・・オレ、攻略組なんだ。最前線で戦ってる」
『え!?』
オレが言いすぎたと謝罪するとみんな自分を責め始めた。かける言葉が見つからずに、オレは覚悟を決めいままでなにをしていたか言うことにした。
「まだまだ時間はかかるけど、いつか絶対ゲームクリアして、みんなをこの世界から開放する。オレのためにこの世界にきた、みんなのために」
「・・・お兄ちゃん」
そうだーーーみんなはオレのためにここにきたんだ。だったらオレはどうする?戦うんだ。オレのためにきてくれた、みんなのために。
「・・・ライリュウ!オレたちを攻略組にしてくれ!」
「!?」
「友達が命懸けで戦ってるのにこんな低層でチマチマせてられへん!」
「お願い!」
「オレたち強くしてくれ。ライリュウ・・・!」
「あたしからもお願い、お兄ちゃん」
みんなからまさかの頼みごとを聞いてしまった。最前線は危険だけど、みんなの覚悟は本物だ。無駄にはできない。
1層攻略であのあとフレンド登録しててよかった。オレは同じく攻略組のあの人にメッセージを送った。
「しばらく攻略休むってメッセ送った。よろしく」
「・・・ようこそ!我ら《リトルギカント》へ!」
オレはしばらく彼らのギルドに加わることにした。
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