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ポケットモンスター 急がば回れ

作者:おうーん
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6 グリーン対タケシ 2

タケシ「さあ、かかってこい」

グリーン「体が重くて動けないか?」

タケシ「今にわかるさ。己の小ささが」

グリーン「図体よりも態度はでかいか。
いけっ、フシギダネ! スピードで勝負だ!」

フシギダネはイワークの周囲を走る。
かく乱しながら攻撃のタイミングをうかがう。
しかしイワークはフシギダネの動きに惑わされない。

グリーン「フシギダネ、つるのムチ!」

弾ける音がフィールドに響く。

グリーン「もっと上だ!」

つるのムチの連打は尻尾から胴体、そして顔面と捉えていく。

タケシ「無駄だ! そんな中途半端な攻撃は通用しない」

連打が止む。
イワークの巨体は微動だにせずその場所に立ち尽くしていた。
8メートル上空から見下ろす頭は天井すれすれで、ひとたび雄叫びをあげれば角がそこを貫き穴を開け屋根の塵や瓦礫を降らせる。
体は太く長く、そしてつるのムチでもビクともしないほど硬い。

グリーン「相性では有利なはずなのに……
いや、不利な状況で戦ったレッドだって勝ったんだ。何か策があるはずだ……!」

タケシ「イワーク、我慢を解け!」

突如イワークが攻撃に転じる。
動揺したフシギダネは一瞬の隙をみせる。
巨体の攻撃をもろにくらい、その10ぶんの1以下の体は軽々とふっ飛ばされる。

グリーン「フシギダネ!」

かろうじて傷薬で回復することができた。

タケシ「今のは我慢という技……
攻撃をされてるときじっと耐えて、あとで一気に2倍にして返す! 面白い技だ!」

グリーン「何が面白い技だよ」

タケシ「言っただろう。中途半端な攻撃は通用しないと。
それどころかかえって己の身を滅ぼすことになる
驕りや昂りだけの身の程知らずでは、こいつには絶対に勝てない」

グリーン「俺が身の程知らずだと?」

ここで熱くなっては相手の思うツボだということをグリーンはわかっていた。
冷静になって考える。

グリーン「フシギダネ、地面と接してる尻尾を狙え!」

タケシ「なるほど、尻尾は胴体に比べて細い。
しかも体の大きく体重の重い相手の弱点である足元を狙ってきた。
だが、想定の範囲だ」

イワークは胴体で立ち上がり尻尾を地面に叩きつけた。
更に尻尾を振ってフシギダネを振り落とそうとする。
フシギダネはかろうじて尻尾にしがみついている。

タケシ「何をしようとしている?」

岩が連なってできている体の隙間に何重もつるを巻きつけている。

タケシ「関節技か」

そうしている間にもイワークは容赦なく叩きつける攻撃を繰り出してくる。
いつまでも続く衝撃にフシギダネは必死に耐えている。

グリーン(つるのムチも通用しねえ。小細工も通用しねえ。こりゃどうしようもねーな。
ねーちゃんの前でカッコわりーとこ見せちまったぜちくしょー)

フシギダネの悲鳴が聞こえてくる。

グリーン(こいつでかすぎるんだよ反則だろ。
こんなのポケモンバトルじゃねーよ。
まるで山を相手にしてるみてーだ。
そういやあんな感じの岩肌の山を登ったことがあったっけ。
あれはじーさんとねーちゃんと山にキャンプに行ったとき……)



オーキド「山を登るにはちゃんとした装備をせんといかんぞ。
手袋や帽子や防寒着はもちろん、雨が降ってきたときのための雨具! 山の天気は変わりやすい。
そして水と食料! 山にショップなどないからのう。
それから万が一体力が尽いてビバークするときのためのテントや寝袋!」

グリーン「そんなに持っていったら重いし邪魔くせーじゃん」

ナナミ「おじいさんそんなに持っていく必要ありませんよ。今回登る山はせいぜい1000メートル級だしロープウェイもあるんですから」

グリーン「そうだよこんな山楽勝だぜ!」

オーキド「いや、山を甘く見てはいかんぞ!
相手は自然そのものじゃ。何が起こるかわからん。
自然の力は強大じゃからのう。そんなものと戦って人間が勝てるわけがない。
本当に戦うべき相手は自分の中にあるそんな浮ついた気持ちじゃよ」



グリーン(結局雨は降らなかったしビバークもしなかった。
ロープウェイは快適だったし山頂からの景色は最高だった。
じーさんは重い荷物のせいでへたばって自分で自分を苦しめてただけだった。
あの時はエラソーなこと言ってバカじゃねーのって思ったけど、今はなんとなくわかるような気がするぜ)

フシギダネがイワークから振り落とされる。
叩きつけられた地面をえぐりながらグリーンのもとへ戻ってくる。

グリーン「大丈夫か、フシギダネ!?」

返事は弱々しいが確かに頷く。
傷薬を与えるが気休め程度にしかならなかった。
それでもフシギダネは戦う意思をみせる。

グリーン「フシギダネ、イワークに登れ!」

タケシ「今度は何をするつもりか知らんが、さっきのぶんの我慢を解かせてもらう!」

正面からイワークの振り下ろす尻尾がくる。
フシギダネはそれを避けて岩の巨体に跳び乗る。
まるで垂直のロッククライミング、
しかも動く。
つるのムチを使いながら一歩一歩登っていく。

タケシ「振り払え、イワーク!」

ついに頂上である頭の角につるを巻きつける。
イワークは頭をぐるぐる回して遠心力で振り払おうとする。
それに伴い、角は頭上を引っ掻き回していく。
屋根はそれと呼べなくなるほど大破する。
屋外の陽の光がじゅうぶんに射し込むほどになった。
イワークは柱のサッシのような硬い部分に角をぶつける。
急所からの衝撃は全身を駆け巡って巨体を悶えさせる。

グリーン「今だフシギダネ、一気に登れ!」

渾身の力で頂上に到達する。

グリーン「そうだ、光を浴びて元気になれ」

植物の本能か、より光を浴びようとする力でフシギダネの背中のタネが開いていく。

グリーン「あれは、フシギソウ!」

タケシ「まさか進化したのか!?」

グリーン「いけっ、フシギソウ! ソーラービーム!」

イワークの巨体は真上から降り注ぐ光に包まれる。
そして雄叫びをあげながら崩れ落ちていく。

レフェリー「イワーク、戦闘不能! フシギソウの勝ち!」

地面に横たえたイワークから降りてきたフシギソウに駆け寄る。

グリーン「やったぜフシギソウ!」

タケシは倒れた自分のポケモンと半壊状態のジムを見てため息をつく。

タケシ「……まったく、最近の新人トレーナーときたら」 
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