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異界の王女と人狼の騎士

作者:のべら
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第六十二話

 気になって、スマートフォンのブラウザを起動する。

 戦いの中で幾度かの衝撃を受けたためか、なんだか動作が鈍くなっている気がする。
 ……一度見てもらったほうがいいかもしれないな。でも修理となったら結構な出費になりそうだ。これ高いんだよな。
一応拭いたんだけれど、よく見たらエッジ部分とかに血がこびりついている。なんだかぬるっとした液体も張り付いたままで気持ち悪い。ほのかに妙な臭いもしてるし。
 OAクリーナを取り出して念入りにふき取る。爪楊枝も動因してこびりついたものをそぎ落とす。

 ……なんとか綺麗になったかな。

 とりあえずは【学園都市】【殺人事件】と入力し、検索をかける。
 20万件近い数がヒットした。
 これじゃあ分からないな。

 さらに絞込で高校の名前を入れてみる。

 すると件数が大幅に減り、トップには寧々と如月の死亡ニュースの記事が出てくる。
 上から3件目に某掲示板のタイトルが出ていた。

 【連続殺人】学園都市のエリート氏ね【実験動物】

 たぶんこれだろう、俺はその掲示板のスレッドにアクセスしてみる。

 ビンゴ! だった。

 先ほどテレビのニュースで報道されていた記事の要約が記載され、放送局のHPへのリンクってあった。恐らくここに記事若しくは動画があるんだろう。
 以下にはテンプレート形式で様々な事が書かれてあった。新しい順番で学園都市で起こった殺人事件や犯罪が書かれている。寧々や如月の変死事件も書かれてある。内容はどう考えても学校関係者でなければ知り得ないことまで書かれていた。
 読み続けていけば事件の詳細が分かるかもしれない。そう思いながらスクロールさせていく……。

 それにしても……と書き込みを読みながら思う。

 実験動物なんて久々に聞いた言葉だった。
 その成り立ちからして曰くのあった学園都市だもんな。
 学生の集め方もなんだかサンプル抽出的な部分があって一時期マスコミも結構取り上げていたんだ。それが俺の通っている高校がまさにそれで、授業料無料、格安の寮も完備、そして公表はされていないけれども、学園都市に新設された国立大学への進学も推薦で認められているんだ。その大学は複数の企業も協力しているようですでに卒業生は優先的に採用される特権を与えられていたりもするんだ。
 確かに、近畿各府県からまんべんなく生徒が集められているんだけど、決して選抜メンバーというわけではなく、レベル的には中の中程度の生徒がほとんどなんだ。各県の進学校から来ている生徒はごくごく希だった。それゆえ、どうみたって胡散臭さ全開だから、何か裏があるんじゃないかと噂になったわけだ。
 そのなかでも一番おもしろおかしく書いてあったのは、生徒達はモルモットとして閉鎖的な学園都市の高校へ集められ、有形無形の人体実験を繰り返されるのだと。保護者達にはすでに説明済みで補償も済んでいるという話だった。そしてその実験を生き延びたもののみが開かれた未来への切符を手にするとのことなんだな。
 学園都市の建設に携わった人間に旧日本軍の関係者が多かったのが原因とも言われている。戦後のどさくさで戦犯とされることなく、名を上げた人物が幾人か入っていたからそういう話が出たのかもしれない。
 俺の親父である月人家当主の佐與(さよ)も関係している。ちなみに俺の親父は戦犯扱いになる歳ではないけどね。
 俺たちの高校だけでなく、学園都市自体にもいろんな都市伝説的なものが語られているから、あまり気にならないんだけれど。
 やたらと健康管理のための診察が多いことや、携帯端末のみでキャッシュレスに生活できるこの街の環境から俺たちのプライバシーがゼロに近いといった、いやな部分があると言えばあるんだけれどね。
 うーん。
 そういえば、入学に際してやたらと寮へ入ることも勧められたな。どうして外で暮らすのか納得できる理由を聞かないと承認できないとかいろいろ担当者に言われた。
 実際、自宅から通える生徒以外は寮に住んでいる。自宅から通えるのに寮に住んでいる生徒もいるくらいなんだ。いろいろとメリットがあるらしい。
 俺が外に住むことが出来たのは月人家という名前のおかげのようだ。かなり学校と揉めそうになったんだけど、担当が上に相談した途端、OKがでたもんね。
 あれはいまだに何だったかわからない。

 まあ、兎に角———。

 こうした都市伝説が出てくる原因のもう一つは、うん、こちらのほうが大きいと思うんだけど、学園都市建設地が、山間の集落が点在するど田舎で、戦前、原因不明の災害により焦土化し多くの犠牲者を出したというところかもしれない。
 原因については、昔のこともあるし、おまけに超がつくほどの田舎であったこと、また生存者がいないということから、今でも不明のままだ。まともな現場検証すらできていないようだ。 
 オカルト的な話と残されているのは、災害による所有者の死亡により、所有者不明になっていた土地が戦中戦後のどさくさで名義がいつのまにが外国人のものに変更されていたことと、学園都市誘致合戦において様々な有形無形の力を暗部で働きかけたとある団体が存在していたという話があることだ。その団体の構成員を調べると、不思議なことに学園都市の用地所有者でしめられていること、そして、かなりの額の税金、数十億とも言われている、が用地取得費用としてその団体へと入ったと伝えられている。
 ただ、さすがにこれは結構な問題を孕んでいるということで市民団体やマスコミが騒いでいたんだけれど、団体の中心人物が淫行で逮捕されたり、団体内の不正使用問題が発生したり、新聞社の記者がホテルで滅多刺しにされて殺されていたりとゴタゴタが頻発していつのまにか話題がそちらへと移行し、マスコミも取り上げなくなってそのままになってしまっている。新聞記者殺害の犯人は捕まったみたいだけど、30代の男と速報で流れて以降は何の報道もなされなくなった。
 あれはなんだったんだろうなって当時は思った記憶がある。ネットでは責任能力が無い奴の犯行だったとか、いやあれは某国の人間だからマスコミが触れてはならない領域に行ってしまったからだとか騒いでいた。警察の動きが鈍くなったことから考えると、ほんとに某国の人間だったのかもしれない。

 まあいろいろと闇が散見されるということなんだな、この街は。
 町並みの見た目はかなり凝ったデザインですごく綺麗だし、統一感もあって憧れる人も多いみたいだけど、一歩裏道に入ればそんなやばい世界に触れる危険を孕んだ街なのかもしれない。

 で、事件の詳細の件だけど、掲示板には憶測と感想と嘘が入り乱れてカオス状態だったけど、いくつかの気になる書き込みがあった。

 それは、殺されたのがうちの高校の教員だということだった。

 
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