グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
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第39話:天と地と努力の恵み
(サンタローズ)
アルルSIDE
リュリュの実家があり、リュカさんの故郷であり、マーサお義祖母様が生活する山奥の村サンタローズ。
以前にも幾度となく訪れた事はあるが、お腹が大きくなってきた今では、この起伏の激しい地形は些か堪える。
取り敢えずウルポンとの約束に従い、リュカさんを探して言付けしようと教会に向かったのだが、入る前に全員の足が止まる。
何故なら……入る必要がないからだ。
「居るなぁ……」
「ええ、間違いなく居るわねぇ……」
リュカさんはシスター・フレアがまだまだ魅力的な事を証明する為に、教会の2階で頑張ってるらしい。外にまで聞こえてくるシスター・フレアの喘ぎ声が全てを物語る。
「これ……フレイと彼氏の声って事は?」
リュカさんの性格とフレイちゃんの性格を加味すれば、そんな事は皆無なのだが夫は苦笑いでリュリュに問いかける。
「ないよぉ……この声お母さんだし、フレイとフェルマー君はあそこに居るし」
そう言うリュリュの視線は教会が建ってる丘の麓の畑に向かってた。
そこには一生懸命土弄りをしてる男の子の姿と、こちらに気付き視線を上げたフレイちゃんの姿があった。
「フレイは日中、畑仕事を手伝ってるのか?」
「その様ね……もう、あの家に嫁入りする気満々みたい。でも悪い子じゃなさそうね」
畑仕事に熱中していたが、フレイちゃんに言われてこちらを見上げ、一生懸命お辞儀してる男の子に、私は好感を持てる。
「如何かな……真面目なフリして他所で女を作ってるかもしれないだろ」
「リュカさんやウルポンみたいな男は稀よ」
言うまでもなくティミーも解ってるのだろうけど、シスコン男は苦笑いで慎重論(?)を唱えてくる。
「君の父上も同類だったろ……稀と言っても良いのか?」
「稀なの!」
もう……お父さんを持ち出さないでよね。
「おや、夫婦喧嘩ですか? 愛人が一人も居ない旦那様と夫婦喧嘩になるんですかアルルさん」
私達の遣り取りを見たリュリュがニヤニヤしながら指摘してくると……
「このくらいの口論は、夫婦円満の為のガス抜きなの。恋愛経験0のお嬢ちゃんには解らないでしょうね(失笑)」
と反撃開始。
恋愛経験値を言われたらリュリュに勝ち目があるはずもなく、プクッと頬を膨らませ沈黙する。
恋愛経験値で言えば私だって1人だけなんだけど、1と0の差は大きいのですよ!
でも膨れた顔が可愛くて抱き締めたくなります。
「如何したんですかティミーさん……奥さんまで連れて、こんな田舎へ?」
可愛い義妹への感情を抑えていると、麓から上がってきたフレイちゃんが不思議そう私等の存在を聞いてくる。
まぁ確かに、夕暮れ前の時間帯にサンタローズに訪れるなんて、仕事尽くめのティミーからしたら珍しい事なんだけど。
「決まってるでしょ。可愛い妹の彼氏を自慢したくて、忙しいお兄様を連れてきたのよ! ほら早く……彼氏を連れてきなさいよ」
私等の姿を見て、直ぐに上がってきたフレイちゃんとは違い、何やら野菜を籠一杯に入れて麓から上がってきた彼氏を、直ぐにでも近くに来させる様促すリュリュ。
「やぁ、初めまして。君が僕の可愛い妹であるフレイの彼氏……自称彼氏君だね?」
ちょっと苛めてみたくなったらしく、引っかかる様な言い方で挨拶をし、爽やかな笑顔で握手を求めてるティミー。
すると……
「あ、あの……俺……畑仕事してたから、凄く汚れてるんです。握手はしない方が……」
と、彼の手を見て戸惑う少年。
だからティミーは爽やかな動作で彼の手を強引に取り……
「汚れたら洗えば良いだけの事。僕はそんな些細な事は気にしないよ。そんな僕の名はティミーだ……宜しく」
と握手して格好良くアピール。
「は、初めまして……俺はフェルマーです」
「私はティミーの妻のアルルよ。宜しくねフェルマー君」
私も自己紹介しながらフェルマー君の手を取り握手。すると……
「私はリュリュよ、宜しくぅ」
とリュリュも握手で挨拶。
「あ、いや……同じ村に住んでますから知ってますし、会話するのも初めてじゃないですよね?」
ヤバい、良いツッコミだ。我が家に入ると苦労するぞ。
「良いツッコミだが、我が家は強敵揃いだから、そんなツッコミスキルだと苦労するぞ」
「きょ、強敵揃いって……何ですか?」
プロのツッコミニストが、これまでの人生の経験から得た情報を若者に享受する。
「何だ、会った事ないのか……強敵ポピーお義姉様に?」
「あ、会わせる訳ないでしょ!」
苦笑いのティミーの質問に、慌てて答えるフレイ。
その姿が何か笑える。
「そうか……気持ちは解るが、何れは通らなきゃならない道だ。丁度良い機会だから今日はその強敵も呼ぶ事にしよう」
そう言うと懐からMHを取り出し、目的の人物を呼び出し始めるティミー。
「ええ!? よしましょうよ……私、あの人が苦手なのよ」
ティミーの行動に慌てふためくフレイちゃん。
「安心しろフレイ。あの女が得意な奴なんて父親ぐらいだ。でも、双子の僕が知っててアイツが彼氏の事を知らされてないと、後が怖いぞ」
そんな本音を言いつつ、お義姉様を呼び続けるティミー……
普段なら早めに応じるのに、何か忙しいのかしらね?
呼び出し音30回目で立体映像に変化が……
『あ……あ……あん♥ な、何? あ……何か……ぅん……用?』
そこに映し出されたのは、旦那のコリンズ殿下と汗だくで愛し合ってるポピーお義姉様の姿だった。
「ぅわぁぁ~!!」
慌てたティミーはMHを近くの草むらに投げ捨てる。
呆然とする私達と、恥ずかしそうに俯くフェルマー君。
あの人にツッコミなんて出来ないわよ……まぁ現在進行形で突っ込まれてたけど。
『あぁん♥ い、一体……はぁん♥ 何の……よ、用なの……よぅん♥』
「取り込み中なら出るな馬鹿!」
『い、良いから……あぁ良いわぁ♥ よ、用件だけ……はぁ~ん♥ 言いな……さい……よ』
「い、今サンタローズで……フレイの彼氏と会ってるんだよ! ただそれを伝えたかっただけ!」
『え、マジで!? フレイに彼氏が出来たの? ちょっと見せなさいよ』
声からするに流石に止めたのか、MHにフェルマー君を出す様に命令するお義姉様。
しかし草むらから拾い上げたMHには、行為を続ける男女の姿が……
「馬鹿かお前は!? フレイの彼氏を見たいのなら、裸隠してMHに出ろ!」
『うっさい、アンタに子供が出来たから私だって焦ってんのよ! それに家族しか居ないじゃん。裸くらい見られても良いでしょうに!?』
裸見られてるだけじゃないじゃん!
「あの……俺は困りますよ……」
本当に昔のティミーにソックリなフェルマー君は、MHから顔を背けて勘弁してもらう様懇願する。
『ちっ……ちょっと待ってなさい、あと一発ヤったら私もそっちに行くから! さぁアナタ、ペースアップよ!』
『りょ、了解……今、濃いいのを中に出(ブチッ!)』
夫婦の会話が終わる前に、私の夫が強引に通信を切った。
「す、すまんフェルマー君。あれが強敵のポピーだ」
「は、はぁ~……流石ティミーさんとは双子の妹さんですね。お美しい方でした」
意外に口は達者ならしく、顔を赤くしながらもティミーとポピーお義姉様を美しいと褒めた。
「まぁ……我が家は容姿だけで言えばトップクラスだ。どの娘を選んでもハズレは無い……容姿だけは!」
「そ、そうですね……俺も一目惚れですから。フレイの容姿に」
そう言うと泥だらけの手を握り合うフレイちゃんとフェルマー君。
ラブラブな様子だ。
アルルSIDE END
(サンタローズ)
フェルマーSIDE
フレイと一緒に畑仕事をしてたら、突然彼女の腹違いのお兄さんが現れ、緊張しながら挨拶をしたのだけど、とても良い方みたいで安心した。
何より緊張が解れたのは、不思議な機械を使って腹違いのお姉さんと会話した事だろう。
いきなり……その……エッチな事をしてる最中だったけど、あんなハプニングがなければ未だに緊張は解れなかったはずだ。
でも強敵だというのには納得出来る。
フレイの家から少し離れたところにあるマーサ様の家の前で、何気ない会話をしてると件の女性……ポピーさんが空から男の人と現れた。
男性は旦那さんだと思われる。だってさっきの機械に映ってたし……
「ちょっと、どれがフレイの彼氏よ?」
「見慣れない顔が当人だって解るだろバ~カ」
ティミーさんソックリの美しい女性が、俺を含めた全員に視線を向けると、ぞんざいな口調でティミーさんが言い放つ。
「じゃぁお前か、この金髪野郎? お前なんか見た事ないぞ馬鹿兄貴!」
「初めまして、お前の兄貴のティミーです。以後お見知りおきを!」
「おぉっと、俺の女房に手を出すな、このシスコン野郎!」
凄い……ティミーさんのキツイ一言を、平然と返り討ちにするポピーさん。
それに対してハグして堪えようとしたティミーさん……
そして二人の間に割り込み、ありもしない危機感で撥ね除ける旦那さん。
「お、少年。この遣り取りが笑えるなんて、良い根性してるなぁ?」
思わず笑ってしまった俺を見て、ポピーさんが嬉しそうに話しかける。
「す、すいません……面白くって」
慌てて謝ったが、お三方とも気分を害した様子は無く、笑顔で応えてくれた。
「それにしても驚きね。てっきりフレイはティミーに惚れてると思ってたから?」
え、そうなの!?
思わずフレイを見ると、その事を否定しようとはしない。
「えぇ~!? マジですかそれは? 何だよぉ……言ってくれれば良いのに。僕は君のお姉ちゃんにしか目が行ってなかったんだから……」
「あの……惚れてたって言うか、真面目な男性が好みだったので、憧れてただけです。今のティミーさんは眼中にありません!」
相変わらず厳しいなフレイは。
「え、こんな真面目な男を捕まえて“眼中に無い”って如何いう事?」
「人前で平気に『血縁が好き』と言う人を、私の中では真面目な人とは思えません。アルルさんの事は好きですけど、私の憧れの男性を変えてしまった事には憤りを感じます」
「それはゴメン。私も昔のティミーが好きで付き合い始めたんだけど、途中で父親の血が色濃くなってきちゃって……被害者は私なのよ」
本当に凄いなぁ……皆さん。
フレイの叡慮のない物言いも、この家族の中に居たからこそなんだだろうなぁ……
「ところで……何でこんな場所で語らってるの? フレイの彼氏を弄るんだから、教会に入りましょうよ。そしてお茶の一杯くらい出しなさいよ」
お茶は兎も角……そう言えば何で教会に入らないのだろうか?
「教会には入れないんだよ。我らの尊敬する父上が、あの中で励んでるから」
「あぁ……何とかもう一人男の子を造ろうと勤しんでるのね」
そう言えばシスター・フレアは、リュカさんの愛人さんだったんだよね。なんか複雑な家庭環境なのを思い出した。
「じゃぁお祖母様の家に入りましょうよ。サンチョがお茶とお菓子を出してくれるわよ」
「さっきも言ったが今日はフレイの彼氏を弄くり倒す会だ。アウェイに引きずり込むのは酷すぎるだろう。せめて中立地帯の屋外が良いと思うね」
俺的にはあまり変わらないけどねぁ……
「それにウルポンに頼まれたのよ。お父さんに『仕事が溜まりだしてきたから、直ぐに帰ってくる様伝えろ!』って」
「ウルポン? あぁ……あの生意気なガキか。良いのよアイツの言付けなんか如何でも!」
「そういう訳にはいかないだろうけど……僕も忘れてた事実は内緒だよ」
自称真面目なティミーさんが、ポピーさんの言葉に反論をするが、ご本人も忘れてた事実を暴露し内密にする様、人差し指を立てて口に当てて懇願する。
「あれ……お前等揃って何やってんだ?」
突如、俺等に話しかける人物が現れた。
それは教会から出てきたリュカさんだ。
「やっと終わったのか……長ーよ」
「魅力的な女性の相手をしてるんだぞ。お前と違って長くなるに決まってるだろ。ちょっとやそっとじゃ萎えやしない(笑)」
凄い事を言うなぁ、やっぱり。
でもその通りだと思う。
リュカさんの後ろから現れたシスター・フレアさんを見て、その美しさに納得してしまう。
「ぼ、僕だってアルルとは凄いんだぞ! アンタにだって負けやしない!」
「じゃぁあんなツッコミはするな。お互い様だろ!?」
流石この一家の総大将。
ティミーさんが悔しそうに口籠もる。
「あ、あのリュカさん。以前にお話しした大根なんですけど、貰って戴けますか? 採れたてなんで是非!」
俺は場の雰囲気を変える為、用意しておいた大根をリュカさんに見せ渡そうとする。
この為に採っておいたモノだから。
「お、フェルマーが最初から一人で造った大根か!? 是非とも貰うよ。ありがとう」
2ヶ月程前に初めてリュカさんにお目にかかった時、自己紹介と共に“俺の造った大根を食べて欲しい”と言った事があり、今日それを実現させようと思います。
でも泥だらけの大根を見て、
「あ、ごめんなさい! こんな泥だらけじゃ服が汚れちゃいます……今、家から袋を取ってきます!」と言って大根を引っ込めたのだけど……
「良いよ良いよ、汚れたって洗えば良いんだから」
と言って、泥だらけの大根を受け取り懐に仕舞っちゃった。
本当にティミーさんと親子なんだなぁ……同じ格好良さがある。
「あ、そうだ父さん。ウルフ君が早く帰ってくる様言ってましたよ」
「え!? 急用ならMHを鳴らせば良いのに……」
MHとは先程ティミーさんが使用した機械の事かな?
ウルフさんって誰だろう? 後でフレイに聞いてみよう。
「って言うか、そんな事を伝える為に、こんな大人数で集まってるのお前等? さては馬鹿だろ!」
「まさか……父さんへの用件は序手でです。僕等もそんなに馬鹿じゃありません」
どうしよう……誰の一言をとっても凄いんですけど。
「じゃぁ何でサンタローズに集まってるんだよ……ポピーまで?」
「フレイの彼氏を苛めに来たのよ♥ 彼の童貞は私が奪う予定だから」
きょ、強敵だぁ~……ポピーさんは恥じらいってモノがないのか?
「じゃぁもう手遅れだポピー」
「ふふふ……そうよポピーちゃん。フェルマー君はね、もうフレイに童貞を奪われてるのよ」
ちょ、ちょっと……リュカさんもシスター・フレアさんも、何でそういう事を平気で言っちゃうんですか!?
「「「「何ーー!!」」」
フェルマーSIDE END
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