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戦国異伝

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第二百三十話 本能寺へその五

「あそこからも富が来てじゃ」
「東国も豊かに賑やかになっていますな」
「非常にな」
「まさにです」
 本多はこうも言った。
「あの城からはじまっています」
「東国の賑わいもな」
「何よりも政が」
「あの城がありな」
 そしてだった。
「会津にも城を築かれたな」
「若松城ですな」
「東国の政も守りも万全じゃ」
「そうなっていますな」
「全くじゃな、政が整ってきておる」
 天下のそれがというのだ。
「後はじゃ」
「はい、では」
「吉法師殿がな」
 その信長がというのだ。
「上洛されるという」
「では」
「うむ、朝廷にお願いを立ててじゃ」
「幕府、そして」
「太政大臣じゃ」
 その双方をというのだ。
「開かれなられる」
「遂にそうなりますか」
「いよいよ」
 ここで酒井と榊原も言って来た。
「あの方が」
「名実共に天下人に」
「なられるな、よいことじゃ」
 家康はこのことを素直に喜んでいた。
「これで天下は定まる、しかし」
「しかし?」
「しかしとは」
「何か引っ掛かる」 
 家康は直感からこうも感じていた。
「どうもな」
「と、いいますと」
「殿、それは一体」
「何でありましょうか」
「何かおありでしょうか」
「うむ、それはな」
 何かとだ、また言う家康だった。
「その吉法師殿がな」
「あの方にですか」
「ありますか」
「何かが」
「そう思われますか」
「安土にも行くが」
 しかしというのだ。
「そこで吉法師殿から言われるやもな」
「そのことについて」
「若しやな」
 家康はこうも考えていた、そしてだった。
 名古屋から岐阜に北上しそこから安土まで来た。そして安土城に入ると早速信長から篤い歓待を受けた、その時に。
 信長は家康主従を馳走と美酒でもてなしだ、様々な宴を見せて。
 それから家康を茶室に入れることにした、家康がその茶室に入ると。
 いるのは信長だけだった、そこでだった。
 家康は確かな顔になりだ、信長に言った。
「やはり」
「わかるか」
「はい」
 こう答えたのだった、信長に。
「お話がありますな」
「爺と濃には話しているがな」
「そしてですか」
「御主にも話したい」
 家康、彼にもというのだ。 
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