ウルゼロ魔外伝 GANTZ/ULTRASEVEN AX
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日常から再び…
『一体、あのホームレスの男性を助けた二人の高校生は一体どこに消えたのでしょうか?』
『昨日、一の宮付近での謎の怪獣が現れた話ですが、突然現れた赤い巨人によって…』
「…」
朝起きてテレビをつけた玄野の耳に届いたのは、自分と加藤の巻き込まれた地下鉄事故と、ネギ星人との戦闘による被害を放送したニュースだった。
「夢なんかじゃないんだな…マジで…」
朝食をとって登校し、あの地下鉄に来たときにもその張り紙が壁に張られていた。
20XX年X月X日
19時50分頃
この駅の線路内に転落した男性を救出し、電車に轢かれたと思われる二人の高校生の行方を探しています。
その文章を目にしても、まだ現実を受け入れることができずにいた。何かの間違いではないのか?その二人が本当に自分と加藤なのかこれまではわからない。もしかしたら単なる偶然で違う人間の可能性
も…
だがそのわずかな可能性を徹底的に打ち砕くように近くの高校の制服を着た女子学生の話し声が耳に飛び込んできた。
「ねえ、これってさ、うちらが昨日みた奴でしょ」
「思い出したくないんだけど〜」
玄野はその女子学生たちに釘付けになった。その二人の女子学生は玄野の視線に気がつき、見られた玄野は思わず身をこわばらせた。すぐさま彼は別の場所に移動して彼女たちの目を欺いた。
学校に来ても身が入らない。ホームルームもあまり話を聞かずにいた。
「今日は転校生が二人来ております。さあ、入って」
(はあ、こんな時にかわいい女子とか…って何考えてんだよ俺…)
玄野は下らない妄想を抱く自分を恥じるように顔をうずくまらせた。担任の先生の呼び掛けに、二人の転校生が入ってきた。
「じゃあ、まずは君から事故紹介を」
「和泉紫音です」
一人の転校生はかなりの長身でルックスも抜群だった。女子たちのおしゃべりからも「なんかかっこよくない?」の声が聞こえる。
(ちっ…なんだよ…)
顔を上げないまま玄野はその和泉という男に対してなんとなく妬いていた。
「じゃあもう一人…」
「平賀ジンです」
ガタン!
それを聞いた玄野は思わず椅子から転げ落ちた。
「ちょ…玄野!?」
玄野はクラスではあまり目立たない存在だった。そんな彼がいきなり椅子から落ちたことは周りの生徒たちから見れば衝撃的なものだ。
「なんでお前がいるんだよ!」
玄野はジンを廊下に呼び出して怒鳴りだす。
「いや…そんなこと僕に言われても…。帰ろうにも帰れないし」
「帰れない?」
帰れないとはどういう意味か。玄野は最初理解できなかったが、一つの心当たりがあることに気づいた。
ネギ星人との戦闘で現れた、赤い巨人のことを。
「なあ、お前本当に…人間なのか…?」
「………口は固そうだから話します」
ジンは学ランの内ポケットから赤いメガネ型アイテムを取り出した。
「僕の本当の名前は………『ウルトラセブンアックス』」
それから玄野はジンから彼のことをとことん聞いた。ウルトラマンの存在する別次元の世界から飛来した本物のウルトラマンで、しかもウルトラセブン本人の孫だとも言っていた。なにやら彼の次元世界を狙う侵略者の調査でこの世界にやって来た、とジンは言った。
(わけわかんねえ…)
はっきり言って頭がおかしいんじゃね?と本人に言いたい。だが、ネギ星人のミッションで見せた彼の本当の姿を見た以上、否定できなかった。体育の授業に全く身が入らない中、彼は髪をかきながらぼんやりしていた。
「玄野ってマジで存在感ないよな〜。ああいう奴が社会で一番いらないタイプなんだよ」
「まさしく昼行灯だぜ。役立たず」
クスクス笑い声が聞こえる。その笑い声を聞いていた玄野の鋭い視線に気づいた学生たちは「やべ」とあわてて口をつぐんだ。
キーンコーンカーンコーン…
「起立、礼」
四時限が終わり、昼休みになったところで玄野は細めな永山と見るからにオタクな松田という同級生と人生ゲームをしていた。ジンと和泉も参加した。
(今思えばこの和泉って奴、加藤に似てるような…)
和泉を見ながら加藤はなんとなく思った。
「なあ、もしゲームを負けたら罰ゲームやらね?」
永山が面白がっているような目をして言った。
「ビリの奴はルーレットの差した方の女子に告る。オーケーなら最低二週間付き合うってのは?」
なんとも馬鹿馬鹿しいルールか。まあ別にたいしたことではないの
で適当にやっていた玄野。
「はい玄野の負け〜」
結局玄野はその適当さが災いしたのかビリに終わってしまった。ちなみに一着はジン、二位は和泉だ。
「マジで回すのか?」
「いいから回せって。どうせ断られるだろうからさ」
しぶしぶ玄野はルーレットを回し、針はすぐ止まった。
「お、あいつだ」
ルーレットの差した方は教室の入り口付近で、そこにはどこかかわいいようで結構地味な、そして小柄な女子生徒が絵を描いていた。
「んじゃ、玄野頑張れよ」
「ちっ…」
放課後彼はその女子生徒に屋上で告白した。少なくとも玄野にとっては不幸なのか、オーケーをもらい、しかも彼女は玄野に前から好意を抱いていたと彼女の口から聞いたとき、玄野は耳を疑った。
女子生徒の名前は小島多恵。
帰りまで一緒に帰ることになった。彼女はマンガを描くのが趣味でいつかマンガ家になるのが夢らしい。帰りはマンガを描くのに必要な資料を買うのに付き合わされた。
さらに驚いたことは、彼女の家は玄野の住むアパートからわずか500メートルの辺りだった。
「どう…かな?」
「すげえ」
面倒くさがっていた玄野だったが、多恵の描いたマンガを見たとき、素直に感嘆した。
その感想に多恵は嬉しそうに笑った。
「ヒーロー物なのに少女マンガってヤバイかな?玄野君みたいな男の子が正義のヒーローに選ばれて…」
「昔の俺みたい…」
「え?」
「あ、いや、思い出したんだ。ガキの頃、いじめっ子から弱い奴守ってたんだ」
「そうなんだ…玄野君、かっこよかったんだろうな…」
あまり言われたことのない言葉だったのか、少し照れてしまった。
「その弱い奴にこないだたまたま再会してさ…」
玄野が喋る姿を、多恵はニコニコと見つめた。玄野はいくぶん声を低めて言った。
「やっぱヒーローは悪い奴やっつけねーとな」
多恵の顔がかすかに曇った。口元に歪んだ彼の笑みは彼らしくない表情に歪んでいた。
(弱い奴は逃げていいんだよ。俺はヒーローなんだ。強くなった。ガキの頃に憧れてた本物のヒーローに…)
心配そうな多恵をよそに、彼は鞄の中に納めていたXガンに軽く触れた。偶然帰り道が同じだったジンはその玄野のセリフを聞いたとき、彼も曇った表情を浮かべた。
(悪いからって………)
その時、ジンの横を見知らぬ男が通りすぎた。
「?」
ジンは男を見ると、妙に不自然なヘルメットにまるでにこやかマスクを身につけたような、なんか不気味な男、いや…
「…ロボット?」
ジンは怪しく思ったのか彼をつけてみた。
玄野は多恵を家に送った後、誰かが自分の部屋の前にいるのを見た。
岸本だった。
「岸本…さん?」
「あ…玄野、君?」
彼女は少しぎこちない仕草を見せて言った。
「お水もらえるかな?」
「はい」
とりあえず家に上げて水の入ったコップを渡した。
「ありがとう。あとこれ…」
岸本は玄野の学ランを渡した。ネギ星人の時からずっと借りっぱなしで、ポケットに入ってた生徒手帳に書かれた住所でここがわかったとのこと。
「えと、ごめんね。借りたままで」
「いいよ。スペアがあったから」
改めて見ると、やはり岸本はかわいかった。胸も大きく、性格も悪くないような気がする。つい心の中で「なんだかいけそうな気がする〜(死語)」と吟じたくなるほど玄野の心は高揚していた。
「お願いがあるんだけど…」
「何?」
「今晩、泊めてくれない?」
「…はい?」
玄野は予想だにしない岸本の発言に固まってしまった。
「いいの?私が上で」
コンビニ弁当で夕食を済ませ、玄野は岸本をベッドに座らせ、床に布団を敷き始めた。
「どうぞどうぞ」
愛想よく答える玄野だが、下心がないはずがなかった。
「ごめんなさい…」
ガンツの部屋で見たとき以上にヤバい気がする。わざわざ泊めてくれと言ってきたのだ。「その気」がないはずがない。
「畳とはいえ、床だと背中いたいかもなあ…」
「やっぱり私、下で…」
「あ〜大丈夫大丈夫。上で寝なよ」
岸本に悟られないよう、部屋を見渡してティッシュの箱を探す。作者から一言。玄野、一日目から浮気。
「家、帰らなくていいの?」
パソコンの横に置いてあるのを見つけ、取りに行くと同時に岸本が言った。
「……………帰ってはみたの。でも、お風呂場だけ見れなくて、……私の死体が血だらけであるんじゃないかって思うと…」
「…確か手首切ったんだよな?言いにくいけど…どうしてそんなことしたんだ?」
「……一度、男の人から強姦されたの。それで…」
「…」
ガンツ部屋でも畑中にも強姦されかけたのに、彼女は前科持ちだったのだ。
玄野は元の位置にティッシュを戻し、毛布をくるんだ。最初の期待と興奮はどこかに消え失せた。あんな話をされたらとても無理だ。
「玄野君は、加藤君と知り合いなの?」
「なんでわかったの?」
「加藤君から普通に「計ちゃん」って呼ばれてたから、そんな気がしたの」
「ふうん…ま、確かに昔小学校で一緒にいたくらいだけど」
「…家、どこか知ってる?」
ちょっと気恥ずかしそうにベッドの中に潜る岸本は玄野に尋ねてきた。
「…小学校で引っ越したからわからないな」
「そう…」
岸本は毛布を株って電灯の消えた天井を見上げた。
怯えるネギ星人に黒い銃が突きつけられる。加藤は必死に叫んでいた。いや、叫ぼうとした。だがどんなに腹の底に力を込め、叫ぼう
としても、喉はカサカサと空気を吐くだけで声が出なかった。
「見てろよ、偽善者」
焦る加藤を嘲笑うように、黒い銃Xガンの引き金を引く西。そのXガンから放射された光を浴びたネギ星人がは…
「兄ちゃん!」
弟、歩の声で叫んだ。
バアン!
「はっ!」
加藤は目を覚ました。
顔は汗でびっしょりだ。
加藤と歩の住むアパートはすきま風が吹き抜けて寒いくらいのはずだったが。
「ハアッ…ハアッ…ハアッ…」
荒い息をつきながら隣を見ると、まだ幼い歩が寝息を立てていた。
いつもと変わらない弟の姿。
安堵の息をつき、加藤は床を離れた。
あの夜以来、同じ夢ばかりをみていた加藤。ネギ星人が惨殺されるままにした自分が情けない、それにつらい。罪の意識が加藤の心を苦しめていた。
洗面所で顔を洗った時、強い耳鳴りを感じて顔をしかめた。
「なんだ…?」
鏡を見た加藤は自分の姿が頭から消えていくことに気づいた。
その頃、ジンは妙な男のあとをつけ、古いアパートの前に立っていた。
『カンタロー…』
ラジカセの音が聞こえる。
「…」
彼の種族なら誰もが持つ透視能力でアパートの中を覗き込んだ時、ビクッ!っと彼は寒気を感じた。
「あれは…なんだ?」
すると、加藤のようにジンの体もどんどん頭から消えていった。そして、気づくとあのガンツの部屋にいた。
玄野、加藤、岸本もだ。
「よう、お帰り」
西が嫌な笑みを浮かべ、ジンを出迎えた。
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