廃水
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7部分:第七章
第七章
「餌を置いておきます」
「罠か?」
「はい、まずは罠です」
また工場長の言葉に対して答えるのだった。
「まずは。生ゴミに毒や睡眠薬を混ぜておきましょう」
「そんなものが効果があるのか?」
「それはわかりません」
しかしここでは学者の返答は今一つ以上に弱いものであった。
「実際に効果があるかどうかは。相手が本当に排水から出るものならです」
「普通の生命体ではないかも知れないからか」
「そういうことです。その場合はまた考えますが」
返答は今一つ以上に弱いものであった。
「ですが餌を置いておけば必ず食べに来る筈です」
「その時に相手の姿も見てか」
「そういうことです。まずは相手が何者か確かめましょう」
「よし、わかった」
工場長は学者の言葉をここまで聞いて確かな顔で頷いた。
「ではそれで行こう。まずはな」
「はい、それで」
こうして最初にやることが決まった。彼等は固まって行動し密室には入らずそのうえで工場のある場所に適当に生ゴミを置いておいた。工場長達はその生ゴミを離れた場所から見るのだった。
「それでだ」
「はい」
「本当に排水なのか?」
「廃水でしょうか」
学者はこう工場長に答えた。彼等は生ゴミから離れた場所にいてそこから見ているのだった。
「若しかしたら」
「廃水!?」
「調べたら成分はそう言っていいものでした」
こう工場長に対して述べるのだった。
「あれは」
「廃水か」
「そうです、排水というよりはです」
「廃水か」
「ですから余計に悪質です」
学者の言葉がここで苦々しいものになった。表情こそ変えないが。
「何かを溶かしたりするのも速いので」
「それでか」
「そうです。もっとも本当に何かわかるのはこれからですが」
「そうだな。本当に何なんだ?」
工場長は顔を思いきり顰めさせながら呟いた。
「何人も行方不明にさせてくれて。何なのだ」
彼はこのことに深い怒りを感じていた。工場を預かる者としてだ。工員達は彼にとってはまさに弟であり息子であり。その家族を奪われた怒りを感じていたのだ。
「若し見つけたらだ」
「どうしますか?」
「人間なら仕方がない」
ここで仕方がないという言葉が出た。
「警察に突き出してやる」
「人間なら、ですか」
「それ以外の存在だったら容赦しない」
そして今度はこう言うのだった。
「この手で成敗してやる、絶対にな」
「そうするのが宜しいかと。それではです」
「待つんだな、このまま」
「何につけてもそれです。今は」
こうして彼等は暫く待った。そうして待っているとだった。不意に上の方から何から降りてきた。見ればそれは赤いどろどろとした液体だった。
「あの液体は!?」
「間違いありませんね」
「ああ、間違いない」
工場長は覗きながら学者の言葉に対して応える。二人は同じようにして覗いていた。
「あの赤い水だ」
「ですね。あの水です」
学者もまたそれに応えて述べる。
「あの水ですよ、あれは」
「どうしてあんなものが出て来るんだ?」
工場長はあらためてこのことを呟かずにはいられなかった。
「やはり。あれは」
「ええ、かも知れませんね」
ここで二人の言葉は完全に合わさっていた。
「これはね。あれですね」
「まさか本当にそうだったとは」
「私も信じられません」
むしろ学者の方が驚いていた。そんな言葉だった。
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