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廃水

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2部分:第二章


第二章

「柳沢君に限ってそんな急にいなくなるなんてな」
「そうですよね」
 彼は真面目な青年として通っていた。その為工場の中でも工場長にも非常に評判がよかった。だからこそ余計に首を傾げるのだった。
「一体どうしたんでしょうか」
「とりあえず探そう」
 工場長はこの時代は深刻には考えていなかった。
「それでいいな」
「はい、それじゃあ」
 こうして柳沢が探されることになった。しかし彼は見つかなかった。そのまま行方不明になってしまった。誰もがこのことに首を捻るがこれに終わらなかった。
 次の日にもまた一人。いなくなってしまったのだ。
「今度は後藤君がか」
「朝来て着替えに行ってです」
「タイムカードは落としてか?」
「はい、そうです」
 また工員達が工場長に述べていた。やはり誰もが首を傾げてしまうことだった。
「いないんですよ、そのまま消えて」
「おかしいな」
 工場長はまた首を傾げるのだった。
「柳沢君はまだ見つかっていないんだな」
「下宿にも帰っていません」 
 彼のアパートにもだった。
「鍵はかかったままで中を覗いても」
「いないか。何なんだ?」
「それで後藤のバイクも置いたままですし」
「柳沢君は自転車だったな」
「それも置いたままです」
 謎はさらに深まるのだった。
「おかしいですよね」
「だとしたら二人はまだ工場の中にいるのか?」
 工場長はこう首を捻るのだった。
「ひょっとして」
「そうですかね、やっぱり」
「間違って溶鉱炉に落ちたのか?」
 工場長は考えられる限りの最悪の事態を考えだした。
「若しかしてだが」
「いえ、二人はそっちの受け持ちじゃなかったですし」
 工員の一人がこう彼に述べた。いつもは機械の音が音楽になっている工場の中が異様に静まり返っていた。それは鳴り響いてはいるのだが誰も耳にも入らなくなっていた。
「それにあそこの作業は常に数人でやりますよね」
「ああ」
 そのことを工場長が知らない筈がなかった。それだけ危険な作業だからだ。
「立ち入りにもチェックしますし」
「じゃあ溶接炉はないか」
「絶対にないです」
 こうしてそれは否定されたのだった。
「それだけは」
「そうだな。そもそもトイレに行ったり着替えに言って溶接炉になんか向かったりはしない」
「そうですよ、それは」
「それにですよ」
 もう一つ溶接炉に落ちた可能性が否定される話が出された。
「柳沢がトイレに行った時間溶接炉動いていなかったし」
「そういえば昨日は溶接炉は使っていなかったな」
「それで止めてましたから」
 そうだったのだ。
「今日だって今やっと火を衝けたばかりですし」
「朝早くなんてとても」
「そうだな。やっぱりそれもないか」
 工場長は腕を組んでまた思索に入った。
「何なんだ?それじゃあ」
「わかりません、けれど二人は見えません」
「何処にも」
「もう一度探してみるか」
 工場長はとりあえずはもう一度探してみることにするのだった。
「何処かに倒れているかも知れないしな」
「そうですね。それじゃあ」
「もう一度」
 こうして彼等はまた捜索に入った。だがそこでだった。また一人だった。
 
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