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八神家の養父切嗣

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十二話:狂気の笑み

 翠屋のすぐ傍に構えた司令部にて魔法少女達はその羽を休めると共に会議を開いていた。
 少女二人は途中、新しくなったデバイスについての説明も受けていたが大した時間ではない。
 今、議題として挙がっているのはずズバリ闇の書の騎士達とその主についてだ。
 本来であればただのプログラム、疑似生命体に過ぎない騎士達であるが今回は明らかに己の意思を持ち動いている。
 そのことに疑問が尽きないが結局の所捕まえればそれは解き明かされるだろうと保留にする。
 それよりも、明らかになり始めた闇の書の主の情報について纏めるべきだ。

「クロノ、まだ断定とは言えないけど、今回の闇の書の主と思われる男の特徴を教えてくれるかしら」
「はい、かあ―――艦長。見た目は白髪に浅黒い肌の背の高い男性。ただ、変身魔法で姿を変えている可能性も十分に考えられる」
「これが男の姿ね」

 クロノの説明を捕捉するためにエイミィが画面に映像を映し出す。
 特徴的な容姿はこちらに誤った認識を持たせるための変装の可能性が高い。
 しかし、なによりも、深い深い絶望の底に居るかのような虚無の瞳がなのは達の目を引く。
 これだけは変装で変えられるものでもないだろう。

「武装としては拳銃型のデバイス、恐らくはストレージを所持している。少なくとも二種類に形状変化させて使っていた。もしかすると、狙撃型も存在しているかもしれない」

 淡々と実務的に話を続けていく、クロノ。
 しかし、その目は自分との戦闘映像から離される事は無い。
 次に遭遇した時にどう行動するべきかの作戦を既に組み立て始めているのだ。
 失敗を後悔し過ぎるのは良くはないが、全く振り返らないのでは進歩がない。
 次はこの経験を生かして成功に導かなければならないのだ。

「戦ってみてどうだった、クロノ」
「そうだな……一言で言うなら戦闘経験豊富な相手という印象かな」
「どんな風に?」
「単純な力押しじゃなくて、相手を仕留める為の道筋を考えた上での戦術だった。ただ、あくまでも短時間の戦闘でしかないから余り当てにしない方がいい」

 フェイトの質問に地雷で目くらましにしてからの射撃、そして影からのスナイプの例を挙げる。
 他にも閃光弾での目潰しの次に備えていた攻撃が止めの為の物でそれを撃ち込むことを基に作られた戦術だと分析する。
 
 あの手のタイプは自らが狩る側に回る時は確実に相手を倒せるという算段をつけてから動く。
 故に先手を取られるとそのまま後手後手に回る可能性が高い。
 おまけに慎重で姿を現しづらい。非常に面倒な敵と言えるだろう。

「それと、厄介な点が質量兵器を組み合わせて使っていることかな」
「閃光弾はともかく、手榴弾は完全にアウトだよねぇ。罪状が一つ増えちゃった」
「拳銃に爆弾……なんだか今までで一番犯罪者みたいな人だね」
「みたいというか、そのものだと思うよ、なのは」

 質量兵器の所持による罪状が増えたとぼやく、エイミィ。
 その横でなのはが犯罪者みたいな人物だと思わず零してしまう。
 ユーノはみたいではなく犯罪者だと苦笑しながらツッコミを入れる。

 しかし、内心では今までなのはが会って来た犯罪者というカテゴリに入る人物が皆犯罪者らしくなかったので無理もないかと思う。
 実力はともかく見た目は子どもや女性がほとんどだったので今回の如何にも犯罪者ですという人物は見慣れていないのだ。

「それに服装も黒づくめで殺し屋みたいだし」
「黒づくめ……殺し屋……」
「あ! ち、違うんだよ、フェイトちゃん。フェイトちゃんのことはそんな風に思った事は無いよ」

 ふと、自身の服装も黒づくめだという事に気づきへこむフェイト。
 慌ててなのはが誤解を解くが心の隅で今度からは黒を抑えめにしようかと考えるフェイトだった。
 一方リンディは殺し屋という言葉にどことなく引っ掛かりを覚えるのだがそれが何なのか分からずに喉の奥に小骨が刺さったような顔をする。

「取りあえず僕に分かることはここまでだ。次に問題になって来るのは何故、主が闇の書の完成を目指すのかだ」
「理由って、ジュエルシードみたいに凄い力が欲しいってだけじゃないのかい?」

 そんなことをわざわざ考える必要があるのかとアルフが首を捻る。
 彼女の考えとしてはその力を使って何かしたいことがあるから完成を目指しているだけではないのかというところだ。
 しかし、クロノは物憂げに首を振り説明を始める。

「ジュエルシードと違って闇の書は完成しても破壊しかもたらさない―――主も含めてね」
「別の使い方があるのかもしれないけど少なくとも過去の事例では存在しない以上はその可能性も低いわ。……今までの主で完成後に生き延びた人はいないのよ」
「……まるっきり呪いの書だね、そりゃ」

 クロノとリンディに語られる闇の書が辿る結末にゲンナリとした表情を見せる。
 しかし、とも考える。例え破壊しか振り撒かない代物であろうと己の目的の達成のためであればためらいなく使う人物を彼女は知っている。
 チラリとフェイトの方を見て喉まで出かかった人物の名を呑み込み、無かったことにする。
 今の主にはきっと辛い事だろうから。

「現地住民が偶然闇の書の主になった場合なら訳も分からず蒐集をさせているという線もあったが、正規の魔導士である以上は自分がどういったことをしているか分からないはずがない」
「じゃあ、その人は破壊の力を求めている?」
「管理世界でも闇の書についてはそこまで知られているわけじゃない。ただ、騎士達から絶対的な力が手に入ると唆されただけの可能性もある」
「でも、シグナムはそんな人じゃないと思うよ」
「プログラムである以上、自分の役目を放棄するわけにもいかないだろう」

 フェイトの反論をやんわりとしながらもハッキリと否定する。
 例え、人格が清廉な人物として設定されていたとしても己が存在意義に逆らえるはずもない。
 人間が意識して心臓を止められないように彼等にとってはリンカーコアの収集はそれだけ当たり前であり、絶対の目標なのだ。
 
 それ故に解せない。主に忠誠を尽くそうとする騎士の姿が。
 当たり前のように感じられるかもしれないが目的地が滅びならば主は人形でよく、忠誠を誓う必要などない。
 さらに転生機能がある限り主とは取り換え可能な電池に等しいのだ。
 それにも関わらず、守るだけでなく心からの忠誠を尽くそうとしている。
 まるで、本来の目的はそちらだとでも言うように。

「これ以上は考えても仕方がないわね。今日はこれで解散します」
「分かりました。ああ、それとユーノ。君は明日僕について本局に来てくれ」

 パズルのピースは一つずつ埋まっていく。
 但し、運命がパズルの完成を待ってくれるかは分からないが。





 草木も眠る丑三つ時。切嗣は海を見渡せる高台に来ていた。
 今日ばかりは騎士達も全員が大人しく家で寝ている。
 そのためはやてとその友人のすずかの護衛は万全だ。
 では、なぜこんな時間にこんな場所で苛立たし気にタバコを吸っているのかというとだ。

「やあ、久しいね、衛宮切嗣。くくく」
「とっとと用件を言え。生憎と僕は暇じゃないんだ―――スカリエッティ」

 闇夜の中でも目に付く、特徴的な紫の髪。
 賢者のような知的さを含みながらも、狂気を体現したかのような黄金の瞳。
 そして何よりも、道化の仮面のような、異形の笑み。
 人を安心させるのではなく、絶望の奈落に引きずり込むような、歪んだ笑顔。
 生命操作技術の基礎技術を組み上げた天才であると同時に広域次元犯罪者。
 ―――ジェイル・スカリエッティ。

「僕とあの子を引き離してわざわざ荷物の保証書に暗号を隠すなんて遠回りな真似をしてお前は何がしたいんだ」
「何、普通に会いに行っては面白みがないだろう?」
「そんなことだろう思ったよ…っ」

 はやてに危害を加えることなどいつでもできると半ば脅しの様に送られてきた荷物。
 わざわざ保証書に暗号を隠した謎解きのような無駄な手間。
 そうして切嗣がこの場所に来るしかないように仕向けた理由。
 聞く前から理解していた。だが、あれ(・・)を理解していると認めるのは、ただ苦痛だった。

「くくくく、久しぶりの同僚との再会じゃないか。もう少し喜んだらどうだい?」
「同僚だと? ふざけるな、僕達を表す言葉があるとすればそれは一つ―――共犯者だ」

 視線に人を害する力があるのならば間違いなく殺せるだろうという目を向けるが狂気の科学者は不気味な笑いを零すだけだ。
 不快、そうとしか言い表せない感情がその身を占める。
 それでもこの男から目を離すのは危険だと理解しているためにここを去れない。

「なるほど、共犯者。ふふふ、確かにそれは相応しい名だ。私が作り上げた兵器でもって君は人を殺す。本来は、兵器は私の管轄外であるが、人間が何を為せば死ぬのかを見せてくれたのだ。実に有意義な時だったよ」
「自分のことながら反吐が出るよ」
「くくく、そう自分を卑下するものではないよ。君は人類が生まれて真っ先に生み出した殺人というテクノロジーを私に教えてくれたのだからね。人を知りたいのにその殺し方を知らないのでは無限の欲望(アンミリテッド・デザイア)の名折れだよ」

 スカリエッティは生命の神秘に魅せられている。人間を知り尽くしたいと願う。
 命が生まれ、そして死んでいくまでの過程。そこに興味を引かれる。
 ならば、命が絶えるその瞬間にも興味を持つのは当然ではないのか。
 
 人間がその歴史の全てを費やしたとも言える程の文化(殺人)を知りたいと願うのは余りにも自然な流れではないのか。
 彼は何も殺人という行為に楽しみを見出しているわけではない。
 ただ、どうすれば肉体は壊れるのか? どうすれば生命は終わるのか?
 それが知りたかっただけなのだ。

「命とは何とも儚い。そこに転がっている石一つあれば潰える。しかし、だからこそ命というものは何物にも代えがたい光を放っているのだとは思わないかね?」
「……答える気にもなれないな」

 その言葉だけならば命を大切にしろと言っているだけにも聞こえる。
 しかし、スカリエッティはそんなことを考える様な男ではない。
 命が終わる瞬間を見たいだけならば得意のクローン技術で増産したヒト(・・)を殺していればいい。
 
 だが、彼はそれを拒んだ。何の過程も踏んでいない命が潰えたところでそれは死ではないと。
 モルモットを殺す行為は殺人ではないと。
 殺すために生み出した“物”が死んだところでそれは興醒めでしかないと。
 生きるために生まれ、全力で生を謳歌する“者”を殺して初めて―――殺人となるのだと。

 切嗣はそれを、声を大にして否定したい。
 命とはそこに生まれ落ちた時から、愛しく、尊いものなのだと。
 どんな命であろうと等しく平等で失っていいものなど一つたりともないのだと。
 誰よりも命を奪い続け来た男はそう口にしたかった。
 己にその資格がないことを誰よりも理解しながらも。

「……それで結局、何をしに来たんだ。管理局が潜入しているこの町に捕まりにでも来たのか」
「まさか私が、いや―――私達が管理局(・・・)に捕まるとでも思っているのかい?」
「ないだろうな……」

 スカリエッティの返しに短く答えるだけに止める。
 考えれば考える程、憂鬱になっていくだけだから。
 ならば考えない方がいい。機械には感情が宿らない方がいいのだから。

「さて、私がなぜここに来たのかだね。君が私の前から姿を消して五年。かつての『魔導士殺しのエミヤ』の名が世間を賑わわせることも無くなった。“共犯者”として非常に寂しく思ってね」
「僕としては願ったりかなったりだけどね」
「君の所在を探させてもらったよ。するとどうだね、あろうことかあの魔導士殺しが少女と仲睦まじく暮らしているじゃないか」

 切嗣の皮肉にまるで反応することなくスカリエッティはまさに道化の様に大げさに語っていく。
 今すぐにでもこの場から離れて家に帰りたいという欲求が湧いてくるがそれもできない。
 いっそここで殺してしまいたいとも思うが何とか理性で抑え込む。
 この男の研究は、過程はともかく多くの世界と人を救うのだから。

「私はそのことに興味を抱いて調べた。すると何とも悲しいことに少女は闇の書の主として呪われた定めを受けていた」
「……それで?」
「当然、君がその子の元で何をしようとしているかを調べたよ。いや、君のことだから何をするかの見当は付いたがね」

 余りにも嫌味ったらしい言葉に嫌気がさして、切嗣は吐き捨てるように話しだす。
 そこに懺悔の意味合いが込められていることに本人すら気づくことなく。

「そうだ。僕はあの子を犠牲にすることで闇の書を封印するつもりだ。やっていることの本質はあの頃から何も変わっちゃいない」
「くくくくっ。ああ、そうだろう、そうだろう。何故なら君は誰よりも―――優しい(・・・)からね」

 その言葉を聞いた瞬間、切嗣は感情のままにトンプソンを起動させスカリエッティに突き付けていた。引き金を一度引きさえすれば容易く殺される。
 それが分かっていながらもスカリエッティは狂気の笑みを浮かべ続けるのだ。
 殺してもこいつは死なないと直感が告げ、苦々し気な表情のまま下ろす。

「勘違いしてもらうと困るな。私は君のことを尊敬しているのだよ。世界を平和にしたいという、人の身には過ぎた欲望を抱いた、誰よりも優しい人間としてね」
「そいつは“光栄”だね」
「人の身にして機械同然に振る舞い、救いを施し続ける。ああ、断言しよう。衛宮切嗣という人間はこの世の誰よりも人類を救っているとね」

 彼は誰よりも衛宮切嗣という人間をかっている。
 誰よりも正義を憎みながら、誰よりも正義に生きる矛盾が。
 体を機械のように動かしても心はいつまでも人間のままの滑稽さが。
 ちっぽけな一人の人間には重すぎる理想を背負いながら歩き続ける無謀さが。
 理想以外に縋るものが存在せずに全てを捨てて逃げることすらできない愚かさが。
 
 その無様な人間らしさが何よりも人の生の可能性を示しているように感じられるのだ。
 故にスカリエッティは衛宮切嗣の“命”を堪能したいのだ。
 彼に死という物語の終わりが訪れるその時まで。

「そこで私は君に問いたい。もしも―――八神はやてを救う手段があればどうするのかと」
「なん…だって…?」
「ん? 少し分かりづらかったかね。“夜天の書”はその呪いから解き放たれ、少女は人並みの幸せを謳歌する。そんな未来に至る方法があればどうするかと聞いたのだよ」

 自らの問いに茫然とする切嗣に異形の笑みを浮かべながらこれでもかと言わんばかりに丁寧に繰り返す。
 その顔だけでこの問いかけの為にわざわざ来たかいがあるというものだ。

「お前がそう言うということは―――あるんだな?」
「くくく、その通り。夜天の書について調べたが私の理論通りならば救えるはずだよ」
「……確実にか?」
「しかるべき準備をすれば確率は上げられるだろう。私に任せてくれるのならば100%成功させて見せよう」

 いっそ傲慢とも言える程の圧倒的な自信。
 しかし、悪魔の頭脳を持つ彼ならばそれを語るに相応しい力を持っている。
 勿論ただで動く気はないが受け持った仕事はしっかりとこなす程度の信念は持ち合わせている。

「……万が一にも失敗はないと言い切れるかい?」
「ふむ、万が一か。私も研究者の端くれだ。絶対という言葉がないことだけは知っているよ」

 絶対という言葉を打ち破るために研究者は日夜研究しているのだ。
 その気持ちだけは鬼才である彼も変わらない。
 それを聞いた切嗣は揺れ動いていた心を無理矢理に抑え込む。


「そうか……なら―――僕は予定通りに娘を殺す」


 何も映していない死んだ瞳で“父親”はそう断言する。
 しばしの沈黙の後、スカリエッティは狂わんばかりに嗤い始めた。
 全て予想通りだった。だが、つまらなさなどまるで感じない。
 
 この選択がどれだけの絶望を意味するのかを理解してなお男は選んだ。
 誰もが通ることを憚る棘の道にさも当然のように素足で踏み込んだのだ。
 犠牲と救済の両天秤の計り手はその上に迷うことなく娘を置き、切り捨ててみせた。
 それが堪らなく可笑しかった。堪らなく―――愛おしかった。

「ふふ、くくくっ! 理由を聞いてもいいかね」
「万が一の奇跡でも世界が滅びるというのなら僕はその可能性を徹底的に排除する」
「はははっ! 君は名も知らない誰かの為に、最愛の娘を生贄にすると言うのだね!」
「……そうだ」

 素晴らしい、素晴らしい。凡そ人間が下す決断とは思えぬことをこの男は人間のまま下す。
 誰よりも人間らしいのに機械のような選択をし続ける。
 まるで鉄の仮面を着けたかの様に動かなくなった表情の下では血の涙を流しているというのに。
 最も効率のいい演算をすればこの男の行動は簡単に読めるというのに面白い。
 だからこそだろうか。彼が演算から外れた行動をすることも望んでしまうのは。

「いい加減笑うのをやめろ。今すぐにでもお前を殺したい気分なんだ」
「くくく、開発名『ピースメイカー』。やはり、そのデバイスは衛宮切嗣に相応しい」
「『トンプソン』だ、間違えるな」
「いやいや、生みの親からすればこちらの方が馴染みがあるのさ。真名とでも言うかね」
ふざけた設定(・・・・・・)もそのためか?」

 再び突き付けられた拳銃に、さして気にした様子もなくおどけて手を上げてみせる。
 そんな様子に切嗣はやはりこいつには何をやってもダメだろうと諦め待機状態に戻す。
 狂人に常識を求めるだけ無駄なのだ。
 例えそれが、生物が備えている恐怖という本能であったとしても。

「それで、目的は下らない問いかけの為だけか」
「守護騎士のプログラムや管制人格である融合機についても少し調べてみたかったが、君の決断が揺るがないのなら私が邪魔立てするわけにもいかないだろう?」
「なら、とっとと消えてくれ。最初に言ったが僕はこれでも忙しいんだ」
「おや、つれないねえ。だが、覚えておいてくれ。君が心変わりするというのなら私はいつでも力になろう」

 縋るべき理想さえ奪われた時に彼がどんな行動をとるのかを見るのもまた面白いだろう。
 生命の神秘とは何も肉体だけにあるのではない。
 人の心の在り方もまた彼の欲望を満たすに相応しい。
 真っ直ぐな信念を持つ人間も面白いが、やはり心に矛盾を抱いた者こそ人間らしい。
 特に―――ねじ曲がった信念のまま無理やり真っ直ぐに歩こうとする愚者は。


「断言しよう、君に敗北は無い。何と言っても君は―――正義の味方(・・・・・)だからね」


 最後にそう言い残して笑いながら去っていくスカリエッティの姿が消えるのを待つこともなく切嗣は吸殻を踏みにじり感情をぶつけるのだった。
 
 

 
後書き
スカさんの好感度が以上に高い。
しかし、切嗣にとっては胃が痛くなるだけという。 
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