たまかりっ! ~小悪魔魂奪暴虐奇譚~
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「……あー、ひっさびさに出しまくったなぁ。最近パチュリー様に攻められっぱなしだったもんなぁ……ああ、早く逢いたいです、パチュリー様ぁン」
「は、ぁ……ひ、ん……ふぅっ、は───」
呼吸もままならないほど攻められまくった魔女さんをヤリ捨て、こぁはキセルを吹かしながら遠い主を想いました。
魔女さんは現実味がこれっぽっちも感じられない量の精え───白くべたつく何かに汚されています。ノルマ達成気味。
「こ、こぁしゃまぁ……ん」
拠り所がなくて切なかったのか、甘い声を出して魔女がこぁの腰にしがみつきました。
「うわ、なんだおまえ汚ぇな。あんま触んなよ」
サイテー。この小悪魔まるで悪魔です。自分でさんざんヤラかしといてこのセリフです。
「まぁなんだ、これで晴れて契約は完了したし、あとはおまえとフニャチンを結ばせりゃ一段落だな」
「ひゃいぃ……」
さらっとフニャチン呼ばわりしたのにスルーされました。どうやら呂律もアタマも回っていない模様です。
それに気を良くしたこぁは、恋人に甘えるように体を預けてくる魔女さんを蹴り離し、すっくと立ち上がりました。
「そんじゃあそろそろお仕事しますか。
───おいおいなんて汚いんだ依頼主さんよ。そんなナリじゃあ縁結びなんてうまくいくわけもねぇ」
「ふえぇ……?」
未だ楽園のお花畑から帰還できていない魔女さんに、こぁは呆れたようにそう告げます。自分でヤっといて。
「ほーら精え……灰かぶり。お召し替えだ」
こぁがパチンと指を弾くと、白くべたつくなにかに浸された魔女さんの体が一瞬光り、盛大な音を立てて変化しました。
「こ、これは……?」
床に倒れ伏したポーズはそのままに、さっきまでのきちゃない体はさっぱり洗浄された上、ダンスパーティにでも出席できそうなキレイなドレスに包まれていました。
さすがに、圧倒的な快楽に溶けていた意識も我を取り戻したようです。
「寝ぼけてないでどんどん行くぞー、アタシも忙しいからな。
ホイッと」
ぱちこーん。
こぁの指が唸ります。
「───どぁああああっっ!?」
「きゃああっ!?」
魔女さんのすぐ目の前の空間に魔法陣が開き、そこから見覚えのある青年が勢いよく落ちてきました。魔女さんが驚いて悲鳴をあげます。
「いっつぅ……こ、これは一体?」
「よう王子様。そっちまでお姫様を連れていくのメンドくさいからこっちにご招待……ってなんだそのカッコは。ナニおっ勃ててんだよ!」
落ちてきた青年は、なぜか素っ裸でした。そしてナニがカティンコティンでした。
「あ、悪魔様!? い、いやこれはその……さっきの感覚が忘れられなくてつい……」
「あーあーあーあー! な、なんの話だかわからんな! 初対面だしな! ほ、ほらそんなことよりお姫さ───おまえもナニしてんだぁ!」
「ひゃあっ?」
こぁの怒声に魔女さんがビクりと体を震わせます。全裸で。
「何脱いでんだテメェ」
「い、いえあの……そういうのもういいから、こぁ様にもう一度シテもらおうかなって……」
ダメでした。ぜんぜんエデンから戻ってきてませんでした。
「それじゃ契約した意味がないだろーが! つーか! 相手! 目の前!」
「はい?」
こぁに肩をつかまれて、魔女さんの体がぐい、と青年の方へと向けられます。そうしてようやく、意中の彼が目の前にいると気づいたようです。さっきの悲鳴はなんだったのか。
とにかく、男と女の視線が交わりました。
「あ、アナタは……薔薇の君!」
「そういう君はマイエンジェル!」
「何その呼び合い……」
こぁがドン引きしていますが、あっという間に二人の世界は形成されていきました。
「ああ、マイエンジェル……どうして君がそんな姿で僕の前にいるのかわからないけれど、嬉しくてどうしようもないよ」
ギンギンにカティンコティンにしながら青年が言います。
「私もです、薔薇の君……! ああ、話すだけでもこんなに嬉しいのに、そんなたくましい姿のアナタが私の前に来てくださるなんて……!」
股を(自主規制)しながら魔女さんが涙を流します。
「マイエンジェル!」
「薔薇の君!」
どうやら言葉は無粋なようです。二人は熱い抱擁とくちづけを交わしながら、その場に倒れこみました。
「…………なんでこの以心伝心っぷりで今までくっついてなかったんだろう、こいつら」
ひとり首を90度にかしげるこぁさん。
とりあえず彼らの邪魔をする気はないようです。
「ま、いーか」
細かいことは彼女に関係ありません。
このままいけば、10分もすればふたりの魂はこぁのモノなのですから。青年の早漏ぶりを思えばもっと早くてもおかしくありませんし。
こぁは機嫌良くふたりのまぐわいを眺め───
「……ん?」
必死にカクカクと振られていたふたりの腰がぴたりと止まるのを確認しました。
「あれ? なんだおまえら、さっさと───」
『キモチ良くない』
「え?」
唖然とするこぁを置きざりにして、ふたりは厳しい顔つき──それこそ睨みつけるようにしてお互いを見つめています。
そして……同時に、こんなコトを口にしました。
「悪魔様の方がキモチ良かった」
「こぁ様の方がキモチ良かった」
「…………えぇ、と」
ナニが起きたのかを察した様子で、こぁが脂汗をかき始めました。
「なんだって……?」
「なんですって……?」
「いや、ちょ、キミたち」
ふたりは穴から棒を抜いて、すっくと立ち上がります。
「マイエンジェル? 君、僕以外に体を許したっていうのか?」
「薔薇の君? 私が生涯をかけて守りぬいたアナタの純潔を捨ててしまったというのですか?」
「あのね、ちょっと話が……」
こぁの言葉には、もはやなんの効力も存在しませんでした。
「信じられない……僕が、僕がこんなに君を愛していたっていうのに、他の、それも女に股を開いたっていうのかこの淫売が! 悪魔様が魅力的なのは分かるが、それにしたってこれはないんじゃないのか!」
「何よ、アナタこそ信じられないわこのマザー○ァッカー! 今日出会ったばかりの女性に不貞を働くなんてとんだ不埒者ですわね! こぁ様がどれだけ蠱惑的なのかはアナタなどよりもずっとよく知っていますし魅力的なのも全面同意しますが、だとしても酷すぎますわ!」
「……なんで褒められてんのアタシ」
……さあ?
「許せない……許せない許せない許せない! 君は僕に対して重大な裏切りをしたぞスベタめ! 悪魔様に働いてもらうまでもない! この手で成敗してくれる! そして僕は悪魔様とただれた生活を謳歌するんだ!」
「こっちのセリフですわこの節操なし! アナタが私に成敗されるべきなんです! ふしだら極まりないアナタになど、この世に存在していい理由があるわけないのですから! そしてアナタなどではなく、私こそがこぁ様の伴侶にふさわしいのです!」
「…………何の話だっけ」
…………さー。
「これでも食らえッ!」
「弾けて消えてしまいなさい!」
青年は、床に落ちていた儀礼用短剣を拾い上げ、
魔女はまさかの無詠唱呪文で呪殺を試み。
「ぎゃああっ!」
「う、ぐぇ……ッ!」
魔女の心臓には刃が突き立ち、青年の体は弾けて散らばりましたとさ。
「ええと」
展開についていけなかったこぁさんが、ぽつりと呟きました。
「……まぁ、お仕事はしたよな」
ぽりぽりとアタマをかきながら、ふたつの死体を眺めます。
とりあえず両想いにはさせたし、女の方は死んだしで、契約内容自体は完遂でした。手段と経緯が大分予想と違ってしまっただけで。
「魂、ゲットだぜー……ふぅ」
死体から抜き出したふたつの魂をかかげ、そんなことを口にしてみるも、実に虚しいこぁさんでした。
「……えー、マジかよぉ」
元呪いの館から飛び出ると、世界はとっぷりと夜の闇に浸かっていました。特に気にもせず、先ほど手に入れた魂ふたつの輝きを見極めます。
「この時代じゃこんなもんなのかなぁ」
寒空に、こぁの吐く白い息が霧散します。ひどくガッカリした様子。
それもそのはず、実際に手にした魂が、驚くほど『薄い』のです。
先述したとおり、魂には濃いものと薄いものが存在します。
質の違いは持ち主の身体的バイタリティと、野望や経験からの総合です。英雄的な身体や王様的野望の持ち主であればあるほど魂の純度と熱量は増大するのです。
「まぁ、そうだよな」
悪魔に頼るようなぶっ飛んだ意識を持っているとは言っても、あのふたりも所詮現代っ子でした。
コトの中心には、想い人と結ばれたい、などという実に軽薄なモノが根ざしていたのです。
昔の英雄なら色を好みすぎて世界中の女を自分のモノにしたいとか、王様なら自分の国民すべての命を賭けの材料にして世界征服だとか、まぁ野望のケタが違ったものです。
時代は変わった……。
「どうすっかな、こんなんじゃ本当にこの世界の人類全滅させたところで魔王一匹分の魂にも届かな──────ハッ」
こぁの脳内で、種みたいな何かが弾けました。
「魔王……そうか、魔王か!」
そういうコトみたいです。
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