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東方喪戦苦【狂】

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参話 無駄な技量

この先に獄王がいる、そう思うと不思議と好奇心が湧くものだ。
文字通り、地獄の王、一体どんな凶悪な姿をしているのか。

最後の門をくぐるとき、幼い、声が聞こえた。
「おーい!おまえたちだろー?早くこいよー!」

門をくぐるとそこにいたのは
身長は低い、黒いTシャツにベージュ色のハーフパンツを履いた全く邪気の感じられない少年だった

「俺様が獄王だ!」

「は?」
狂夜と骸が顔を見合わせる。
骸が嘲笑うように言った。
「おまえが獄王?冗談は止してくれよ、お前みたいなのがか?」

聞き捨てならない、と言うように獄王は机を叩いて叫ぶように言う。
「なっ···!?うるせーな!どうでもいーだろ!見てくれはよぉ!」

「信じるやついるのかよ?“こんなの”が獄王とかよ」
狂夜の発言に弾かれるように、『いつの間にか』隣に立っていた、女性が狂夜の喉元に刀の切先を向けていた。

「···!?」
狂夜は思わず唖然とした。
人並み外れたスピード、間合いを詰めるとともに刀を抜く身のこなし、だがそれ以上に驚いたこと、
袴の外に出ている皮膚は赤く、手の先の爪は真っ白で長く伸び、額には、遠目で少しわかる程度に突起したものが一つ見受けられた。その長く白い髪に隠れていて今まで気付かなかった、と言うより
最初から『姿』そのものを認識していなかった、否、認識『出来なかった』

「···口を謹め」
低い、唸り声。
まるで深い憎悪。

「後、俺は男だ····」
刀を鞘に戻し、獄王の横に立つ、そこが定位置らしい。

「悪いねぇ、こいつたまにこう言う事するからさ、許してやってくれや」
自称獄王は、親指をその男に向けて自己紹介を促すように言った。

「俺の名は韋駄天···見ての通りの鬼だ」
韋駄天、過去になにがあったのだろうか、狂夜は気がかりでならなかった。

今度は獄王を名乗る少年が自己紹介を始めたようだ。

「何度も言ってるように、俺が獄王だ!」
胸に手をあて、誇らしげにそう言った。

「だから、本当の事言えって!獄王はどこだよ!俺には時間が無いの!分かる!?」
骸は大きく叫ぶように言った。

獄王と名乗る少年は、ため息をついて言った。
「···そんなに言うなら試してみるか?」
途端、少年の目に邪気が宿る。

「急いでるって言ってんのになぁ··わかったよ」
骸も獄王を一瞥して、臨戦体制をとる。

「そこの兄さん、いや、新月狂夜!ただ見てるだけだと暇だろうし、韋駄天と相手してやってくれや。
こいつはかなりの手練れだ、こいつがここに来たときは、俺一人で抑えるのに十年近くかかったっけな」

「韋駄天が戦うのは確か70年ぶりか?生前、人類最強と呼ばれた新月狂夜と、
その昔狂気の武神と謳われた韋駄天、どっちが強いのかねぇ」
獄王の顔にイタズラのような笑みが映る。

『人類最強』その言葉を聞いて韋駄天は殺気だっていた。
それとは裏腹に狂夜は呆気にとられていた
「えっ···俺別に暇なんかじゃ···」
狂夜が発した言葉の途中、狂夜の意識は暗転した。


狂夜はため息を吐く。
広い空間なのに、ため息の微細な音が反響して返ってくる。

どうやらまた飛ばされたらしい。
それも、韋駄天と言う男と一緒に。

韋駄天は狂夜のため息に顔をしかめて言った。
「不満か?」

「あぁ…そうだな…暇つぶしレベルだしな…お前…」
狂夜があくびをかみ殺しながら言うと韋駄天はキッと狂夜を睨む。

「…つまらんハッタリだ。お前が人類最強だと…?人類も落ちたな。」
狂夜はククッと笑った。

「…何がおかしい…」
韋駄天は狂夜の笑いが気にくわなかったようだった。

「いやいや、ちょっと強がりが可愛くてな、狂気の武神(笑)の韋駄天ちゃん」

「…この世に生を受けたことを後悔させて殺す」

言葉と共に、韋駄天が消えた。

「…む?」

空気が切れる感覚と共に狂夜は突然身体を反らせた。

先程まで狂夜の頭があった空間が『斬れて』いる。
比喩はなく、事実。

「認識…出来ない!?」
勢いよく後ろに後転する。
再び、空間が斬れる

狂夜は地面を蹴り、声をあげる。

ソナーのように反響した声で韋駄天の場所を掴もうとするが、何も感じない。

狂夜の感覚上、消えている訳ではない。
何も無いところからいきなり刀が現れる。
韋駄天の気配はない。

「今起こった事をありのままに話すぜ…
俺は奴を挑発していたらいつの間にか奴が消えて攻撃されていた。
な、何を言ってるかわからねぇと思うが…俺にも何を言ってるかわからねぇ…
超スピードや透明化なんてチャチなもんじゃ断じてねぇ。
もっと恐ろしいモノの片鱗を味わったぜ…俺は…」

「随分と余裕があるんだな」

声と共に振られた刀を間一髪、首を横に傾げ、避ける

刀を持った韋駄天がいきなり現れた。

「俺を捉えることは不可能だ。
カメラだろうが、赤外線だろうが、果てには、『能力』であろうとな」

「へぇ…」
狂夜は手を上にあげて笑う。
『重力操作』

周りに物がないためなんの変化も起こらないが、確かに韋駄天は膝をつく。

「捉えることは不可能…ねぇ」
狂夜は韋駄天に近づく。

その時だった。

狂夜の全身に刺すような感覚が襲い、堪らず顔を顰める。

膝をついていた韋駄天は消えていて、狂夜の後ろに韋駄天はいた。

「残念だったな『認識』違いだ」
韋駄天は邪気の笑いを含み言った。

「全体攻撃だから、効くとでも?」
狂夜は胸を抑えて返事をしない、心臓を突き刺したからだ。

「人類最強か、つまらんな」
韋駄天は刀を刺したまま話しかける

狂夜の手がプルプルと身震いしたように動き、韋駄天の刀を握っている腕を掴む
「ハっズレー!」
狂夜は笑顔ではにかんでいた。

韋駄天はそこから抜けようとするが物凄い力で固定される。

「…俺さ、魔力をあげちゃって少ししかないんだよね。」

立ち上がった狂夜の胸の傷は修復している。
「だから…ごめんな」
狂夜の腕が変形して、韋駄天に絡みつく。

「認識できないなら…捕まえればいいじゃないっ!」
左手で捕まえ、狂夜は右手に力を溜め込むために握りしめる。

「なぁに、殺しはしない。勝った方が相手に命令できるってルールでいいよな?」

「…この状況をどう覆せと…?」

「さぁな」

狂夜は『本気』で力を込める。
空間が歪む、大地が鳴動していた。

韋駄天は顔を顰めた。
(とっておきは…まだ…使うべきではない)

狂夜は悪魔のように目を見開いて叫んだ。

「消し飛べェェェェェェェェ!!!!」
マッハを超えるようなスピードで右手を振るう、左手で固定しているため、文字通り消し飛びはしなかった。

しかし、韋駄天は耐えたが、周りの空間が全て消し飛んだ。

空間は消えて、先ほどの獄王の部屋に戻った

左手は戻り、韋駄天の襟を握りしめていた。
右手を高らかにあげて言った。

「いいねェ!!最っ高だよッ!!」
目の前でポカンと唖然としてる二人を無視して、左手に掴んだ、気を失ってる韋駄天に言う。

「じゃっ!罰ゲーム開始っ!」 
 

 
後書き
締切なんか作るから悪いんだ、俺悪くない 
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