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戦国異伝

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第二百二十九話 隠されていたものその十一

「それで細川家に嫁いだな」
「たま様ですな」
「あの方のことですか」
「夫婦仲はよいな」 
 嫁に入った相手である細川忠興と、というのだ。
「何も揉めてはおらんな」
「はい、これまで通りです」
「ご夫婦の中は円満です」
「何に憂いもなくです」
「平穏に進んでおります」
「むしろご夫君の愛情がです」
「強過ぎる位です」
 夫である忠興の方がというのだ。
「そのことがです」
「かえってという位に」
「左様か、まあ過ぎたるというが」
「それでもですな」
「たま様がそれだけ愛されているのなら」
「よい」 
 父としてはというのだ。
「ならばな」
「ですな、それでは」
「たま様のことも喜びましょう」 
 斎藤と秀満も言う、そしてだった。
 明智は今は喜んでいた、しかし。
 闇の中ではだ、それは違い。
 信長の上洛の話を聞いてだ、余計に歯噛みして言っていた。
「もう動くか」
「思った以上に動きが早い」
「このまま動かせてはならん」
「早く手を打たねばな」
「うむ、あ奴が完全に天下を握りじゃ」
「手出し出来なくなるぞ」
「そうじゃ、わしも驚いておる」
 老人の声も言う。
「これは一刻の猶予もない」
「では御前」
「ここで、ですか」
「動きますか」
「そうする、とはいっても兵を起こす余裕もないな」
 老人の声は言った。
「ここは起こされる」
「と、いいますと」
「どうされるのでしょうか」
「兵の用意はする」
 それは、というのだ。
 だがそれと共にだ、老人の声は言うのだった。
「しかし松永の起こした戦が早く終わり我等は一旦兵を収めた」
「そこからまた兵を挙げる」
「時がかかります」
「しかしですね」
「その時が危ういのかも知れないのですな」
「一刻を争うやも知れぬ」
 老人の声は焦っていた、明らかに。そしてその焦った声でだった。彼は周りの者達に対して語るのだった。
「それでじゃ、別の兵を動かす」
「と、いいますと」
「その者は一体誰でしょうか」
「どの者の兵をでしょうか」
「動かされますか」
「そしてどうして動かされますか」
「わしの術を使う」
 まずは動かし方についてだ、老人の声は答えた。
「この傀儡の術でな」
「人を思いのままに操る」
「その術を使われますか」
「そしてそのうえで」
「その者を動かし」
「その者が持っている兵達もですか」
「動かしますか」
 周りの者達も老人の声を聞いてそれぞれ言った、聞けば声は十あった。どれも歳の差はあるが男のものだった。
「そうされて」
「そして、ですか」
「織田信長が都に入れば」
「その時にですな」
「その者の兵を都に入れてじゃ」
 そしてというのだ。 
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