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ドリトル先生の水族館

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第八幕その一

                 第八幕  川のお魚も
 先生は動物の皆を連れて大学の講義の時間がない時は水族館でそこにいる生きもの達の診察を続けていました。 
 その先生の研究室にです、日笠さんが来て言ってきました。
「今回もすいません」
「いえいえ、これもお仕事で。それに」
「それに、ですか」
「楽しんでいます」
 その診察をというのです。
「皆とお話をすることもまた」
「そうですか、どの生きものもですね」
「健康です」
 至って、というのです。
「どの子もストレスがなくて。年齢のこともありますが」
「重い病気はですね」
「ありません」
 それも全く、というのです。
「深刻なものは」
「それは何よりですね」
「はい、ただお話を聞いた」
「ダイオウグソクムシはですね」
「僕が診察を続けている間も」
 まだ先生はグソクムシさんのところには行っていませんがそれでもお話を聞いています。そのお話によるとです。
「食べていないとか」
「はい、その記録を更新しています」
「本当に不思議ですね」
「とにかく食べませbん」
 日笠さんも言います、先生が出してくれた紅茶とティーセットを楽しみながら。今日のティーセットは上はお抹茶のクッキー、真ん中は杏のケーキ、下段はチョコレートアイスとなっていてお二人の周りでは動物の皆がくつろいでいます。
「何も」
「凄いですね」
「とにかくです」
「何も口にしないんですね」
「食べものを置いても一瞥もしません」
 見ることすらしないというのです。
「それこそれです」
「不思議で仕方ないですね」
「先生から見てもですね」
「まことに」
 本当に、とです。先生も答えるしかありません。
「僕も深海生物について調べていますが」
「それでもですね」
「何年も食べないとはです」
「有り得ませんね」
「深海はまだまだ謎があります」
 深海生物もまた然りです。
「そしてその謎の中にです」
「ダイオウグソクムシも入っていますね」
「そうです」
 まさにというのです。
「不思議で仕方なりません」
「生物学的に食べないということは有り得ませんね」
「エネルギー摂取は必要です」
 先生は日笠さんにはっきりと答えました。
「それこそ」
「そうですね」
「はい、しかし」
「あの生きものは」
「何年も食べていないというのですから」
 それで、というのです。
「僕も不思議に思っています」
「鳥羽水族館のダイオウグソクムシはです」
 日笠さんはあえて他の水族館の事例を出しました。
「何年も食べないまま死にましたが」
「餓死ではなかったのですね」
「違いました」
「それも凄いですね」
「一体どうして生きていたのか」
「謎ですね」
「私は深海については専門外です」
 日笠さんも動物園勤務で学芸員の資格を持っています。そうした意味で学問と関わりのある人ですが深海についてはそうなのです。
「ですから多くは言えませんが」
「それでもですね」
「そんなことは有り得ないですが」
「モグラはです」
 先生はケーキを食べながらこの生きものの事例をお話に出しました。
「一日に体重の半分を食べないといけません」
「はい、八条動物園でも飼育していますが」
「餌はいつもですね」
「沢山あげています」
 その体重の半分をあげているのです。 
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