騎剣の綾羽 〜天才にデスゲームへ送られた件〜
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VRMMOに興味があるかと聞かれたら、あると答えたくなった
「息子よっ! VRMMORPGに興味はあるか!」
ドアを勢い良く開け放ちながら叫ぶこの女の名前は粕谷麗子……俺の母親であり、世界最強の天才だ。歴史上に名を残すどの人物よりも天才と言われ、あまりに天才すぎるが故に異才と言われている。ちなみに母さんがやり遂げてきたことはどれも偉業とされている。AIDSという病気を完全に治してしまう薬を作ったというのもその一つであり、母さんが言うのには暇つぶしに作ったらしい。正直言って人間なのか疑わしい。
「突然なんだよ……母さん」
こんな時は大抵、母さんは厄介ごとを持ってくるのだ。俺は知っている……なぜなら、小さい頃から何かといろんな実験に付き合わされたりしたからだ。正直勘弁して欲しいものだ。世の中の人が母さんを天才やら異才と言っているが、そんなものは所詮表に出ているもの程度でそんなことを言っているに過ぎない。世には出ていなくとも、家には馬鹿みたいな発明も沢山あるからだ。
地肌や髪にダメージを与えずに髪の毛の色を変えられる機械だとか、髪の長さを自由自在に操れる機械だとか、整形なんてせずとも一瞬で顔の形を変えられたりする機械だったり、もう既におかしなレベルにまで到達しているのだ。もう誰でもいいからこの人を止めてくれ……
「私が質問しているのだぞ? VRMMORPGに興味はあるのか?」
「その質問の意図がわからねぇから聞いてんじゃねぇか……VRMMORPG……だっけ? あれだろ? 茅場晶彦とか言う人が作ったっていう……仮想空間かなんかでゲームができるやつのことだろ?」
「そうだ、あの馬鹿が作ったゲームだ」
「馬鹿って……」
一応だが、天才的ゲームデザイナーとか言われてる人に対して馬鹿とさらっというところは、母さんらしいと思う。ちなみにVRMMORPG、名前は確かソードアートオンラインだったような気がするが、それはもうすぐ発売される。発売日が近づいて来るにつれて世の中はその話題で持ちきりになっているし、人々も心做しかウキウキしてるようにも感じられた。
「そんなことはどうでもいい、興味はあるのか、ないのか」
「まぁ、ないって言ったら嘘になるな」
「つまり興味はあるんだな?」
「あぁ、そういうことになる」
そういうと、母さんはニヤリと笑った。その笑みを見た瞬間。俺はとてつもない悪寒に襲われた……きっとこれは俺が何年もかけて培ってきた危機察知能力のようなものなのかもしれない。母さんがあの表情で笑った時は大抵、変なことに巻き込まれる前兆だったりする。これはなんとしても興味がないという方向に持っていかないと、大変なことになるっ!
「や、やっぱりあまり興味は……」
「お母さんに任せておけっ! きっと綾羽が嬉しいと思うことをしてやるからなっ!」
「ちょ、ならまず俺の話をっ!」
「大丈夫、みなまで言うな。 綾羽のことは何よりも私はわかっているからな」
「それならまずは俺の話を聞いてくれぇぇぇ!!」
まるで子供のような表情をしながら俺の部屋を出ていく母さん。結局俺の言葉が届くことはなく、俺はただ母さんの背中を溜息をつきながら見つめていることしか出来なかった。
俺、粕谷綾羽は毎度のことながら思う。 たぶんこれから先は面倒臭いことに巻き込まれるに違いない……と。
☆
とある掲示板での会話。
天才の息子『また母親に火をつけてしまった』
トレジャーハンター『大変だね、相変わらず』
メイドアイドル志望『あはは、いつも楽しそうでなによりだよ』
天才の息子『いつもの俺の話を聞いていて、そう思っているならいい眼科を教えてやるよ』
メイドアイドル志望『じ、冗談っ、冗談だよ』
天才の息子『まったく、冗談でもそういうこと言うなよな』
トレジャーハンター『でも賑やかそうでいいね』
メイドアイドル志望『あ、それは確かにそんな感じするよね』
天才の息子『確かに一度や二度なら賑やかで済むかもしれないけどな、生まれてからずっととか……泣きたくなるぞ』
トレジャーハンター『そんなものなの?』
メイドアイドル志望『なんとなくわかるかも……』
天才の息子『わかってるくれるのか、メイドっ!』
メイドアイドル志望『境遇は全然違うんだけどね』
トレジャーハンター『そっかぁ、二人とも色々と大変なんだね』
天才の息子『トレジャーはなんかないのか? 話題とか』
トレジャーハンター『トレジャーハンターだよっ! トレジャーハンター!』
天才の息子『だってトレジャーハンターとかなげぇじゃん』
メイドアイドル志望『私もメイド、だったしね』
天才の息子『だってメイドなんだろ?』
メイドアイドル志望『一応メイド喫茶でアルバイトはしてるけど……』
トレジャーハンター『してるの!?』
天才の息子『リアルで会うことがあったらご主人様と呼んでくれ』
メイドアイドル志望『ご、ご主人様?』
レインボー博士『気持ち悪いわよ、あんた』
天才の息子『いきなり入ってきて気持ち悪いとはなんだ』
レインボー博士『事実じゃない』
天才の息子『うるさいレインボー』
レインボー博士『レインボーだけで呼ぶんじゃないわよっ! なんか変な人みたいじゃない』
天才の息子『自分のことを博士とか言ってる時点で変人だろ』
レインボー博士『なんですってぇ!』
メイドアイドル志望『お、落ち着いてレインボーちゃん、息子君も煽っちゃダメだよ』
レインボー博士『くっ……アイドルちゃんに免じて今回は許してあげるわ』
天才の息子『つうか、メイドにはレインボーって呼ばれても許すんだな。 差別っ、差別だっ!』
レインボー博士『うるさいわねっ! アイドルちゃんはいいのよっ!』
トレジャーハンター『まぁまぁ、今更だけど……いらっしゃい、博士ちゃん』
レインボー博士『おっとと……そうだったわね、皆っ、プリヴィエート』
メイドアイドル志望『うん、プリヴィエート、レインボーちゃん』
トレジャーハンター『そういえば、プリヴィエートってどういう意味なの?』
レインボー博士『そうね……こんにちは、とか挨拶みたいなものかしらね』
天才の息子『そんなことも知らないのか? トレジャーは馬鹿だなぁ』
トレジャーハンター『し、知ってたよっ! ド忘れ!』
天才の息子『へぇ(´・∀・`)』
トレジャーハンター『な、なにその顔!』
レインボー博士『うざいわね』
メイドアイドル志望『ちょ、レインボーちゃんストレートすぎるよっ』
レインボー博士『だって事実だし、こいつにはこれくらい言ってもいいのよ』
天才の息子『ぶっ飛ばすぞロリが』
レインボー博士『な、なんであんたがあたしの身体のこと知ってるのよ!? もしかしてストーカー!?』
天才の息子『いや、レインボーに興味とかねぇからストーカーなんてしねぇよ。 つうか本当にロリだったんだな。 ちびっこいんだな』
レインボー博士『二回っ! 二回も言った!』
天才の息子『大切なことだからな』
レインボー博士『むっきぃぃ!』
メイドアイドル志望『お、落ち着いてレインボーちゃん!』
レインボー博士『リアルで会ったらぶっ飛ばしてやるんだからぁ!』
天才の息子『うわぁ、こわ〜い』
トレジャーハンター『二人とも仲いいよね』
天才の息子『トレジャー……お前の目は節穴か?』
レインボー博士『そうよっ! こんな奴と仲いいと思われるだなんて屈辱だわっ!』
トレジャーハンター『ご、ごめんね? 博士ちゃん』
天才の息子『おい、俺への謝罪は?』
トレジャーハンター『どうして息子に謝るの?』
天才の息子『それ……素で返してるのか?』
トレジャーハンター『?』
メイドアイドル志望『あ、あはは……まぁ気にしない方がいいんじゃないかな?』
天才の息子『……まぁ、そうだな、そうする』
アテンダント『レインボー博士、そろそろ時間だ』
天才の息子『あ、変態だ』
アテンダント『……殺されたいのか?』
天才の息子『おいおい、レインボーの周りはレインボー含めてカルシウム足りてねぇんじゃねぇの?』
レインボー博士『足りてるわよっ! ちゃんと牛乳だって飲んでるしっ! って……もうそんな時間なの?』
アテンダント『あぁ……明日も忙しいからな、今日はここまでにしておいた方がいい』
トレジャーハンター『そういえば、博士ちゃんは色々と大変らしいね』
メイドアイドル志望『そういえば、大変なお仕事……してるんだってね』
レインボー博士『そうねぇ……もう慣れてきたけれど、時々大変かも……とは思うわね。』
天才の息子『ロリなのに大変なんだな』
レインボー博士『それは関係ないでしょっ!』
天才の息子『せいぜい体調崩さないように気をつけてな』
レインボー博士『へ? う、うん……ありがと』
メイドアイドル志望『息子君は優しいねっ』
トレジャーハンター『うんうんっ』
天才の息子『ち、茶化すなっ!』
レインボー博士『え、えっと……それじゃあ皆、また時間がある時は話してくれると嬉しいわ。 じゃあねっ!』
アテンダント『失礼する』
トレジャーハンター『博士ちゃん帰っちゃったね』
メイドアイドル志望『私達はどうしよっか』
天才の息子『もうそれなりにいい時間だし、お開きにすっか?』
メイドアイドル志望『それがいいかもしれないね。 明日は私もバイトあるし』
トレジャーハンター『それじゃあ、わたしも落ちるね! それじゃあまた今度っ』
メイドアイドル志望『じゃあ、私も。 また今度ね、二人ともっ』
天才の息子『おう、じゃあな!』
その後、この掲示板にこの子達が書き込みをすることは……なかった。
後書き
ソードアートオンラインの二次創作を投稿させてもらうことになりました。
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