魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epico38-A竜の終焉 ~BADEND~
前書き
第0小隊ドラゴンハート・ハート3戦イメージBGM
閃の軌跡Ⅱ「Phantasmal Blaze」
https://youtu.be/sQrcvGeS-N0
へいへーい。リンドヴルム首領の正体明かしまで行かなかったですぜい!
†††Sideシャルロッテ†††
VS・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
其は盲目的に竜を敬愛し魂命を捧げる者ハート3
・―・―・―・―・―・―・―・―・―・VS
「いっけぇぇぇぇーーーーッ!」
――光牙烈閃刃――
神属の存在する天界に一番近いとされるということもあって、神造兵装を数多く有する世界の代表格である光煌世界アールヴヘイム。そんなところからリンドヴルムが神器を回収して来た所為で今、高ランクの神造兵装を武装した奴と戦うはめに。
「合わせます!」
――氷星の大賛歌――
私の剣状砲撃とフィレスの氷雪砲撃が、リンドヴルムが保有する私設の蒐集実行部隊の1つ、第0小隊ドラゴンハートのメンバー・ハート3へと向かう。
「光翼よッ!」
――ヘレヴフラッシュ――
両腕と同化してる光の翼を伸長させて光の剣とし、私たちの砲撃を真っ向から刺突、そして破砕。私の烈閃刃は同じ閃光系であっという間に呑まれて、フィレスの砲撃は蒸発させられた。さすがは神造兵装の88位。魔術に対する優位性は馬鹿みたいに高い。
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「せぇぇぇぇぇぇぇぇぇいッ!」
――デュプルブレイズ・シオンズクリーバー――
アリサとフェイトの連携魔法がハート3を左右から襲う。両腕の“光翼”は未だに伸びきったまま。けどま、さすがは光。一瞬で元に戻って、2人の魔力刃への迎撃に入った。“光翼”の斬撃と、雷と炎の大剣によるハサミのような挟撃が衝突する。結果は見るまでもなく、アリサとフェイトの魔力刃は粉々になった。
「「もう1発ッ!」」
私とフィレスはさっきと同じ砲撃をハート3へと撃ち込む。
――ゾハルコテヴ――
綺麗なオーロラがハート3を護る盾のように発生する。私の閃光系の魔力は取り込まれ、フィレスの砲撃はまた蒸発。ていうか、閃光系はアウトって何故すぐに思い出さなかったの私。さっき見たくせにorz
――バレルショット――
ここでなのはが撃ったのは、バインド効果を持つ不可視の砲撃魔法。本来のバレルショットには殺傷能力は無いんだけど、“ドラウプニル”の効果でなのはら魔導師は一時的な魔術師と化してるし、神秘カートリッジのおかげで十分に殺傷能力がある魔法・・・っていうか、魔術になってる。
「っく・・・!?」
背後からの至近距離からの一撃にハート3は対処しきれずに四肢を拘束された。拘束できるのもほんの一瞬だろうけど、その隙は絶対に逃さない。
――飛刃・翔舞一閃――
――氷閃刃・翔閃――
――ヴォルカニックスカッシャー――
――ジェットザンバー――
――エクセリオンバスター・フォースバースト――
問答無用のオーバーキルクラスな攻撃をぶちかます。次々と攻撃を受け、最後になのはの4連同時砲撃が着弾、遅れてさらに本命のバスターが着弾して大爆発。起きた衝撃波にはさすがの私も「ふわわっ!?」大きく体勢を崩すほどに吹き飛ばされてしまった。特にアリサなんて「きゃぁぁぁぁぁ!?」墜落しちゃう始末。
「わわ、ごめん、アリサちゃん!」
「ありがと、なのは。あんた、ブレイカーじゃないのによくあんなトンデモな威力を出せたわね」
「驚いた。チーム海鳴の活躍は聞いていたけど、先ほどの集束砲といい、これほどとは恐れ入ったわ。アリサとフェイトも素晴らしい魔導師だし、管理局の未来は安泰ね」
フィレスもなのはの砲撃魔導師としての能力に驚愕。でもその驚愕もすぐに薄まる。何故なら「どれだけの攻撃を受けようと!」ハート3がその健在さを見せつけてきたから。
「さすがは、か」
ハート3の両腕と同化したり背中に展開されてたりするオレンジ色に輝く光の翼を見て嘆息。
(神造兵装第88位、光翼ルミナス・プリズミラ。閃光系魔術においては最高位とされるアールヴヘイム魔術師と抜群の相性の神器。ただの魔導師に使いきれるはずがないんだけど・・・)
彼女は“ルミナス・プリズミラ”だけじゃなく、他に3つも神器をその身に付けてる。4つの神器を一度に装備するのは魔術師にとっても害だと言うのに。魔術師は最大で3つまでの神器しか持てない体だ。まぁ、例外としてルシルや雷皇ジークヘルグがいるけど。ともかく神器特有の神秘は、魔術師にとって命とも言える魔力生成・貯蔵器官である魔力炉の働きに悪影響を及ぼす。いわゆる神秘中毒っていう症状だ。
「謳え、星照らす燃えたる光幕」
ハート3の背中から展開されてる光翼が放射状に開いた。めっちゃ見覚えのあるの姿で、そして詠唱。あのヤバい砲撃を撃つ気だ。
「凶牙波瀑刃!」
神秘カートリッジをロードして、闇黒系魔力を纏わせた“キルシュブリューテ”を大きく振るう。そして発生させるのは闇黒系魔力の津波。狙いはハート3じゃなくその頭上。
「剣神シャルロッテ・フライハイト! シュヴァリエルさんからの情報通り、私の光翼の性能や技を知っているのね! 本当に小賢しい!」
――カドゥールオール――
「まあね!(強大な神秘を持つ光翼を扱えるだけで十分だと言うのに、防具アフドゥ・ハーミン、不傷剣キャルタンクリーヴまでも・・・!)」
さらにもう一振りの剣を装備してる。これで限界数を超えることになるんだけど、そのもう一振りの剣の効果が、神秘中毒を抑えるというもの。銘を“魔剣アゾート”。装備者の魔力を増強させるだけじゃなくて、神秘中毒を抑え込む効果を持つ。柄頭に付いてる宝玉内には何かの悪魔が封じられているそうだけど、神器の知識は私よりはルシルの方が詳しいかな。
(でもだからってアゾートの抑制する効果にも限界はあるし、今のハート3は常時綱渡り状態)
――凶牙波瀑刃――
『騎士シャルロッテ! ハート3は何をやろうと?』
両腕の“光翼”の先端から羽根型魔力弾を連射するハート3。私はそれらを避けながら二度目の波瀑刃を放ってまた“太陽光”を妨げると、『察しました』フィレスは感づいたようで、『騎士シャルロッテのガードに入ります』私の護衛を買って出てくれた。
「『なのは、アリサ、フェイト! 私の攻撃頻度が少し落ちるけど・・・』ご自慢の光翼で闇を払ってはどう? お、嬢、さ、ん♪」
そんなハート3に私たちは問答無用の攻撃を仕掛けてる。“キャルタンクリーヴ”の効果は身に付けていると一切のダメージを無効化する体を得ることが出来るというもの。“キャルタンクリーヴ”以上の神秘を持った神器による直接攻撃は無効化できないけど、それ以外の、魔術や神器の攻撃は問答無用に無効化できる。まぁ、無効化にも限界はある。
「この・・・! 過去に死んだ人間がッ、現代を生きる人間の争いに・・・」
『えっと、大丈夫です!』
『同じく!』
『やってやるわ!』
大剣形態クレイモアフォームにしてる“フレイムアイズ”を肩に担いでアリサは嘆息。今のアリサはスリーズ・サンズレガリアっていう魔力ブーストのおかげで、なのはやフェイト並の魔力を扱えるし、魔法のレパートリーも近・中・遠とバランスが良いから十分な戦力になってくれてる。
(先の次元世界のアリサを知ってる分、こうして一緒に戦える日を迎えることが出来たのは純粋に嬉しいよ♪)
「関わるなッ!」
――マルアフツィポール――
ハート3の周囲に4つの光球が発生。それらは個別に動き出して、私たちに魔力弾や砲撃を撃ってきた。先の次元世界でなのはが使ってたブラスタービットやルシルの蒼翼のような独立機動砲台か。
「凶牙波瀑刃!」
それでも私は私たちの頭上に闇の波を発生させる。そしてなのは達も光球からの射砲撃を躱しつつハート3への攻撃を続ける。こちらの攻撃は迎撃されたり回避されたり直撃したり。直撃は普通に死ぬような一撃だけど、ハート3の防御力はあまりにも高い。
けど、どれだけ体にダメージが入らないと言っても神器には負荷が掛かる。その負荷を高めて、破壊する。それが、ハート3と戦う私、なのは、フェイト、アリサ、フィレスの5人の作戦だ。標的であるハート3は、なのは達の攻撃を受けながらも反撃を行い続ける。
――凶牙波瀑刃――
私も光球からの射砲撃を躱しながら、また太陽光を遮るための魔術を放つ。彼女が放とうとしているのは、放射状に展開した背中の翼に吸収させた太陽光を両翼から放つ、閃光系と炎熱系の属性複合の集束砲撃ネカマーカルネーシェメッシュ。
太陽は神聖は存在。その太陽の熱や光、神秘を吸収した砲撃は対魔術師・対魔族に必殺の威力をもたらす。だけど準備――背中の翼を放射状に広げて数分間の吸収が必要だ。通常の翼モードでも出来そうなんだけど、って疑問は横に置く。とにかくその吸収時間を潰せば問題ない。
(他に月光を利用した氷雪系と閃光系の集束砲撃、太陽光と月光を複合した三属性複合の神罰クラスの砲撃もあるけど・・・。神罰は、月は出てないから今は気にしないでいいかな)
「おのれ・・・! 痛みも苦しみもなく逝かせてやろうという私の優しさを・・・!」
とうとうハート3は背中の光翼を閉じて、元の翼モードへ戻した。よしっ。
「とっとと倒れてもらうよ、ハート3! 久々の・・・雷撃最強! フェイト! 私の攻撃に合わせてランサーを、出来るだけ多くお願い!」
「あ、はいっ!」
「何を企んでいるのかは知らないけど、全てを薙ぎ払ってくれるわッ!」
――ヘレヴフラッシュ――
両腕の“光翼”を5mほどにまで伸長させて大きく振るう斬撃を繰り出すハート3。この短時間で何度も思ってることだけど、当たれば即撃墜の斬撃に加え、4つの光球からの射砲撃弾幕がウザ過ぎる。こちらが倒れる方が先か、ハート3の神器が壊れるのが先か、もしくは奇跡的に神秘中毒に陥らない綱渡りを失敗して自滅する方が先か、それとも・・・・
(フィレスが神器封じの札を貼り付けることが出来るのが先か、ね)
――アクセルシューター――
「シューット!」
――ヴォルカニックスカッシャー――
「どりゃぁぁぁぁぁぁッ!」
――プラズマランサー――
「ファイアッ!」
――制圧せし氷狼――
「往きなさい!」
「鬱陶しい事この上ないとは、こういう事を言うのでしょうね!」
私やフェイトに攻撃が届かないように、なのはとアリサとフィレスが囮を買って出てくれた。ハート3はよっぽどさっきの私の妨害が頭にキてるのか攻撃がかなり大雑把になっていて、3人の放つ攻撃に一応は迎撃するけど、アリサの真っ直ぐな斬撃以外の大半は直撃。まぁ、それでもまだ神器も壊れないし自滅もしてくれない。神器破壊は除外した方が良いかも。
「これもまた我慢比べってやつかな?『フェイト!』」
――雷牙神葬刃・十二連――
とにかくなのは達の弾幕のおかげで私はフェイトの隣に並ぶことが出来た。そして神秘カートリッジを2発ロードして、紅雷を纏わせた“キルシュブリューテ”を大きく横一線に振り払う。放つのは雷撃の斬撃12発で、全て綺麗に横一列に飛ぶ。
『え? あ、はいっ!』
――プラズマランサー――
フェイトは私の斬撃の軌道を見て少し戸惑ったよう。そりゃそうか。私の斬撃はハート3とは全く別の方角に向かってるし。それでもフェイトは迷いに時間を掛けることなく、私の斬撃と同じ速度・高度・軌道で8本と発射してくれた。
フェイトに「ダンケ・シェーン、フェイト♪」お礼を言いつつその場で旋回、“キルシュブリューテ”全体を雷撃の魔力刀へと変化させる。フェイトやアリサのフルドライブの魔力刃のように数mと伸長させて・・・
「ハート3! この一撃はとっても強力よ! 避けた方が良いんじゃないかしらね! 別に私はそれでも良いし♪ 少しでも怖いと感じたらどうぞお逃げなさいな!」
――雷牙吼霆刃――
挑発しつつハート3へ目掛けて横一線に振るう。紅雷の魔力刀は先に放っておいた神葬刃やフェイトのランサーを取り込んでさらに巨大にして強大化、必殺の雷撃刀となった。威力は私の有する雷撃系では最強だ。
「真っ向から砕いてくれる!」
――ヘレヴフラッシュ――
両腕の“光翼”を魔力剣として私の一撃へ向けて振り下ろした。衝突する私の雷撃刀とハート3の光翼剣。ついさっきまでならこちらの攻撃が一方的に潰されてたけど、「なにっ・・・!?」ハート3が驚愕の声を上げるほどに拮抗する。
「私とフェイト2人分の魔力と神秘を圧縮したからね! そう容易く砕けないわよ!」
これまではみんなバラバラの魔力と神秘による攻撃だったから、たとえ同時着弾であっても迎撃されてしまってた。だけど今の一撃は2人だけとは言え圧縮したもの。そう易々迎撃されない。
「(もっと早く使っておけば良かったなぁ・・・。ま、タイミングが合わずに失敗するのが目に見えてるけど)さぁさぁ、焼かれない内に逃げればぁ~?」
「この程度・・・!」
挑発に乗ってるハート3はあくまで真っ向から私を潰したいようで、派手に放電する空間の中で頑張り続ける。
「おおおおおおおおおおッ!」
「シュヴァリエルさんから授けられたこの神器に敗北はな――」
「あれ・・・?」
拮抗していた私の雷撃刀が大爆発を起こして、ハート3を呑み込んだ。予定とは少し違ったけど、今の爆発の直撃はかなり効いたと思う。それにこれまでのみんなの攻撃を受けたのも大きい。たぶんこれが最後のチャンス。
「フィレス、今! なのは達は弾幕!」
「はい!デュック・グラス! 私に最大の力を!」
フィレスの両腕と同化してる大剣と盾が一旦冷気化。すぐさま再構築される。その形は手で持つタイプの大剣と六角形の盾。あと腰にショートソードが2振り。
「「「はいっ!」」」
「あ・・ぐ・・・ぅぐ・・・ぐぉ・・・」
そんな中でようやく姿を現したハート3。全身からバチバチと放電していて、顔面に青筋を幾つも浮かべてギリギリと歯軋りしてるし、キッと充血してる目で私を睨んでくる。とんでもない殺気。あぁ、怖い、怖い。
――ショートバスター――
「シューット!」
――プラズマバレット――
「ファイア!」
――フレイムバレット――
「行けッ!」
そんなハート3へと突っ込むフィレスを追い越すなのは達の攻撃。ハート3は「邪魔をするな!」怒声を叩き付けて、両腕の“光翼”を向けた。そして放つのは砲撃20連射。なのは達の攻撃は誘導操作が出来る射撃魔法だ。ジグザグに曲がって砲撃を躱す。
『3人とも。強力な1発をスタンバイ!』
“光翼”の砲撃に何発か迎撃されたけど、それでも10発以上が生き残ってハート3へと着弾、魔力爆発が起きる。それでもなおハート3は砲撃を止めない。フィレスは迫る砲撃を高機動で回避しつつ、当たる砲撃は盾で防ぐ・・・んじゃなくて軌道を逸らした。
(薄い氷の盾による光の屈折を利用したわけか。光翼より格は落ちるけどさすがはデュック・グラス。神器だからこそ出来る芸当ね)
フィレスはさら右手に持つ大剣を投擲した。ハート3は「氷の剣などに・・・!」って苛立ちを見せて迎撃しようとしたら、「と、思ったら私の思う壺よ」フィレスは指を鳴らす。すると投擲した剣が爆破されて冷気の煙幕となった。フィレスは続けて腰に提げてた2振りのショートソードを持ち、氷の盾を踏むようにしてその冷気の煙幕に突っ込んだ。
――爆ぜる凍煙・穿つ氷刃――
直後、煙幕からさらに冷気の煙幕が吹き出したかと思えば、巨大な氷の剣が煙幕の中から何十本と全方位から突き出して来た。とんでもない魔術を発動したフィレスに私は思わず「アオスゲツァイヒネト・・・!」素晴らしい、と拍手を贈る。
「おのれぇぇぇぇぇ! 放せッ、放せぇぇぇぇぇぇぇーーーーッ!」
「逃がさない! リンドヴルムとの長き因縁を断ち切ることが出来る最大のチャンス! たとえ後日、私の体に幾日も不調が続いたとしても・・・! ここで必ずあなたを討つ!」
まるでウニのような形の氷塊の隙間から、自分を凍らせて取り込もうとする氷塊から逃れようとするハート3と、彼女を必死に押さえ込むフィレスの姿が見えた。“光翼”の熱によって氷塊が蒸発し始めてるし、フィレス自身の両手からも蒸気が出てる。押さえ込める時間は短い。
『騎士シャルロッテ! ハート3の防具とアゾートの封印に成功しました!』
『ダンケ・シェーン! いつでも退避できるようにしておいてフィレス!』
『了解! もう少しハート3を押さえ込んでおきます!』
残り3発のカートリッジの内1発をロード。横目に集束砲をスタンバイしてるなのは達の様子を見る。私も急いで属性複合術式をスタンバイ。刀身に炎熱・氷雪・風嵐・雷撃・閃光・闇黒、計6つの属性魔力を段々にして付加。
「滅牙 翔破六天刃!」
頭上に掲げた“キルシュブリューテ”を振り下ろす。刀身から放つのは6属性6刃。
「私はハート3! 私が新たな3を拝命した以上、ドラゴンハートに敗北は許さない!」
――スファーオール――
「「「「ッ!?」」」」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」
それはまるで斬撃の嵐。9mほどにまで伸長された両腕や背中の“光翼”の斬撃が氷塊を砕き、フィレスを薙ぎ払い、私たちの周囲の城や塔をバラバラに砕いては斬り裂いた。
――ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティーク――
『ジャスミン! フィレスの安否確認を! なのは達はそのまま待機! 危なくなったら回避!』
背中に展開してる真紅の魔力翼ルビーン・フリューゲルを大きく羽ばたかせてハート3に突撃しつつそれぞれに指示を出す。
「おおおおおおおおおおおおおッ!」
「シャルロッテ・フライハイトぉぉぉぉぉぉーーーーーーーッ!」
――シャヴィットカヴォード――
幸運にも斬撃の嵐を止めて私ひとりに標的を絞ってくれたハート3。長さを元に戻した両腕と同化してる“光翼”の先端から砲撃を連射してきた。それらを躱しつつ距離を詰めていくんだけど、「しまっ・・・!」そんな中で紅翼が両方撃ち抜かれた。飛翔術式を失った私は当然墜落することに。ハート3と目が合う。彼女の表情がパァッと輝きを見せた。口の動きで、私の勝ちです、そう勝利を確信したことが判った。
――シュヴァーベン・マギークライス――
魔法陣を展開して足場とする。魔法陣を蹴って方向転換することで砲撃を躱す。さらに魔法陣を連続展開して躱し続けるんだけど、砲速がどんどん速くなってく。ルビーン・フリューゲルじゃ避けきれない。今の回避行動もいつまで保つか判らない。だったら・・・
『イリス。ちょっと辛いかも知んないけど・・・』
『ドンと来てください! ここまで来たらどこまでも!』
『ありがとね、イリス』
――フォイアロートフェーニクス――
イリスの幼い身体や未成熟なリンカーコアに多大な負担が掛かるから使いたくなかったけど、フィレスが倒れた以上は私がなんとかしないと。背中から薄く長いひし形の魔力翼を8枚と展開。“界律の守護神”時代にルシルの空戦形態ヘルモーズを基に編み出した、私独自の空戦形態を発動した。
『合図出したら問答無用で発射ね!』
なのは達にさらに指示を出して、砲撃弾幕の中を突っ切る中「キルシュブリューテ!」神秘カートリッジを1発ロード。ハート3は「何故当たらない!」私の接近に苛立ちを見せて、消失してた光球を4つとまた展開。それらからの射砲撃も加わって、3ケタ近い攻撃が私に襲いかかって来た。
「これで幕としようか!」
「そうですね! 私も・・・この時を待っていた!」
ハート3の背中の“光翼”が放射状に開いた。私の接近を許してる時点な無駄な悪足掻き。そう思ったんだけど、それが間違い。私に向けられたままの両腕の“光翼”の間に光球が1つ生まれた。
(そんな! 放てるだけの光をいつ吸収してたの!?)
さっきの吸収形態だけじゃ放てるだけの光は吸収できていないはず。疑問は尽きないけど、今はまず高度を保ったまま射線上より退避を優先。
「逃がさない!」
――神罰・ネカマーコハヴ――
目の前が真っ白になる。放たれた神罰クラスの神秘砲撃。キチンと躱したのにその衝撃波で「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」錐もみ状態になる。やっぱり直撃は即死だ、これ。
――シャヴィットカヴォード――
体勢を立て直そうとしてる時、通常の砲撃が放たれてきた。体勢を立て直すより早く足元に魔法陣を1枚と展開、蹴ることで無理やり方向転換して回避。すぐにハート3へと再突撃。一度集束砲を放てば、太陽光や月光を吸収するのに時間が掛かるからもう気にしないで良い。
「さっきの続きよ、ハート3!」
――炎牙崩爆刃・八連――
刀身に火炎を纏わせた“キルシュブリューテ”を振るうことで放った火炎斬撃の八連撃。“光翼”の砲撃弾幕に迎撃されるも連続で放ちながらも少しずつハート3に接近。
『なのは、アリサ、フェイト、撃って!』
ここで、3人に集束砲を撃つように指示する。
「「「ブレイカァァァァァーーーーーーーッッ!!」」」
――トリプルブレイカー――
スターライトブレイカー、プラズマザンバー、ガラティーンブレイカー、3つの集束砲がハート3へ向かう。私も「飛刃!」スキルとしての絶対切断に“ドラウプニル”や神秘カートリッジの神秘を加えた一撃を放つ。
「ズリハッドシェメッシュナドバヌート!!」
背中だけじゃなく両腕の“光翼”が大きく開いたかと思えば球体状の光の膜がハート3を覆い、直径10mほどにまで拡大。私たちの攻撃はその光膜に着弾、防がれた。でも完全に私たちの攻撃を防御できたわけじゃない。私の斬撃は貫通してハート3に直撃、なのは達のトリプルブレイカーの魔力爆発も貫通して膜内で大爆発、ハート3が呑み込まれた。
『すみません! カートリッジが無くなりました!』
『同じくです・・・!』
『あたしも!』
なのは達が戦力外となった。ううん、正確には最後にロードしたカートリッジの神秘付加効果が消えるまではまだ大丈夫なはず。
「(早くキメないと・・・)今度こそ・・・!」
“キルシュブリューテ”の神秘カートリッジ最後の1発を連続ロードして、濛々と立ち上る爆煙の中へと突っ込む。“光翼”の神秘は戦闘開始時に比べればかなり弱ってるけど、それでもまだどこに在るのかくらいは探知できるだけの強さを持ってる。
「ハート3!!」
「げほっ、ごほっ、剣神・・・!」
――ヘレヴフラッシュ――
――絶対切断―――
両腕の“光翼”による斬撃。こちらは刀身に神秘付加アリの絶対切断効果を有した“キルシュブリューテ”による斬撃。“光翼”の斬撃を躱しつつハート3と肉薄して「せいやッ!」振るう。彼女には”キャルタンクリーヴ“っていう、身に付けている間は一切のダメージ無効という冗談みたいな能力を持ってる。
「っぐ・・・! 効かない事くらい理解しているでしょう!」
「ええ、百も承知よ!」
それでも攻撃はやめない。振るった“キルシュブリューテ”がハート3の体を袈裟切りに斬り裂いた。手応えは確かなのに傷1つとして付いてない。ニッと狂気の笑みを浮かべる彼女は、両腕の“光翼”の形を人の手のような物へと変形させた。
「しまっ・・・!」
私を握り潰そうとする“光翼”の手の片方を“キルシュブリューテ”で防いだけど、5本の爪によって空戦形態の要の翼を半分失った。ガクッと体勢が崩れる。ハート3は「もう片方は鞘で防ぎますかぁ?」狂気より喜色が上回った笑みを浮かべた。
(防御! ダメ、今すぐ離脱を・・・!)
『シャルロッテ様! 使ってください!』
イリスから念話。確かにアレを使えば“光翼”の一撃を防げるだろうけど。イリスへの負担は空戦形態以上に大きい。
『早く! シャルロッテ様! どの道このままじゃわたしもシャルロッテ様も死んでしまいます!』
「『・・・イリス、ごめん!』・・・トロイメライ!!」
首飾りとして隠し持っていた指環を起動して、ラピスラズリ色に輝く刀身を持つデバイス型神器へと変化させる。私は左手に持った“トロイメライ”でもう片方の手を斬りつけて弾き返す。
「な・・・っ!?」
「奥の手中の奥の手、このトロイメライを私に使わせたこと・・・後悔させてやるわ・・・! トロイメライ、カートリッジロード!」
落下しながら“トロイメライ”の 6連式シリンダーに装填されてる通常カートリッジを3発と連続ロードした。
・―・―・回想よ・―・―・
管理局の有する次元航行艦の1隻のジャスミンに乗艦して、機動一課や特別技能捜査課の面々と一緒にロストロギア専門のコレクター・リンドヴルムの本拠地が在る世界へと向かうことになった。メンバーそれぞれが好きなように待機してる中・・・
『イリス。ちょっと交代してくれないかな?』
なのは達と喋ってるイリスへとそうお願いすると、『いいですよ』快く即答してくれたイリスに『ありがとう』お礼を言って、早速イリスの人格と私の人格を交代。そして私とはやての間に座るルシルが着てる制服の上着の裾をちょんっと引っ張る。
『ルシル。ちょっと私とデートしてくれる?』
ルシルに念話と繋げると、「『イリス・・・じゃなくてシャルか。判った』すまない、ちょっと席を外すよ」みんなに断りを入れてから席を立った。
「私もお花摘みに行ってきま~す」
ルシルの後を追ってレクリエーションルームを出る。通路でルシルと合流して少しだけ歩く。ある程度レクリエーションルームから距離を取ったところで、「リンドヴルムとの戦いについてなんだけどね」話しかける。
「シュヴァリエル、天使化するホムンクルス・ハート2、正直この2人だけで私たちの戦力はいっぱいっぱいだと思うの」
「だと思います。戦力的にはかなりギリギリかと」
『リンドヴルム首領。本当にそんなのが居るとすれば、たぶん普通の人間じゃない』
「??・・・あぁ・・・『それも同感。少し逸れるが、リアンシェルトの言だが、各エグリゴリは俺を殺すという気分になるまでは飽きるまで次元世界で勝手気ままに過ごすのだと言う』」
イリスに今はまだ伝えたくない情報を遮断するため、彼女には繋がらないように細工した念話で話の続きに入るんだけど、ルシルからの敬語がくすぐったいって、ちょっと逸れたことを考えちゃう。。一応、古代の騎士・ベルカの英雄・最強の剣騎士っていう畏敬の念を抱かれてる私だから、ルシルも口頭だと私に敬語、だけど念話だと普通の口調だ。うん、やっぱりこっちの方がしっくり来るし対等って感じで嬉しい。
『なにそれ! それってまるでルシルを玩んでるっていうか、なんか嫌な感じ!』
『ありがとう、シャル。で、だ。勝手気ままに過ごすとは言え、たとえ狂っていようともシュヴァリエルがただの人間に下るような性格なんかじゃない。奴が従うに値する存在だと思えるような奴が、リンドヴルムの首領なんだろうな』
『だよね。シュヴァリエルやハート2との戦闘で満身創痍で疲労困憊になってそうな私たちに、そんな奴を止められるとは思えない。ルシル、たとえあなたが本拠地の神器から全ての神秘と魔力を吸収したとしても・・・』
『今の未成熟な俺では辛勝だろうな』
「『うん』・・・だからね、私にも武器型の神器を授けてほしい」
ルシルを呼び出したのはこの為だ。私の戦力を強化しておきたい。オリジナル神器は、ルシルがすでにコード・イドゥンっていう魔力吸収術式によって魔力も神秘も吸収されてるから、単なる美術品レべルにまで格落ちしてるから使えない。
(フライハイト家の家宝扱いな断刀キルシュブリューテ・レプリカは、ルシルから魔力を貰わないと本領を発揮できないから持って来てない。なら後は、ルシルから複製神器を借りるしかない)
「・・・騎士シャルロッテ。あなたがイリスの体を借りて魔術師化したとしても、神器を扱うその大きな負担はイリスの体に掛かります。魔術師としての観点から、カローラ姉妹は魔力炉機能を有したリンカーコアを持っているので高位の武器型神器も使えます。ですが、イリスのはあくまでリンカーコア。ハート3に決定打を与えられるだけの高位神器の使用は危険です。神秘カートリッジとドラウプニルだけでなんとかしてほしいとしか・・・」
『シャルロッテ様、ルシル! ちょっといいですか!』
「なに?」「なんだ?」
『シャルロッテ様、神器使ってください! ルシル、神器貸して!』
「なぁ、イリス。さっきの話は聞いていただろ? 武器型の複製神器は補助系の神器以上に神秘が強い。君がフィレスくらいの歳ならリンカーコアでも多少の負担はあるだろうが使えると思う。しかし今の未成熟な君の体やリンカーコアに与える負担はかなり大きい。下手をすれば数日、いや数ヵ月くらい魔法が使用できないかもしれない」
『でも・・・。あ、断刀キルシュブリューテも神器なんだよね! わたしの体でも十分使えたじゃない!』
「神器としての能力を解放しなかったからだ。だからやめろ、イリス。君には無理だ。今の君に神器は・・・使えない」
確かにアムティス戦の時は魔力不足だったから、“キルシュブリューテ・レプリカ”を解放できなかった。だから使えたしそんなに負担も掛からなかった。呆れと心配、両方の感情でイリスを諭すルシル。で、私と言えばあまりの自分勝手さにヘコんでた。魔術師化できるから、私が戦うから、そんな事ばかり考えてイリスの体のことをスルーしてた。
「『ごめんね、イリス。私・・・』」
口頭と念話両方でイリスに謝ったら『謝罪は無用なのです! ルシル、それでも良いから神器貸して!』って彼女の意思は私以上に固かった。それから数分、ルシルと私で説得をしてみたんだけど、イリスは神器を使うって言って聞かない。
「・・・はぁ。我が手に携えしは確かなる幻想」
ルシルが詠唱。そして右手に「っ!!」とても懐かしい一振りの刀が現れた。鼻の奥がツンっとなる。
『ルシル。これ、神器? どう見てもアームドデバイスなんだけど・・・』
「トロイ・・・メライ・・・!」
震える両手でルシルの手から“トロイメライ”を取って、鞘から刀身を半ばくらいまで引き抜く。綺麗なラピスラズリに輝く刀身に目が奪われる。
『トロイメライ・・・? それがこのデバイスの銘ですか・・・?』
「ええ」
“トロイメライ”。私の最初で最後のデバイス。“界律の守護神”だった頃、先の次元世界で私と短い時間ながらも共に戦った相棒だ。ただのデバイスだった“トロイメライ”だったけど、この“トロイメライ”からは強力な神秘が放たれてる。
(あぁ、そうか。複製されてブレイザブリクから具現化された物は神器化するんだっけ)
なんの変哲もない普通の武器でも、一度“神々の宝庫”に登録されて具現されれば、神秘を含んだ魔力で構築されるため神器化する。“トロイメライ”も例に漏れずに神器化しちゃってるわけだ。
「イリス。苦しくないか? 」
『えっと・・・うん、ちょっと』
ルシルの問いに答えるイリス。ちょっと、って言ってるけど、声色からして無理してるって判る。私はすぐに「やっぱダメ!」“トロイメライ”をルシルに押し返す。ルシルは受け取った“トロイメライ”を肩に担いで「そういうわけだ。リンドヴルム首領も俺ひとりでどうにかする」そう言った。
『これくらい・・・!』
『へ・・・?』「ん?」
右手が勝手に動いてルシルの手から“トロイメライ”を奪い取った。イリスに体の支配権が戻っちゃった。ルシルが「返すんだ!」取り返そうとするけど、イリスは「大丈夫だから!」返そうとしないで、あろうことか鞘に刀身を納めた上で局の制服であるブラウス、さらにその下に着てる下着のキャミソール内に“トロイメライ”を突っ込んだ。
「取れるものなら取ってみなさい! 出来るならねルシル!」
ちょうど握るための柄が胸の間。イリスから“トロイメライ”を取り戻すためには、ルシルが下着であるキャミソールの中に手を突っ込み、柄を手に取って引き抜く必要がある。
(こ、これは! 下手に手を突っ込めばセクハラと見なされ、ルシルはイリスに弱みを握られることに! でも、手を突っ込まないと取り返せない! イリス、なんて恐ろし――)
「あーらよっと」
「ひゃあん!?」
ルシルは一切の躊躇なく“トロイメライ”をイリスのキャミソールの中から引き抜いた。うん、ブラウスの裾から飛び出してる鞘の方を掴んで引っ張りだすことで。そうだよね。“トロイメライ”はイリスの身長――138cmに合わせて1mほどの長さになってる。柄が胸の合間に来るようにすれば、必然的に鞘が服から飛び出すもん。そっちから抜けばそりゃ簡単だよね。
『あ~ん、シャルロッテ様からもルシルを説得してくださいぃ~』
胸から“トロイメライ”を無理やり抜かれたためかペタンと女の子座りしてるイリスの体の支配権がまた私に戻った。
「ええ~・・・」
今度はイリスじゃなくてルシルを説得しなければならなくなった。
「あのさ、ルシル。イリスが使っても良いって言ってるんだから、その・・・」
『ルシルぅ~、お願いだよ~』
私とイリスからの説得を続けることまた数分。ルシルはようやく「判った」折れてくれた。
「騎士シャルロッテ。いいですか、トロイメライを使うのは本当に危険な時だけです。『無視したら本気で許さんぞ』」
「判ってる『私はあくまで幻のような存在。現在を生きるイリスの体を最優先にするよ』」
ルシルから手渡された“トロイメライ”のシリンダーを見る。やっぱりカートリッジが入ってなかった。そんな私に「通常のカートリッジで問題ありませんよ」ルシルはそう言った。聴けば通常のカートリッジでもロードすれば、神器としての“トロイメライ”が勝手に神秘が付加された魔力にしてくれるとのこと。
「ありがとう、ルシル。ありがとう、イリス」
「はい『忘れるなよ、シャル。イリスにとって神器は毒だ』」
『頑張りましょう、シャルロッテ様!』
・―・―・終わりよ~・―・―・
――真紅の両翼――
背中から魔力翼を展開して、ハート3へと向かって急上昇。そしてカートリッジをロードした“トロイメライ”による「炎牙・・・月閃刃!」を彼女に叩き込む。
「悪足掻きなど見っとも無い・・・!」
ハート3は右腕の“光翼”を盾にすることで防御したけれど、私は“トロイメライ”の刀身に纏ったままの炎を爆発させる。ハート3への一方的な爆炎と爆風によるダメージ狙い。私は右手に持つ“キルシュブリューテ”を振るって黒煙の中へと「飛刃・翔舞三閃!」絶対切断の刃を放つ。間髪入れずに左手の“トロイメライ”を振るって「プラス五閃!」飛刃をさらに追加。次いで私は両翼を羽ばたかせて飛刃を追いかける。
「馬鹿の一つ覚えか!」
黒煙を斬り裂いてハート3へと向かった3つの飛刃は、彼女が振り払った右腕の“光翼”で弾き返された。次にさっき以上の神秘を有する飛刃2閃を左腕の“光翼”で弾き返そうとしたけど、「なに・・・!?」逆に左腕が弾かれ、直後の3閃への対処のために掲げた右腕の“光翼”をも弾かれ、懐ががら空きになった。
「おおおおおおおおおおおッ!『なのは、アリサ、フェイト! 最後の一撃スタンバイ!』」
――絶対切断――
両手に持つ“キルシュブリューテ”と“トロイメライ”による十字斬りをハート3に叩き込むけど、そのまま斬り払うことなく二刀で彼女を押さえ込む。
『今ッ!』
『『行きます!』』『行くわよ!』
――エクセリオンバスターA.C.S――
――デストラクト・ディターレント――
――ジェットザンバーA.C.S――
なのは達がハート3の背後へと突撃を掛けた。彼女は私に集中し過ぎていてなのは達に気付かなかったようで、3人のデバイスの魔力刃が背中に刺さったところで気付き、「ガキどもが、まだ抗うか!」怒声を上げた。
『自身の防御を優先に・・・、撃って!』
「エクセリオンバスタァァァァァーーーーーッ!」
「バーストアップ!」
「バルディッシュ!」
桜色の閃光、紅蓮の爆炎、黄金の雷光が溶け込むようにして大爆発。私は前面に最高位の防性術式のハイリヒ・フライハイトを展開することで魔力爆発を防御。その衝撃で大きく吹き飛ばされる中、『3人とも、大丈夫!?』なのは達の安否を確認する。
『『『なんとか大丈夫です・・・!』』』
張りはあるけど疲労困憊って風な声色で無事を伝えてくれたなのは達。これでなのは達は正真正銘に戦力外となった。あと戦えるのは私だけ。“キルシュブリューテ”を待機モードの指環に戻して、“トロイメライ”1本に絞る。刀身を鞘に納め、カートリッジを残り3発をロード。
『う、ぐぅ・・・うぅ・・・!』
イリスから苦悶の声が漏れた。だけど今は耐えてもらうしかない。せめてこの一撃を当てるまでは。そんな私の苦悩が伝わったみたいで、『大丈夫、です・・・! キメちゃってください・・・!』イリスから応援を受けた。
『・・・うんっ、ありがとう!』
――ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティーク――
――プリツァアソンテヴァ――
両翼を羽ばたかせて突撃。そしてハート3もまた光の鳥となって突撃して来た。右翼だけを大きく羽ばたかせて回避行動。彼女はそのまま後方へと通り過ぎて行って、私が振り返った時にはすでにこちらに再突撃をしてた。
「やば、当たる・・・!」
――凍結せし巨いなる聖剣――
私とハート3を隔てるように空から降って来たのは、幅が3mほどある強大な冷気の剣。一瞬の沈黙の後、その剣からハート3が飛び出して来た。
「っ!・・・ありがとう、フィレス!」
ハート3はカチンコチンに凍り付いていて、最早ただの的と化してた。足元に魔法陣を展開して足場とする。
「牢刃・・・――」
そんな彼女が私の攻撃範囲に入ったことで・・・
「弧舞三閃!!」
絶対切断効果を有した“トロイメライ”の刀身自体と2つの魔力刃による三太刀同時斬撃をハート3に打ち込んだ。砕ける氷の破片が太陽の明かりを反射して眩しいけど、そんな氷の破片と一緒に墜落して行ったハート3をしっかり視認。それを追って急降下した私は・・・
「・・・ふぅ。こちらシャルロッテ。ハート3の撃破を確認。私たちの・・・勝ちよ!」
『はふぅ。・・・お疲れ様でした、シャルロッテ様』
『ええ、イリスも良く頑張ってくれたよ。ありがとね』
瓦礫に倒れ伏した意識が完全に飛んでるハート3、裸の少女(感じ取れる神秘からして光翼の人間形態ね)、それにへし折れた“キャルタンクリーヴ”も確認。こうして神器完全武装のハート3との戦いは、私たちの勝利で幕を閉じた。
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