| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Bad End World

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

五夜目

 
前書き
現実は残酷なもので 

 
ガチャリ

開けられた扉から光が射す。
もう朝なのかと眼を擦るとそこにいたのは主人の姿。

「ホタル、今日も頼むよ」
「かしこまりました」

まだ朦朧とした意識の中聴こえた会話。
何の話だろうか。

「あ、アキレア!おはよう」
「はぁ?」
「あ、吃驚したかな」

俺の顔を覗き込む整った顔。
細い身体から伸びる腕は純白のドレスに
溶け込みそうなくらい白い。

誰なんだろうか。

きょとんとしていると少女が口を開いた。

「ひはっ、やっぱりそうなっちゃうよね」
「…どちら様で…?」
「僕だよぉ、ホ・タ・ル!」
「ホタル!?」

ホタルだと言う彼(彼女?)はにへーっと
笑った。

確かに、少しつり上がった紫の瞳に
首下の左右に結ばれた深いエメラルドグリーンの髪もホタルと同じものだ。

「どうして…?」
「ん?この格好?」
「婚約者のフリをしてるの」

彼が話すには今夜舞踏会があるらしく、
そこに婚約者として出席してほしいとのことだった。
ここの主人は決まった人を作りたくないがためにこのようなことをしているのだと。

「酷い話だよね、今まで散々な扱いを受けて挙句婚約者のフリをしろだって。僕は、一応は男の子なのに。」

ムスッとした表情でいうホタル。

「…”一族の生き残り”に見られたら一生の恥だよ…」

呟かれた言葉は扉から入った風にかき消された。 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧