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アバンチュール

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第四章

「むしろそれ位の浮気心がないと」
「心配になるって言ってたわね」
「そうだったわね」
「だからよ」
「それでなのね」
「ええ、浮気も少しだけなら」
 この娘の叔父さんみたいな無茶苦茶なものは論外だけれどだ、私は定食の御飯を食べながら彼に言った。
「いいわ」
「うちの叔父さんみたいなのはね」
 この娘も自分から言った。
「どうやら五回目になりそうだし」
「離婚?」
「何しろ手を出しているのが一人じゃなかったのよ」
「あら、それはまた」
「三人いるから」
「またお盛んね」
「パチンコ屋のアルバイトさんとお店のママとホステスさんね」
 話を聞いてあらためて凄いと思った、尊敬は出来ないけれど。
「それが一気にばれて修羅場なのよ」
「大変ね」
「根っからの浮気者だから、叔父さん」
「本当に壮絶な人ね」
「そんな人もいるけれど」
「浮気も少し位なら」
「許せるわよね」
 本当にほんの少し、見た位ならだ。私はかえって嬉しかった。それ位のことがないと男の人として怖いと思うから。
 そうした話をしてだ、あらためてだった。私は彼女に言った。
「叔父さんのことはもう?」
「匙を投げてるわ」
 こう笑って私に答えてくれた。
「一族全員がね」
「やっぱり」
「もう無頼派だから」
「懐かしい言葉ね」
「根っから浮気者はもう大変よ」
 周りが、というのだ。
「いい加減去勢して欲しいわ」
「それは幾ら何でも」
「本当にそう思うから」
 そこまでいくと、というのだ。そう話してだ。
 彼は私に自分の叔父さんがどんな人か詳しく話してくれた、私もそこまで聞くと流石にないと思うしかなかった。極端な浮気は。少し位なら二人の間のスパイスになっても。


アバンチュール   完


                        2015・1・25 
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