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クルタ

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第七章

「凄く可愛いぞ、今の御前」
「あら、妹に惚れたの?」
「馬鹿言え、何処にそんな兄貴がいるんだ」
 妹に惚れる兄がというのだ。
「いるかも知れないがな」
「世の中そうした人もいるしね」
「俺は違う、ずっとお風呂も一緒に入ってただろ」
「おトイレ入ったらいた、ってこともあったし」
「そんなのでどうしてそうした気持ちになるんだ」
 恋愛感情だのを抱くかというのだ。
「なる筈がないだろ」
「そうよね」
「ああ、だから安心しろ」
 そのことはというのだ。
「絶対にないからな」
「そのことはわかったわ」
「とにかくな」 
 あらためて言うラスルだった。
「御前その服でお店にいたら看板娘になるぞ」
「お店の」
「ああ、絶対にな」
 見間違えるまでのだ、まさに絶世の美女ならぬ美少女になったタハミーネならというのだ。
「何か歌に出て来るみたいな感じだからな」
「それでお店の売り上げが変わるならね」
「着るか」
「そうしてみるわね」
「やっぱりお店の売り上げがいいとな」
「借金もしなくて済むし」
「こうしてわざわざ首都まで出て売りに行かなくていいんだ」
 学校を休んでまでしてだ。
「それにお家の暮らしも楽になる」
「いいこと尽くめね」
「だからいいな、お父さんとお母さんにも話してな」
「ええ、これからはお店ではね」
「そのクルタでいろ、いいな」
「そうしてみるわね」
 タハミーネも頷いてだ、そしてだった。
 一旦元の服に着替えて村まで帰ってだ、兄と一緒に両親に事情を話すとそれでいいと言われた。実際にクルタ姿で店に立ってみると。
「景気よくなったわね」
「ああ、俺の言った通りだったな」
 ラスルは店の中でそのクルタ姿のタハミーネに言った。
「可愛い目立つ娘がいるとな」
「それだけで売り上げが違うのね」
「そうなんだよ、じゃあな」
「ええ、これからもね」
「その服でいろ、いいな」
「そうするわね」
 タハミーネはにこりと笑ってだ、兄に答えた。クルタ姿の彼女は今も普段の彼女とは別人と見間違うまでに可愛く奇麗だった。


クルタ   完


                         2015・10・30 
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