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『私とカッターナイフ』

作者:零那
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『安定剤』



常に情緒不安定だった気がする。
正常に生活していたとしても精神は異常だったりした。
いや、其れすらもう普通になっていた。
異常な自分にも違和感などもう何も無かった。

周りの大人達との争いは日々続いていた。
施設でも学校でも納得いかないことは逆らった。
何も考えず、納得しないまま従うだけの人間が嫌いだった。

周りから見れば其れは自己中なんだろう。
でもそんなのどう思われても関係無かった。
どうせ人生を共にするワケじゃ無い。

お互い何をしても何を言っても大した影響はない存在。
そんな人間ばかりだったから。
どうでも良かった。
放っといて欲しかった。
誰も関わってくれるな。

そんな感じだったけど、外部には大事な友達が居た。
組長も居る。
其れだけが、其のメンバーだけが、唯一大事な存在だった。

カッターナイフは御守り。
安定剤の役割。
でも、組長に怒られた。

いろいろあった施設生活と学校生活。
それもピリオドを打つことになった。
高校停学を繰り返し強制退学となった。

最後に卒業してしまう先輩に逢いに行く為、施設脱走。
約24時間の脱走事件。
それからの安定剤は先輩のくれた御守り。
いつかの為の連絡先。


覚えやすいように語呂合わせで教えてくれた家の電話番号。
それと、携帯電話は番号もアドレスも変えないと約束してくれた。
先輩は15年経つ今でも約束を貫いてくれてる。

次の施設留置でカッターナイフは持てないから卒業。
先輩の存在が安定剤になった。

時が経ち、施設から出所してカッターナイフは自然と身に着けていた。
やっぱり必要なのか?
必要なら無理に手放す必要はない。

社会に出て、今迄以上に理不尽な社会と大人を見る機会は増えた。
其の度に反発しては、どうにもならないと思い知る。
悔しさと情けなさと怒りでグシャグシャになる。

先輩は県外に居たので逢えない。
脱走事件の時みたいに甘えて迷惑かけるわけにはいかない。
一応、それくらい解るようになっていた。

カッターナイフは、また、リストカットの道具へと化した。
本当の意味での安定剤など無かったのかも知れない...

重症なのかもしれない...
本当は自分が思うよりもっと...


 
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