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風葬

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3部分:第三章


第三章

「布団を用意させてもらいますので。あとは食事ですが」
「はい」
「それもあります。麦と野菜の粥ですが」
 こうして私達はその麦と野菜や山芋の粥を食べてそのうえで一室に用意してもらった布団に入って休んだ。布団に入りそのうえで私は暗がりの中教授に対して声をかけた。
「どう思います?」
「どうとは?」
「この村自体のことです」
 私がまず教授に声をかけたのはこのことだった。
「この村について。どう思います?」
「正直驚いている」
 これが教授の返答だった。
「今頃こんな村があるとはな」
「ガスも水道もありませんでしたね」
「それももう滅多にない」
 これは本当にである。今頃そうした場所がこの日本にあるということも私達にとっては驚きだった。
「寺や神社もあることにはあるが」
「小さいですね」
「小さい村だからそれも当然か」
 教授はこうも考えていた。
「しかし。それにしても」
「何ですか?」
「いや、御老人が話していたことだ」
 先程の会話のことを話してきたのだった。
「時々手に入る肉か」
「それですね。何なんでしょうか」
「わからないな。魚を獲るのは確かに大変だが下の川にいければ獲れる」
「魚じゃないのは間違いないですね」
「猪や鳥やそうしたものでもない」
 これもわかることだった。狩りの話がそこでも話されたからだ。
「だったら何だ?本当に」
「わからないですね。けれど何か御老人のお話ですと」
「それが手に入るか」
 私達はこのことも話したのだった。
「余計にわからないがそれでもな」
「そうですね。とりあえず暫く様子を見ますか」
「あとは風葬だな」
 そのうえでここに来た本来の目的についても話をした。
「それについても御聞きしたいな」
「はい」
 そんな話をしてから私達は眠りに入った。翌日朝起きると昨夜の麦のお粥の残りをいたぢあた。当然老人と三人で食べた。その朝食を食べ終える老人は私達に対して静かに言ってきた。
「これからですが」
「何かありますか?」
「実は村で人が死にました」
 こう私達に話しだしたのだった。
「隣の婆さんが寿命で」
「お亡くなりになられたのですか」
「はい、まあ仕方のないことです」
 老人は明らかに寂しがっているがそれを達観で受け入れている顔になって私達に述べてくれた。それは歳、それに人生経験を見せてくれる顔であった。
 しかしそれと共にもう一つ何かがあるような。そうしたことも感じさせる不思議な、いや奇妙な顔を見せていた。何かが明らかにあるような。
「それにです」
「それに?」
「まあその話は後で。それでですね」 
 話を打ち消したうえでまた私達に言ってきたのだった。
「その婆さんの葬式ですが」
「あっ、はい」
「お葬式ですか」
 それを聞いて私達は目だけで合図をした。やった、と内心思ったと言えば不謹慎である。しかしそれでも目的が果たせることに喜んだのは事実である。
「そうです。宜しければ御一緒しませんか?」
「あの、ですが」
「宜しいのですか?」
 私達は自分の感情を必死に隠してそのうえで老人に尋ねた。
「私達の様な余所者をお招きしてもらって」
「それは」
「いえいえ、この村のしきたりでして」
 老人は軽く笑ってまた私達に話してきてくれた。
 
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