シュシュット
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第三章
「あの国の中でも」
「聞いた通りね、あとね」
「ええ、そのお店の人ね」
「何処におられるの?」
理恵子は智美に顔を向けて尋ねた。
「それで」
「ええと、いつもお店の中にいるけれど」
「金髪碧眼の人ね」
「そうよ、ご主人と二人でやってるけれど」
「呼んだかしら」
智美が周りを見回しているとだ、急にだった。
二人の左手から声がしてきた、そしてだった。
二人がその左手に顔を向けるとだ、小柄で金髪碧眼でだ。赤いエプロンと黒いズボンに青いシャツというシャツの中年の女の人がいた。
その女の人を見てだ、智美は微笑んで言った。
「あっ、おかみさん」
「ずっとお店の中にいたわよ」
「そうだったの?」
「カウンターから離れてお掃除してたの」
「そうだったのね」
「それで旦那はね」
智美が言う一緒にいる彼はというと。
「今は寄り合いに出ているから」
「それでいないの」
「今はね」
そうだというのだ。
「私一人なの。それでね」
「おかみさんもお掃除してて」
「見付からなかったのね」
「そういうことね」
「ええと、それで」
理恵子はおかみさんと話す智美に横から言って来た。
「この人がなのね」
「そう、カラーシャ族の人なの」
「そのアフガニスタンとの国境にいる」
「イスラム教徒でない人なのよ」
「パキスタンの人でも」
「そうなのよ」
「ううん、本当に日本に来ていてね」
そしてとだ、理恵子はその小柄な自分達よりもさらに七センチは背が低いであるその女の人を見つつ話した。
「お店やってるのね」
「そうなのよ」
「凄い話ね」
「いや、私もね」
おかみさんは理恵子に流暢な日本語で明るく話した。
「まさかこの国に来るなんてね」
「想像していなかったですか」
「旦那と結婚するまで」
「そうだったんですか」
「それがまあ縁があって気付いたら」
それでというのだ。
「ここにいたのよ」
「色々あってここまでですか」
「旦那のアイディアでイスラマバードまで出て」
パキスタンの首都のそこにというのだ。
「雑貨屋やってたらそこで日本の人と会って」
「それで、ですか」
「お店の場所も紹介してもらってね」
「それで今はですか」
「商売してるのよ」
日本でというのだ。
「見ての通りね」
「そうですか」
「日本語も覚えたのよ」
それで喋ることが出来るというのだ。
「この通りね」
「そうですか」
「ええ、それで何か買ってくかい?」
「そうですね、身の周りのものとか、あと」
ここでだ、ふと思ってだった。おかみさんは言ったのだった。
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