真田十勇士
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巻ノ十六 千利休その十
「大谷殿がです」
「幸村殿を御覧になられてですな」
「どう思われるか」
「そして幸村殿も」
利休は微笑んでそのうえで幸村に言った。
「その方をどう思われるか」
「その娘御と大谷殿を」
「そうです、お互いにどう思われるか」
「そして両家がですな」
真田家と大谷家がだ、武家の婚姻は家と家のことfでもあるからこのことも重要なのだ。
「どうであるか」
「そうした様々な事柄がありますが」
「それでもですか」
「大谷殿の娘御はとてもよき方です」
このことにはだ、利休は太鼓判を押した。
「心確かで利発、顔立ちもです」
「よいと」
「幸村殿に相応しい方です」
幸村のその整った顔を見ての言葉だ。
「極めて」
「そうなのですか」
「何でしたら私がお話を取次ぎますが」
幸村と吉継の娘の婚姻をというのだ。
「どうされますか」
「それは父上とお話してから」
「それからですか」
「はい、そうしたいのですが」
「そうですな、婚姻は家と家のこと」
利休も武家の者と付き合いが深い、それ故に武家の婚姻のことを深く知っている。そのうえでの言葉である。
「では」
「上田に帰り父上とお話したうえで」
「決められると」
「そうさせて頂きます」
「それでは」
「あらゆることは急ぐべきですが焦ってはならない」
幸村は利休に確かな声で述べた。
「ですから」
「わかりました、ではその様に」
「お願いします」
こう利休に言うのだった、そしてだった。 幸村は利休と共に茶を飲んだ。他にも様々な話をしてsろえからだった。
幸村主従は利休の屋敷を後にする時が来た、利休は自ら主従を屋敷の門まで見送った。その後ろには屋敷の者達がいる。
そうしてだ、幸村に微笑んでこう言ったのだった。
「またお会いしましょう」
「はい、是非」
幸村も利休に微笑んで言葉を返した。
「またお会いしましょう」
「これから上田に帰られるのですな」
「道は色々と考えたのですが」
大坂から都に戻る道、海から伊勢を通って進む道等だ。だが幸村はあれこれと考えてそのうえで決断したのだ。
「奈良を通ってです」
「そしてですか」
「そこから伊勢に入り」
「尾張に進まれますか」
「そこから美濃から信濃にと考えていますが」
「ではです」
幸村が考える道を聞いてだ、利休は幸村に提案した。その提案はというと。
「尾張から三河や駿河に入られてです」
「そのうえで」
「はい、徳川殿のご領地を見てです」
そうしてというのだ。
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