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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第105話 終わりが始まるようです


Side ネギ

「最大限分かり易くお話ししましょう。『完全なる世界』の計画は"世界の改変"……

"今ある世界を無に帰し、新たに世界を創る事"です。」


―――クルト提督がいとも簡単言ってのけた事を僕達の頭が理解出来たのは数秒後。

それを咀嚼し、反応として出せたのはたっぷり十秒以上の溜めの後だった。


「オイオイ、与太話も大概にしやがれ!『造物主』が世界を創ったってのは頷いとくが、

それが自分の世界が気に食わねぇから作り直す!?フザケすぎだろ!つーかテメェの目的は

なんだって言ってんだよ、誤魔化すな!」

「やれやれ、本当に気の短い……私が『完全なる世界』から受けた指令はネギ君の排除でした。」

「はい……!?あんたやっぱり……!」

「待ってください、朝倉さん。」


提督がまたしてもサラッと言った"僕の排除"に朝倉さんが反応するけれど、のどかさんがそれを

制して"いどのえにっき"を再び広げる。それが自分の真意を確かめる為だと気づいた提督は

驚嘆したような顔を見せる。


「貴方は今『完全なる世界』にと言いましたね。つまり、あなたの目的は他にある。」

「フフフ、流石はネギ君のパートナー、冷静で優秀だ。」

「そ、そんな、パートナーだなんt「次に『協力者』から受けた指令はネギ君の……"覚醒"。」

「覚醒、って……まさかその為に先生を闇堕ちさせようとしたってのか!?」

「正確には『闇の魔法(マギア・エレベア)』の強化、と言った所でしょうか。尤も、ネギ君が

堕ちてしまうなどと彼は微塵も考えてはいませんでしたが。」


新たに現れた『完全なる世界』の"協力者"なる存在。三人を盗み見ると、朝倉さんは提督を

見据えて構えたまま、のどかさんはくねくね悶え、千雨さんだけが追い詰められた様な顔を

している。・・・その人物の重要性に気付いたのは千雨さんだけだったけれど、提督に

聞く間もなくこちらの最初の質問に応えられてしまう。


「そして私は……"君の可能性に賭けた"、と言う所でしょうか。」

「「「………………は?」」」

「僕の、可能性……?」


もう何度目か、僕達の考え得る可能性とは180度変わって明後日になったくらいの

意味不明な提督の発言を完全に理解する事も出来なくなり固まってしまう。

それを見た提督は心底納得の行かない顔で溜息をつく。


「無条件の信頼も苦しいモノですが、成程……無用な疑いをここまでかけられるのも悲しい。」

「いや、疑いってゆーか……で、あんたは先生に何を賭けたの?」

「それこそが私の、"彼等の計画を止める"と言う目的の是非と成功を賭けたのです。」

「先生の協力を取り付ける為にこんな事したってのか?逆効果にも程があるぞ!」

「残念ながら、既に手段を選べる状況ではないのですよ。君なら分かりますね?」

「……ええ。と言っても、勘の域を出ない事だらけでしたが。」


漸く元の思考を取り戻せた僕はその"勘"を働かせて、今の状況を整理する。

僕を追い詰めるだけで攻撃して来ないどころか自分の死さえ厭わないで無抵抗に攻撃を受け、

命令だからと自分の命と目的さえ賭けに乗せる。大丈夫だと言われようがそれで自分の命を

捨てる忠誠心・・・いや信頼か?どちらにしろ、僅かに手に入れた彼の情報から推測した結果、

信頼を向ける相手は決まっている。それは……僕が考えていた最悪のシナリオと合致してしまう。


「まだ僕の敵(Y)目標(β)を聞いていませんが……貴方と道を共にする事はありません。」

「っちょ、ネギ君!?そんな簡単に……!」

「ほう、それはまた急な。何故ですか?」

「……あなたが、その"協力者"の掌の上だからですよ。」


僕が誘いを拒否しても僅かに眉を顰めただけで、提督は表情をほぼ変えず頷いた。


「成程。しかし勘違いをしてはいけない。それは私も承知の上でこうしている。故に

君なのですよ、ネギ君。君だけが……彼等の予想の外を行く唯一の存在だ。」

「だったら尚更です。少しでも自由に動けた方が"協力者"とやらの裏をかけるでしょう。」

「ふー……考えを変える気は無いようですね、交渉決裂ですか。ではお好きにしなさい。」

「そうさせて貰います。皆さん、行きましょう。」


提督に離別を伝えて、踵を返す。僕らが"協力者"を倒そうとするなら提督の・・・MMの戦力が

必要になるけれど、僕らの目的は地球に帰る事。だから、これで良いはずだ。


「ほ、本当にいいのか?後ろからサクッと来たりしねぇか?」

「しませんしません。貴方達とはまた会う事になりますからね。」

「そうならない事を祈ります。」


・・・まさかとは思ったけれど、千雨さんの一言で心配になり、一応後ろを気にしながら

部屋を去る。皆がおっかなびっくり僕のあとに続いて扉が閉まるまで、提督は薄ら笑いを

消さなかった。これであとは、先行している皆と合流して―――

ガクッ
「う……?」

「せ、せんせー!?」

「オイ、緊張の糸が切れたのか?って、お、ちょ、朝倉!代わってくれ!」

「うわわ!千雨ちゃんミニモードなのに早いからだよ!」


思ったよりも体にダメージがあったのか、廊下を少し歩いた所で倒れ込んでしまい、のどかさんと

千雨さんに支えられてしまう。が、ロリ千雨さんでは支えきれず朝倉さんが慌てて入ってくれた。

くそっ、まだこれからが大変なのに身体に力が入らない。


「いいからネギ君、一度元に戻って。あたし達が合流地点まで運んであげるから!」

「で、でもそれだと襲われたとk「いいから早くしろ!時間ねぇんだよ!」むがっ!?」
ポンッ!

千雨さんに無理矢理子供化の魔法薬を飲まされ、元の姿に戻されてしまうと更に体の力が

抜けてしまい、完全に体を二人に預ける形になってしまった。


「うぅ……情けない。」

「今更何を言ってんだ。あんたが情けねーのはみんな知ってるよ。さー出発!」

「酷くないですか千雨さ
ドドォオオオオオン!!
うわぁっ!?」

「な、ななななんだ、地震か!?」


朝倉さんにおぶられ歩き出したと同時、とても大きな揺れが一度だけ起こった。

地震だとしたらあまりに不自然で思わず外を見ると――


「あか、るい……!?」

「いや違う、あれは空中に映像が写ってんだ!!」
ザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――!!
【―――――魔法世界の諸君、こんばんは。良い夜だな。】


宙に浮かんだ巨大なスクリーンに、黒い影が浮かび上がった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

――― 二時間前

subSide ―――

「みんな、準備は出来たかーー!?」

『『おーーーー!!』』

「よっし、行くわよ!」

「流石に待ちたまえ、お嬢さん方。」

「サラッとワイを省くなや、サムライのオッサン。」


ネギ達が総督府に向かう少し前。雲海に沈んだ旧オスティアへ向かうメンバーは全く休む事無く

ハイテンション(一部除き)のまま全員集合し、作戦を確認せず突撃しかけた所を松永が止めた。


「主らは連携なぞ取った事も無い雑兵じゃ。せめて向かう先を統一せんと、道中の魔物で全滅

してしまうぞ。」

「うぐぐ……分かったわよ!んじゃ作戦確認!!皆は楓ちゃんの風呂敷に入って、コタと楓ちゃんと

刹那さんは一緒にまっつぁんの防護壁に入って身体に毒っぽい雲海を突破。先に待ってるラカン

さん達と合流して、ゼクトさんかアルさんの魔法で守って貰って皆で探索開始!以上!」

「随分行き当たりばったりで他人任せな作戦ですね……。」


自棄になった明日菜のブリーフィングで初めて作戦内容を知った刹那は頭を抱え、諦めた様に

溜息をつくと、先んじて歩き出した。 


「では早く行きましょう。ゴーレムを倒して"墓守人の宮殿"まで行き装置を機動させる時間と、

ネギ先生達の話し合いが終わるまでの時間を考えれば遅いくらいでしょう。」

「そうでござるな。皆、隠れ蓑に入るでござるよ。」

「生身の悲しさアルね……任せたヨ。」


楓が"天狗之隠蓑"を一振りすると1m四方程の風呂敷が十人の頭上を覆うほどにまで広がり、

床に落ちたそれを拾うと既に皆の姿は無く、いつの間にか縮んだのかマント代わりに首元に捲き、

小走りで刹那達の後を追った。


「楓、移動方法は聞いていますか?」

「そこまで考える面子ではないでござるよ……。と言っても、この五人なら生身の方が速い。」

「故に手練れであるお主らだけを残したのだがな。ならば行くぞ。」
ゾワッ!

号令とも取れない確認を合図に、四人は高速移動用の強化を使い移動を開始する。

尤も、刹那は翼併用の『空神』で宙を飛び、楓は長距離移動の瞬動で一々建物やら道やらを

破壊しながら、小太郎とゼルクは足元から湧き出る黒い何かで滑る様に中空を移動し、松永に

至っては爆風を使って移動しているので、高速移動とは言え目立って仕方ない。


「オッサンマジうっさすぎやろそれ!」

「松永久秀、五月蠅いので死んでください。」

「これはまた直球だね刹那嬢。しかし、もう使う必要も無いので死ぬ訳にはいかないよ。」
ヒュッ!
「まったく……。」


一般人に不審がられるのも数秒。あっという間に外郭に着くと同時、躊躇いなく松永は

浮島から飛び下り、一瞬で雲海に消えた。刹那とゼルクも遅れず続いたが、楓と小太郎だけは縁で

立ち止まり、下を見て苦笑いした。


「おぉお、こらキッツイなぁ。」

「……これを躊躇いなく行くとは。でも続かないと移動も出来なくなるでござるからなぁ!」
バッ!

意気込み飛び降りると、頬を激しく叩く風と共にゾワリと背筋に悪寒が走る。

魔力の素である"魔素"が濃く大量にある、環境が地獄に近い場所に生身で近づいただけで、

鍛え抜いた楓でさえ恐怖により体が竦んでしまう。つまり――


「落ちたらただでは済まないでござるなぁあああ!?早くするでござるよまっつーーん!!」

「君まで私を"まっつん"と呼ぶのか。悪くはないが忍としてどうなのかね。」
ギュルルッ
「おぉぉ、悪寒が消えた。流石は地獄の師団長でござるな。と言うか何故先に降りたのか!?」


どうしようもない生命の危機を感じ、珍しく取り乱した楓を黒い風が覆うと、生命を犯す気配が

消え、更に視界も明瞭にした。しかしそのせいで落ち着くべき所を見失った楓はそのまま松永に

掴み掛からんばかりに詰め寄る。


「何、下にこれらが見えたのでね。君が来るより先に葬った方が都合がいいと思ったのだ。」

「これら……とは、この骨の山々の事でござるか?」


冷静になり周囲を見渡すと、見上げる様な物から人の背丈程の物まで大小様々な骨の山が15ほど

積み上がっている。そのどれもに当てはまるのが、龍の頭と思しき骨がある事。


「まさかコレ全て"骨龍"でござるか!?」

「この程度で驚いていてはもたんよ?此処にはうようよ居るからね。今もホラ、刹那嬢と

ゼルクが薙ぎ倒している所だ。」


楓が驚く程の龍種"骨龍"。龍種と言っても特有の魔力・強固な鱗と各属性のブレス攻撃さえ持たない

死霊系(アンデッド)なのだが、特筆されるのはその異常な不死性と防御力にある。

骨だけの体は強靭な呪いで繋ぎ留められ、上級以下の魔法では一切傷つかず、その上でバラバラに

されようと粉々にされようと数秒で組み直される。そもそもとして脳も魂もない魔物を殺す術は無い

と言うのが普通の見解だ。それをどのようにしてか瞬時に、山と屠っているその異様。


「凄まじいでござるなぁ……。」

「なぁなぁ、ワイも行って来てええか!?」

「止めた方がいいだろうね。と言うか、君は防護無しで大丈夫なのかね?」


そう問われ小首を傾げる小太郎。その身の回りには松永の防護壁どころか狗神による防御さえして

いないと言うのに魔素の中でも平気で動けるのは、全ては小太郎の体質によるもの。

獣化連装の多用による黒狗神化が進んだ結果、この場は寧ろ無条件に使える力が満ちている程なのだ。


「なんか知らへんけど調子ええんや!これなら骨龍の一匹や二匹行けるで!」

「出来るかどうかはさておき、今はそんな暇はありません。早く合流しましょう。」

「ちぇー、つまらんなぁ。戦えへんなら風呂敷ん中入っとれば良かったわ。」

「血の気の多い小童じゃのう……バリボリムシャムシャ。」

「何喰っとんねん魔族のちっさいの!?」


(恐らく)骨龍の身体の一部をボリボリ貪りながら登場したゼルクと吹き出した小太郎を先頭に、

廃墟を再度進む一行。その後も魔物が出現しても刹那が切り捨て、一時間半足らずで目的の場所の

目の前まで到着した五人は岩陰に隠れ、"閃の眼"で入口の様子を伺う。


「……どうやら先日と変わり無いようです。」

「残念、先行した三人が倒してくれていれば楽が出来て良かったのだがね。どうする、ゼルク?」

「ふぅむ……前回より増した戦力をどう使うかのう。楓は分身と火の忍術、犬童は魔系の狗神使い

じゃったな?」

「おう、せやで!」


三人の中で軍師の役割を担っているゼルクがふむ、と顎に手をやり作戦を考える。

数分後、手を胸の前でポンと合わせ、極上の笑顔で宣った。


「うむ、どちらも役に立たんの!」

「よーしようやっと分かったわ。喧嘩売りたいだけならはよ言わんかい、買ったるわ!」

「どーどー待たぬか。役に立たぬのはワシも同じく、松永もほぼ役立たずなのじゃ。」

「……まさかあのゴーレム、魔法に異常な耐性を?いや、それだと刹那だけが除外される理由に

ならんでござるな?」


うむ!と満足げに頷くと、講師よろしく前回の戦いで得たゴーレムの情報を小太郎に講釈する。


「まず装甲は骨龍を圧縮して作った物で、数十体分の回復力と防御力を備えておる。

しかも素体には巨人族を使い、持っておる大剣は大業物を改造したカウンター系魔法具じゃ。

近づくのも困難、近づけたとしても魔法具があり、それを超えても傷つけるのが難しいと来た!」


嬉々とした表情で語るゼルクとゴーレムのキチガイ仕様の両方に頭を抱えた楓だったが、

珍しく話の全てを理解出来た小太郎があっけらかんと打開策を提示した。


「なあ、刹那姉ちゃんの攻撃だけ通じたんやろ?せやったら全員で真似すりゃええやないか。」

「……簡単に言いますね。私がしたのは翼族流の四重強化技を使用した"百裂桜花斬"を一閃上に

重ねただけです。もっとも、運良く成功して一体を破壊して撤退する隙を作り出せただけ。」

「その一体もあーやって復活しとるっちゅー訳やな。んじゃ遠距離火力ブッ混むっちゅーのは?」

「この位置からかね?ふむ、この距離なら撤退も容易。ならば試すのも一興であろうね……!」
ィィィィィィィィィィィィィィィィイイイ―――――――――!!

焚き付けられた松永は真っ先に極大の爆弾を生成し、爆撃位置を決定する。

ほぼ同時に小太郎とゼルクは召喚陣を描き、刹那と楓は武器を構え、同時に技を放つ。


「"城爆"!」「喰いちぎれぇ『黒狗神(モーザ・ドゥーグ)』!!」「蠢け、眷属よ。」

「『翼族流 聖剣』『神鳴流 斬空閃』!」「"縛鎖手裏剣"!」
ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
「っしゃぁ!やったやろ!」

「それはフラグと言うものだろう……。」


全員の遠距離攻撃が爆ぜ土煙でゴーレムの姿が見えなくなり、小太郎が神速でフラグを立てる。

前回の轍もあり、直ぐにでも逃げられるように中腰で様子を見ていた五人だが、襲って来るどころか

暫く物音さえ立たない事に違和感を抱き、岩陰から出る。


「………マジで倒したんやないか?実は遠距離攻撃に弱かったとか。」

「そうでしたら私達が苦労する事も無かったでしょうが……っ!?」

「おやおや、これはこれはどういう事だろうね?」


立ち込めていた煙が晴れ、現れたのは巨大な人型ではなく崩れ去ったゴーレムだった。

剣が地面に真っ直ぐ綺麗に立っている事から攻撃を受けてでも無く、まさにその場に崩れ去ったと

言う方が正しい。あれだけ警戒していた相手が一瞬で無力化した事に全員呆気に取られる。


「一体、何が起きたと言うのでござるか?」

「考えられる選択肢としては、魔力を供給し続けていた者が供給を止めたか、若しくは命令されていた

役目を終え崩れたか……。いずれにしろ、原因解明は後回しじゃ。」

「めんどそうやし同感や。ほんなら…行くで!」
ドゥッ!

小太郎の勝手な合図ではあったものの全員一斉に駆け出し、守られていた扉から"墓守人の宮殿"の

内部に侵入、真っ直ぐな通路を進み正面の部屋…全体像からすれば丁度中層に当たる部屋に入る。

中央に祭壇の様な装置があり、そこから十字方向に橋が続いており、五人が入って来た通路を除き

三カ所のどこかが下か上に続く階段がある、と思われたのだが、その祭壇に居る三人の人影を見つけ、

ダンジョン探索を、と思う間も必要もなく、全員が祭壇に集まる。


「なんだ嬢ちゃん達、遅かったじゃねぇか。」

「オッサンら、なんでこないなトコおんねん!?外のゴーレム倒さへんで中入れたんか?」

「む、何を言うか。儂らはそのゴーレムを倒して入って来たのじゃぞ?言う程強くなかったがの。」

「……ふむ、その様子だと復活していたようですね。その割に戦闘音がしませんでしたが。」

「結構派手な音がしたと思うのですが……妙です。役割を果たさないのに形ばかり復活した

ゴーレムと、外の音を遮断する結界?何故そのようなものが必要なのでしょうか。」


先行していたラカン達と後から来た刹那達との情報の食い違いと、現状の奇妙さに悩む一行だったが、

アルビレオが簡単に要点を纏める。


「つまり、あなた方の戦ったゴーレムと今此処を守っていたゴーレムが別物の可能性がある。

そんな物を使い此処を守っているように見せかけ、我々に都合二度、時間を割かせた……と。」

「まさか『完全なる世界』が関与していると?彼等に利点があるとは思えませんが。」

「どーゆーことやねん。罠だとしてもかけときながらワイらに攻撃するまでも無く放置て。

これ自体が何や作戦の為の、それこそ時間稼ぎの可能性っちゅー事は――おぉ!?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ・ ・ ・ ・ !
「お主はどれだけフラグを立てたいのでござるか!?」


フラグを立てた瞬間、宮殿が音を立てて崩れ始める。

思わぬ事態に全員で小太郎を無意味に糾弾しながら入って来た通路を抜け、外に飛び出すと同時、

見計らったように一気に崩れ去った。


「なんっやねんコラ!ここまで来させといて無駄足かいな!?」

「いえ……違うようですよ。」

「なんやて?」


アルビレオが指差した先、宙を見ると、そこには日の光さえ翳らせる魔素の雲が割れ、

雑音と共に巨大な映像が浮かび上がる。

ザザザザザザザザザザザザザザザ―――――――――!!
【―――――魔法世界の諸君、こんばんは。良い夜だな。】

「オイオイオイ、何のつもりだ……?」

「愁磨、さん………。」


映ったのは黒いフードを被った影だと言うのに、その場の殆どの人間がそれを愁磨だと認めた。

そして―――終わりを告げる。


【さて、こんな夜に御誂え向きの話だ。―――この世界を、我々が終わらせようと思う。】


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