遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜
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十八話 ー想うは貴方一人、ですよ。ー
前書き
※修正を加えました。
優希が真澄達の下へと駆けつけたのと同時刻、デスガイドもまた彼女の任務を遂行していた。
「ふぅ、優希さん……間に合ったでしょうか」
ため息とともに小首を傾げ主人の安否を心配している姿は非常に愛らしく、一目見て魅力される者はまずいないだろう。
もしも、彼女の周りで多人数のデュエリストが地を這っていなければ……。
デスガイドは表情を一転させ、倒れ伏すデュエリスト達を虫けらを見るかのように見下し、近くに倒れていた者の背中をローファーの踵で踏みつければ、うげ、と潰れたカエルのような呻き声を出す。
「いや〜、にしてもこんな雑魚ばっか、相手してもフラストレーションが溜まるばっかです。あー、面倒くさいで〜すね〜」
鬱憤をぶつけるかのように踏みつける力を段々と強くしていけば、男の呻き声も次第に大きくなるのは、必然。そして、苦しみもがく姿を見て、デスガイドにサディスティックな笑みが浮かぶ。
そして、ちょうど敗者をいたぶるのにも飽きてきた時、新手の団体がデスガイドの前へと現れ、それを視認すると愉しげな笑みを浮かべる。
「おっと、ようやく本命のご登場ですか」
デスガイドの視線の先に居たのは、周りに転がるデュエリスト達と同じ制服の一団と、そのボス、赤馬 零児。
彼女とそして周りの惨状を見た赤馬 零児は苦悶に顔を顰める。しかし、すぐに表情を引き締め、不敵な笑みを浮かべているデスガイドに対峙する。
「どうも、お初にお目にかかります、赤馬 零児さん。生憎ここは現在通行止めなので、他の道を探してくださいな?」
「おまえ、社長になんて口の利き方を!」
恭しく一礼し、挨拶をするデスガイド。しかし、どう見ても挑発以外の何物でもないそれに、エリートを示す制服に身を包んだ男が激昂し、デスガイドへと掴みかかる。
「あっぶないですねー」
だがしかし、デスガイドによって地へと伏せられてる。
「たっく、私に触れていいのは優希さんだけですよ。これだから、似非エリートは……」
倒れ気絶した男に対し、ゴミを見るような視線を送ると、表情を一転させ、スマイルを浮かべる。その笑みに気圧されたデュエリスト達は一歩たじろぎ、額に冷や汗を浮かべる。そして、結果的に最前に出た零児は切れ長な瞳でデスガイドを捉えると冷静な声音で問う。
「君は、なぜ我々の行く手を阻む」
「それは、逆ですよ。あなた方が通行止めしてる道を通ろうとするのがいけないんです」
屁理屈以外何物でもないが、彼女の周りに倒れている同士を見て、何も言うことはできない。この先にいる例の襲撃者と優希たちの下にたどり着くには、デスガイドの後ろへと続く一本道しかないのだ。
そして、零児だけは「そうか」と納得をすると、次の質問を投げかける。
「なら、君はエクシーズ次元の者なのか……?」
「さぁ?それを確かめるのに手っ取り早い方法を知ってると思いますが……?」
これ見よがしに、デスガイドが左腕のデュエルディスクをアピールすれば、零児はその意図を汲んだのか、デッキをセットし、デュエルディスクを展開させる。
互いにやる気は十分であり、これ以上の言葉など不用である。零児の護衛としてついてきた制服組たちは、巻き込まれまいとして二人から距離を置く。
「わたしが、デュエルに勝ったら君の目的を吐いてもらう!」
「えー、面倒いですね。まぁ、せいぜい、戦いになるように頑張ってください」
『決闘‼︎』
「先行は貰います!手札から『魔界発現世行きデスガイド』を召喚し、効果発動!デッキからレベル3・悪魔族モンスターを効果を無効にし、特殊召喚します。来い、『彼岸の悪鬼 スカラマリオン』‼︎」
言わずと知れたデスガイドに続いて召喚された、モンスターを見て皆一様に息を飲む。鋭い爪に、餓鬼のような痩躯は、まさしく地獄の悪魔を連想させる。
そして、早くも同レベルのモンスターが揃った事に、緊張感を高める零児。
「私はレベル3のデスガイドとスカラマリオンでオーバレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!ランク3『彼岸の旅人 ダンテ』!
そして、ダンテの効果発動!オーバレイ・ユニットを一つ使い、デッキトップから三枚墓地に送る。そして、墓地に送った枚数×500ポイント攻撃力をターンの終わりまでアップさせます」
守備表示なんで後半は意味ないんですよねー、などと口にしつつデッキトップをめくっていく。そして、墓地へと送られたカードを確認すると思わず自身の幸運さに笑みをこぼす。
「今、墓地に送られたカードは『彼岸の悪鬼 ガトルホッグ』、『魔サイの騎士』、『彼岸の悪鬼 ハロウハウンド』。そして、三体は墓地に送られた時、それぞれ効果が発動されます」
「っ!墓地に送られただけで効果だと⁉︎」
野次馬と化しているLDSから驚愕の声が上がるが、デスガイド本人は気にせずスルーする。
「ハロウハンドの効果により、デッキから『善悪の彼岸』を墓地に送ります。そして、『魔サイの騎士』の効果により、デッキから『儀式魔人 リリーサー』を墓地に、最後にガトルホッグの効果により、墓地のハロウハンドを守備表示で特殊召喚します。
さらに魔法カード『儀式の準備』を発動します。デッキから『彼岸の鬼神 ヘルレイカー』を手札に加え、墓地の『善悪の彼岸』を手札へと戻します。
そして、儀式魔法『善悪の彼岸』発動!フィールド上のハロウハンドと墓地の儀式魔人リリーサーを生贄にし、『彼岸の魔神 ヘルレイカー』を儀式召喚!」
「なるほど、一ターンでエクシーズのみならず、儀式召喚まで行うか」
零児は鋭い視線でデスガイドを睨みつけるも、デスガイドは薄ら笑いを浮かべ誤魔化す。
「リリーサーをリリースして儀式召喚に成功した事により、ヘルレイカーが存在する限り、あなたは特殊召喚できません。最後にカードを一枚伏せ、ターンエンド……」
零児へとターンが移り、ドローしようとデッキトップに指かけるも……
「……わたしのターンッ!とかなんとか言うんでしょうが、ザーンネーン!このターンの終わりスカラマリオンの効果発動ですっ‼︎デッキから『魔界発現世行きデスガイド』を手札に加えます。さぁ、どうぞ」
直前に響いたデスガイドの声によって静止させられる。そして、今度こそターンが回った事を確認すると自分のターンを開始する。
「わたしのターン、ドロー」
今加えたのを含め六枚の手札を確認する零児の表情は芳しくない。
デスガイドのフィールドのヘルレイカーの存在により、零児の特殊召喚は完全に封じ込められてしまっているのだ。
打開する手がないわけではないのだが、いかんせん次のターンまで待たねばならない。
「私は『クリバンデッド』を召喚し、カードを三枚伏せる。そして、永続魔法『地獄門の契約書』を発動。そして、効果によりデッキから『DDD 反骨王 レオニダス』を手札に加える。そして、エンドフェイズ時に『クリバンデッド』の効果を発動する。自身をリリースし、デッキトップからカードを5枚墓地に送る。そして、墓地に送られたカードの中から魔法または罠カード一枚を手札に加える。私は『契約洗浄』を手札へと加え、ターンを終える。
結果、連続サーチとデッキ圧縮により次ターンへの布石を整えた零児は静かにターンを終える。一方で、それを不満を不満に思うのか、若干頬を膨らませる。
「まったくあんまり幻滅させないでくださいね。私のターン、ドロー。手札から二体目のデスガイドを召喚し、効果発動!デッキから『彼岸の悪鬼 スカラマリオン』を効果を無効にし、特殊召喚します!そして、二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚、現れよ『彼岸の旅人 ダンテ』‼︎」
先のターンと同じ流れで、二体目となる旅人ダンテが召喚される。
「そして、一体目のダンテの効果発動!オーバーレイ・ユニットを取り除き、デッキからカード三枚を墓地に送り、1500ポイント攻撃力をアップさせます」
『ペロペロケルベロス』、『旅人の結彼岸』、『彼岸の悪鬼 ラビキャント』の三枚が墓地に送られ、同時にダンテの攻撃力が1000から2500まで上昇する事になる。
「さらに、二体目のダンテのオーバーレイ・ユニットを一つ使い、効果発動!一枚目、『虚無空間』!二枚目、『彼岸の悪鬼 グラバースニッチ』‼︎三枚目、『彼岸の沈溺』‼︎
そして、墓地に送られたグラバースニッチの効果を発動!グラバースニッチの効果により、デッキから『彼岸の悪鬼 ラビキャント』を守備表示で特殊召喚!」
さらに二体モンスターが加わり、計四体のモンスターがフィールドに並ぶ。
「さて、ダンテを攻撃表示に変更してバトルです!ダンテでダイレクトアタック!」
「リバースカードオープン、『和睦の使者』を発動する。この効果により、このターンの戦闘ダメージは0となる」
全て通れば勝利、という局面であったがカード一枚により防がれてしまう。もっとも、デスガイドもそんな簡単に終わるわけがないと思っており、すぐさま思考を切り替え次のターン、仕掛けてくるであろう相手への対策を練る。
「カードを一枚伏せ、エンドフェイズ時にスカラマリオンの効果発動しますね。デッキから『魔界発現世行きデスガイド』を手札へと加えます」
「ならば、私は『戦乙女の契約書』を発動し、効果を使用する。手札から『魔神王の契約書』を捨て、『彼岸の鬼神 ヘルレイカー』を破壊するっ‼︎」
羽根状の契約書に書かれた文言が鮮やかに輝くと、一条の閃光が放たれヘルレイカーを貫く。
そして、ヘルレイカーが破壊された同時に特殊召喚ロックが解除される事となる。
「破壊され、墓地に送られたヘルレイカーの効果発動!相手フィールド上のカード一枚を選択し、破壊します。私は、伏せカードを破壊する!」
「チェーンして『DDリクルート』を発動する!この効果により、相手モンスターの数がこちらのモンスターの数より、多い時その差分、墓地から『DD』モンスターもしくは、『契約書』カードを手札へと加える。私とお前のモンスターの数の差は3!よって、『魔神王の契約書』、『DDD 壊薙王 アビス・ラグナロク』、『DD 魔導賢者 ガリレイ』の三枚を手札へと加える」
クリバンデッドと手札のコストによって墓地へと送られていたカードを回収され、ヘルレイカー、最後の足掻きも無駄に終わる。
内心で、マジヘルレイカー使えねぇと呟くとともに舌打つと再び笑顔を作り直し、零児へとターンを渡す。
「私のターン、ドローッ!このスタンバイフェイズ時、『地獄門の契約書』の効果により、1000ポイントのダメージを受ける。そして、この瞬間手札の『DDD 反骨王 レオニダス』の効果が発動する!このモンスターを特殊召喚し、受けた効果ダメージ分ライフを回復する」
「デメリットがデメリットになってないですね……」
デスガイドは早速召喚された上級モンスターを見て、ゲンナリと言った表情をする。もっとも、普通ならデメリットになるところをむしろメリットに変えているのはデスガイドも同じなのだが、現環境それを突っ込めるのは精々図らずもストッパー役を請け負ってしまっている優希一人のみである。
「さらに『戦乙女の契約書』の効果を発動し、1000ポイントのダメージを受ける。しかし、レオニダスがフィールド上に存在する事で私が受ける効果ダメージは0になる」
早速デメリットは仕事をしなくなりつつある二人のデュエルだが、まだ零児はメインフェイズを迎えていない事に対し、野次馬と化しているLDSエリートは戦慄する。
「私は『地獄門の契約書』の効果を発動し、デッキから『DD 魔導賢者 ケプラー』を手札に加える」
「げっ……」
デスガイドは今手札へと加えられたカードを確認し、思わず声を漏らす。一方で、零児が放つ闘気は鋭さを増していく。
「私はスケール1の『DD 魔導賢者 ガリレイ』とスケール10の『DD 魔導賢者 ケプラー』をペンデュラムスケールにセッティング!」
「「おおっ‼︎」」
零児の左右へ機械仕掛けの賢者とそれを囲うように現れた淡い青の光の柱を見て、LDSのメンツから歓声に近い声が漏れる。
「これにより、私はレベル2からレベル9のモンスターが同時に召喚可能!
我が魂を揺らす 大いなる力よ、この身に宿りて闇を切り裂く新たな力となれ!」
零児の口上とともに頭上に現れた水晶の振り子が動き、軌跡を空へと刻む。
「ペンデュラム召喚ッ‼︎出現せよ、私のモンスターたちよ‼︎
レベル2『DD スワラル・スライム』‼︎そして、神々の黄昏に審判を下す最高神‼︎『DDD 壊薙王 アビス・ラグナロク』‼︎」
描かれた軌跡が輪となり、その中心から光が溢れ零児のフィールドへと降り注ぐ。
「っ!ペンデュラム、召喚……!社長特権って奴ですかね……?」
感嘆と皮肉を込めてそう口にすたデスガイド。
本来、ペンデュラム召喚はペンデュラムカードを使用する事によって扱える特異な召喚である。そして、それを持っているのは唯一榊 遊矢のみである。しかし、彼しか使えないはずの召喚法を赤馬 零児が今現在使った事に対する疑問はデスガイドの発言によって全て解消される。
つまり、レオ・コーポレーションの技術を結集した事により、それを可能としたのだ。まさしく社長特権。
「特殊召喚に成功したアビス・ラグナロクの効果発動!墓地より『DDD 死偉王 ヘル・アーマゲドン』を特殊召喚する!」
「はぁ、スパルタ王、神々の終末に続いて神と悪魔の最終決戦ですか」
悪魔の私への当てつけですかね……とため息混じりに呟く。デスガイドをここまでさせるほどにペンデュラム召喚は厄介であり、面倒なのだ。
「私はアビス・ラグナロクの効果を発動する。スワラル・スライムを墓地へと送り、『彼岸の旅人 ダンテ』を除外する!」
「おっと、リバースカードオープン、『彼岸の沈溺』!この効果により、ダンテ二体を墓地に送り、レオニダス、ラグナロク、アーマゲドンの三体を破壊します」
「ッ!?」
地面へと亀裂が走り、吹き出したマグマが三体を呑み込む。あっという間に破壊された最上級モンスターたちを前に周りからどよめきが起こる。
「さらに墓地へと送られた二体のダンテの効果により、墓地から『彼岸の悪鬼 グラバースニッチ』と『彼岸の悪鬼 ガトルホッグ』を手札へと加えます」
「フィールドから墓地へと送られたペンデュラムモンスターは墓地へは行かずエクストラデッキに送られる。そして、、永続魔法『魔神王の契約書』を発動する!」
零児の背後に沼地の魔神王と共に文字が刻まれた石板が出現する。
「『魔神王の契約書』の効果を発動し、手札の『DD バフォメット』と『DD リリス』を融合!」
石板の文字が光り出すと共に素材となる二体のモンスターが魔神王へと呑み込まれーー
「自在に形を変える神秘の渦よ。異形の神を包み込み、今ひとつとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ!『DDD烈火王テムジン』!」
ーー灼熱と共に新たなモンスターがフィールドに降臨する。
「そして、手札からチューナーモンスター『DD ナイト・ハウリング』を召喚するッ!」
「あー、そういえば召喚権使ってないですね〜」
1ターン目にロックをした反動か、怒涛の特殊召喚に通常召喚していない事を失念していたデスガイド。しかし、その割にはデスガイドは損害を被るところが、アドバンテージを確実に稼いでいるが……。
「ナイト・ハウリングの効果により、墓地から『DD リリス』の攻撃力・守備力を0にして特殊召喚する。そして、特殊召喚された『DD リリス』の効果によりエクストラデッキに表側で存在する『DD』ペンデュラムモンスターを手札に加える。私は、『DDD 反骨王 レオニダス』を手札に加える」
ナイト・ハウリングの咆哮と共に魔法陣が浮かび上がり、リリスがフィールドに舞う。そして、零児のフィールドには、チューナーと非チューナーモンスターが揃う。
「闇を切り裂く咆哮よ。疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ!レベル7!『DDD疾風王アレクサンダー』!」
奇怪な叫び声と共にナイト・ハウリングが3つの輪へと分かれ、それぞれが回転しリリスを通過する。直後、閃光が中央を貫く。
シンクロ召喚特有のエフェクトと共に突風が路地裏を駆け、新たなモンスターが零児のフィールドへと降り立つ。
「そして、『DD』モンスターが特殊召喚された事により、烈火王テムジンの効果発動!墓地から『DD リリス』を特殊召喚する!」
テムジンのもつ戦槌が地面に叩きつけられると共に再びリリスがフィールドへと召喚される。
融合素材にされたり、シンクロ素材にされたり過労死しそうなリリスに密かに同情の念を送るデスガイド。なんとなく、リリスがやつれているように見えてくる。
「そして、『DD』モンスターが召喚された事により疾風王アレクサンダーの効果を発動!墓地から『DD バフォメット』を特殊召喚!」
「わぉ、墓地送りからの連続蘇生とかやる事がエゲツない……」
流石ブラック企業とは絶対に口にできないな、と内心で考えているとこちらを睨む眼光が鋭さを増した気がしたデスガイド。
そんなこんなで零児のフィールドにはレベル4のモンスター二体が並ぶ。
「私はレベル4の『DD リリス』と『DD バフォメット』でオーバーレイ・ネットワークを構築!この世の全てを統べるため、今 世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!生誕せよ!ランク4!『DDD怒濤王シーザー』!」
デスガイドはワンターンスリィエクストラを決めた零児を見て、思わず頬をひくつかせる。全滅させたと思ったら、ここまで展開されれば流石のデスガイドでも引く。
「バトルだ!疾風王アレクサンダーで『彼岸の悪鬼 ラビキャント』を攻撃する!」
「っ!」
アレクサンダーの一撃により、ラビキャントは両断され破壊される。そして、デスガイドのフィールドには伏せカード一枚を除きガラ空きとなる。
「烈火王テムジンと怒涛王シーザーでダイレクトアタック!」
二体の総攻撃力は4400。攻撃が通れば、零児の勝ちが決まる。
テムジンとシーザーの攻撃が地面へと叩きつけられ、砂ほこりが舞う。デスガイドの姿こそ見えなくなるが、誰もが決まったと確信した。だがしかしーー
「クククッ……」
砂煙の奥から微かに笑いを堪えるような声が漏れる。そして、次第にそれは音量を増していきーー
「クククッ、アッーハッハッハッ!」
「……っ!?」
「「なっ!?」
明らかなる笑い声に一同が驚愕する。そして、煙が晴れたその場所にはお腹を押さえ、周りなどお構いなしに笑い声を上げるデスガイドの姿と、テムジンとシーザー、二体の攻撃を受け止めているダンテの姿があった。
「ふふっ……、なんで?どうして?顔してますね〜」
困惑しているLDSを見て、また笑い始めるデスガイド。笑い過ぎて涙目になるほど笑い気がすんだのか、目尻に溜まった水分を払うと笑いをかみ殺しながら口を開く。
「ふ、ふふ……私は『旅人の到彼岸』を発動したんですよ。くふっ、このカードはこのターンに墓地に送られた『彼岸』モンスターを守備表示で特殊召喚できるんです。その効果により、私は『彼岸の沈溺』のコストとして墓地に送っていた『彼岸の旅人 ダンテ』二体を召喚したんですよ」
そこまで言い終えると笑いがぶり返したのか、クフフと小さく笑い始めた。
「アハハ、決まったと思いました?ねぇ!けど、ザーンネーン!私はこの通り、ピンピンしてますっ!それに、貴方のモンスターたちでは、私のモンスターを越えられません。残念でしたね〜、これだけ展開して1ダメージも与えられなくて」
「くっ……!」
散々バカにされ、表情を歪める零児。もっともデスガイドはそれすらも楽しそうに笑っているが。どう見ても、サディストである。
「私はカードを二枚伏せ、ターンエンド」
「次のは私の番ですね!ドロー!ふふ、魔法カード『融合』を発動!フィールドの『彼岸の旅人 ダンテ』と手札の『彼岸の悪鬼 ガトルホッグ』、『彼岸の悪鬼 グラバースニッチ』を融合!さぁ、現れなさい!融合召喚!『彼岸の巡礼者 ダンテ』!」
旅人の服装ではなく、祭祀のような礼装を身に纏うダンテがフィールドへと現れる。
「さらに墓地へと送られたガトルホッグとグラバースニッチの効果発動!デッキから『彼岸の悪鬼 ドラゴネル』、墓地から『彼岸の悪鬼 ラビキャント』を特殊召喚!」
地面が裂けると共に二体の悪鬼がダンテの左右に並ぶ。神々しい光を纏ったダンテと悪魔が並ぶフィールドはどこか異様な雰囲気を出している。
「私はレベル3のドラゴネルにレベル3のチューナー ラビキャントをチューニング!謳え、神々の詩を‼︎導け、勝利へと‼︎シンクロ召喚!レベル6『彼岸の詩人 ウェルギリウス』!」
視界を覆っていた光が晴れ、弦楽器の音色と共にダンテの師であるウェルギリウスが現れる。
「墓地へと送られたドラゴネルの効果発動!デッキトップに『彼岸の悪鬼 ファーファレル』を置きます。そして、巡礼者ダンテの効果発動!手札から『彼岸の悪鬼 ハロウハンド』を捨て、一枚ドロー!そして、墓地に逝ったハロウハンドの効果によりデッキから『旅人の結彼岸』を墓地に送ります。
さらに、ウェルギリウスの効果発動!手札の『彼岸の悪鬼 ファーファレル』を捨て、怒涛王シーザー』をデッキへと戻します」
「怒涛王シーザーの効果発動!オーバーレイ・ユニットを一つ使用し、効果発動!」
置き土産を残し、シーザーが跡形もなく消えていく。
「墓地へと送られたファーファレルの効果発動!烈火王テムジンをエンドフェイズまで除外する!」
シーザーに続き、烈火王テムジンが闇に呑み込まれ、消えていく。
三体居たモンスターは効果のみで除去され、残るところ疾風王アレクサンダーのみとなってしまう。
「まだ私のターンは続きますよ!墓地から『善悪の彼岸』の効果発動!このカードを除去し、さらに手札から『彼岸の悪鬼 ハックルスパー』を捨てる事によりデッキから『彼岸の沈溺』を手札に加えます。
そして、ハックルスパーの効果発動!相手の伏せカードを手札へと戻す!」
「チェーンして、リバースカードオープン『DDDの人事権」発動!墓地から『DD スワラル・スライム』、『DD ナイト・ハウリング』、ペンデュラムスケールにセッティングされている『DD 魔導賢者 ケプラー』をデッキへと戻し、デッキから『DD 魔導賢者 ケプラー』と『DD ケルベロス』を手札に加える」
効果やチェーンの応酬にデスガイドの口は弧を描き、最近では北斗戦以上の昂りを見せていた。嬉しさ楽しさの余りに、時折笑い声が漏れるほど楽しんでいるデスガイドは、完全に襲撃犯の事は失念している。
「いいですねぇ、もっとですよ!私は通常魔法『貪欲な壺』を発動!墓地から『魔界発現世行きデスガイド』二体、『彼岸の悪鬼 スカラマリオン』二体、『彼岸の旅人 ダンテ』をデッキへと戻し、二枚ドロー!そして、『魔界発現世行きデスガイド』を召喚します‼︎そして、デスガイドの効果により、デッキからスカラマリオンの効果を無効にし、特殊召喚!」
3度目となり、すでに見慣れたコンボだが、それゆえに安定して強力なモンスターを呼び出す事ができる。
「レベル3のデスガイドとスカラマリオンでオーバーレイ‼︎現れよ、『彼岸の旅人 ダンテ』!」
光の奔流と共に旅人姿のダンテがフィールドへと現れる。
「ダンテのオーバーレイ・ユニットを使用し、効果発動!デッキトップを三枚墓地に送り、攻撃力を1500ポイントアップする!そして、手札の『彼岸の悪鬼 リビオッコ』を捨て、『彼岸の旅人 ダンテ』でオーバーレイ・ネットワークを再構築!エクシーズチェンジ!」
紅く煌めく薄へとダンテが吸い込まれた直後、中央から一際眩しい光が奔る。
「刮目せよ!そして、崇めよ!ランク6『英遠の淑女 ベアトリーチェ』!」
淡い桜色のドレスを身に纏い、煌めくオーラを放つ聖女の如き女性が現れる。
「墓地の『旅人の結彼岸』の効果発動!巡礼者ダンテの攻撃力を800ポイントアップします。さぁ、バトルです!巡礼者ダンテで疾風王アレクサンダーを攻撃!」
「『戦乙女の契約書』の効果発動!手札から『DD プラウド・オーガ』を捨て、破壊する!」
「無駄です!巡礼者ダンテは相手の対象に取られない!」
「っ!ならば、ウェルギリウスを破壊する!」
一筋の閃光はウェルギリウスを貫き破壊する。しかし、同時にアレクサンダーがダンテによって破壊され、100ポイントのダメージを零児へと与える。
「破壊されたウェルギリウスの効果で一枚ドローします。そして、これでフィニッシュです!ダンテとベアトリーチェでダイレクトアタック!」
「がぁ⁉︎」
二体の攻撃が確かに決まった。しかし、そこには完全に無事な姿ではないものの赤馬 零児が立っていた。
どうやって⁉︎と考えるまでもなく、デスガイドはそれを理解する。
「伏せカード、ですか……」
「そうだ。罠カード『契約洗浄』。この効果により、全ての『契約書』を破壊し、その枚数分デッキからドローし、さらにライフを一枚につき、1000ポイント回復した」
三枚の契約書を破壊したことでライフを3000ポイント回復したことで、残りライフ1900を残したのだ。
「そして、このバトルフェイズ終了時、既に発動されていた怒濤王シーザーの効果により、疾風王アレクサンダーを特殊召喚する」
「やりますね。ダンテはバトルフェイズ終了後、守備表示に変更されます。私はカードを二枚伏せ、エンドフェイズ。スカラマリオンの効果により、デッキから『魔界発現世行きデスガイド』を手札に加えます」
「ターンの終わりに除外されていた烈火王テムジン』はフィールドへと戻る」
帰還を果たしたテムジンを一瞥すると、今一度デスガイドを見据える。追い込まれてもなお、冷静沈着な態度を崩さない零児。
「私のターン、ドローッ‼︎」
豪ッと突風が巻き起こるほどの覇気を纏い、ドローする。
「このスタンバイフェイズ時、シーザーの効果で特殊召喚されたモンスターの数×1000ポイントのダメージを受ける。そして、この時手札から『DDD 反骨王 レオニダス』を特殊召喚し、受けた効果ダメージ分、ライフを回復させる。さらにモンスターが特殊召喚されたことにより、烈火王テムジンの効果発動!『DD バフォメット』を墓地より蘇生する!さらに疾風王アレクサンダーの効果により、墓地から『DD リリス』を特殊召喚!」
「社長のフィールドに、モンスターが五体っ!」
「…………うへぇ」
スタンバイフェイズでありながらも、赤馬 零児のフィールドがモンスターに埋め尽くされていく光景を変な声を漏らしながら見つめるデスガイドはげんなりとしていた。
「『DD リリス』が特殊召喚された事により、効果発動!エクストラデッキの壊薙王 アビス・ラグナロクを手札に加える。そして、『DD 魔導賢者 ガリレイ』の効果を発動し、ペンデュラムスケールを2つ上げる」
片割れとなってしまった光柱に印されていた数字が1から3へと変わる。そして、これでようやくメインフェイズに入る事になる。
「メインフェイズに入る。私は『DD バフォメット』の効果を発動する。烈火王テムジンを選択し、レベル8に変更する。さらに、レベル4の『DD バフォメット』と『DD リリス』でオーバーレイ・ネットワークを構築!再誕せよ、この世全ての王!ランク4『DDD 怒濤王 シーザー』!」
烈火王、疾風王、怒濤王の御三家が再びフィールドへと揃い、デスガイドへとプレッシャーを与えんとする。
「永続魔法『魔神王の契約書』を発動!その効果により、疾風王アレクサンダーと怒濤王シーザーを融合する!
神々の黄昏を打ち破り、押し寄せる波の勢いで、新たな世界を切り開け!融合召喚!出現せよ!極限の独裁神、『DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク』」
大地が真っ二つに裂けると、神々の黄昏を想起させるような業火が立ち昇り、異形の悪魔が姿を現わす。
「墓地へと送られた怒濤王 シーザーの効果により、墓地より『地獄門の契約書』を手札に加え、発動する。私はデッキから『DDD 死偉王 ヘル・アーマゲドン』を手札に加える。さらに、スケール10のペンデュラムモンスター、『DD 魔導賢者 ケプラー』をペンデュラムスケールにセッティング‼︎」
再び天空に向かい、光の柱が伸び頭上には"3"と"10"の数字が輝く。
「これにより、レベル4から9のモンスターが同時に召喚可能!
我が魂を揺らす 大いなる力よ、この身に宿りて闇を切り裂く新たな力となれ!
ペンデュラム召喚ッ‼︎現れよ!!地獄の重鎮、『DDD 死偉王 ヘル・アーマゲドン』!」
振り子が描く境界線から光と共に絶大な力を有する悪魔が降臨し、デスガイドのフィールドを遥かに上回るモンスターたちが並ぶ。
この状況には、流石のデスガイドもヒヤリとする。
「まだだッ!私はレベル8となった烈火王 テムジンと 死偉王 ヘル・アーマゲドンでオーバーレイ・ネットワークを構築!
2つの太陽が昇るとき、新たな世界の地平が開かれる! エクシーズ召喚!現れいでよ!ランク8!《DDD双暁王カリ・ユガ》! 」
暁のような真紅の巨体は、他の王たちとは別格のオーラを放つ。
「双暁王カリ・ユガを召喚したターン、互いにフィールドで発動する効果は無効となる。さらに、墓地の『DD ネクロ・スライム』の効果発動!墓地に存在する、『DDバフォメット』と『DD リリス』を融合!魔性の淫婦よ、神秘の渦で、真の王と生まれ変わらん!融合召喚!出でよ!神の威光伝えし王!《DDD神託王ダルク》!」
「うわ、まだ出すんですか?」
かのスパルタ王を筆頭に、神々の終焉や、終末論が並ぶ上に、オルレアンの魔女として処された聖女、ジャンヌ・ダルクまでもが現れ、中々に容赦がない。
「バトルだ!双暁王 カリ・ユガで巡礼者ダンテを攻撃する!ツインブレイクショット!」
「くっ!」
カリ・ユガの双掌から放たれた二本の熱線はダンテを貫き、塵芥さえ残すことを許さずに滅せられる。同時に、デスガイドは初めてのダメージを受ける事になる。
ようやくダメージを与えた事により、よしっ!と周りから聞こえてくる。一方で、初ダメージを受けたデスガイドは不敵な笑みを浮かべーー
「なっ⁉︎」
ーー零児の目の前で、カエサル・ラグナロクが三首の魔犬に強襲され、奈落へと引きずりこまれていった。
「私がダメージを受けた瞬間、墓地の『ペロペロケルペロス』の効果発動!このカードを除外し、フィールドのカード一枚を破壊します。
さらに、破壊された巡礼者ダンテの効果発動!相手の手札をランダムで一枚捨てさせます!」
「くっ……」
表情を歪めつつ、ランダムで選ばれた手札、『DD ケルベロス』を墓地に送る。
カエサル・ラグナロクが破壊された事で零児のフィールドには、攻撃2800を越えれるモンスターが居らず、ヘル・アーマゲドンの効果もカリ・ユガによって発動する事が出来ない。
「反骨王レオニダスで旅人ダンテを攻撃!」
「ダンテが墓地に送られた事で、墓地の『彼岸の悪鬼 ガトルホッグ』を手札に加えます」
「神託王 ダルクでベアトリーチェを攻撃!オラクル・チャージ!」
「ぐぬっ……!」
ダルクの高速接近から一閃はベアトリーチェに防ぐ術はなく破壊されてしまう。そして、デスガイドへと僅かながらダメージを与える。
これで、デスガイドのフィールドのモンスターは全滅と思いきや、光輝く魔法陣が形成され、法衣姿の『彼岸の巡礼者 ダンテ』が姿を現わす。
「ベアトリーチェの効果により、エクストラデッキから『彼岸の巡礼者 ダンテ』を召喚条件を無視して、特殊召喚!」
「なにっ⁉︎」
新たなモンスターの登場に流石の零児の表情に難色が見られる。そして、デスガイドはそれを嘲笑うかのように効果を発動させていく。
「さらにベアトリーチェのエクシーズ素材となっていた旅人ダンテが墓地に送られた事で効果発動!『彼岸の悪鬼 グラバースニッチ』を手札へと加えます」
本来なら絶大な効力を発揮するカリ・ユガのロック効果もデスガイド相手には、分が悪かった。
「カリ・ユガの効果発動。オーバーレイ・ユニットを一つ使用しフィールド上の魔法・罠カード全て破壊する」
「ちっ……」
カリ・ユガによって起こされた竜巻はデスガイドの伏せカードと共に零児のペンデュラムカードを破壊していく。
「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
これだけ展開しても尚、デスガイドのライフを0にするには到底届かず、そのレベルの高さに零児は冷や汗が滲ませる。対する、デスガイドは絶滅させても歯向かってくる強敵に、心を躍らせていた。
そして、デッキトップへと指をかけ、ドローをしようとするが不意に動きが停止する。
デスガイドの異変とほぼ同時に管制室とコンタクトをとっていた人員が零児に声高に伝える。
「社長ッ!この奥で、今まで類をみない高次元の召喚反応がっ⁉︎」
「っ⁉︎なに!」
この奥、つまり優希と件の襲撃犯がデュエルしている場所であるとデスガイドは判断すると、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「っ!優希さん!」
何か彼女にあったのではと逡巡し、
「……このデュエル、其方に譲ります!私は急用ができましたので!」
「ま、待てっ!」
デスガイドは主人の安否のが大事だと判断し、即座にデュエルを打ち切ると、静止の声を完全に無視して姿を消す。
そして、姿を晦ました直後、夜空を一筋の光が奔り、舞網市を揺らす激しい衝撃が齎される。
後書き
ーTFSP風オマケー
出現条件:神崎 優希のシナリオをクリア
常闇 冥
パートナーデッキ:『貴方の為に』
お気に入り:《魔界発現世行きデスガイド》
初期段階『貴方の為に』暗黒界
二段階目『あなたのために』ヴェルズ
三段階目『アナタノタメニ』彼岸
禁止・制限デッキ『ハッピーエンド/バッドエンド』クトュルフ
機嫌+1000…… 神崎 優希
機嫌-1000…… 『神崎 優希』以外
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