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MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士

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020話

「さぁてと、次は自分の番やな」
「ま、また負けた……俺ってじゃんけん弱いのかな……」

負け続けるギンタ、次なる戦いではナナシが出場する事になった。だがその相手となるのはアクアという名の可憐な少女である。

「確かナナシお前、ロコって言う女にも戦ったよな。やっぱりそういう趣味があるのか」
「「「「スケベ、スケベ、スケベ」」」」
「スケベは納得いかへんでぇええ!!!!」
「………まあ、うん、頑張って来いよナナシ」
「ちょっとギンタくぅうううん君まで生暖かい視線で如何いうことぉおおおお!!!??」

まあナナシの女好きな性格と今日までの行動から考えれば同然の反応といえるだろう。自業自得だろう、ナナシはジークの生暖かい視線と慰めを受けながら少しそっぽを向きながら歩いていく。

「ルベリア ナナシ!チェスの駒 アクア!開始!!!」

遂に鳴り響いた第4戦、ナナシに対するは常にニコニコした笑顔を浮かべた少女(アクア)。彼女のクラスはビショップ、あの年でビショップというそれなりの地位にいるという事はそれだけの魔力やARMを所持している事になる。侮る暇など無

「お先にどうぞ♪レディファーストや」

いのだが………奴の頭には相手を警戒するや子供といえど油断などしないという言葉は存在しないのだろうか。あの年齢でビショップでいる事は彼女の実力を示しているのに………。

「あの馬鹿……全開負けた事全く懲りてない」
「もっと言ってやって下さい、馬鹿って」
「馬鹿」
「馬鹿」
「馬鹿」
「ばぁかぁ」
「関係あらへんって、さあ何時でもええで?」

まあブレて無くて結構とも言えるが……ナナシに限ってはこれから女性相手の試合に出さない方がいいかもしれないっというか出してはいけない気がしてならないジークであった。

「まぁなんて優しい人なんでしょう~♪有難う御座います~♪」
「ヤらしい人でもあるな」
「ジーくん上手い!」
「そこ!うるさいでぇ!!?」

ナナシが外野の言葉に突っ込んでいる間にアクアはお言葉に甘えるが如く懐からARMを取り出し天へと掲げた。太陽の光を浴びながら魔力で満たされていくARM、それは周囲に冷気と相まって異常な力を示していた。

「出てきてアッコちゃん!」

ARMが発動されそこにあった守護神が姿を現した、赤い貝殻で天の光を反射させながら分厚く固い外殻で守られた隙間から爛々と光らせる赤い瞳は主人の敵を屠るという思いだけで染まっている。あまりにも巨大するシャコガイのようなガーディアン、大きさだけならドロシーのブリキンにも負けず劣らず大型ガーディアン!!

「な、なんやっ!?カ、カイ!?」
「それじゃ~ゴ~♪」

可愛らしい声でガーディアンへと指示を出すアクア、それを受けたガーディアンはゆっくりとだが氷の大地を砕きながら前進を始めた。その巨体ゆえに動きは鈍いかと思いきや氷の大地という事を利用し身体を滑らせるようにし高速でナナシへと体当たりをしていく。

「け、結構速いなっと!!」

その上を何とか飛び越えながらウェポンARM グリフィンランスを展開しながらアッコちゃんを見つめるナナシ。滑っていくかと思いきや急停止し一気に此方へと踵を返して突進してくるアッコちゃん、突進を見てから足に魔力を回し筋力を一時的に底上げし一気に上を取り、貝殻へとグリフィンランスを突き刺すナナシ。切れ味が抜群なグリフィンランス、鉄でさえ切る事が可能なランスだが

「か、かったぁっ!?」

ジンと痺れる腕、ランスはほんの先は数ミリ貝殻に刺さる程度しか入らなかった。鋼鉄などのレベル次元ではない、異常なほどの硬度。ダイヤモンド並の硬度の貝殻にナナシは驚愕しながら再び跳躍し距離を取る。得意の得物の刃が通らない、これは流石に想定していなかった。

「アッコちゃんは♪最強の防御を持ってるの~♪次いっきま~す♪ペルルアタ~ック♪」
「何、ペルル?」

アッコちゃんは大きくジャンプすると大きく貝殻を開き、そこから弾丸のような速度で輝く宝石をまるで重機関銃の如く吐き出してきた。飛んできたのは真珠、淡いピンク色をした人間の拳大ほどの大きさを持った一発一発が高い殺傷力を秘めた弾丸。

「おわわわわわ危ない危ない危ない!!!」
「必殺ペルルアタックの味は如何ですか?カッコいいお兄さ~ん♪」

可憐な姿をしているのにも拘らずえげつなく高い攻撃力を秘めた攻撃。防御はダイヤに匹敵する貝殻、攻撃はその巨体と真珠の連射攻撃、そしてこの場においては氷を生かした高い機動性。正しく攻撃・防御・移動、この三つを高いレベルで発揮出来る独立稼動要塞と言った所だろう。このARMこそが彼女がビショップとなった由縁なのだろう。

「おっほぉおおお!!?こ、これはマジでやらんとあかんな!!おんどりゃあああ!!!」

流石にもう油断や余裕などかましている余裕など無くなったのか目つきを鋭くするナナシ、そして刃先が三つ付いたペンダントを手に取った。この場を打開するにはもう全力を出し尽くすしかない!

「サウザントニードル!!!」

発動した直後、ナナシの周囲に氷で形成された無数のとげが出現し発動者を守るかのよう広がっていく。分厚い氷を利用した棘による防御陣、それはライフル並みの貫通力を持った真珠にも何とか耐えうる事が出来るものでアクアは少し驚いた。

「お兄さん凄いです~♪ペルルアタックに耐える壁を作るなんて~、それじゃあ~♪」

アクアはアッコちゃんのペルルアタックを停止させ貝の中へと入っていく、無敵に近い貝の中に篭城。戦術としてはかなり有効な手である、ガーディアンの身体の中に入るという事はガーディアンと共に行動することになる為ガーディアンARMの弱点である発動者の行動の制限が解除されるに等しい。

「あの子、中々やるな……」


「さぁて如何出てくるか………見せてもらうでアクア、自分も本気で行かせて貰うわ」

アクアの実力を認め自分も本気を出す事を決意するナナシ、女性には弱い自分だがここまで相手が強いのであれば自分もそれなりの力で戦うの礼儀。盗賊の身分ではあるがその程度の礼儀は弁えているつもりだ。

「ローリングアッコちゃんアタ~ック!!」

超高速回転、周囲氷に音は浸透しながら罅を入れていく。凄まじい回転と衝撃を発生させながらナナシが隠れている防御陣へと突撃していく、その途中巨大な氷山を一瞬で粉砕しパウダースノーの如くしてしまったあたりとんでもない破壊力なのが見て取れた。

「ナナシィィイ!!にげろぉおおおお!!!」

叫ぶギンタ、だがもう遅い。アッコちゃんは回転で増した速度で一瞬でナナシの防御陣へと到達しその陣営ごと一瞬で粉砕してしまった。チェス側は勝利を確信しメル側は戦慄で凍りついた。だがアクアは疑問に思った。

「……音が、しない?」

響いてくる音は氷を砕いた際に出た音ばかりで骨が砕ける音や血が噴出す音が全く聞こえなかった。氷の破砕音が大きく過ぎて聞こえなかった?いやそれは無い、幾ら防御陣が厚い氷だろうがまったく聞こえないなんて事は絶対に有り得ない。

「ギンタァ、よんだぁ?」

響いたナナシの声、それはアッコちゃんの後方でしていた。

「ナ、ナナシィ!!」
「そない簡単に自分はやられへんで!!防御陣にいる間、グリフィンランスでトンネル作って移動したんや!エレクトリックゥ……!!」

防御陣を張っている間ナナシは唯じっとしていた訳ではなかった。切れ味抜群なグリフィンランスで氷を掘り進みアッコちゃんの後ろを取っていたのだ。そして彼は全ての魔力を腕に集中させ最強の一撃を放とうとしていた。

「アタ~ックッッ!!!」

素早く切り返しナナシへと突進していくアッコ、腐ってもビショップという所だろうか。迫っていくアッコ、限界まで魔力を込めるナナシ。どちらが早いか、それは直ぐに解った。

「アイッッッ!!!!!!」

空高く打ち上げられた電撃、一度滞留して一気に雷撃となってアッコへと落下した。迸る電撃が貝殻を焼き内部へと入り込んでいく、如何に強固な盾であろうと絶縁体で無い限り電撃を防ぐ事は難しい。だが回転してる為か利きが弱い、更に電撃を強めるがそれでもアッコは止まらない。それは執念か、それとも死への恐怖か。

「おおおおおおおおおおおお!!!!アイッッッッ!!!!!!!」

渾身の力を振り絞った最後の雷撃、それはアッコの貝を貫く槍となり炸裂した。だが同時アッコは僅かに貝殻を開きそこから真珠を発射した、それは的確にナナシの腹部を捉えた。

「うっぐがぁああ!!」

最後のペルルアタックはナナシに炸裂し、ナナシはそのまま倒れこんだ。だがアッコも相当なダメージを受けたのかその身体は丸焦げになっていた。そして頑なに閉じられていた貝殻を開くとそこからは目を回したアクアがフラフラと姿を現した。

「ヘロヘロヘロヘロー……ばたんきゅ~………」

雷撃は確かに両者(アクアとアッコ)を襲っていた、尋常ではないダメージを。ナナシは立ち上がれそうにも無くアクアも起き上がれそうに無かった。その為ポズンは

「勝負あり!両者、ドロー!!」

紛れも無く両者の全力を尽くした死闘は引き分け(ドロー)という結果に終わった。だがナナシに後悔などなかった、アクアは負ければ制裁されてしまう。だが自分が負けてしまうのは仲間に迷惑が掛かる、ならば両者共に負ける引き分けしかないと考えていた。

「ま、まさか……此処まで上手く、行くとはな………」
「よぉ、手酷くやられたなナナシ」

傍まで寄ってきたジーク、どうやら動けない自分の回収に来てくれたようだ。

「は、はは……カッコ、悪いかのぉ自分」
「いや、素晴らしい物だった。城に戻ったら黄色い声援で一杯だろうな」
「そら……いいなぁ………」

ちらりと横目でアクアを見ると未だに彼女は気絶していた、少しやりすぎたかな?と思ってしまう自分に笑いがこみ上げる。だがその笑いも直ぐに凍りついた、アクアの近くにあのラプンツェルがいるからだ。

「じゃんけんぽい」

なんと気絶しているアクアに対していきなりじゃんけんを仕掛けた、倒れているアクアは手のひらを広げたままのパー。ラプンツェルが出したは当然パーに且つチョキであった。凶悪な笑みを浮かべたラプンツェルはそのまま、腕を振り上げ

「止めろ」

アクアの

「止めろって言うとるんや」

喉元へと

「止めろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

突き刺した――――――

















「………よし、怪我一つしていない」
「ア、アアア………ジ、ジジジイイイイイイクゥウウウウウウウウウウ!!!」

アクアを胸に抱きナナシの直ぐ隣に立っているジークの姿があった。ナナシは痛みが走る身体を起こしアクアを見る、自分が電撃で付けてしまった怪我以外ない姿で気絶している少女の姿があった。アクアは助かったのだ。

「おいジーク、てめぇ如何いう積もりだぁああい?アタシの制裁を邪魔する気かいぃいい?」
「それはこっちの台詞だ婆、何が制裁だ。唯の虐殺を止めて何が悪い!!」

もう我慢の限界であった、本能的に動いた身体は少女の身体を抱き上げて一瞬のうちの元いた場所へと移動していた。敏捷C+、そのステータスを最大限に生かした結果であった。

「ラプンツェル、貴様はこのラストバトルに出て来い!!!俺が勝てば貴様が制裁という名で殺そうとした奴の身柄は俺が貰う!!お前が勝てば、俺の命を、くれてやる!!!」

この時、ジークフリードは竜殺しの騎士としてではなく、唯一人の騎士として目の前の邪悪を打つ決意をした。 
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