異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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第1話 この世界に来て
第一話 この世界に来て
「………ん? こ、ここは………?? どこだ……???」
僕は辺り一面に芝生が生い茂っている見晴らしのいい丘に寝転がっていた。制服越しに伝わる芝生の感触が心地いい。空は雲一つない快晴、鳥の群れがキィキィと変な鳴き声を上げながら飛んでいた。
ここはどこだろう……確か僕はエレベーターが落下して………。僕は目を閉じてあいまいな記憶を奮い立たせる。
……少なくとも今わかるのは僕の住んでいるところにこんな青々とした草なんて生えてなかったし、こんなに空気が新鮮ではないということだ。
「あれは………なんだ……?」
体に力を入れて起き上がり、辺りを見渡すと数人、いや十数人の人影がごつごつした巨大なトカゲのような物を取り囲んでいた。
うおっ、今あのトカゲ口から火を吹いたぞ……。僕はあまりの光景に唖然とする。ドラマか映画の撮影かな………? でも何で僕がこんなところにいるんだ……???
だめだ全く理解できない。僕は思わず頭を抱え込んでしまう。
「ギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
その瞬間、変な叫び声を上げたかと思うと巨大トカゲが包囲網をかいくぐりこちらに向かって突進してきた。
「え、ちょっ……何でこっちくるのおおおおおおおおおおおおおお!?」
僕は絶叫しながら必死に逃げる。だいぶ距離は離れていたはずだがトカゲの走るスピードはとても速く、どんどん近づいてくる。
やばいっ、やられる!
そう思った瞬間―――――――
「ハアアアアアアアアアア!!」
勇ましい声を上げながら突然、水色の髪の少女が現れ、僕を片手で突き飛ばすと巨大トカゲの胸辺りに飛び蹴りを放つ。
「グォォォオオオオオオオオオオオオオ!?」
ズドンという重い音とともに小柄な少女の10倍、いや20倍はある巨体が易々と吹っ飛ばされる。
「ほ、ほぇ………??」
あまりの光景に僕は口をポカンと開けてその場にへたり込む。水色の髪の少女は後から駆け寄ってきた仲間にひっくり返って絶命しているトカゲを指差しながら何やら指示的なものを出すと僕に近づいてきた。
「少年、大丈夫ぅ?」
日焼けした健康的な褐色肌に水色の髪を腰あたりまで伸ばした美少女は僕に無邪気な笑顔を向けながら手を差し出してくる。
「あ、ありがとう……ございます……」
まるでサファイアのような深い青の瞳、すらっとした鼻筋にさくらのような小さな唇に思わず見とれてしまい若干戸惑いながらもその手を借りて立ち上がる。
「しかし君は見ない顔だねぇ~、どっから来たの?」
少女が僕の顔をじっと見つめながら言った。
「に、日本です」
こんな美少女に見つめられたことなんて一度もない僕は心臓がバクバクしてしまう。
「ニッポン……? 聞いたことのない所だねぇ、どこだろ? ねえハンスー、ニッポンて――――――」
僕は僕の答えに不思議そうな顔をしながら少し遠い所にいる茶色のローブをまとったメガネ少年にニッポンとはどこかと聞いている女の子を見ながら確信する。
ここは元いた僕の世界じゃない。
なぜかって?
……なんでこの子を含めて皆耳がエルフみたいに長いんだあああああああああああああああああああああああああ!?
僕は心の中で絶叫する。
「うーん、ニッポンですか……聞いたことありませんね……」
考えるそぶりをしながらメガネをかけたいかにもインテリ系ですって感じのローブをまとった少年が俺と女の子のほうに近づいてくる。うん、この少年も耳が長い。
「そっかぁ……ハンスでも知らないのかぁ、まいったなぁ~」
浅黒い肌の女の子はいかにも困ったぞという顔をする。
しかし何でこの子は上半身だけ何でこんなに露出の多い服装をしているんだ……。これはもうほとんど水着じゃないか……と少女の姿を見ながら僕は思う。
「むぅ~、しかし君耳が短いねぇ~。エルフじゃないのぉ? なんて種族? ゴブリン? スケルトン? ……もしかしてドラゴン?」
少女が僕にほとんど密着しながら聞いてくる、ちょ、あ、当たってる。少女エルフの……まあそんなにでかくはない胸が僕の右腕に当たっている。
「まさか―――――――」
ハンスと言われていた少年エルフの顔が急に青ざめる。
「どうしたのハンス?」
少女エルフが首をかしげる。
「文献で呼んだことがありますが極まれにほかの世界の住民が現れる事があるそうです、その人たちは様々な特殊能力や特技を持っているとか――――――」
ハンスがキラリとメガネを光らせながら言う。
「おお! すごいじゃんそれ! ねぇ少年は何の特殊能力を持っているの? 後名前は? 彼女いる?」
次々に質問を浴びせてくる少女エルフに苦笑しながら僕は質問に答える。
「名前は山崎健斗と言います……特技は……武道を少しかじってました……、彼女は―――――――」
「彼女は?」
少女エルフがぐっと顔を近づけてくる。フワッと化粧品など一切使っていないような女の子の甘い香りが僕の鼻孔をくすぐった。
「い、いないです」
「ほほぉ、そうかそうかぁヤマザキケントっていうんだぁ、あたしの名前はアリス・キャンフィールド、アリスでいいよ。こっちの眼鏡はハンス、とっても賢くてとっても優秀な魔法使いなんだ」
アリスと名乗った健康そうな褐色肌のエルフの少女はハンスと言われた眼鏡をかけた少年の手を引き俺の前に連れてくる。
「はい、握手握手!」
促されるままに僕とハンスさんは握手をする。
「よ、よろしくヤマザキケント君」
「よろしくお願いしますハンスさん……」
「ハンスでいいですよ、見たところ年齢も同じくらいだと思いますし」
「じゃ、じゃあ! ぼ、僕も健斗でいいです……」
あまり人と話すことが得意じゃない僕はかろうじて言葉を搾り出す。
「おーけーおーけー、これで仲良しっ! というかケントこれからどうすんの?」
ハンスと僕の手を上から握ってギュっとするとアリスが僕からやっと離れる。
「う、うーん。特に行く当ても無いと言うか何していけばいいかわかんないと言うか………」
僕の答えにアリスは目を輝かせる。そう言われてみれば……僕はこれから何をしていけばいいんだろう……。別に元の世界に戻りたいとか思わないし……。
「そうなの!? じゃあ私達と一緒に来ない? これから何するかそこで決めようよ!」
「え、あ、はい、そうします………」
アリスのあまりの勢いに僕は思わず肯定してしまう。
「よしっ、そうと決めればさっそく団長に自己紹介しに行こうか!」
「は、は、はいぃぃぃ」
アリスの明るい声とともに首根っこを掴まれた僕は巨大トカゲの死体を囲んでいるエルフ達の方にズルズルとひきずられて行った。
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