イナズマイレブン~クロスライジング~
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動き出す黒
前書き
お待たせしました!
「フットボールフロンティアを制する者は誰か!」
「「「勿論我ら世宇子中!!」」」
「頂点に立つ者は誰か!」
「「「勿論我ら世宇子中!!」」」
そしてその頃、別の場所では雷門中が決勝戦で当たる世宇子イレブンは影山の言葉に続き、言葉をあわせていた。
「私は勝利しか望まない!だが泥まみれの勝利など敗北も同然…!完全なる勝利!圧倒的な勝利のみを欲している!その勝利をもたらす者だけが…『神のアクア』を口にするがいい!」
影山のその言葉と同時にガパッと口を開けた宝箱のような箱。そこに入っていたのは、人数分用意された謎の飲み物『神のアクア』というものだった。
選手達はそれを一気に飲み干すと、それぞれ違う場所に向かった。
影山は最後に「ふっ」と笑いながら椅子に座り、目の前のパソコンに打ち込んだ。【プロジェクトZ】そして二行空けて、もう一回キーボードを打った。
【プロジェクトN】と………
──────────
「お兄ちゃん!いつまで寝てんの!」
「起きてるよ」
「えっ、えぇ!?」
「どしたの心美…」
「えっ、あ、お、おはよう…ちょっと待ってねご飯作るから…」
そして次の朝、家では、いつもはぐーすか寝ている俺が今日は早起きしていた。
そんな俺を見てこの世に有り得ないものを見たように驚く心美。
「……」
「(ちらちら)」
「……」
「(ちらちら)…あ、熱っ!!」
「はは、しっかりしろよ」
「えっ、そ、そうだね…(それは私のセリフだってば…)」
最近、眉間にシワを寄せて、毎日ボロボロで帰ってくる雷藤に対して心美は心配そうに見るが、家では何にも言わないため、心美をただただ見守っていた。
───────────
「うおおおおーっ!!ゴッドハンドォォ!!」
ドッシイイイイッ!!
「がぁぁぁぁぁ!!」
今日はイナビカリ修練場で激しい特訓に励む俺と円堂。
俺が出もしないゴッドハンドを練習しているころ、円堂は隣でシュートを胸部分で受けていた。俺も流石に気になり円堂に聞いてみる。
「円堂、何やってるんだ?」
「え、いやぁ、じいちゃんのノートにマジン・ザ・ハンドはここだって書いてあるから、胸を鍛えればいいのかなって」
俺はそれを聞いて、素直に頭に浮かんだことを円堂に伝えた。
「それってもしかして、肺とか心臓のことじゃないか?」
「え?そ、そうか!そういう考え方もできるな!」
そう言うと円堂は走ってイナビカリ修練場から飛び出ていった。
「……円堂も忙しいな…、俺も早くゴッドハンド習得しなきゃな」
そしてガトリングのように、飛び出てくるボールに向かい、俺はもう一度手を出し叫んだ。
「ゴッドハンドォォォ!!」
────────────
ぶくぶくぶくぶく
「ぶっはぁぁぁぁ!く、くそっ、もう一回!」
俺に「胸部分じゃなく、肺や心臓を鍛えてみろ」と言われて、すぐタライの水に顔を突っ込み肺の特訓を始めた円堂。
そんな風にジャバジャバ何度も顔を突っ込んでいるところへ、今度は影野がやって来た。
「何してるんだ、洗面器に顔なんか突っ込んで」
「え?いやぁ、じいちゃんのノートにマジン・ザ・ハンドはここだって書いてあるから、肺を鍛えればいいのかなぁって思ってさ」
「肺…なのかな…」
「ん?」
「呼吸って意味かもしれないよ」
「ん…そっか呼吸か。すーはー…あ、そうだ!みんなの練習に付き合わなくっちゃ!」
その時グラウンドでは、雷門イレブン全員が実戦さながらの激しい練習を繰り広げていた。
やはり次の相手が世宇子とあっては生ぬるい練習などしていられないようで、気合いのノリもこれまでとは段違いだ。
「円堂君たち、必死ね…」
「あぁ…でもなんて言ったらいいんですか…?私たちって、見てるだけであそこに参加できないっていうか…」
「もどかしい…?」
「そう、それですよ!」
そんな雷門イレブン達を、マネージャー4人組は少し寂しそうな目で見つめていた。
自分達もみんなの役に立ちたいのに、ただ見てることしか出来ないことをもどかしく思っているようだった。
「じゃあ、みんなに気持ちよく練習してもらうために…やりますか!」
「やりますか!」
「そうね!」
「えっ?ど、どういうこと?」
「「「こういうこと!!」」」
みんなに気持ちよく練習してもらうための秘策、それはなんとおにぎり作りだった。
せめてみんなの空腹くらいは、これで満たしてあげたいと思ったようだ。
「熱いから気をつけてね~」
「あつっ、あつつっ、あっつ~い!」
そしてあつあつのお米を一生懸命握り始める心美。
しかしそんな心美と春奈と秋を、夏未はひたすらポカーンと見つめ続けていた。
「ほら、夏未さんも」
「えっ?え、ええ」
秋に促されてとりあえずしゃもじを掴んでみる夏未。しかししゃもじを持つのもこれが初めてのようだった。
やがて意を決したように、炊飯器にしゃもじを突っ込んで山盛りのご飯を手に持つが…
「あっつぅぅぅいっ!!あつっあつっあぁぁぁ!!」
あまりの熱さに耐えかねて持っていたご飯を部屋中に撒き散らしてしまった夏未。
まともにご飯も握れないその様子に、心美や秋や春奈も苦笑いを浮かべてしまった。
「も、もしかして夏未さん…おにぎり握ったことないの…?」
「夏未さん…お嬢様だから…」
「うぅ…ご、ごめんなさい…」
「じゃあ男子たちにならって…必殺ダブル茶碗!!」
あつあつのご飯を触らなくても済むように、心美は必殺のダブル茶碗を夏未に教えることにした。
「これにご飯を入れて、キャップをかぶせて…振る!こうすると…」
「はっ…!?」
「形は出来てるし少し冷めてるから、あとは手に水をつけて握ればいいよ」
茶碗である程度形を作ってから、素手で仕上げだけを行うというこの技。これなら夏未でも出来ると心美は考えたようだ。
「やってみて?」
「う、うん…」
しゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃか
「も、もういいんじゃないかな…」
「え、そ、そう…?
(パカッ)
と蓋を開けるとある程度形が完成している状態を少し感動しながら夏未は呟く。
「わぁ…!こ、これを握るのよね」
「そう」
にぎにぎ にぎにぎ
「で…できた…?できた!できたぁ!ほらほら、凄い!生まれて初めておにぎり握ったわ!!」
いろんなハプニングをあったが、炊飯器の中身が空っぽになるまで、ありったけのおにぎりを作った4人。出来たてをさっそくみんなの前に持っていくと、休憩を兼ねて食べさせてあげることにした。
「みんなー!」
「おにぎりが出来ましたー!」
「「「うおおおおおおお!!」」」
「いっちばーーん!!」
円堂がそう言い素手で、おにぎりを取ろうとすると、お嬢のビンタが円堂の手を襲う。
べしっ
「い、いってぇ!?何すんだよぉ…」
「手を洗って来なさい!!」
おあずけを食らって仕方なく手洗い場へ向かう俺たち。しかし、おにぎりが食べられるとあってその足取りは軽やかだ。
「おっにぎ~りおっにぎ~り~♪うん?」
円堂がランラン状態で、水道に向かっていると、目の前から全てを見通した天才が現れた。
「(ふきふきふき)」
手を洗いに行って正解だったぜ!とばかりに、ゆうゆうと俺達を置いておにぎりへ向かう鬼道…。
すでにこの事態を見越して手洗い場へ向かっていた鬼道。俺は鬼道に向かい呟いた。
「……やっぱり鬼道は天才ゲームメーカーだぜ……」
というかこの鬼道の行動は想定外すぎて苦笑いを浮かべてしまった。
そして優しい鬼道はみんな戻ってくるまで待ってくれていた。
全員の手洗いが終わるまで、おにぎりに手をつけないであげるとはなんて鬼道のフェアプレー……。
鬼道…、俺は感動しているよ…
「ふふ、はいどうぞ!」
「「「いただきまぁぁーーす!!」」」
いよいよ心置きなくおにぎりに手を伸ばす俺たち。
一之瀬や土門は真っ先に秋のおにぎりに群がり、鬼道は春奈のおにぎりをムシャムシャ頬張っている。
「はい、お兄ちゃん!お兄ちゃん専用のおにぎり!!」
「お、デカいな!サンキュ!」
俺がそれを頬張ると、中身は角煮だった。
「やっぱ、心美の角煮おにぎりは最高だな!!生き返るよ!」
「へへっ…!」
心美が嬉しそうにおにぎりを頬張る俺を見ながら、微笑んでいると、隣でも微笑ましいことがおきていた。
「ははっ、ヘンテコな形だな~」
「…それ、私が握ったんだけど」
そして円堂が選んだのは夏未のおにぎりだった。秋や春奈と比べていびつな形のおにぎりに、思わず笑ってしまう円堂だったが…
「あ、あぁ!ま、まあ形はどうであれ味は一緒だよな!」
もぐもぐ
「…んぐ!?しょ、しょっぱ…!」
「お、お塩つけすぎたかしら…」
「あぁ…いや…練習で流した汗の分だけ、塩分補給しないと…かはっ!?の、のどに…つまっ…」
「も、もう!世話が焼けるわねぇ!」
見た目だけでなく味も塩まみれ…、さらに喉に詰まったりと踏んだり蹴ったりの円堂だったが、お嬢に背中をバシバシ叩かれて介抱してもらえるという、微笑ましい事をしてもらえる円堂だった…。
後書き
雷藤「角煮おにぎり最高だな!」
心美「でしょ!ちゃんと自家製のタレ使ってるからね!」
雷藤「何者なんだ…心美…」
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