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ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか

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進攻

翌日、とはいっても迷宮のなかなので日は昇らないため、時計を見てそう確認した。
あれから、コルブランドがめんどくさかったが、最終的にはお帰り願った。うむ、人間、話し合えば分かり合えるのだよー(棒読み)

武器の入った袋から【物干し竿】を取り出し、袋と交差させて肩にかける。二Mの長槍が収まる袋は少し異様だが、俺にはもうなれたようなものだ。戦闘に支障はない。


「ーーー出発する」

フィンさんの静かな号令とともに野営地を発つ。
ここに残る【ロキ・ファミリア】、並びに【ヘファイストス・ファミリア】の面々の叫び声な送り出されながら、一枚岩を下りて灰の大樹林を進む。

戦闘員八名、サポーター五名、整備士一名。総勢十四のパーティだ。

前衛にはローガとヒリュテ(妹)、中衛にはアイズとヒリュテ(姉)、フィンさんそしてコルブランド。
後衛にはリヴェリアさんとガレスさん、そして俺だ。
普段はアイズが前衛でローガが中衛らしいのだが、急にどうしたのだろうか。後衛の幹部二人に聞いてみたのだが、やれやれといった様子でローガを見るだけだった。

まったく、訳がわからないよ!

サポーターの人たちが巨大な得物や大盾が装着された大型のバックパックを揺らすなかで、五十階層西端に存在する大穴を目指す。五十一階層へはそこから行けるらしい。

「もう、何でベートと前衛なのー」

「うるせぇ、馬鹿アマゾネス」

緊張しているサポーターくんたちが無言の中、不壊属性(デュランダル)の大剣を肩に担ぐヒリュテ(妹)が文句をこぼす。
銀靴(フロスヴィルト)、腰に不壊属性(デュランダル)の双剣、そしてナイフ型の魔剣を十以上レッグホルスターに装填した完全武装のローガもそんな声に口を曲げた。

「ほんと、余裕だなあいつら」

「というわりに、緊張してないようだが? 式」

「ハハ、こんなとこでそんなんだったら大変ですよ、リヴェリアさん」

同じく後衛のリヴェリアさんと肩を並べて歩くなか、ガレスさんもふむ、と頷いた。

「まあこやつほどの実力があれば大丈夫じゃろ。ラウル、お前も式を見習っておけ!」

「は、はいっす!」

「レフィーヤも。体の力を抜け」

「は、はいっ、リヴェリア様っ」

俺とは反対側を歩くレフィーヤに語りかけるリヴェリアさんに、中衛位置で縮こまっている青年に大声を張り飛ばすガレスさん。


「さて、ここからは無駄口はなしだ。総員、戦闘準備」

やがて灰の大樹林を抜け、現れた大穴にフィンさんが声を発する。

見れば、この五十一階層へと続く連絡路は険しい坂になっているようだ。

崖と同義の急斜面を見下ろすと、階下にはいくつものモンスターの眼光が浮かび上がっていた。
……夜中、集団の猫が現れたら、こんな感じなのだろうか

皆が武器を構えるなか、俺も背中の【物干し竿】を抜いた。
一・五Mを越える片刃の白刃はその刀身に美しい波紋を浮かび上がらせる。

一瞬、コルブランドの視線がこちらに向いたが気にしない。

「ーーー行け、ベート、ティオナ」

二人が発進する。

風のように急斜面を駆け下りる二人に続いて未到達領域へと進攻は開始されたのだった。

安全階層(セーフティポイント)を抜けて早々発生したモンスター達との交戦はローガとヒリュテ(妹)が瞬く間に終了させる。

「予定通り正規ルートを進む! 新種の接近には警戒を払え!」

五十一階層から五十七階層までは深層では珍しい迷宮構造となっているらしい。
上層と似たような構造ではあるが、規模と広さが桁違いなダンジョンの中で、走行を止めないパーティはフィンさんの指示を聞く。
こんな構造を覚えてるとかマジで尊敬するんだけど

「先の通路から生まれる」

「前衛は構うな! アイズ、ティオネ、対応しろ!」

「はい!」

アイズの剣士としての直感が進路上のモンスター産出を予期して、フィンさんかわ声を飛ばす。
かくいう俺も、【心眼(偽)】やらのお陰でそういうのも分かっている。

「シッ!!」

追いすがってくるモンスターどもを斬り伏せながらパーティの最後尾からついていく。

先ほどから、出くわすモンスターの数が尋常ではない。
これが深層の脅威。【バルドル・ファミリア】だけで挑んだ場合、どこまで耐えきれるのか想像がつかない。

行く手を阻むようにして横道から、十字路の先から、天井から、壁面から。
だがしかし、途切れないモンスターとの交戦にもパーティは怯まない。

ローガが雄叫びとともに回し蹴りでモンスターの上半身を吹き飛ばす。
死体には目もくれない。【凶狼(ヴァナルガンド)】の二つ名は伊達ではない。


対するヒリュテ(妹)も対抗意識を燃やして大剣を振り回す。

中衛でも、アイズやヒリュテ(姉)の他に、コルブランドが瞬殺したモンスターの武器素材(ドロップアイテム)をつかみとっている。

「……刀、か」

コルブランドの得物は太刀。俺と同じ刀だ。
先ほどの太刀の一閃は居合いだろう。鞘に収めた刀を一気に抜き放つ技。

長さ的に、俺にはできないことだ。

「レフィーヤ、迂闊に『魔力』を練るなよ。例の新種を引き寄せる。詠唱は奴等と遭遇してからでいい、今はアイズ達に任せろ」

「わ、わかりました!」

隣り合って走っているリヴェリアさんとレフィーヤ。
俺はその二人の後ろから追走しているのだ。パーティの最後尾。追ってくるモンスター達を躊躇わずに斬っていく。

前衛で、ヒリュテ(妹)による大双刃(ウルガ)による無双が開始される。すると、その彼女が、向こうからやって来る音に反応した。

「ーーー来た、新種!」

その言葉に、俺は隙間から前方を伺った。

幅広の通路を埋め尽くす黄緑色の塊。
極彩色の表皮はエイのように扁平状の腕。疣足の多脚が迫りくる。
で、あれの中には何でも溶かす腐食液、と。


テラキモス


「うっわぁ……気持ち悪っ」

「式! 気を抜くなよ!」

呟いた言葉が聞こえたのか、リヴェリアさんにお叱りを受けた。

「隊列変更!! ティオナ、下がれ!」

即時かつ即行の指示がフィンさんから出された。
言われた通りに下がったヒリュテ(妹)は飛び出してくるあいとは阿吽の呼吸で入れ替わる。

「【目覚めよ(テンペスト)】」

風を纏ったアイズ。それに並んだローガがその風を銀靴(フロスヴィルト)に宿すと二人は芋虫型の大群に躍りかかった。

後衛の俺から見てもやりすぎなんじゃないかってくらいの夢想っぷり。最大の武器である腐食液でさえ風の前には無力だ。

「【閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け、三度の厳冬ーーー我が名はアールヴ】!!」

「総員、退避!」

フィンさんの声で、前衛と中衛がばっと左右に割れ、リヴェリアさんから翡翠色の魔法円(マジックサークル)
構えられた白銀の長杖から氷雪の閃光が迸る。

「【ウィン・フィンブルヴェルト】!」

三条の吹雪が通路を突き進む。
蒼と白の砲撃が迷宮ごと前方のモンスターを凍結させる。アイズとローガが横道に避難するなか、一直線に伸びる通路は突き当たりまで凍ってしまった。
後ろから見てたけど、すごい威力だな。

「いやはや、凄まじい『魔法』だ。これが『魔剣』で繰り出せるようになれればは」

「そんなかとになれば魔導師(われわれ)の立つ瀬がない」

凍てついた世界を見て、コルブランドがとんでもないことを言い出した。
こんなのが剣を振っただけで? なん本も? ……それはいったいどんな悪夢なんでしょうか

アイズ達が合流し、念のために氷像を全て破壊しながら進む。
氷と霜に覆われた壁面からは何も生まれない。そのため、なんとも容易く下部階層へとたどり着く。

「こここらはもう、補給できないと思ってくれ」

広く長い階段でフィンさんがパーティ振り返った。
アイテムを使うならここで、ということであるらしい。だが、ここまで俺達は無傷。使う必要なんてない。

昨日のリヴェリアさんの話によればここ、五十二階層からは狙撃されるらしく、そのために一気に駆け抜けなければならないとのこと。
狙撃とはどういうことなのか、詳しく聞こうとした俺なのだが、リヴェリアさんは、行けば分かる。今日はもう寝ておけ、と返すのみだった。

「のお、式。こっから何かあるのか?」

「話によると、狙撃かなんかって話だ。コルブランドも気を付けておけよ」

「あいわかった。それと今更だ。椿で構わぬよ」

「……ほんと、今する話じゃないな……」

呑気というか、なんというか

やがて、行くぞ、というフィンさんの合図でパーティは五十二階層へと進出した。のはいいんだけど……


「いきなりの全力疾走! これも狙撃とかいうやつの対策かね!」

「さてな。手前にはよくわからん」

先ほどよりも明らかに速くなった速度(ペース)で五十一階層と変わらない迷路を駆け抜けていくフィンさん。どうでもよいのだな、はたしてうちの団長はこの迷路を覚えきれるのでしょうか。

「戦闘は出来るだけ回避しろ! モンスターは弾き返すだけでいい!」

先程からフィンさんの指示が絶えない。
モンスターとの遭遇率は変わっていないのだが、今回はそれを無視してつき進む。

サポーターもついていこうと必死になるなかで何かイヤーな予感を感じながらパーティに着いていく。

俺の想定してたのは、どこから狙われるかわからないなかで、全方位に注意しながら慎重に進むというものだった。だが、ふたを開けてみればどうだ? なりふり構わない全力疾走。背中から撃たれれば格好の的だ。だが、フィンさんがそんな愚作を敢行するとは思えない。

……いったい何があるというのだ

「おおっ、『ドロップアイテム』」

走りながらの迎撃で仕留めたモンスターから発生する貴重な武器素材(ドロップアイテム)に目を輝かせる椿。だが、拾いに行こうとする彼女をサポーターの一人が止めた。

「止まっちゃダメっす!?」

「むっ?」

何やら、かなりマジなトーンで言われている。

「何故だ? それとも、式のいう狙撃というやつのためか?」

「そのとおりっす……!?」

二人のやり取りを耳にいれつつ、俺は多だひたすらに走る。
狙撃……いったいなんなんだ。確かに狙撃は自分の死角からされるためかなり怖いが、こんなダンジョンのどこにゴ◯ゴ13さんがおられるのだろうか。

てか、狙撃なんて、【ロキ・ファミリア】じゃなかったら到底信じなかったぞ


「……ん?」

何かが響いた。

「……はて? 竜の、遠吠え?」

俺が感じた、地の底から昇ってきたかのような禍々しい雄叫び。
それは間違いなく、モンスターの頂点に君臨するものの叫喚だ。だが、そんなモンスターの王はどこにも姿が見られない。

……嫌な予感がする

「走れ! 走れぇ!!」

誰かの怒鳴り声が聞こえた。さらに速度(ペース)は速くなる。

相変わらず溢れてくるモンスターを前衛が駆逐しながら進むなか、俺は耳にに神経を傾けた。

響く竜の雄叫び。これはーーー

「ーーー下から?」

まさかーーーと思い至ったその時だった。

「ベート、転進しろ!!」

フィンさんの指示が飛び、先頭のローガ、そして遅れてヒリュテ(妹)とパーティ一団が正規ルートを外れて横道に飛び込んだ。その直後のこと





「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」





地面が爆発した

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっ!?』

突き上がる轟炎、そして紅蓮の衝撃波。
何もかもが一瞬で真っ赤に染まった。
爆炎による熱で眼球が乾くんじゃないかと思った。顔にも熱風が叩きつけられる。

まるで特大の地雷が炸裂したような現象。階層の床がまるごと紅炎に包まれ、パーティの通過地点上にいたモンスター達を全て呑み込み、蒸発させる。

なんと恐ろしいことか。

しかも、炎はその勢いを止めず、さらに五十一階層を突き破る。

これが狙撃……?

「……クッソ、出鱈目すぎるだろぉが……!?」

「迂回する!! 西のルートだ!!」

フィンさんの指示に従ってパーティは正規のルートを外れた広幅の通路を全力で走る。

すぐに響く大爆発。

芋虫型(モンスター)を引き寄せてもいい!! リヴェリア、防護魔法を急げ!!」

「ーーー【格好木霊せよーーー心願(こえ)を届けよ。森の衣よ】!」

「敵の数は!?」

「六、いや七以上!?」

足をとられるほどの振動と途方もない熱量が襲いかかる。
矢継ぎ早にフィンさんの命令が飛び、パーティ内のあちこちで声が聞こえた。


鮮明に響く竜の咆哮。階層全域を震わす爆発の連鎖。

空いた穴から瓦礫がガラガラと音をたてて崩れていく。

そして、とうとうそれが視界に入った。突き抜けてくるのは、紅蓮の大火球だった。

竜のブレス。

俺達を狙っているのはそれだった。

こうなりゃ、無理してでも戦車(チャリオット)を……

「ラウル、避けろ!?」

「えっ?」

「ラウルさんっ!?」

その声に現実に引き戻された。
聞こえたのは悲鳴に似たレフィーヤの声。見ると、横から迫っていた太糸に狙われていたサポーターの一人を突き飛ばし、レフィーヤが腕を絡め取られていた。
捕縛され、ぐんっと隊列から引き剥がされる。

「レフィーヤ!?」

「くそっ!?」

突然のことで対処ができない。ましてや、レフィーヤまで少し遠い。動けないのだ。

レフィーヤを捕縛した蜘蛛のようなモンスターはその顎を開口させーーー燃え尽きた

膨れ上がった地面から爆炎が吹き出し、巨大蜘蛛を消滅させた。

そしてーーー


「レフィーヤ!?」

レフィーヤが穴から落ちていく。


すかさず後を追ったのはヒリュテ姉妹、そして意外なことにローガだった。

「アイズ、行くな!」

それに続こうとしていたアイズをフィンが制止する。

「ラウル達が縦穴に落ちれば全員は守りきれない、僕たちは正規ルートで五十八階層を目指す! 君はこっちに残れ!」

「……っ!」

フィンさんの的確な指示に押し黙るアイズ。
聞けば、五十八階層は広大な単一の広間ましい。たどり着けば合流は容易い。
それに、ここであの芋虫型に相性の良いアイズがいなくなればサポーターを守りきれるとは限らない。いや、被害が出るのは確実だろう。

けど、問題はねぇ!!

「フィンさん! ここでひとつ提案だ!」

「……式、どうしたんだ」

「俺の戦車を使う!!」











「ALaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLa!!!」


『ヴヴォォオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!』


焼いて、踏み潰し、さらに引き殺す。

サポーターを含めた全員を乗せた戦車(チャリオット)がダンジョンの深層をひた走る。

「これは……すごいね……」

「一度乗ったことはあったが…………圧巻だな」

「…………」

ローガ達のことはガレスさんにたのみ、モンスター達を蹂躙して進んでいく。
俺が出した案は、この戦車で五十八階層まで突破するという実にシンプルなものだった。
最近、他派閥を乗せることが多い。というより、【ロキ・ファミリア】にたいして、かなり甘くなっているような気がする。

「フィンさん! 次は!?」

「そこを左に曲がってくれ

「あいよぉっ!!」

残念なことに、俺はこの階層のことを全く知らないので、フィンさんの指示に従うだけなんだが


「しかし、これはすごいね。初めてみたときから気になってたけど、乗ってみたらそのすごさが分かるよ」

「そりゃあまぁ。【バルドル・ファミリア】(うち)の切り札その一みたいなもんですからね」

「てことは他にもあるのかい?」

「ハハ、フィンさん。そこはノーコメントです。こんな時に探らないでくださいよ」

出てくるモンスターは全て焼くか潰すかの二つに一つ。
凄まじい速度で五十二階層を駆け抜ける戦車にもはや敵などない。
あっという間に下部階層への階段にたどり着いた。

迷わず下りる


「砲撃は……止んでるみたいですね」

「ああ。ガレスたちだろう。今のうちに急ごう」

階層無視というチートをやってのける竜を押さえてくれているだけでもかなり楽だ。
だが、かわりに縦穴から飛竜(ワイヴァーン)が出て来て襲いかかってくる。まあ、相棒の雷の前には無力なのだ後



「っ!? 新種がきたっす!?」

「分かっている。いや待て、あれは……」

突如出現した芋虫型の群れ。そのなかでも殊更巨大の大型の上に紫紺井のフーデッドローブが揺らめいていた。

「……知り合いですか?」

「いやあの人みたいなのについては知らないかな。ただ、あの巨体の芋虫型、あれは二十四階層で会ったことがある」

「……なるほど、あれが……」

いつかの、リヴェリアさんが話してくれたモンスターなのだろう。そして、あの人みたいなのは俺は知っている。

あのレヴィスとかいう(アマ)の仲間だったはずだ。

四肢にはブーツとメタルローブ。振り落とされずにモンスターの上にたつ不気味な存在。

「……行くぞっ!!」

はぁっ!! と手綱を振るい、戦車を走らせる。向かうのは、やつらの正面!!

「式! このまま行くつもりかい!?」

「心配ご無用! 策はあります!!」

後ろでサポーターくんたちが震えるなか、戦車は迷わずに突っ走る。

『殺レ』

次の瞬間、芋虫型達が勢いよく開口し、腐食液を放出した

「式!!」

「分かってます! 相棒、飛翔し(かけ)ろ!!」

俺の声に答え、雷が轟き、車体が浮く。
その光景は初見の奴等にとっては驚愕の一言だろう。

「……飛んでる……のかい?」

通路の高い天井、そのすれすれまで高度をあげ、芋虫型たちの上を駆けてゆく。


神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)

第四次聖杯戦争において、ライダーであるイスカンダルの宝具。
その地形にもっとも適した形となり、空さえま駆けるまさにライダーにふさわしい対軍宝具。

『ナニッ!?』

「フハハハハハハ!!! 腐食液も、ここまでは届くまい!!」

「……流石【秘剣(トランプ)】。【バルドル・ファミリア】の切り札。非常識だね」

「誉め言葉として受け取っておきます」

あの巨大芋虫をけしかけようとしている怪しいのを無視して、俺達はそのまま突き進んでいく。
視界から芋虫型がいなくなったところで車体を接地させた。
追いかけようとしても、この戦車に追い付けるはずがない。

「フィンさん! このままいきますよ!」

「ああ! 今はガレス達との合流を優先する。急いでくれ」

「あいよぉ!!」

手綱を振るえば、答えるようにして相棒達が雄叫びをあげ走る。

蹂躙制覇に敵はない。

五十八階層へ到達したのは、それからすぐのことであった。





 
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