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戦国異伝

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第二百二十六話 徳川家の異変その三

「小田原は東国全体を見るには少し場所が悪い」
「だから小田原にそのまま入られず」
「江戸城を築かれたのですか」
「そしてあの城から東国を治められる」
「睨みも利かせるのですな」
「そういうことじゃ、あの城にもかなりの方が入られるぞ」
 織田家から、というのだ。
「あの城がある限り織田家は東国も無事治められる」
「ですな、あの巨大な城があれば」
「東国も安泰です」
「では、ですな」
「織田家の支配は東国においても磐石」
「そうなりますな」
「そう思って良いであろう、そして竹千代の名が出たが」
 家康はこのことから我が子についての話をした。
「竹千代は今は岡崎におるな」
「はい、左様です」
「既に江戸から岡崎に戻られています」
「そしてそのうえで」
「三河を治められています」
「それは何よりじゃ。わしの跡はあ奴じゃ」
 信康しかいないというのだ。
「あ奴にはこれからも政に励んでもらいじゃ」
「政を今以上にですな」
「備えて頂くのですな」
「その為にも」
「竹千代様を岡崎に置かれていますか」
「やがて浜松に入ってもらう」
 岡崎から、というのだ。
「今度は遠江を治めてもらいじゃ」
「そして、ですな」
「やがては駿河も」
「この駿河にも入って頂き」
「駿河も治めて頂き」
「そのうえで」
「あ奴に家を継がせる」
 徳川家、百六十万石のこの大身をというのだ。
「是非な」
「ですな、竹千代様は立派な方です」
「必ずや徳川家の主に相応しい方になられます」
「今もそうですが」
「これまでよりもさらに」
「あ奴は大きくなる」
 家康は笑みも浮かべていた、そのうえでの言葉だ。
「我が子が大きくなることを見ることの何と楽しいことよ」
「おお、殿もそう言われますか」
「子の成長を」
「そのことを」
「そのことがわかった」
 やはり笑みで言う家康だった。
「父親になってな」
「父とはいいものですな」
「子が大きくなっていくのを見て楽しめるのですから」
「実は我等も」
「そのことを楽しんでいます」
「それは何よりじゃ。では竹千代にも励んでもらおう」
 家康はこの時は家のことは万全だと思っていた、だが。
 ここでだ、闇の者達は徳川家について話したのだった。
「あの家はです」
「確かに狙い目ですな」
「御前が仰る様に」
「その通りですな」
「そうじゃ」
 まさにとだ、老人の声も言うのだった。
「わしが言った通りじゃな」
「徳川家康は駿府にいますが」
「嫡男徳川信康は三河にいます」
「二人は離れています」
「これは実に好都合」
「まさに狙い目ですな」
「そこを狙う、ではこれよりじゃ」
 まさにだ、今からというのだ。 
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