ホウエン地方LOVEな俺がゲームの中に吸い込まれちゃった
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水は大事
「ちょっと!聞いてるのかい?」
……思考が停止していた。
「って……なんで俺がフロンティアブレーンなんだ! バトルデュエルなんて聞いたことねえぞ!」
俺のターンドロー!って?
「なに言ってるんだ。一年前君がバトルフロンティアを制覇したとき、僕がブレーンにならないか? と誘ったら二つ返事で了承してくれたじゃないか!」
し、しらねえぇぇぇぇ! と叫びたかったがグッと堪えた。この人実は鋭いとかいう設定ありそうで怖いからボロを出さないようにしておく。
「そうだったそうだった。そんなこともあった……ようななかったような……」
最後の方が尻すぼみになったが大丈夫だろ。うん。
「いやまあ君が挑戦を好むのはよく知っているけどねえ、だからって待ち構える側になった時に飽きて逃げるというのもどうかと思うよ?」
「そ……そうだよな。うん。……てか俺っていつ頃からホウエン離れてたんだっけ? ……いや別に知らないとかじゃなく純粋に忘れていただけであってやましいことなんてないんだけどね!」
「やましいこと? ……まあ君が離れた時期は分からないけど、行方不明になった時期といえば大体半年くらい前じゃないかな?」
「あ、ああーそうだったそうだった」
いやー半年。そうだよ半年だよ。
何せよ俺はバトルフロンティアを制覇した後にこの地方に来たってことがわかった。
フロンティアブレーンというのは驚きだがきっと原作ゲームでは明かされなかったその後のストーリーということで今は納得しておこう。
でも一つだけ。何故『ユウキ』……つまり今の俺はバトルフロンティアなんていう面白そうな場所を放棄してまで行方を眩ませる行動をとったのだろうか。更に行方不明になったのも半年前。今日この日まで俺は何をやっていたんだ?
今は考えても仕方ないし、やっぱりホウエンに行けばそれも含めて何かが分かるはず。
……あ、そうだ。ホウエンのことエニシダに聞かないといけなかった。
という思考に至ったところで、丁度エニシダはその話に話題を切り替えた。
「そういえば君、ホウエンの船探してるんだってね。漸くホウエンに戻る気になった?」
「そうですね。取り敢えず心配も掛けたでしょうし顔見せに戻ります」
俺がいうとエニシダは、はあーと溜息をついた。
「なんでこうもタイミング悪く……」
な、なにが?
「……いやね、実は今ホウエン地方周辺で原因不明の異常気象が起きてるんだよ」
原因不明……?
「非常に困ったことに回復の兆しもなく、ホウエン行きの便は全部欠航。僕自身も帰れなくて困ってるんだよ」
「なんと……」
勘弁してくれよ!俺はホウエンの名所を回るの楽しみにしてたんだぞ!
「うーん。このまま帰れないのはなかなか……そうだな。あれなら君、この地方見てくればいいんじゃないか? 半年間何をやっていたかは知らないけど、まだカロス全てを見て回った訳じゃないだろ?」
「そうだなー」
でもこの……カロス地方は俺の知識が及ばない範囲だ。
もしここがXの中だとすると確実に何かストーリーも進行するはず。そんな死亡フラグ立ちそうなことはご遠慮願いたいのだが……。
今更ながら悔やまれる、俺が事前の下調べをしない派だったことが。
でもホウエンに行けなくてここで燻ってるのはもっと嫌だ。……困った時は俺のポケモンもいるんだし何とかなるか。
「……じゃあ行ってみます」
「そうか。ならもしホウエンへ出航が決まったらポケナビに連絡するよ」
「助かります」
そうして俺のカロス地方冒険の旅は始まったのだった。
***
「取り敢えず一番近いミアレシティからかな?」
エニシダと別れた俺はショップでタウンマップと『るるぽ』という旅行ガイド誌を買い、目ぼしい場所をあさった。
あと一つ言っておこう。青い屋根だったころのショップの方が俺は好きだったぞ。未だに何故ポケモンセンターと一緒にしてしまったのか疑問に思っているくらいだからな。やっぱりあのショップのBGMは良かった。なんか買い物に来たという感じがする。
「……ってそんなことじゃなかった」
そうそう、とにかくミアレシティに向かわなくては。
「えーっとミアレに行くには……っと……カロス発電所!?」
おお! これは良い観光スポット!
なんせ……、
「コイルの予感!」
恋の予感ならぬコイルの予感。
うん、滑ったね。
***
さてさてそんなこんなでヒヨクシティを南に抜け13番道路、通称ミアレの荒野。まあ地方に必ず一個はある砂漠エリアってやつだな。そんな場所に来てまーす。
「おー!ナックラーが蟻地獄作ってる! おー!こっちは……フカマル? ……おー!フカマルが砂を泳いでる!」
すっげぇ! 砂を泳ぐとかどうなってんだ?
「……にしても」
風強っ!
砂埃と共に歩けないくらいの強風。目や口には砂が入るし、いちいち野生のポケモンが襲ってくるから面倒臭い。
もう喋るのも辛くなってきた。砂で視界が悪いわ体力も奪われるわではっきりいって砂漠を侮ってた。こんな軽装備でくるとこじゃなかったんや!
しかしまあ……見えない。自分がどっちに進んでいるかすら曖昧だ。
「水が……水が欲しい」
軽装備ということは水すら用意していないということ。これはマジで行き倒れるぞ。
くそ!こんなことならるるぽに書いてあった、『13番道路は砂漠地帯です。死者が出る程なので決して侮らずに。お急ぎでない方は迂回した方が良いでしょう』って記事を信用すればよかった。
「あ、そうだ。るるぽ」
そういえばその記事に何か重要なことが書いてあった気がする。
俺は急いでバックからるるぽを取り出す。そこには……。
『それでも迂回する暇はないという方にワンポイントアドバイス!』
おっ!
『水タイプのポケモンを持っていくと一気に道中が楽になります』
それだぁぁぁぁぁぁああああ!俺は思わず叫んだ。
……これはもう、アイツしかないだろ。
「でてこい!ミロカロス!」
モンスターボールを放る。
「ミロォ!」
こ、これは……。
「う、ふ、ふつくすぃ」
【ミロカロス、ああミロカロス、ミロカロス】
思わず一句詠んでしまう。純白のパールを彷彿とさせる肢体に人魚もびっくりな見事な鱗。何処かの芭蕉さんも松島以上に度肝を抜かれることだろう。
「うっ……うう」
おまけに散々探しまくったヒンバスの釣りポイントの思い出が蘇り、涙が出てきた。……あのな! DSから始めた奴には分からんだろうがあのポイント探しは苦行だったんだぞ!
「う、ううっ。ミロカロスー!うおーー!」
「ミ、ミロっ?」
まあ察しのとおり、自分のポケモンを見て抱きついてしまうというはたから見れば変態極まりない行為をした俺であった。
羨ましいだろー?ミロカロスだぜ?ミロカロス。もうなんか感動しすぎて変な気分だぜ!
……じゃねえよ。だからポケモン見たら抱きつくのは辞めよう。我慢だ。自分でいうのもアレだが変態じゃねえか。
「くっ……名残惜しい! だが……!」
ミロカロスを出した本当の目的。
「『あまごい』してくれ」
俺が頼むとニヤリと笑ってミロカロスは一声鳴いた。……あらやだ、イケメン。そういえばこいつ♂だったな。美しすぎるから♀かと勘違いしてたぜ。
ポツポツ。
「いや、これはすごい。なんだこれ」
ポケモンの技は優先順位の一番上が砂嵐の状態でも上書きされるらしい。マップ効果無視だ。
叫んで数秒もしないうちにポツポツと来て今はもう大雨だ。
「と、とんでもねえな。一瞬で砂嵐が止んだぞ」
「ミロー♪」
こんな……もう科学とか要らなくね? だってポケモンの技使えば天気だって変化できるんだぜ。オーバーテクノロジーにも程があるだろ。
「にしてもちょっとこれ」
ビチョビチョだからそろそろ雨止めて欲しい。……いや何ターンか経てば自然にやむのかも知れないけど。単位換算じゃないからどれくらいで終わるかわからないじゃない。
……と、
「うおー。なんだなんだ!砂嵐が止んだぞ!」
唐突に右隣から声が。
「ヤバイ」
……危ない人だ! 危ない人がいる!
いつの間にか隣に全身真っ赤な衣装を着た男が! ……ポケモンの世界なら絶対いるとは思ってたけど、きっとこれ頭のネジ外れてる人だよ! おじさんのきんのたまだよみたいな奴だよ!
てか真っ赤な服って……お前はマグマ団かっ! そのマグマ団でさえお前ほどダサくはなかったぞ!
「なっ、いつの間に! さては……最近我らの邪魔をしているという子供だな?」
「……いや知らねえけど」
おいそのダサい服何とかしろ。赤ならマグマ団みたいにもうちょっとスタイリッシュに決めろよ。
「うるさい!問答無用!スマート!」
「こいつ人の話聞かねぇぇぇぇぇ!」
後書き
フレア団ってダサいんですよね。
それはもうマグマ団を小さじ一杯、水で薄めた上につぎたしつぎたし300回くらい繰り返した位のダサさですよね()
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