MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士
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014話
「それではこれよりウォーゲームサードバトルを開始いたします!」
沸きあがる城の中、競りあがっていく石の床。ファーストバトルでも使用された競技台、此度はその上で2対2のタッグマッチが行われようとしていた。
「ポズン、今回の相手は?」
「はい、そろそろかと……いらしたようです」
そろそろ来ると思っていたポズンの言葉を肯定するかのように筋肉隆々の大男と細いがそれなりにがっしりとした身体をした男が現れた。それぞれ赤と青の服を着ており二人から感じられる魔力はそれなりにでかい。
「あのお二人が今回の対戦相手、ラス様とロウス様です。階級はビショップ」
「もうビショップクラスが出て来たか……」
「怖気づいたか」
「冗談」
相手のクラスはビショップ、普通に考えれば下から3番目に位置する強さに属する連中だが油断するわけには行かない。事実彼らから漏れている魔力はかなり強く実力者である事は明白だ。
「如何するアルヴィス、俺が変わるか!?」
「ジークさんもおいらが変わってもいいっすよ!」
クロスガードの実力、三番目の男"ガイラ"に鍛え上げられた為か自信満々にいうギンタとジャック。確かに二人は強くなっているがここで出す訳には行かない。それに勝てない相手ではない。
「問題ない、下がっていろギンタ」
「無問題だ、速攻で終わらせてやる」
そう言いながら競技台の上へと昇るアルヴィスとジークに応援の声をぶつけるメル、一方のチェスの駒の二人もニヤつきながら上へと上がってきた。
「それではサードバトルを開始します!チェスの駒、ラス&ロウス!そしてクロスガード アルヴィス&メル ジーク!!」
試合の幕が切られる、刹那、ロウスは一気に加速しジークの頭部に蹴りを決めた。
「なっ速い!?」
「ムッ……はぁっ!!」
衝撃で少しよろめくがダメージは皆無なジークは気迫と共に魔力を開放しロウスを吹き飛ばし強制的に距離を作らせる。
「気づけないとはな……情けないもんだ」
「いや今の致し方がない、俺でも良く見えなかった」
二人の目を持ってしても目視しきれないほどの超スピード、信じられないほどの敏捷性だ。
「おらあああああ!!!」
「っ!!13トーテムポール ロッドバージョン!」
突如迫ってくる影、それに素晴らしい速度で反応したアルヴィスは愛用しているガーディアンARM 13トーテムポールをロッドとして発動し頭上から巨大なハンマーを振りかぶってくるラスの攻撃を受け止める。ラス自身の体重も加わり凄まじい重圧と破壊力を生んだ一撃、足が地面に沈んでいきながらもアルヴィスは確りと防御に成功した。
「後ろががら空きだぜ!!」
ラスの攻撃を防御している間に背後へと回り込んだロウス、その腕は鋭利な剣へと姿を変えていた。その剣をアルヴィスの心臓へと突き刺そうとした時剣は一つの手によって阻まれた。
「な、なんだとぉ!?」
「忘れるな、俺も居る事をな」
剣を真正面から受け止めたのはジークの手であった、鋭利な剣の先端を鷲掴みにしながら剣を受け止めていた。ロウスは更に力を込めて剣を押すが剣は砕けるばかりで全く前へと進まない。
「おらぁ!!」
「ぐああああ!!」
剣を掴んだままロウスを持ち上げ、そのままアルヴィスへ殴りかかっているラスへと投げつけた。激突時の衝撃で攻撃の手が弱まった隙をアルヴィスは逃さす渾身の力で巨大なハンマーごと巨漢を弾き飛ばした。
「無事がアルヴィス」
「ああ助かった、なんて力だ」
少々腕が痺れたといいながらも余裕な笑みを浮かべている相棒に安心の笑みを浮かべる。
「いいぞジーク~!」
「カッコいいよ~ジーくん!!」
「そのまま一気にいったれええ~」
「アル~!ファイト~!!」
「すまないラス、吹っ飛ばされちまった」
「構いやしねぇよ、だがまさか俺のギガントハンマーを受け止めるとは思わなかったぜ」
「俺もアームソードが壊されちまったぜ」
互いに自身のウェポンARMが通じないことに少し驚きながらアルとジークのコンビを睨みつける二人、それなりのARMだったのだろうが通用しなかったARM達。正直言って驚きとしか言いようが無い。
「なら」
「こいつだぜ!」
そう言って取り出した全く同じ真っ赤髑髏のARM、それからはなにやらおぞましい何かを感じる。
「何か来るぞ!」
「まずい!あれを発動させては!!」
「「もう遅い!!ダークネスARM、ザ・スキュラ!!」」
同時に発動したARM、二人の懐へと潜り込もうとしていたジークとアルだがそのARMが発動したと同時に動きが完全に停止してしまう。
「かかかかがっ!!掛かったぜ!!」
「もう、終わりだぜ!!」
勝ち誇った笑みを浮かべるラスとロウス、だがその顔色は優れずに身体の色も可笑しくなっていく。
「ま、まずいわよあのARM!!アルヴィス、ジーくんなんとか魔力でそれから抜け出して!!」
「ドロシー一体二人は如何しまったんだ!?」
「ダークネスARM ザ・スキュラ!ダークネスARMの中でも凶悪な奴で発動したら相手を完全に硬直させ激痛を与えながら魔力を奪うARMなのよ!!」
「そ、それってやばいってレベルの物じゃないっすよ!?」
動きを封じられた上に激痛を与え更に魔力を奪っていく、余りにも強力すぎるARM。現状として二人の動きは完全に止まり顔を歪ませている。口さえ動かす事も困難なほど、だがそれに呼応するようにラスとロウスの様子も可笑しくなっていく。
「み、見て!あの二人の様子可笑しいよ!?」
「ドロシーちゃん、如何いう事や?ダークネスって事は代償があるんやろ?」
「勿論よ、あのARMの代償は時間が経過するごとに身体が壊れていく事よ」
ダークネスARM、敵に""呪い"を掛ける事が出来るARM。"呪い"を解く方法は、ARM自体を破壊するかホーリーARMを使用するかしかない為、防衛手段が限られる。非常に強力な反面、使用した術者自身も副作用という名の"呪い"の代償を受ける。
ザ・スキュラの代償が身体が壊れて行く事。既に二人の血管は悲鳴を上げており内出血を身体の彼方此方で起こしていた。
「ぐぅ……がぁぁ………」
「これは、参ったな……」
「ウ、ウクククク………まぁああてなぁぁ、直ぐに、止めを刺して……」
「あげる、がはぁ!!か、らなぁ……」
指の先、腕から血が滴り落ちていきながらも、口から血を吐きながらもジークとアルヴィスに止めを刺そうと前へ前へと進んでいく二人。1秒、1秒が経過していくうちに身体は確実に崩壊に進んでいく。だがそれでも使用をやめない二人、以上その物だ。
「(悪竜の血鎧が発動していないのか……!?このままだと、ショックで死ぬぞ……!!)」
「ジ、ジーク………一つ、賭けをしてくれ……!」
「賭け……だと?」
「そうだ。俺の、ダークネスを使って、ジークに掛かっている呪いを上書きする……!!」
「なん、だと……!?」
呪いを上書きする、とんでもない方法だ。しかも下手をすれば呪いが重複してしまい更に状況が悪化する可能性が高い。
「ありったけの、魔力で一瞬でも敵の呪いを中和出来るかもしれない……!!」
「………いいだろう、やってくれ!!」
「ああ、覚悟して置け!!!」
魔力を搾り出し全力で呪いのARMを起動させるアルヴィス、同時に副作用である激痛が身体を貫くがそれなど気にせずにジークに呪いを掛ける。当然ARMの格としてはアルヴィスのダークネスの方が低い、がそれが幸いした。
「っ!!うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
身体に掛かった新たな呪い、だがそれは自らの宝具を発動させる切っ掛けとなった。ザ・スキュラはランクとしてはB+に相当する呪い、だが魔術とは違う形式の呪いの為、悪竜の血鎧が起動せずにいた。そこへアルヴィスのスィーリング・スカルの呪いが降りかかった。ザ・スキュラとは違い多少であるが魔術に似通った呪いであるために宝具が起動しザ・スキュラの呪いを軽減し身体を自由を取り戻す結果となった。
身体を動かせるようになったジークは全力で敵の懐に飛び込みバルムンクを引き抜き一閃!!敵のARMを破壊することに成功する。それにより呪いは解除されアルヴィスも自由に動けるようになる、そして間髪いれずアルヴィスは残った魔力を総動員し
「13トーテムポォオオル!!!」
ガーディアンとしての13トーテムポールを発動した、地面から飛び出した無数のトーテムポールはラスとロウスを天高く打ち上げる。それでアルヴィスの魔力は尽きてしまうがジークは笑っていた。
「アルヴィス感謝する、そして刮目せよ!これがお前が見たがっていた俺の全力だ!!!」
天高く剣を掲げ、今高らかに竜殺しの英雄は名乗りを上げた。
「蒼天の空に聞け!我が名はジークフリード、我が剣は救いを求める者の為に。望むがままに我が力を見せよう!」
剣を構え愛剣へと魔力を集中させる。嘗てないほどに供給されていく魔力の量、全身から噴出していく魔力、今まで蓋がされていた火山が爆発するかのような本流に魔力を持つ者達は戦慄を覚えた。魔力を持たぬものもそのただならぬ雰囲気を感じ取っていた。
「天を治める魔の邪悪なる竜は失墜し、世界は今、洛陽に至る―――打ち落とす!!
―――幻想大剣・天魔失墜!!!!!!」
真の名が告げられ、幻想の大剣の制約は全て取り払われた。全ての準備が終わり渾身の力と魔力で大剣を振るうジーク。大剣からは半円状に拡散する黄昏の波が斬撃でありながら砲撃としての特性を持った最上級の一撃となりラスとロウスに襲い掛かる。
「「ガあああああああああああああああああああ!!!!!ヴァカナァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」」
嘗て悪竜ファヴニールを撃ち滅ぼした剣は真の力をこの世界に見せ付けるかのように天へと伸びていった。その姿は天へと昇る竜にも見えるものでありながら、それを打ち滅ぼす一撃。
「これで、満足、か……?」
「―――っ………」
言葉など出なかった、感嘆の息しか漏れなかった。これが、ジークフリードの全力。
「しょ、勝者、クロスガード アルヴィス&メル ジーク!!!」
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