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Angel Beats! the after story

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入江みゆきとORO

日向たちに更衣室での誤解を解く頃には、女性陣が着替えてやってきていた。

やはり直井以外は興奮のあまり海に叫んでしまったが、当然の反応だ。水着も様々、スタイルも様々とまさに宝箱である。

拉致られてマジでよかったぁぁ!!





遊びに関しては無限のエネルギーを持つ奴らとは違い、俺はひとまずパラソルで休憩である。

まだ体には出ていないが近いうち運動でも始めよっかな?と考えていると……。

「やぁやぁ音無くん何をしてるんだい?」

わざとらしい口調で近づいてきたのはガルデモのベース担当の関根だった。

「何って、休憩してるだけだけど。お前こそどうしたんだ?」

話しかけてくることを珍しく思いつつ聞いてみる。

「あーそうだーみゆきちを洞窟に置いてきたまま忘れちゃったなー。音無くん休憩ついでにみゆきちを呼んできてくれないかー?」

「休憩ついでって、そもそもお前が行けよ」

台詞の棒読みが超絶に怪しい。関根のこういうのは必ず悪巧みしてるに決まってる。

「イタイイタイイタイイタイ。突然の腹痛が!じゃ!そゆことよろしくっ!」

全力でトイレと正反対の方向へ走り出したが悪いのは頭の方だと俺は思う。

「って、ちょ!カム!バッーー!!クー!!関根ぇー!!」

俺の叫びは広い海の彼方へ消えていった……。
はぁ、しゃあない。迎えに行くか。



洞窟の位置が分からないと気づいたが、砂浜に明らかな細工であろう矢印が数メートル刻みで書かれていた。

それほど歩くことなく目的地である洞窟に着く。洞窟といってもそんなRPGのようなものではなく、家族連れで楽しめるプール感覚とでも言うような人工的な洞窟であった。というか看板が立ってあった。

「へぇ〜蛍光で雰囲気がでてるんだなあ」

やっぱり、男ならときめく場所だ。後で日向たちでも呼んでやるかな。

「しおりーんコワカッタヨーー」

何なんだ?今のガルデモは棒読み週間でもやってるのか?とか思っているうちに入江が俺の胸……ではなく股間に突っ込んでくる。

「グブッ!!」

「音無くんごめんなさい!!許してぇ〜!」

更衣室といい俺のグロック17に恨みでもあるのかよ……。ダメだ、ピクんともしない。

「俺の息子が……」

「む、息子って?音無くん子供いたのぉぉぉ!!!???」

初心すぎるぞこの娘は。いいのだろうか?息子=※※※だと言っても。

「いやそうじゃなくてだな。比喩表現だ、えっ〜と俺の……」

立ち上がり、目線を下に落とすと入江も釣られて俺の下を見る。

「は、はわわわわ!?!?音無くんのバカッ!」

「ごめんなグバっ!」

なるほどな。この力強さがあのドラム捌きの元ってことか。身をもって実感出来て光栄だよまったく。




気がつくと頭にはとても柔らかいものが敷かれていた。回らない頭で形を探ろうと手で触る。

とてもすべすべしており、程よい弾力と相まって一生このままでいたいと思ってしまう。

だが、一つだけおかしな点がある。

「ひゃ!お、音無くんそんなに、したら、ん♡」

喋るのである。それも妙に色っぽい……。技術も向上したもんだな!ハッハッハ!とまぁ、現実逃避を試みたがダメみたいだ。

「本当にすいバボッビバッ!」

「そ、そんな水面で土下座しなくても気にしてないから。ね?顔上げよ?」

良い子すぎてますます申し訳ない気持ちでいっぱいである。

「ありがとな入江」

パプニング続出だったが本来の目的を遂行する。

「ほら、関根が待ってるから行くか」

万が一のために入江に手を差し出す。

「あ、ど、どうも……」

おどおどしながら躊躇いがちに手を繋ぎ、洞窟から出る。長くいなかったのに太陽の光がとても眩しく思えてしまう。

「──作戦成功だよしおりん」

どこぞのアニメの主人公ではないが、入江の言葉がよく聞き取れなかった。







『いいかいみゆきち?今回の旅行でみゆきちには音無くんとの仲を最低一つ進展させるのが目標である』

旅行前日。私の親友である関根しおりことしおりんは突然そんなことを言ってきた。
またしても無理難題を私に押し付けてくるしおりん。

『無理だよぉ〜』

『そんなこと言ってるとかなでさんや岩沢先輩、そしてついにはあの機械のような遊佐さんまでもが狙っているんだぞ!みゆきちの愛はその程度なのか!!』

『違うよ!誰よりも好きだもん!!』

あっ…………。その一言にしおりんは燃え上がってしまったのです。

『その意気だよみゆきち!!では、これから音無くん篭絡オペレーション通称《ORO》を始めるぅ!!』

と言った具合に始まりました。あの洞窟は作戦第一段階らしいです。あれだけでも、もう頭いっぱいだよぉ〜。





「やぁやぁ音無くん暇かい?なら、みゆきちとみんなの分の飲み物を買いに行ってくれないかい?そう大丈夫なの!ありがとう」

「なに捲し立ててるんだよ。一言も言わせないで決めるな」

私の好きな人。音無くん。正直言うと、音無くんのことは死後の世界の時から気になってた。

にしても、しおりんの作戦はなんというか……ちょっと計画性がないかなって思う。

「いやなら無理に付き合わなくていいよ音無くん。しおりんと買いに行くから」

「いや、一緒に行くよ。あの人数分を運ぶのに男手必要だろうし」

「うんうん!んじゃ私は荷物番してるからいってらっしゃ〜い」

「そうか悪いな。よし行くか関根」

「うん」

しおりんの方を見ると親指を立てていた。作戦通りって満足なのが伺えるけど、この作戦には一つだけ欠点があります。それは……これ以降のことを何も考えてないということなんです。

とほほ……。



飲み物なら海の家があるよね?って思うけど、しおりんが自動販売機じゃなきゃいやだ!と駄々をこねて少し遠くの自動販売機まで歩いてます。

こうして並んで歩いてると。こ、恋人みたいに思われちゃうのかな……?


「入江は何でドラムを始めたんだ?」

「えっ?ど、ドラム?」

「いや、入江がドラムを始めた理由が知りたいなって思ってさ。ダメだったか?」

「ううん!ダメじゃないダメじゃない」

浮かれ過ぎて人の話を聞かないなんて反省です。はい。

「えっ〜とね。笑わないでね?」

「大丈夫だ」

岩沢先輩みたいに運命的な出会いをしてないので話すのに少しだけ抵抗が出てしまう。

「………かっこよかったから」

「ん?もう一回言ってくれないか?」

「かっこよかったから!」

「……ぷっ、シンプルだな」

唖然としていたけどだんだん頬を緩めて吹き出すなんて、音無くんはいじわるだよ。

「笑わないって言ったのに。ひどいよもう」

「悪い悪い。意外だなって思ってさ」

「まぁそうだよね。こんな性格だから、ついついそういうのに憧れちゃって……変だよね?」

音無くんがこっちに振り向いたと思ったら、頭に手を置かれる。

「変じゃない。だって前も今も、入江のドラムをしてる姿はかっこいいぞ。心配するな」

「ッ〜〜〜〜〜〜!!!」

何でこういうことを平気な顔で言うのかな。もう、心が保てないよしおりん。

「あ、ありがと音無くん。とっても嬉しいよ」

「どういたしまして」




いつの間にか自動販売機に着いていた。

音無くんとこんなに話したのは初めてだったけど、たくさん音無くんのことを知れた。私のことを知ってもらえた。今回はこれだけでも充分進展できたと私は思う。

「これで最後っと。よし、帰るか入江。……入江?」

飲み物を買い終わって返事のない私を心配して見ている。

充分だと思う。でも、今の私はとっても欲張り。だって、負けたくないもん。こんなに人を好きになるのは後にも先にもこれが最後だと思うから……。絶対に負けないよ!

「音無くんは私の好きな人がどんな人か知りたい?」

突然の質問に戸惑っている。困らせちゃったかな?

「へ?ま、まぁ、教えてくれるなら知りたい……かな?」

「私の好きな人はね──」

とっても優しくて、頼りになってかっこよくって良いところを挙げればキリがない。こんな弱虫な私にはとても不釣り合いな彼。

「───って感じかな」

でも、好きになっちゃったんだもん。この気持ちに嘘はつけない。

「良い奴なんだな。不釣り合いだなんて思うなよ。あっちから見たら分かんないけど、俺から見た入江は魅力的な女性だよ」

言いたい。全部音無くんのことなんだよって……。

「そう言ってくれると自信が出てくるかな。しおりん待ってるだろうし、帰ろ?」

「ああ」

もう少し、もう少しだけ強くなったその時は胸を張って君に私の気持ちを伝えることができると思うから。待っててね。


これは、そのための第一歩──


「ねぇ音無くん。これから私のこと。みゆき──って呼んでくれないかな?」














好きだよ結弦………なんちゃって♡





 
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