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MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士

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012話

 
前書き
「MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士を読む時は

部屋を明るくして、画面に近づき過ぎないようにして読むんやで?」
 

 
正直彼との出会いは運命的なものを感じずにはいられなかった。

―――始めてあった瞬間から魂が、心が震えた。この人は私の運命の人なんだと。そう思わせるような電撃が私の体を駆け抜けていった。

鷹のような鋭い瞳に白銀のような髪。そして聖人のような気高い雰囲気に私は惹かれた、私が幼い頃に読んだ昔話で読んだ騎士がそのまま現実に飛び出して来たかのような人だった。でも何処か可愛げがあって天然な所があって可愛い。

思いがけない事で凹んですまないと謝ったり恥ずかしがり屋で私が抱きつくと決まって照れて私を引き剥がそうとする、でも私はそんな行動も楽しんでいた。だって、そんな彼の一つ一つが愛おしくて仕方がないんだから。

―――だから私は決めたの、貴方に相応しい女性になる。そうすれば、貴方は私を求めてくれるのよね………?

ねぇ―――ジーくん?

「ドロシーちゃん、ドロシーちゃん?聞こえとるかー?」
「ねえ、ねぇドロシーってば!!」
「あふぇ!?い、いったい何?」

既にウォーゲームもセカンドバトルに進み戦いは更に白熱さを増している、そしてセカンドステージの出場選手はスノウ、ナナシ、ドロシーという結果になっていた。初戦はスノウが勝利、第二戦はダークネスARM使い、ロコ相手にナナシは善戦するが敗北し一勝一敗という状況になってしまったのだが第三戦で戦うドロシーは何故かぼうっとしている。

「もう何考えてるの?次ドロシーの番だよ?」
「ああそう、もう私なの?」
「すまんのう、自分が負けてしもうたわ」
「まあ、あんたらしいかもね、んじゃ行ってくるわね」


ひらひらと手を振って前へと歩くドロシー、対戦相手となる男は顔に仮面をつけたマイラというビショップクラス。風貌としてはチェスのこまの中でも一番格下のポーンクラスと同じような感じだが実力の方は一体どれほどの物なのだろうか。

「ではセカンドバトル最終戦、始め!!」
「まずは様子見、リングアーマー!」

腕を突き出し指に装着していたARMを展開する、それはジークとギンタにぶつけた下級のガーディアンARM。ドタドタと走りながら対戦相手であるマイラへと突進していくアーマー、それを見て嘲笑するマイラ。

「そんな誰にでも操れるようなARM、私も馬鹿にされたものですな」

そういいながらARMを発動するマイラ、そして次の瞬間リングアーマーは水のような物体に包み込まれていく。

「奇遇ですな、私もガーディアンARM使いでしてな」
「あらそうなの」
「私のガーディアン、バキュア!」

徐々にリングアーマーを包んでいく水は肥大化して行き遂にその正体を現した。一つ目を備えた流動体のガーディアン、それがバキュアというガーディアン。そしてバキュアに包まれたアーマーは分解されていき破壊されてしまった。下級ARMなだけ壊れてもドロシーはなんとも思わなかったがバキュアには興味を示していた。

「へぇ~なかなかレアなARM持ってんじゃん。それ、欲しいな」
「差し上げますよ、私に勝つ事が出来たのならばね!!ゆけっバキュア!!」

体を激しく流動させ大地を駆け抜けるように動くバキュア、不気味ながらも不思議と迫力のある動きと魔力の流動にスノウとナナシは喉を鳴らす。だがドロシーは冷静そのものだった。確かレアなARMではあるが、ジークと共に手に入れた"ウロボロス"と比べてしまえばまったく圧倒もされないし迫力もない。

「おいでっブリキン!(今命名!)」

次なるガーディアンを召喚するドロシー、召喚したARMはバッボが眠っていた洞窟で番人をしていたガーディアンARMの石巨人(ブリキン)。その巨体はギンタの切り札であるガーゴイルを超える巨体である。

「ほほう考えましたな、確かにこれだけの巨体なら流石のバキュアでも容易に包み込むことは出来ないでしょうな。ですが」

巨腕を振り被りバキュアを殴りつけるブリキン、一撃二撃。ランクにしてBに相当するほどの破壊力を誇るブリキンの攻撃、通常のARMであれば大きなダメージを受けている筈だが水のような流動体の体をしているバキュアにはダメージはなく体は直ぐに元通りになってしまう。

「ふ~ん、んじゃこれは如何?」

と、ブリキンに若干の魔力を回すとブリキンの動きが段違いに素早くなりパンチの速度が跳ね上がり巨体からは想像出来ないほどのパンチをラッシュをバキュアへとお見舞いした。

ズドドドドドドドドドドドドッッッッッッッ!!!!!

爆音に限りなく似た音を響かせながらラッシュを続けるがバキュアは元通りに戻ってしまう、水を幾ら殴った所で穴など開かずに戻ってしまう。それを確認するとブリキンをアクセサリーの状態に戻した。これ以上ブリキンで戦わせても無駄だと判断したのだろう。

「おや観念したのですか?では次は貴方が包み込まれる番だ、そして死ぬがいい。メル初の死人にね!!!!」
「死ぬ気はないわよ、ジーくんとの約束守れないじゃない。ディメンションARM ジッパー」

ARMWを発動させると空間そのものが変化しそこへ服のジッパーのようなものが現れ徐々に開いていく。そしてそこへ手を突っ込むドロシー、それは彼女が集めたARMが保管されている異空間であり様々なARMがそこに存在している。

「ど・れ・に・し・よ・う・か・な。あんたを殺すARMは♪これでもない、これも違う……んっ♪やっぱりこの子よね」

そう言って取り出したのは竜の装飾がされたペンダント型のARM。

「ほうそれは一体何のARMでしょうな、ウェポン?ガーディアン?まあどの道貴方はここで死ぬのですがね!!!!」

声に反応するようにバキュアはドロシーへと飛び掛っていく、だがドロシーは動じず魔力を使いARMを覚醒させた。

「―――おいで、ウロロン」

その言葉を待っていましたと言わんばかりに後ろの空間がひび割れる、そしてそこから尋常ではない魔力が放出されていく。バキュアはその魔力に驚いたのか引き返そうとするが時既に遅し。吸い込まれるように空間の裂け目へと飲まれていくバキュア、そして吸い込まれた先の空間からは何かを貪るかのような不気味な音が響いていた。

暫しして音は収まり空間の裂け目から一体のガーディアンが姿を現した。漆黒の鱗に紫の体毛、血に満ちているかのような赤い瞳を持ったブリキンに匹敵するほど巨大な竜のガーディアン。古い古文書にしかその存在が描かれていないレア中のレアARMの一つ、"ウロボロス"であった。そしてその口にはアクセサリーに戻ったバキュアの姿があった。それを手に取りドロシーはウロボロスをなでる。

「いい子ねウロロン、レアARMゲット。トトでも良かったけどあいつじゃ食べちゃうかもしれないからね」
『ご期待に添えたなら何よりだ主よ』
「な、なぁんなんだそのガーディアンはぁああああ!!?!?」

巨大すぎる上に溢れている魔力と威圧感が異常なガーディアンに腰を抜かしてしまうマイラ、そんな哀れな姿を見せたマイラをドロシーは嘲笑った。

「ガーディアンARM ウロボロス。お気に入りの子だよ、私に酷く忠実でね、但しちょっと手加減が苦手だけどね。いいよウロロン、食べても」
『願ってもない、丁度腹が減っているところだ』

ウロロンはのそりのそりと巨大な足を動かしながらマイラへと近づいていく、あまりの巨大さと威圧感があいまって生まれる迫力に動けなくなってしまうマイラはそのまま硬直したままだった。そして遂に目の前にまでやってきたウロロンに前足で潰されてからそのまま上へと放り上げられそのまま咀嚼された。

骨を砕き、肉を噛み千切り、血を啜る音が周囲に木霊する。思わず顔を背けそこまでしなくてもとつぶやくスノウ。確かにそうかもしれないがそれは甘いとナナシが言う。これは戦争だ、明日は自分が死ぬかもしれない。そう、彼女は自分たちに言っているようにナナシは思えた。

「おっそろしい女やで……ドロシーちゃんは」
「あらあら、チェス初めての死人になっちゃったわねぇ~。んでウロロンお味はいかが?」
『………バキュア同様ドロドロして不味いな、口直しは無いのか主よ』
「う~ん、今度用意してあげるから我慢してくれる?」
『承知した、では我は眠る。また必要な時に起こしてくれ主よ』

そう言いながらアクセサリーに戻りドロシーの手元へと自ら動くウロロン、そんなARMを異空間にしまいながら審判であるポズンへと目配せした。

「セカンドバトルオーバー!メルの勝利!!!」 
 

 
後書き
個人的に好きなドロシーのシーンは

第六巻の23ページ、ドロシーVSマイラ②の
マイラを倒すARMを決めた瞬間のドロシー。
あのドロシーは子供ながらなんか、色っぽくてエロ美しいと思いました。 
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