パレオ
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第一章
パレオ
ノルマンディーにおいてだ、フィリップ=ド=クランシーはその薄い金髪を自分の指に絡めて遊びながら妻のマリーに言った。
「僕は疲れたよ」
「結婚生活に?」
マリーはその緑の目で青い目の夫にこう返した。
「離婚するの?」
「したいのかい?君は」
「男は貴方だけだから」
マリーは真顔で返した、緑の目で細長い顎の方がスマートな顔の形だ。茶色の髪を肩を完全に覆う位まで伸ばしている。唇は小さな紅だ。
「女の子は好きだけれどね」
「浮気はしているんだね」
「女の子同士は浮気なの?」
「さて、そう言われるとね」
フィリップはその青い目で優しげな顔で言った。彼もまた細面であり白い肌をしている。唇は小さく整った形をしている。
二人とも背は高くモデルの様だ、服も整っていてパリの中心にいても様になる。
だがその服でだ、二人は休日の自宅のテラスでコーヒーを飲みつつ話していた。
「どうなのかな」
「違うわよね」
「少なくとも男は僕だけだね」
「そうよ」
「僕もだよ」
フィリップはここでこう言った。
「女性は君だけだよ」
「では同性は」
「そうした趣味はないよ」
彼はというのだ。
「別にね」
「じゃあ私だけなのね」
「そうだよ、だから疲れてはいないよ」
結婚生活にはとういうのだ。
「別のことに疲れているんだよ」
「ビジネスのことで」
「そうだよ、だからここは有給休暇を取って」
そして、というのだ。
「休もうって思ってるんだ」
「バカンスに行ってなのね」
「そうしようって思ってるんだけれどね」
「一人で行くのかしら」
「いやいや、二人でだよ」
くすりと笑ってだ、フィリップは妻に返した。
「勿論ね」
「そうなのね、じゃあね」
「うん、行くよね」
そのバカンスにというのだ。
「君も」
「それで何処に行くのかしら」
「そうだね。タヒチはどうかな」
「タヒチね」
「そう、あそこにね」
「遠いわね」
フランスから見るとだとだ、マリーは夫に返した・
「バカンスの場所にしては」
「それはそうだけれどね」
「ええ、けれどよね」
「うん、それでもだよ」
こう妻に言うのだった。
「僕もあそこには三回行ってるけれど」
「私は四回よ」
「僕より多いじゃないか」
「ええ、そうなるわね」
「それなら僕より知ってるね」
フィリップは妻のその言葉を受けてこう返した。
「タヒチのことは」
「そうみたいね」
「じゃあいい場所なのは知ってるね」
「最高のリゾート地の一つね」
「なら行こう、タヒチに」
フィリップはあらためて妻を誘った。
「バカンスにね」
「飛行機で行って」
「飛行機ならすぐだよ」
確かにフランスからタヒチは離れている、しかしというのだ。
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