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モラ

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第四章

「いい感じだよな」
「まあ似合ってるな」
「自分でもそう思うよ」
 婆さんの方も笑って二人に返す。
「着こなしにも自信があるしね」
「だよな、それは年季だな」
「それもあるな」
「それも入ってな」
「いい感じになってるな」
「ああ、それでモラってのはね」
 婆さんはそのモラ自体のことも話した。
「元々は服じゃなかったんだよ」
「えっ、そうなのかよ」
「服じゃなかったのかよ」
「そうだよ、あたしが祖母ちゃんから聞いた話だがね」 
 つまり婆さんの婆さんにというのだ。
「子供の頃ね」
「それ随分昔だな」
「俺達普通に生まれてない頃だな」
「そうさ、その祖母ちゃんに教えてもらったことなんだがね」
「服じゃなかったら何なんだよ」
「モラは服だろ」
「元々は裸にだよ」
 そのままというのだ。
「塗ってたらしいんだよ」
「へえ、そうなのか」
「身体に直接か」
「そうしたってね」
「で、それが服になってか」
「モラになったんだな」
「元々モラってのは服って意味でね」
 その語源もだった、婆さんは兄弟に話した。
「クラ族の言葉でだよ」
「ああ、じゃあな」
「身体に直接塗ったのが服になってか」
「それで今に至るんだな」
「そういうことか」
「そうだよ、まあそれでだよ」
 婆さんはモラを仕立てるその手の動きは止めない、そのうえでの話だった。
「あたし達ここに住む女はこれを着てるんだよ」
「そういうことなんだな」
「つまりは」
「クラ族の人達、俺達のご先祖の一つが身体にそのまま塗ってて」
「それが服になってか」
「今婆さん達が着てる」
「モラにそうした歴史があったんだな」
「女の子が水着でね」 
 ここでだ、婆さんは兄弟特にルイスに対して笑って言った。
「身体にこういうの塗ってたらいいね」
「そうだな、じゃあ俺もな」
「そうした娘さん探すかい?」
「そうしようか、振られたけれどな」
「そんなのすぐ忘れることだよ」
 婆さんは笑ってルイスに言った。
「そして新しい恋を見付けることだよ」
「そういうことだよ」
「じゃあ頑張って新しい恋を見付けるか」
「そうしなよ」
 こう言ってだった、婆さんはルイスを励ました。そして三人で婆さんが作った昼食も食べてだった。午後も服を仕立てて。
 ルイスとフランコは夕方家に帰った、その家に帰ってだった。
 ルイスは笑ってだ、フランコに言った。
「明日お客さん来るかな」
「予約入ってるぜ」
「じゃあ明日は仕事頑張ろうか、それでな」
「ああ、婆さんの言った通りにだな」
「新しい相手見付けるな」
「海に行くか?暇な時に」
「それもいいな、水着でな」
 ルイスは実際に婆さんが自分に言った言葉を思い出しながら弟に言った。 
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