ピウピウ
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第二章
「美人って感じだな」
「お袋さんの顔でな」
「身体つきとか髪は親父さんか」
「両方出てるな」
「そうなんだ、お袋は結構太ってるけれど親父は痩せてて髪が黒くてね」
トーマスはまた言った。
「身体つきはそっちなんだ」
「両方の血が出たんだな」
「完全にな」
「それでか」
「トーマスはそんな感じになったんだな」
「女の子みたいな外見に」
「そうなんだよ、ディムとは違ってね」
両方の血が出ながらも貴婦人の趣のだ。
「女の子みたいなんだよ」
「で、バンドでもな」
「よく女の子って間違えられるんだな」
「男ばかりのバンドだってのに」
「そうなんだな」
「そうだよ、まあそのせいで人気があるみたいだけれど」
それでもと言うのだった。
「複雑な気持ちだよ」
「女の子に思われてか」
「どうにも」
「うん、それで今度バンドの衣装でね」
彼がいるそのバンドのだ。
「マオリ族の服はどうかって言われてるけれど」
「じゃあ御前はか」
「女の子の服か」
「マオリ族の」
「それになるか」
「実際にそうなったよ」
彼は、というのだ。
「僕はマオリ族の女の子の服になったよ」
「そうか、マオリ族のか」
「女装か」
「それすることになったんだな」
「女装っていうか男の娘?」
トーマスは少し戸惑った顔で言った。
「メンバーにそれしてくれって言われてるんだ」
「男の娘ってあれか」
「ただの女装じゃなくて心も完全に女の子になりきる」
「それだよな」
「最近日本で話題の」
「日本人は変な趣味を沢山持ってるからね」
こうも言ったトーマスだった。
「その中には女装もあって」
「その女装がか」
「外見だけでなく中身も備わってて」
「男の娘か」
「それになってるんだな」
「訳のわからない趣味だけれど」
首を傾げさせつつだ、トーマスはこうも言った。
「ここは僕がってなったんだ」
「男の娘か」
「マオリ族の」
「それ担当になったよ、それでね」
彼は友人達にさからに話した。
「その服のこと聞くよ」
「誰に?」
「マオリ族のお袋さんか?」
「お袋さんに聞くのか?」
「いや、先生だよ」
彼等が通っている大学の、というのだ。
「ヴィリアス=クラッド助教授ね」
「ああ、あの人な」
「ニュージーランドの民俗学の権威」
「あの人に聞くんだな」
「そう考えてるよ」
実際に、というのだ。
「どうした着方とかね」
「まあ洋服と違うからな」
「マオリ族独特の服で」
「面白い服だけれどな」
「違う服だからな」
「着方とか色々聞くよ。バンド全体でね」
こう言ってだった、トーマスはバンドのメンバーと一緒にだった。そのクラッド助教授の研究室に行ってだった。
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