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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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キャリバー編
  伝説の聖剣

 
前書き
キャリバー編スタートです!

長い間、待たせたなぁ・・・(蛇風) 

 
年末が近づくこの季節、世界は至るところで忙しくなる。
アメリカの某スクエア、イギリスの某時計塔、オーストラリアの某ハウスも皆忙しくなる。
それは極東日本も例外ではない。寺では年越しに先駆け鐘を鳴らす準備を始めている。

そんな忙しい年末、高嶺家では毎年のように大掃除をしていた。

「毎年のように思うが、道場の掃除ってどうしてこう時間を食うのかねぇ・・・」

そうぼやきながら雪羅は渇いた木の床を冷たく濡れた雑巾で磨いていく。額には僅かに汗が、口からは白い息が出ており、その寒さを物語っている。しかし、彼にとってはもう慣れたこと、これといって苦に思ったことはない。

「で、何でお前がいんだよ?」

雪羅の視線の先には日本人離れしたような顔と片眼が隠れるほど前髪を伸ばした青年が立っていた。

「いつ見てもその前髪には慣れないな。いい加減切ったらどうなんだ、シュー?」

「しょうがないだろ?君だって、この目のことは分かっているだろ?」

そう言ってシュー・皇は髪を上げるとそこには隠れていない右目とは異なる色をした左目があった。
黒みがかったブラウンの瞳とは別に片側の目は瞼の大きな縦の傷と共に完全に光を失っていた。

「爆発事故、だったか?」

「うん、破片が目に直撃。医者にももう治ることはないって。刺さりどころが悪くってね、寧ろ生きていたことが奇跡とも言われたよ・・・」

「そうか・・・」

雪羅はその痛々しい傷跡を見て、同情の意図は無かった。
それが本人にとって最大の侮辱である事を知っているから–––––

「さて、しんみりした話は終わりにして・・・」

シューは手を叩くとタブレットを取り出して雪羅にとある記事を見せた。

「何々?『伝説の宝剣エクスキャリバーを発見!?』ほう、随分と懐かしい響きだな。オベイロンとの戦いの時以来か?」

雪羅はそう呟きオベイロンとの戦いを思い出す。

「あん時作ったのは本物に近い創造物(レプリカ)だからな。使用できたのはあの一撃だけだし・・・」

「それに、上の上の剣を持ってしても二本を合わせる必要がある・・・」

「その剣のオリジナルが発見されたとなれば、廃人(ヘビーユーザー)のみならず・・・」

「全プレイヤーが目を光らせるだろうね」

ヘビーユーザーと言って雪羅は1人のプレイヤーが頭に浮かんだ。

「あいつなら喉から手が出るほど欲しがるだろうよ」

「そうだね。今にも応援要請の電話がかかって・・・」

そう言っている中、雪羅とシューの携帯は震えた。

「噂をすれば、だな」

「だね・・・」

苦笑しながらメールの内容を見ると案の定キリトからのエクスキャリバー獲得の協力要請だった。

「どうする?行く?」

「お前、それ分かってて言ってるだろ?」

「愚問か・・・」

シューは微笑むと道場に背を向けて歩き出した。

「それじゃあ、向こうで待ってるよ。僕もマスターの手伝いをしないと」

「営業日でもないのに大変だな。たまには休暇を取っても良いんじゃないのか?」

「それはそっくり君に返すよ♪」

シューは背を向けながらヒラヒラと手を振ってその場を後にした。残された雪羅も残り少ない床を拭くために再び雑巾を冷たい水の入ったバケツにぶち込んだ。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「で、来たのがこの面子なわけか・・・」

キリトの招集によって来たのはアスナ、リーファ、シリカ、リズベット、クライン、シノン、エリーシャ、シオンといったいつも過ごすメンバーだった。
意外だったのはそのメンバーの中にシュタイナーがいた事くらいでその他は何ら不思議ではなかった。

「お前ら、暇なのか?」

「それを言うんならアンタだってそうじゃない」

シオンの問いに対してシノンがつい先ほどみんなで買ってきたアイテムを整理しながら言ってきた。

「まぁ、世の中は冬休みや冬季休暇だからね。それに年末も近いとなると尚更だよ・・・」

シュタイナーは壁に寄りかかってエクスキャリバーの記事を見ながら言うと、更に続けた。

「それに、エクスキャリバーが発見されたとなればALOプレイヤーならこれを逃すはずがないからね」

「それで?移動方法はどうするんだ?」

「トンキーは7人乗りですからねぇ・・・」

「3人オーバーしてるよね?」

そう、リーファが助けた邪神系モンスターの乗車店員は7人。今のメンバーでは3人多いことになる。
ニブルヘイムは飛行の制限があり、空を飛ぶこともできない。ましてやそのエクスキャリバーがあるのは遥か上空の空中要塞。どうしても空を移動しなければならない。

「それに関しちゃは問題ない」

そう言ったのは長テーブルの端で頬杖を付きながらアイテム整理をしているシオンだった。
アイテム欄に視線を向けながら必要な分だけのアイテムを選別する作業を手慣れた手つきでこなしながら言葉を続けた。

「アテはある」

「アテ?」

「ちょっくらリズの方を見てくる。シノン、割り振りよろしく」

そう言ってシオンは立ち上がり、奥の研磨機で全員分の武器を研いでいるリズベットのところへ向かった。

「何なんでしょう?」

「さあな。でもまあ、アテってことは問題ないんだろ?」

「アイツが根拠もなくそんなことを言うとは思えないし・・・」

そんな話をよそにシオンは武器を研いでいるリズに話しかけていた。

「どうだ?進捗状況は?」

「見ての通り、てんやわんやよ。まったく、いつもながらすごい数ね・・・」

リズベットは隣の台に陳列されているシオンの武器の数を見てゲンナリとした口調で言った。それに対してシオンは少し申し訳なさそうに頬を掻きながら答える。

「悪いとは思ってるが、仕方ないだろ?」

「そうだとしても、少しは遠慮ってもんをねぇ・・・」

「今回はガチで挑みに行くんだ。それくらいお前も分かるだろ?それに、最大戦力で行くのが流儀ってもんだろ?」

シオンはそう言うとリズベットはまぁ良いけどと吐き捨てて再び研磨機に向かい合った。
砥石と剣が擦れる独特の音を背に再び皆の所に戻った。戻る最中に、やれ年末年始は荷が入ってこないだの、ウチは超ホワイトだの、霊刀カグツチだのと盛り上がっていた。

「何の話だ?」

「今日うまいことエクスキャリバーをゲットできたら霊刀カグツチを取りに行くのを手伝って欲しいって、クラインさんが」

「カグツチって言ったらあそこか?あのあっついダンジョン。まぁ、今回行くヨツンヘイムはその真逆だが・・・」

「で、シノンは光弓シェキナーが欲しいって・・・」

『うわぁ・・・』

アバターを作って2週間経つシノンの発言にシオンは久しぶりに彼女の貪欲さを痛感した。

「リズが造ってくれた弓も素敵だけど、できればもう少し射程が・・・」

「と、申していますが?リズ殿?」

「あのねぇ、この世界の弓っていうのはせいぜい槍以上、魔法以下の距離で使う武器なの!百メートル離れたとこから狙おうなんて普通しないの!」

工房奥からリズベットの職人としての意見が聞こえるが、シノンはそれに対し澄ました顔で答えた。

「欲を言えばその倍の射程は欲しいとこね」

その言葉にGGOのプレイヤーの姿を知っている男二人は口角が引き攣った。200メートル先からの攻撃が可能となる弓が存在するならば、相手をしたくないのが本音である。
シュタイナーは話を戻すために買い物の間に仕入れた情報を話し始めた。どうやら、リーファが助けた邪神系モンスターのクエストとは別種のクエストが見つかったらしく、その報酬がエクスキャリバーなのだとか。

「でも、そのクエストがどうも虐殺(スローター)系みたいでね。おかげでヨツンヘイムはPOPの争いで戦場と化しているらしい・・・」

「まさに、人ならざる者がはびこる人外魔境ってか?」

「それがあながち間違いじゃないのが怖いな・・・」

シオンの冗談の様な口振りにキリト苦笑いを浮かべて言った直後、工房の奥からリズベットが叫んだ。

「よーっし!全武器フル回復ぅ!」

「お疲れ様!!」

各自それぞれ自分の武器を装備し、アスナによって整理されたアイテムをストレージに収納、ヨツンヘイムまでのルートを確認するとキリトがエホンと咳払いをしてから言った。

「みんな、今日は急な呼び出しに応じてくれてありがとう!このお礼はいつか必ず、精神的に!それじゃ、いっちょ頑張ろう!」

「「「「おーっ!」」」」

キリトの掛け声と共に皆が高々と拳を突き上げると遥か地下深く、ヨツンヘイムに向けて歩を進めた。
しかしその中でシオンは1人ウインドウに目を向けていた。

「おーい、シオン!行くぞ!」

「あ、あぁ。今行く」

シオンはウインドウを閉じ、皆の所に向かった。そこに記されていたものを頭の片隅にしまいながら–––––












Remaining until the update(更新まで残り).....94%..... 
 

 
後書き
評価、コメントよろしくお願いします!!

ではでは〜三( ゜∀゜)ノシ 
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