大統領の日常
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本編
第三十九話 首都戦7
前書き
久しぶりに銀英伝要素が入ります。
貴族、核攻撃、もうお分かりですよね。
西暦2115年 11月 13日
ケルベンライク公爵領の一つであるカリフォルニア。
その沿岸にはマジの要塞を凌駕する要塞、ケルベンライク要塞がある。
この要塞は、陸海空飛空全ての軍を収容可能な数少ない要塞であり、軍港には艦艇を100隻、飛空艦艇は400隻を収容可能で、対核装甲を含めた6層もの特殊装甲の下には格納庫や50万人が収容可能な居住区画、農業プラント、兵器製造区画などがあり、自給自足が可能な唯一の要塞でもある。
そして今この要塞には、皇帝派とロンディバルト軍から逃れてきたケルべライク公爵との取り巻きが逃げ込んでいた。
「反乱が起きたかと思えば反徒までもが攻め込んでくるとは!」
大広間の奥にある一段高い位置にある宝石がちりばめられた成金仕様の席に、大広間にいる者たちを見下ろすようにケルべライク公が座り、身振り手振りを加えながら、独り言なのか部下たちに言っているのか怒りの声を上げていた。
「帝国に反旗を翻す者どもに正義の鉄槌を下してくれる!!」
それを聞いていた部下の一部は”皇帝陛下が向こうについてるから、俺たちの方が反逆者じゃね?”と、思ったが、口に出す者は一人もいなかった。そんなことを言えばたちまち首を(物理的に)斬られること疑いないからである。
「帝都ロサンゼルスに、核攻撃を加える!一人も生かしておくな!」
ケルべライク公は席を立ちあがると高々と言い放った。その言葉に大広間は騒然となった。確かに反逆者と反徒がいるとはいえ帝都に核攻撃などしてよいものか、皇帝陛下を巻沿いにしてしまうのではないか、と。
ケルべライク公は、ここで”そうだそうだ”と熱気に満ちると考えていたが、現実は非情であった。半数どころか、いつも酒を酌み交わしている取り巻きたちでさえ戸惑いの表情をしていたからである。
今にも怒鳴りそうな状態になったとき、側近であるクロッセルが声をかけた。
「か、閣下、お怒りはごもっともながら、核兵器を自国領土で使用するなど、ましてやロサンゼルスは帝国の帝都ではありませんか!それに帝都には皇帝陛下がおわすのですぞ!全住民を殺すというのはあまりに御無体、軍を差し向けて殲滅すればよろしいではありませんか!!」
「黙れ!!帝都の平民どもも反逆に加担しているそうではないか!それにあのような老人など必要ない!私の娘を女帝とすれば済む話ではないか!!」
・・・・・・・・・・
クロッセルの奮闘むなしく、帝都への核攻撃は決定された。
「門閥貴族は終わった。自らの手足を切り取って、どうして立っていることが出来るだろう・・・」
クロッセルが立ち去った後、彫刻の入った柱の後ろから人影が現れ、大広間に入って行った。
「なにぃ!?クロッセルがそのようなことを申したと!?」
「はっ、門閥貴族派終わりだと・・」
「そのような不吉な言辞を弄するとは、いかに侯爵閣下の重臣とはいえ、それだけでも死に値しますぞ!」
取り巻きの一人が声を上げた。声を上げたのが、先ほど”皇帝陛下が向こうについているから俺たちの方が反逆者じゃね?”と思った中の一人であったことは誰も知らない。
「クロッセルともあろうものが・・・ちっ、ええい!クロッセルをとらえよ!このわしが取り調べるまで監禁しておけ!!」
「「はっ!!」」
「ところで、例の部隊、いや艦隊の方は」
「はっ、全艦集結中であります」
「7割ほどかと」
「十分だ、核攻撃後に突撃させ、残党を殲滅させろ」
「御意っ!」
西暦2115年 11月 13日「推奨BGM:宇宙戦艦ヤマト2199 第二バレラス」
ホルス・ラーム
「・・・で、ケリー少将、大統領の安否にかかわることといったが、なんなのだ?」
『それが・・・・衛星でロサンゼルスを映していたのですが、いきなり大規模な爆発が発生しまして・・・・』
『・・・核爆発が発生したと思われます・・』
核・・爆発・・だと・・・
「首都で、首都で核を起爆させたというのか・・・・馬鹿な・・・」
真っ青になりながらクロスムが呟くように言った。他の委員長らも真っ青な表情になっている。私もその中の一人だろう。
『市街地は壊滅、拡大していなかったため、大統領の安否は不明です・・・。市街地にいた場合は・・・』
あのペルシャール大統領が・・・亡くなった・・・?
今、ペルシャール大統領の後を引き継げるような政治家はいない・・・これを市民が知れば大混乱に陥るだろう・・・下手をすれば国自体が崩壊するかもしれない・・・
「・・・情報統制を敷いて絶対に市民に知らせるな。それと、大統領の安否の確認を直ちに行え・・」
『それが・・・強行偵察で撮影したため、先ほど偵察衛星は敵の防衛衛星に破壊されました。警戒態勢に入ってしまったようで、再び偵察衛星を侵入させるのは困難k・・・』
言い終わる前にクロスムが机を叩いて怒鳴った。
「偵察衛星はいくら犠牲にしても構わん!大統領の安否を最優先で行うのだ!」
ケリー少将がびくっとして敬礼しながらあわてたように言った。
『りょ、了解しました!直ちに確認いたします!!』
そういうと通信が切られた。
通信が切られたことを確認したクロスムは、席を直してこちらを見渡すと、元帥に目を向けた。
「・・・アイフェーン元帥・・・」
「はっ・・」
元帥は先ほどとは違い、かすれた声で答えた。
「先ほども聞いたが、今動かせる部隊はどれぐらいか」
元帥は端末を開くと、コンソールを叩き始めた。恐らく部隊リストを洗っているのだろう。
「首都防衛を考慮に入れないのであれば、今動かせるのは飛空第一及び第十二艦隊。陸軍第一から第四軍団。海第一主力艦隊及び第一機動艦隊、以上です」
飛空第十二艦隊といえば先月に新設されたばかりの艦隊。司令官も帝国から亡命してきた貴族の子孫だった。ペルシャール大統領でなければ到底ありえなかった人事だったろう。大統領はいつも常識はずれな政策ばかり取ってきた。しかし、そのすべてが市民が求めていた最良のものだった。
「首都防衛はこの際綱領に入れなくていい。今言った中で陸軍第四軍団を除くすべての部隊ををロサンゼルスに向かわせろ。可及的速やかに、だ」
「・・・司令官はケーニッツ元帥を?」
「できるのであれば」
「了解しました。ただちに準備いたします。至急会議を開かねばなりませんので、失礼させていただきます」
そういうと、元帥は早足で会議室を出て行った。
西暦2115年 11月 13日
ティレーナ・クリスチアン
大統領が出て行って約3週間が過ぎた。
今は大統領の自宅で、リアスちゃんたちの面倒を見ている。
大統領が長期間帰ってこれないときは、いつも私が家に来て代わりに面倒を見ることにしている。
今まで長期間かえれなかったことといえば、ハワイ諸島に出撃居て行った以来2回目。1回目は数日すると心配になって落ち着かない様子だったが、さすがに2回目になるとある程度なれたようだった。しかし、約1か月もたつとさすがに不安になるようで、たまに”ペルシャールさん大丈夫かな?”と、訪ねてくる。
そのたびに私は笑顔で答えているが、私自身も不安を覚えてきた。
私が食器洗いをしていると端末からチャイム音が聞こえた。端末を操作して玄関に立っている人の顔を確認する。大統領の自宅周辺は、厳重な警備がされているが、万が一ということもあるので、必ず確認するようにしている。ちなみに大統領は、確認せずに出ることが多いらしい。
顔を確認すると、アイフェーン元帥の副官、プロビンス中佐だった。
急いで玄関に向かい、ドアを開けた。
「アイフェーン元帥の副官を務めているプロビンス中佐であります。ご報告したいことがあり、やってまいりました」
「そうですか、では中へどうぞ」
私がドアを大きく開けて中佐を招き入れようとすると、中佐が止めた。
「いえ、できればその・・・」
中佐が視線を私ではなくさらに後ろに向けた。私もそれにつられて振り返ると、そこにはリアスちゃんたちが隠れるようにこちらを見ていた。こちらを見ているのがわかると、3人は顔を引込めた。
「わかりました。出は外で」
私は玄関を出てドアを閉めると、再び中佐の方を見た。
「落ち着いて聞いていただきたいのですが・・・ペルシャール大統領がガルメチアス帝国首都ロサンゼルスに行っていることはご存知でしょうか」
私が”はい”と答えると、中佐が傾いて話を続けた。
「大統領が新無宮殿を制圧中に、腹部に重傷を負い、現在意識不明の重体です」
・・・え・・・?
あのペルシャール大統領が・・・?
酒を無理やり2,30杯飲ましても復活するあの大統領が・・・腹部に傷を負ったぐらいで意識不明の重体・・・?
何も考えられず呆然をしていると、中佐の声で現実へと引き戻された。
「現在ロサンゼルスに向けて軍の出動準備が行われております。それに同行させてもらえるように元帥閣下が取り計らってくださっています。安全が確保され次第後方支援部隊が出動いたしますので、できればそちらの方に同行していただきたいのですが・・・」
私は中佐の話が終わる前にドアを開けて自室に向かって走った。途中で会ったアリスちゃんたちにもすぐに出かける準備をするように言った。
後書き
ご指摘又は感想お待ちしております。主のモチベにかかわること(かも)なのです。
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