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エターナルトラベラー

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番外 Vivid編

 
前書き
にじファン閉鎖に伴い書き上げたリオのその後の話しです。
ネタです。これ以降はまだ考えてませんのであしからず。
 

 
side リオ・ウェズリー

あの人たちとの邂逅からはや3年。

日課のランニングを終えるとクールダウンのストレッチを行うと『堅』の練習だ。

はじめは数秒しかもたなかった堅もこの三年で3時間ほどまで伸びてきている。

この修行も最初は『纏』の修行だった。

ただ何時間も自然体で立っているあたしを両親が心配したのは懐かしい話だ。

『纏』は意識しなくても維持できるようになったから、修行も兼ねて学校の授業中とかはずっと纏っている。

あたしも少しは成長したと思う。

そう言えばこの前の学期末、偶然だけど新しいお友達ができました。

ヴィヴィオって言う名前のその子、実は聖王オリヴィエのクローンなんだって。

打ち明けてくれたときは驚いたのなんの。

あたしも竜王の子孫なんだよ!って打ち明けられれば良かったんだけど、驚きでタイミングを逃してからズルズルと今まで来ちゃってる。

うーん。どうしようかなぁ…まあ、また打ち明ける機会もあるよね?

ヴィヴィオみたいに周りが墓穴を掘ってくれればその流れで軽く言っちゃえるんだけどなぁ。

まだまだ先になりそうです。

そうそう、この間、さらに新しい出会いもあったんだ。

アインハルトさんって言うんだけど、ヴィヴィオのお師匠さんがどうしてもスパーしてくれって言っていた人なんだけど。

あたしより少し年上の彼女。

彼女とヴィヴィオとの対戦は、なんと言うか歯車がかみ合ってない感じ?

アインハルトさんの拳、あれはスポーツとしての格闘技というには鋭すぎる。あれは…

初戦はヴィヴィオの敗退。再戦となる二戦目は、互いにもっと鋭さを増した。

それを見てウズウズしてしまうのは仕方ないよね!?

結局ヴィヴィオの負けだったけどね。なんか二人はライバルになれそうな感じだし、ちょっと羨ましいかな…

あたしが持てる全力をぶつけられる相手なんてミッドチルダにはいないからね…

時々なんで一人で『念』の修行をしてるんだろうって思うときも有るけど、憧れだからね。

あたしを助けてくれたあの人は。

さて、日課も終了。お家に帰ろう。



今あたしはヴィヴィオたちと、訓練合宿と称したプチ旅行中です。

まあ、そうはいってもちゃんと訓練や模擬戦もするからやっぱり訓練合宿なんだけど、子供のあたし達は遊びが半分、訓練半分の旅行なのでした。

参加者はあたし、ヴィヴィオ、コロナ、アインハルトさん、なのはさん、フェイトさん、スバルさん、ティアナさん、ノーヴェさん、エリオさん、キャロさんの11名。

後は宿泊先のルーテシアさんとそのお母さんともヴィヴィオを通した知り合いだけど、訓練に参加するのはルーテシアさんだけ。

一日目は子供のあたし達は川遊びをして楽しんだ。

水はほんの少し冷たかったけど、すごく楽しかったよ。

子供達以外のメンバーがやっていた模擬戦を遠くから眺めたりした時はこっそりとヴィヴィオたちから距離を取って写輪眼を発動して観察させてもらった。

皆すごくイキイキとしてた。

でもあの人達とはやっぱり違う…

夕飯前に皆で温泉に入ったときにセインさんっていう人のいたずらを軽くひねり上げたら皆に驚かれちゃった。

うぅ、ちょっとやりすぎたかな。失敗。

その日の夜。

みんなが寝静まったころ、あたしはこっそり抜け出して河原まで来ている。

昼間ぬらした水着は袖を通すとヒヤッとしたが、夜とはいえ暖かかったのでむしろ心地よい。

よしっ!

あたしは精神を集中すると流れの緩やかな所を見つけると、水面を歩き出した。

足の裏を流れる水が冷たくて気持ちいい。

この修行、普段ならお風呂に入る時間にしかできないのだけど、今日はこんなにいいロケーションなんだからやらないほうが損だよね!

とは言え…

ドボンっ!

「ぷはっ!うー、いつもは水は流れてないからなぁ」

よっこいしょと岸に上がると再挑戦。

っとと!その前に。

「影分身の術!」

ボワンっという音とともにあたしの隣に二人のあたしが現れる。

影分身の術。これはソラお姉ちゃんに教えてもらったとっておき。

あの短い期間であたしが教えてもらった多くの忍術の中で唯一、印を見せるだけでなく練習を見てもらった忍術だ。

なんでこれだけは丁寧に教えてくれるんだろうと思ったけど、なるほど。確かにこれを覚えているのと覚えていないのでは雲泥の差がでるわけだね。

フェイトお姉ちゃんの修行も基本的に影分身を多用していた。

なんで?ってその当時聞いたけど、その時はよくわからなかった。

だけど、自分ひとりで修行するようになって分かったの。

分身が経験したことは自分の経験として残るって。

だからフェイトお姉ちゃんは影分身をしていたんだね。

それにしても影分身は本当にすごい。あたしは3人くらいしか維持できないけど、色々な事を短時間で勉強できる。

それこそ宿題をやりながら念の練習をして、お母さんの手伝いまでと、何気に日常生活で一番使っている忍術かも。

影分身を使用して分かれた三人のあたしがそれぞれ水の上を歩く。

何回も沈みながらも、時間をかけるとどうにか普通に立っていられるようになったので分身を回収して復習。

うん、大丈夫。

さて、ここまでは準備運動。

てくてく歩いて川の中腹まで行くと、あたしは足裏からのオーラの放出をやめてトプンと音を立てて水中へと入る。

「昼間は思いっきり出来なかったからね」

ヴィヴィオ達と一緒にやった水切り。これを今持てる全力でやったらどうなるのだろうか。

『硬』で右手にすべてのオーラを集める。

硬での攻撃なんてミッドチルダじゃ使える場所が無いからねぇ。

「っし!」

あたしが突き出したコブシが川を割る。

ドォンっ

そのまま川を50mほど裂いた。

「うわぁ…」

自分でやった事ながらその威力に目を見張った。

うん、これは本当に危ない技だなぁ。アオお兄ちゃんが危険だって言ったのも頷ける。

割れた川底に月光を浴びてキラリと光るものが目に映った。

何だろう?

気になったあたしは割れた川が戻る事で発生する濁流のような衝撃を念で四肢を強化して踏ん張って耐え、流れの戻った川を潜る。

水中で目を凝らすと川底の岩に埋まっている七色に輝く宝石。

硬で指先を強化して軽く岩の周りを叩く。

ぽろぽろと岩が剥がれ落ち、中から直径三センチほどの虹色の宝石が現れた。

「ぷはっ!」

その宝石を手にとって水面に上がる。

「きれい…」

その宝石は月光を反射してきらきら輝いていた。

「なんて言う石だろう」

ここは管理外世界だし、この世界特有の宝石で、もしかしてまだ誰も発見したことの無い石だったりして。

あたしは岸に上がってそれを水着袋にしまうと、気を取り直して修行を再開した。

さて後は火遁の練習をしたら今日はロッジに帰ろう。

深夜3時。

絶で気配を消してロッジに戻る。

月明かりが照らす薄暗い廊下を音も無く歩いていくと急に後ろから声を掛けられた。

「こーら、こんな遅い時間までどこ行ってたの?」

その声に振り向くとそこにはなのはさんがコーヒー片手に廊下をあたしの方へと歩いてくる。

「えっと…あの…気がついてたんですか?」

「まあね」

あたしは絶で完璧に気配は消していたはずなんだけど…

まあ、探知魔法を使われたら一発か。

「こんな時間まで一人で修行?」

「えと…その…はぃ」

言い訳は思いつかずに肯定してしまった。

怒られるっ!

「時差もあるから今日は早く休んで貰いたかったんだけどね。明日はみんなで模擬戦だし疲れを残さないようにしないとだめだよ?」

「ご、ごめんなさい!」

うぅ、ちゃんと計画立てているから明日に疲れを残すような事は無いんだけどね。

あたしの手元に唯一形として残るあの人達とのつながりである一つのパヒューム。

あの人達が帰ってしまう時にあたしに届けて貰うように管理局の人に頼んだらしい。

このパヒューム、なにやらビーズのようなものが貰った時は100個埋まっていた。

中の液体が無くなると水を足してボタンを押すと、ビーズの様な物が一つ押し出され、中の水に溶ける。

このパヒュームの使い方は色々だ。

傷に吹きかければ擦り傷や切り傷程度ならばたちどころに治り、寝る前にひと吹き寝室に吹きかければ『絶』の効果もあって3時間睡眠でもばっちり全快、元気いっぱいだ。

そしてやった事は無いけれど、おそらくこのビーズを取り出して直接口にすればどんな怪我だって治るだろう。

だから今回も3時間睡眠で大丈夫と計算していたんだけど…なのはさんに見つかっちゃったと言うわけ。

「まあ、良いけど、あんまり心配させないでね?」

「はーい」

お叱りを受けて寝室へと戻される。

「あ、ちょっと待ってください」

あたしは懐からパヒュームを取り出す。

「何?」

「これを吹きかけると安眠できるんです。なのはさんも良かったらどうかなって」

「それ、ヴィヴィオも持ってる…」

「え?」

なのはさん今なんか言った?

「ううん、何でもない。それじゃあ、借りてみようかな」

「あ、はい。どうぞ」

あたしからパヒュームを受け取ってシュッとひと吹き。

「あ、本当だ。気持ち良い」

「そうなんです。ついでに疲れも取れちゃいます」

なのはさんがパヒュームをあたしに返す。

「へぇ、不思議だね」

「はい!」

私は宝物を誉められて上機嫌で部屋に戻った。



しかし、ベッドに潜り込むと思考がぐるぐるマイナスの方向に展開した。

先ほどのなのはさんとの会話で強くアオさん達の事を思い出した所為だ。

だめだ…やっぱり一人じゃ限界だよぉ…

相談できる仲間が欲しい…修行を見てくれる先生が欲しい…

アオさん達に会いたい…

あの時。あのゲームの世界から現実世界に戻ってもいつでもアオさん達には会えるって思っていた。

一ヶ月が経ってパパにお願いして機動六課に問い合わせてもらったりもした。

その時はまだゲームの中だって言われただけだった。

だけど、その後何回か問い合わせてもらったら、今度はもう会うことは出来ないって教えられた。

どう言う事かとあたしのパパが食い下がってくれたおかげでようやく事情を知ることが出来た。

あの人たちは過去から来た人なんだって。

どのくらい過去なのか聞いたら10年って教えてくれた。

10年くらいだったら今でも探せば居るはずだよね?

それでも返ってきた答えはNOだった。

アオさんとソラさんはこの世界には生まれていないんだって。

意味が分からなかった。

でも目の前に現れたなのはさんとフェイトさんを見て理解した。

彼女達は違う…

存在感が違う。なのはさんとフェイトさんはもっと…

小さかったあたしは、過去は現在へと一本でつながっていると思っていた。

その時はよく分からなかったけど、いっぱい本を読んで勉強した今なら理解できる。

時間はひとつの紐のようなものじゃなくて、いくつも枝分かれした樹木の様だって。

平行世界。

これは次元世界の定義としての平行世界ではなくて、選択によって発生するいくつもの異なった世界の事。

つまりこの世界はアオさんとソラさんが生まれなかった世界。

だから会うことは出来ない。

河原から持ってきた七色に光る石を持ち上げて覗き込む。

月明かりを反射して七色に光っていた。

「会いたいよ、アオさん」

沈んだ気持ちを忘れるように眠りについた。


さて、次の日はお待ちかねのあたし達幼少組みも加わった6対6の陸戦試合(りくせんエキシビジョン)

チーム分けは、あたし、ヴィヴィオ、ルールー、エリオさん、なのはさん、スバルさんの6人。

相手チームは、コロナ、アインハルトさん、キャロさん、フェイトさん、ティアナさん、ノーヴェさんの6人だ。

あたしは自分の相棒であるソルフェージュを取り出す。

愛称はソル。

あたしを助けてくれたあの人のデバイスにあやかりたくて、いつの間にか定着したニックネームだ。

「行くよ!ソル」

『スタンバイレディ・セットアップ』

ヴィヴィオやアインハルトさんはどうやら大人モードで参戦するようだけど、あたしはこの今の体で修行を積んでいる。

リーチや目線が変わるとやりにくそうだから、変身魔法は使えるけれど使う事はないかな。


そして試合が始まる。

どうやらまずは1対1で索敵してのぶつかり合いから始めるようだ。

あたしの相手はどうやらコロナのようだった。

「ゴライアスっ!」

コロナが創り出したゴーレムの巨大なコブシがあたし迫る。

「うわぁ…ライフシミュレーションのみだから直撃してもバリアジャケットを抜かれる事が無ければ怪我はしないんだけど…痛そうだし、くらいたくないなぁ」

かわそうとしたあたしに、その巨体からは想像できないような速度で追随するコブシ。

「ちょ!?」

速いっ!

間一髪の所で大きく距離を取ってその攻撃をかわした。

「すごいねっ!コロナ。まさかそんな速さでゴーレムを操れるなんて!」

「ううっ…避けておいてそんな事言う?今のは絶対捉えたと思ったのに」

本当に今のは危なかった。

コロナのゴーレム操作技術はその年齢では類稀なものだろう。

あたしは嬉しくなった。

「ふふっ、いいねっ!それじゃああたしも少しは本気出さないと!」

「え?」

ゴライアスを正面に捉える。

「行くよ!コロナ!」

「ゴライアスっ!」

あたしが駆け出すと、迎撃しようとゴライアスがコブシを振るう。

それをあたしは自分の右コブシをぶつけるように突き出した。

「え!?リオっ!あぶないから避けて!」

当然避けるか防御する物と思っていたコロナはあたしの行動に絶叫する。

あの質量のパンチをコブシで受け止めれば普通は複雑骨折ものだろう。

だけど…

右手に全てのオーラを集める。

『硬』だ。

「はっ!」

ドゴーン

「うそーーーーっ!」

あたしのコブシがゴライアスの腕を砕き、その勢いでコロナはゴライアス共々吹っ飛んでいった。

強化魔法じゃないけど、ゴライアス相手だったら大丈夫でしょ。

プチっ

あ…ゴライアスの下敷きになってる。

あたしは急いで近寄ってコロナの状況を確認する。

「きゅーーーーっ」

「バリアジャケットでダメージは無し、気絶で撃墜扱いだね」

どうやらゴライアスはコロナのデバイスであるブランゼルが分解したようで、多少の土砂に埋もれているだけのようだ。

さて、次行こうか!

その時、ルールーから作戦開始の合図が届く。

2on1で確実に相手を落とす作戦だった。

あたしは一気にフィールドを駆け抜けて相手陣地の奥底へ向かう。

目標はフルバックのキャロさんだ。

回復や支援魔法が得意な彼女を落とせばかなり戦局が優位になる。

キャロさんを補足するとその傍らに防御シールド魔法で守られたアインハルトさんを発見。

どうやら回復魔法でライフの回復中のようだ。

ふむり…ルールーさんがキャロさんの注意を引いていてくれるから…

あたしは気配を消してキャロさんの後ろに回りこむ。

「キャロさんっ!後ろですっ!」

「え?」

アインハルトさんがあたしを見つけたようだが、遅いよっ!

「木の葉旋風」

空中回し蹴り、からの…

「リオスペリャルっ!」

二撃、三撃と蹴り上げて、そのまま足で挟むように相手を掴み、腰の回転を利用して投げ飛ばした。

「きゃーーーっ!」

そのままキャロさんは吹っ飛んで行き、ノックアウト。

「きゅー…」


「リオ、ナイス!」

ルールーさんがナイスファイトと誉めてくれた。

しかし、その言葉が隙となってしまった。

「ルールーさん、あぶない!」

ルールーさんに迫るアインハルトさんのコブシ。

「あっ…くっ…」
「はぁっ!」

弾き飛ばされたルールーさん。

かなりの距離を飛ばされたようで、ここまで戻ってくるの時間が掛かりそう。

もしかしたら今のダメージで戦闘不能になっちゃったかも…

アインハルトさんはあたしの方を振り向くと、構えた。

「一勝負、お願いします!」

「はいっ!」

アインハルトさんの全身から闘気があふれ出る。

どちらとも無く進み出て、互いのコブシを交える。

すごい!

アインハルトさんは本当にすごい!

彼女との戦いは、ヴィヴィオ達なんかとは違う!

ダンっ

互いのコブシをコブシで弾き、距離を取る。

「すごいです!アインハルトさん!あたし、ここまで本気になった事はありませんよ!」

「そうですか。リオさんも凄いですね。その強さ、どこで身につけたんですか?」

「えへへ~。昔、助けて貰ったお兄ちゃん達に教えて貰ったんだ。あの人たちは本当に強いんだよ?」

「そうなんですか。私もいつかお会いしたいですね」

「……ごめん、もう居ないんだ」

もう、アオお兄ちゃん達に会うことは多分…

「…、ごめんなさい」

「いいの、別に死んじゃってるわけじゃないから」

「え?」

ただ二度と会えないだけで。

「それよりも、リオさん…私に対して手加減…してますよね?」

「え?」

「バレてないとお思いですか?私はこれでもいっぱしの格闘家です。相手の力量を見る目はあるつもりです。貴方はもっとなにか強い力を隠し持っている気がします」

「うーん。全力で相手をしているつもりだけど…そうだなぁ、今ここで使えない技術はいっぱい持ってますよ」

「使えない?」

さっきゴライアスに『硬』を使っちゃったけど、ノーカンで。

対人戦に『念』は威力がありすぎて命の危険が無い限りご法度だもの。

それと忍術。

あれは魔力での攻撃じゃないから、非殺傷なんて物はないしねぇ。

でも、一つくらいいいかな?

「そうですね、それじゃアインハルトさんに失礼かもしれないから、あたしの取っておきを一つだけ見せちゃいますね」

他の人には内緒ですよ?と釘を刺して私は一度目を閉じた。

『写輪眼』

「眼が…その眼は…あなた…もしかして」

アインハルトさんが動揺で体を硬直させている間にあたしはアインハルトさんとの距離を詰める。

「やっ!」

「くっ…」

突き出した右コブシ、それをガードしようとするアインハルトさんの体の動きを先読みしてそのガードをすり抜ける。

御神流 『貫』

そのコブシで吹き飛んでいくアインハルトさん。

アインハルトさんは素早く体制を制御し、構える。

「その眼、クラウスの記憶が知っています。…それは竜王の、竜王アイオリアの瞳」

アインハルトさんってイングヴァルドの記憶を持っているんだっけ?

だから、竜王本人も知っているのかもしれない。

「あたしは、たぶん…竜王の子孫だよ」

確証は無いけど、そうだってアオさんに聞いたから多分間違いないとおもう。

「クラウスは生涯を賭しても彼の竜王に勝てなかった、だけど!」

そう言ったアインハルトさんはさらに闘志を燃やしたようだった。

「だからこそっ!勝たせてもらいますっ!」

裂帛の気合と共にそのコブシを振るう。

振るうコブシは徐々に速度を上げていく。

写輪眼が無かったらこれは絶対に見えないなぁ…

あたしはその攻撃を弾き、かわして距離を取る。

すると、一瞬溜めたかと思うとその掌を突き出すと、衝撃波が私を襲った。

「覇王空破断(仮)」

私は衝撃波の飛んでくる風圧も利用して空中を自然落下するように避けた。

「なっ!バインドっ!」

その時きっちり相手を捕獲する事も忘れない。

あたしの目の前に魔力が収束する。

「ディバイーーーン」

その魔力球めがけてあたしはコブシを突き出した。

「バスターーーーーー」

ゴゥっという音を立てて魔力の本流がアインハルトさんを包み込んだ。

どうだ、と確認するよりも早く、あたしを巨大な魔力攻撃が襲う。

「な!?」

うそーーーーっ!?

まさか!なのはさんとティアナさんのダブルスターライトブレイカー!?

2人が同タイミングでそれぞれを攻撃したその攻撃は最終戦争もかくやといった勢いでフィールドを襲う。

完全に隙をつかれあたしは撃墜。

その攻撃で生き残ったのはヴィヴィオだけのようだったのであたしのチームが勝ったから良いんだけれど…味方を巻き込まなくても良いんじゃないかな?

そんな感じで模擬戦の1戦目は終わったのでした。


夜。

アインハルトさんとあたし達年少組の3人は一つのベッドで横になり、昼間の模擬戦で使った筋肉を休ませていた。

そんな状況でも女の子はお話が好きなわけで…

「古代ベルカで一番強かった王様って誰なんだろね」

そう、何の気も無しに呟いたコロナ。

「さあ?誰だろうね」

と、ヴィヴィオ。

あたしはそれをポケットから取り出したあの石を眺めながら聞いていた。

「有名な所だと最後のゆりかごの聖王オリヴィエ、覇王イングヴァルド、冥王イクスベリアあたりだけど…ここには彼らに縁のある人が2人も居るのね」

不思議な物だとコロナがごちる。

「ねえ、アインハルトさんはどう思う?やっぱりイングヴァルド?」

ヴィヴィオがアインハルトさんに問いかけた。

「いえ、そうですね…あの時代の最強の王、…それは」

「竜王アイオリア」

「「え?」」

はっ!あたし何を言って?

「アイオリア?でもその人の居た証明って最近やっとされたみたいじゃない。それにアイオリアの伝説なんて誇張が酷くてだれも本当に居たとは思わなかったみたいだし…」

と、コロナが言う。

「居たよ!だってあたしは竜王の子孫だもん」

「へ?」

その言葉にアインハルトさん以外の2人、ヴィヴィオとコロナの表情が固まった。

「本当なの?リオ」

「うそー、ただ2人が聖王と覇王の関係者だからってリオまで乗っからなくても良いのに」

「嘘じゃないもん!」

「嘘でしょう、だっていままでその子孫の存在が証明されてないからずっとただの伝説だったんだし」

「嘘じゃないもん!絶対本当のことだもの!」

普段のあたしならば、コロナのそんなことでは勿論怒らないのだけど、今回だけは譲れなった。

その時、勢いあまってあたしはつい手に力を入れてしまい、握り込んだ宝石を砕いてしまった。

バキッ

そんな音の後部屋を閃光が包み込み…


「へ?」
「何?」
「きゃ」
「どういう事?」

一瞬後にはその部屋には誰も居なくなっていた。 
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