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ソードアート・オンライン~連刃と白き獣使い~

作者:村雲恭夜
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第八話 青き悪魔、暴風の風

俺がクレイの膝枕で睡眠中、クライン達«風林火山»のメンバーと、第一層の«軍»が現れ、キリトからマップデータを受け取って進んだとの話を受け、俺達はボスの部屋に移動していた。
移動から三十分が経過しているが、未だ軍のパーティーに追い付かない。
「……索敵しても引っ掛からないな」
「ひょっとしてもうアイテムで帰っちまったんじゃねぇ?」
俺の言葉におどけるようにクラインが言う。しかし、俺はキリトの顔から、それはないと判断する。皆の歩く速度が、次第に早くなる。
半ばまで進んだとき、回廊内に何かの音が反響した。全員が足を止め、耳を澄ます。
「あぁぁぁぁ………」
微かに聞こえたそれは、まちがいなく悲鳴だった。
モンスターのそれではなく、人の悲鳴。
俺達は顔を見合わせると、一斉に駆け出す。敏捷パラメータに優る俺とキリト、アスナがクライン達を引き離す格好となるが、この際構っていられない。青く光る濡れた石畳の上を疾走する。
やがて、彼方にあの大扉が出現した。既に左右に開かれており、内部の闇は燃え盛る青い炎の揺らめきが見てとれる。そして、その奥でうごめく巨大な影。断続的に響く金属音と共に響く悲鳴。
「バカッ……!」
アスナが悲痛な叫びを上げると同時、速度を上げる。俺とキリトも、それに追随する。アシストギリギリの加速を足に掛ける。
扉の手前で急激な失速を掛けるキリトとアスナとは違い、そのままの勢いで俺は扉の中に突入する。
内部は地獄絵図だった。
辺りには青い炎が延々と噴き上げており、その中央で屹立するグリームアイズ。
その頭部から燃えるような呼気を噴き出しながら、悪魔は右手の斬馬刀と言うべき大剣を縦横に振り回している。まだHPは三割も減らされていない。その向こうで、軍が必死に逃げ惑う。
「止めろぉおおおおおおおお!!!」
速度を維持したまま跳躍、その無防備な背中に蹴りを放つ。
「グオッ!?」
背中の衝撃を受け止められなかったグリームアイズは倒れ、俺は着地して軍の一人に叫ぶ。
「何してるんだ!早く転移しろ!!」
だが、男は顔を向けると、絶望の表情で叫ぶ。
「駄目だ……!く……クリスタルが使えない!!」
「何だって……!?」
俺は思わず叫ぶ。この部屋は«結晶無効化空間»なのか。設定したときはそんなものは付けていなかった筈。
「くそっ!」
迂闊に助けには入れないと判断したキリト達は扉の前に停滞している。助けは望めない。
その時、軍の一人が怒号を上げた。
「何を言うか……ッ!!我々解放軍に撤退の二文字は有り得ない!!戦え!!戦うんだ!!」
その声に、俺は憤りを感じ叫ぶ。
「バカ野郎!!テメェは人の命を何だと思ってるんだ!!」
その怒号に、全員が動きを止める。途端、悪魔が笑ったーーーー気がした。
悪魔は仁王立ちすると、地響きを伴う雄叫びと共に、口から眩い噴気を撒き散らした。攻撃判定のあるこれに、軍の一部は対処が出来ずに停止させられる。そして、斬馬刀が指揮を取っていた男に突き立てられるーーーーその瞬間。
「誰がテメェを作ったと思ってやがるクソ悪魔が!!」
バンッ!と斬馬刀の軌道が逸れ、地面に叩き付けられる。俺の蹴りの一撃が、軌道を剃らすことに成功したのだ。
「……おいテメェ」
俺はそいつを睨むと怒気を纏わせて言う。
「テメェの罪は二つ。人の命を軽く見たこととーーーーその人を殺した事だ。覚えておくがいい」
そしてそいつを押し飛ばすと、斬馬刀が目の前に突き刺さる。
「おいおい、そんなに待てない奴だったかお前は?」
ウインドウから装備欄に移り、二本ーーーー否、“六本”の刀が、背に、腰に、出現する。
それに合わせてキリト達が入ってくるが、俺はそれに合わせて言う。
「キリト、間違っても俺の射程範囲に入るな!」
「……分かった!」
キリトの眼は、信頼できる。
だからーーーー俺も全力を振るおう。
調教(おしおき)が必要だな、グリームアイズ。さぁーーーー」
まず、背から紅い刀身を持つ刀と蒼い刀身を持つ刀を抜くと、背の腰側に存在する緑の刀身を持つ刀と白の刀身を持つ刀を抜く。最後に、黒の刀身と桜色の刀身を抜き、指と指の間に、挟んで構える。
「«暴風戦王»、推して参る!!」
そして、地面を蹴ると同時、斬馬刀が振り下ろされる。
グリームアイズの使うソードスキルは大剣だが、微妙なカスタマイズが施されているのか、その動作は偽物(フェイク)が混じっている。
その斬馬刀が、横から大振りに振られる。
大剣範囲ソードスキル«大旋風»。
「ガァアアアアアッ!!」
捉えようとしていた斬馬刀の刀身を六本の“爪”が押さえ込んで落とす。
落とした斬馬刀に乗ると、一気にかけ上って顔面へと向かう。
「グオッ!」
しかし、その斬馬刀を手放し、俺を腕の一薙ぎで叩き落とす。
「ガアッ!!」
叩き落とされた俺はそのまま地面にーーーー落とされる事はなく、黒いコートが風と共に俺を受け止める。
「重ッ!」
「キリ……ト……!」
黒の剣士キリト、その人だった。
「ナゼ、キタッ!」
「お前のそれ、負担高いの俺知ってるんだぜ?だから、俺にも手伝わせてくれよ」
装備欄をいじり、背にもうひとつの片手剣を装備したキリトに、俺は狂化状態で在りながらも呆れてしまった。
「ジャマダケ、スルナ。ヤクタタズハイラナイ」
「それも知ってるさ」
片手剣を抜いたキリトを最後に、狂化状態に戻る俺。そこに斬馬刀が振り下ろされる。
「グアッ!!ジャマ、スルナ!!」
本能のままに斬馬刀と受け止め、剃らすと、キリトが飛び込んで一撃を悪魔の胴体に浴びせる。初めてのクリーンヒットで、グリームアイズのHPが目に見えて減少する。
「グォオオオオ!」
憤怒の叫びを洩らしながら、悪魔は上段の斬り下ろし攻撃がキリトに放たれる。
「グオッ!」
それを、壁伝いでかけ上って跳躍蹴りを放った俺に阻まれ、斬馬刀を取り溢す。
体勢を崩した悪魔に、キリトが攻撃を仕掛ける。
発現条件、『全プレイヤーの中で最も反応速度に秀でた者』。あの«神聖剣に対抗するために作り出した二つのうちの一つ。
二刀を使い、あらゆるものを切り裂く刃、ユニークスキル«二刀流»。その中でも、上位に位置する剣技«スターバースト・ストリーム»。
「うおおおおおおあああああ!!!」
キリトは絶叫しながら、左右の剣を次々悪魔に叩き付ける。星々の輝きが、悪魔の闇を浄化するが如く。
「…………あああああああ!!」
キリトの十六撃目が、グリームアイズの胸の中央を貫いた。
「ゴァァァァアアアアッ!!」
グリームアイズは絶叫すると、硬直。そして数秒の停滞の後、膨大な欠片となって消え去った。
終わった。
と思った瞬間、体感時間がもとに戻り、地面に落ちる。
「ハッ!」
すぐに刀を捨てると、膝を折り曲げてクッションとし、着地する。途端、キリトが倒れる。
「キリト君!」
アスナが叫びながら駆け寄る。すると、数秒を得てキリトが目を覚ます。キリトは辺りを見回してアスナに一言二言言われると、俺はクラインと同時にキリトに近付いた。
「生き残った軍の連中の回復は済ませたが、二人死んだ」
「……そうか。ボス攻略で犠牲者が出たのは、六十七層以来だな……」
「最も、こんなの攻略とは到底言えんがな」
軍を睨みながら俺は言うと、クラインが首を振って溜め息を付くと、話題を変えるように訊いてくる。
「それはそうと、オメェラ何だよさっきのは!?」
「「……言わなきゃ駄目か?」」
「ったりめぇだ!見たことねぇぞあんなの!」
気付くと、アスナを除いた、部屋にいる全員が沈黙して言葉を待っている。
「……エクストラスキルだよ。«二刀流»」
キリトが言うと、俺は後付けで言う。
「いや、エクストラスキルではなく、ユニークスキルだ。俺のは«連刃»だ」
おお……というどよめきが、軍の生き残りやクラインの仲間達、ドラゴンファングのメンバーから流れた。
興味を持ったクラインは、急き込む様に言った。
「しゅ、出現条件は!?」
「答えよう。«二刀流»はこの世界に置いて最も反応速度に秀でた者。そして、«連刃»は逆に、この世界に置いて最も攻撃速度に秀でた者が手に入れられる」
すると、納得したようにクライン達はまぁそうだろなぁと唸る。
エクストラスキルは出現条件がハッキリとしているものとしていないものに分かれる。例えば身近としてクラインと俺の«カタナ»スキル。これは曲刀を完全習得することで使用可能となるエクストラスキルであり、レア度としては低い部類になる。そのように、十数種類知られるエクストラスキルの殆どは、派生前のスキル等を使用して取得できる物が多いため、最低でも十人以上が習得に成功しており、開発者である俺も、一時期カレス・オーのなんちゃら小瓶とか言う者にスキルを保存して、そのスキルの派生先を見つけるのに貢献したことがある。しかし、俺の«連刃»やキリトの«二刀流»、そしてこの世界最強のあいつの«神聖剣»だけは、重複したことがない。
この三つは習得者が一人のみと言うエクストラスキルーーーー«ユニークスキル»と言うべき物だからだ。俺も、キリトも例外では無いが、表舞台に出ないようにひた隠しにしていたが、今日から俺達が新たなユニークスキル使いとして明日にでも流れるだろう。これだけの人数を前に披露してしまっては、とても隠しおおせる物ではない。
「ったく、水臭ぇな二人とも。そんなすげぇウラワザ黙っていたなんてよう」
「さっきも説明したが、特定の条件に当てはまらない限り、隠すのは当然だ。キリトも、発現した時は心当たりがないと思っただろうからな」
俺は言うと、成る程なぁとクラインがうめく。
「それに、ゲーマーってものはレアスキルに敏感だからな、しつこく聞かれたりするのは面倒臭いし嫉妬深いからな」
「そりゃ当たり前だろ。まあ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ、若者よ」
「……クラインに言われると負けた気がする」
俺は言うと、アカウントを開いて軍の方を向いて言う。
「お前たち、帰れるな?」
すると、一人が頷くが、他のメンバーは動きずらそうにしている。
「……今、アカウントを開いて転移門を開く。それに入って戻ったら今日の事を漏らさず伝えろ、良いな」
「はい。……あ、あの……ありがとうございました」
「礼なら俺ではなくキリトに言いな。俺は何もしてねぇ」
ワープゾーン、オープンと言った俺の言葉と共に、蒼い渦が現れ、軍はその中に入って消えた。
最後の一人が消えると、俺はクラインたちに言う。
「上層のアクティベート、俺に任せてもらって良いか?」
「俺たちも行くぜ」
「済まない。キリト、今日はありがとうな」
キリトに礼を言うと、奥の扉を開いて階段を登る。
遂に、最後のクォーターポイント、七十五層。残り階層、二十五層。
「……ようやく、ようやくだ。ここを乗り越えて、貴方に問い詰めて見せる。この世界の真の意味を」
手を握りしめ、俺は階段を一歩ずつ上がる。
この階層が、最終決戦の場所とは知らず。 
 

 
後書き
クレイ「ついに中盤戦突入!」
クウト「作者、二巻の内容はやらないのか?」
作者「うーん……。ユイちゃんを出したいけど……来月体育祭・テスト・文化祭だから忙しくなるんだよねぇ……。それに、これSAO編で終わらせるつもりだし」
二人「え“」
作者「あれ、言わなかったっけ?ALOやらないよ?感想無いし。(狩黒とは違って」
二人「えええええええ!!!!!」
作者「煩い」
クウト「作者、慈悲を!俺達に慈悲を!」
作者「無いな。書くもの他に在るんで」
クウト「オー、マイ、ゴット!」
作者「SAO終了までに十個位来たら考えなくも無いが」
クレイ「誰か感想くださいお願いします!」
作者「……お前ら、人としてプライドは無いのか」
二人「無い!」
作者「……次回、激突、«神聖剣»vs«二刀流»」
二人「座してお願いします!感想ください!!」
作者「座しての意味が分からん……。さて、ゴーストはよ来い」
二人「さくしゃあああああああ!!!!」 
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