フェイト・イミテーション ~異世界に集う英雄たち~
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ゼロの使い魔編
第二章 天空の大陸 アルビオン
エピローグ:懺悔
前書き
ようやく二章も終了です。
出来は・・・う~ん、どうでしょう?
タバサのシルフィードに乗せられ、ようやくトリステインにまで帰ってきた。ルイズ一行はそのままトリステインの王都、トリスタニアにある王城にやって来た。
竜が城に現れたことで一時は城内が少々混乱状態になりかけてしまったが、騒ぎを聞きつけたアンリエッタのおかげでどうにか事なきを得た。
極秘の任務のため誰にも聞かれたくないということで、ルイズと架はアンリエッタの私室に通された。キュルケたちは気を利かせてくれたのか城の外で待っていると申し出た。また、ルイズの心情を想った架も部屋の前まで来たところで、ここで待っていると言った。
「申し訳ありません、姫様。」
事の次第を伝えたルイズはアンリエッタの前で跪いた。
すなわち、任務失敗の報告である。
ウェールズから預かったはずの手紙がないことに気付いたのはシルフィードでの道中であった。架やルイズが懸命に身の回りを確かめたが見つからなかった。
いつ、という疑問はすぐに解決した。恐らくルイズが謎の指輪により意識が奪われた時、ワルドが抜き取ったのであろう。
「手紙すら守れず・・・あまつさえウェールズさまの死まで、引き留めることが出来ませんでした。この罰はどんなものであろうと潔くお受けいたします。」
「ルイズ、顔を上げて下さい・・・。」
ルイズは言われた通り顔を上げ、はっとした。そこには優雅な微笑みを浮かべるアンリエッタの姿があった。
「ルイズ、悪いのは貴女ではありません。あの『閃光』のワルドがよもやレコンキスタの一員だったなんて・・・。それを見抜くことが出来なかった私の責任です。」
「そんなっ!姫さ「ルイズ」・・・!」
なお食い下がろうとするルイズをアンリエッタが優しく抱きしめた。
「もういいのです、ルイズ・フランソワーズ。貴女が無事に帰ってきてくれた・・・それ、だけで、私は・・・」
ルイズは分かってしまった。アンリエッタが自分を抱きしめた瞬間、彼女の体が僅かだが震えていることに。彼女の目が僅かに腫れていることに。
そして、彼女の微笑んでいた顔が痛々しく張り付いていたことに。
「姫様、わた、わたしは・・・!」
気が付けばルイズは止めどなく涙を流していた。自分の失敗で、姫様にこんな顔をさせてしまったことが悔しくてしょうがなかった。
その間アンリエッタは「もういいんです。」と機械仕掛けのように繰り返していた。
まるで、自分の中にある何かを無理やり抑え込むように。
ルイズが落ち着いたところで、アンリエッタが架を呼んだ。すぐに固い表情をした架が入ってくる。恐らく、二人の会話が何となくだが聞こえていたのだろう。彼はアンリエッタの顔を見ると驚いたように少し目を見開いた。それを他所に今度はルイズが代わりに出ていく。アンリエッタが「二人で話がしたい」と申し出たからである。
「この度は、貴方とルイズたちを危険な目に遭わせてしまい、申し訳ありませんでした。」
「・・・あれはルイズが自分で行くと決めたことです。今更貴女が責を感じる必要はない。」
早々にアンリエッタが頭を下げてきた。王族が一使い魔に対しての行動として架は意外に感じていた。
アンリエッタはアンリエッタで怒られるとでも思っていたのか、「え・・・」と声を漏らしたアンリエッタだったが、すぐに首を振ってそれを否定した。
「いいえ、貴方の反対の言葉を押し切ってルイズに頼み込んでしまいました。でも、その結果、ルイズが危険な目に遭って、貴方も大けがをして、ウェールズ様まで・・・!全部、全部・・・」
私の・・・所為
「(やれやれ・・・)」
と、架は心の中で嘆息した。
やっぱりこの人は彼女に似ている。架が部屋に入った瞬間、時々彼女が見せる表情を思い出してしまった。
王であるが故に全てをたった独りで背負込もうする。そしてヒトであり少女であるが故にその重さに耐えきれず苦悩し後悔する。
「違うんですよ、姫様。」
「・・・え?」
彼女はもう王としての生涯を終えてしまった。だからどう取り繕っても彼女が残した『結果』が付きまとってしまう。
でも、この人は・・・まだ間に合うはずだ。
「ルイズが、それにキュルケたちが貴女の命に従ったのは何故だと思いますか。まさか彼女たちが姫様から名誉や報奨を貰うためや任務についたとでも思いますか。」
「・・・・・」
「彼女たちは単純に、貴女の力になりたいだけなんですよ。」
「だから、もう少し彼女たちのことを信じてあげて下さい。」
俯いたまま黙りこくるアンリエッタ。その殻を破るべく、架は例のものを差し出した。
「姫様、これを。」
「!これは・・・」
架がアンリエッタに渡したもの、それはウェールズがつけていた風のルビーだった。
「ウェールズさまの、形見・・・」
「皇太子さまからの遺言です。『私は敵に背を向けることなく、勇よく死んだのだ』と・・・」
アンリエッタはまだ堪えようとしている。自分の弱い姿など、他人に見せないように。
「・・・この部屋には私一人だけです。」
「!」
「そして外ではルイズが他の者を寄せ付けないようにしています。」
「な、なにをいって・・・」
強がっているがその声は震えが止まらなくなっている。
架は優しく微笑み、最後の一押しをしてあげた。
「だから・・・今はいいんですよ、我慢しなくても。」
「・・・あ、あああ」
それを聞いたアンリエッタはポロポロと涙を流し始めた。そして、目の前に立つ架に縋り付くように彼の胸に顔を埋めた。
「わた、わたし、は、おう、じょです、から!なくこと、は、ゆるされない、んです・・・!!」
胸の中で嗚咽混じりに言うアンリエッタ。架はその頭を優しく撫でた。
「王でも、苦しい時や辛い時は泣いたっていいんですよ。貴女は王女である前に、一人の女の子なのですから・・・。」
もしかしたら、俺はこれを彼女に言ってやりたかったのかもしれないな・・・。
そんなことを思いながら、架は目の前の少女が泣き止むまでずっと撫で続けた。
一方こちらでも、己の任務の失敗を謝罪する者がいた。
「失態であるな、ワルド。」
「・・・申し訳、ありません。」
薄暗い室内の中、ワルドが机に腰掛ける一人の男に頭を下げていた。カールした金髪のこの男こそが、レコンキスタの総司令官のオリヴァー・クロムウェルである。
クロムウェルは声こそは落ち着いているものの、その視線は直接見ていなくとも相手の心臓を締め付けるかのようだった。部屋中にピリピリとした空気が充満する。
そんな中・・・、
「まあまあいいじゃねえかよオッサン。そのお姫様の手紙ってヤツはちゃんと手に入れたんだからよぉ。」
総司令官をオッサン呼ばわりするのはランサー。申し訳なさそうに項垂れるワルドに対し、ヘラヘラ笑う彼をクロムウェルはギロリと睨み付けた。
「ランサー、そもそも君があのセイバーをきちんと足止めできていればこんな結果にはならなかったと思うんだがね。」
「仕方ねえだろ、武器が折れちまったんだからよ。そもそも、あんな安っぽい武器でどうこうしろってのが無理な話だったんだよ。」
「その安っぽい武器というのは君が何度もダメ出しして何度も作り直させたあの槍のことを言っているのかね?」
因みに実際槍は「折れた」のではなく「折った」のだが、そんなことはこの場で彼以外が知る由もない。
どこまでもこちらを軽視した態度に、クロムウェルの眉間も険しくなっていく。第三者からすれば部屋の室温が若干低下していくように感じられるほどだ。
「ランサーもういい、下がれ。」
「へいへーい。」
耐えかねたワルドがランサーに退室を命じた。実体化したまま部屋を出ていき、バタンとドアが閉まると同時にクロムウェルはため息をついた。
「失礼しました、クロムウェル殿。」
「あれで戦力としては十分すぎる分、性質が悪いな。」
「ええ、結果がどうあれ彼はセイバーに深手を負わすことに成功しています。もし足止めではなく倒せと命じれば・・・」
勝てる、と断言しようとするワルドに対し、クロムウェルはゆっくりと首を振った。
「倒してしまっては困るのだよ。私が欲しいのは虚無の担い手、そしてその使い魔なのだからね。」
虚無の使い魔たるミス・ヴァリエールとその使い魔をレコンキスタに迎い入れる。それこそが今回の彼らの目的の一つであった。同じサーヴァントを持ち、ルイズとは赤の他人ではないワルドは正に今回の任務にうってつけだったのだが。
「よし、君は引き続き虚無の担い手をこちらに引き入れることを考えたまえ。」
「っ!し、しかし・・・」
「いいかね、これは命令だ。私は君に期待しているのだよ?それとも降りるかね。」
「くっ・・・承知致しました。」
正直ワルドは気乗りしなかった。元々ワルドはルイズと婚姻を交わすことで、彼女とその使い魔であるセイバーをこちらに引き込もうとしていた。その婚約をはっきりと断られた今、もはや彼女を引き込もうという気は起きなかった。
だが、だがやらねばなるまい。私の、私たちの目的を成し遂げるためにも・・・!
「七騎のうちの中でも能力が優れているとされる三騎士。そのランサーだけでなくセイバーまでもがこちらに加わったとなれば、聖杯戦争など待たずとも世界は我々のものだ。そしてその後に・・・」
ガタリと立ち上がったクロムウェルは天井を見上げ、両手を大きく広げた。まるで、群衆に宣言するように、高らかと。
「我々は念願の・・・『聖地』奪還に挑む!!」
「ええ!?サーヴァントに会ったのかね!?」
「は、はい・・・。」
「コルベール、声がデケェんだよ。」
「え、あ、こ、これは失礼。」
アンリエッタに報告を終えたルイズたちは、久しぶりに学院に戻ってきた。オスマンに報告しキュルケたちに礼を言い別れたルイズと架の二人は、コルベールの元を訪れた。
実験室にはコルベールの他にヴァロナもいた。コルベールは先生として生徒たちの無事を心から喜んでくれた。(ヴァロナは無反応だった。)
訪れた理由は無論、彼らとでしか出来ない話をするためである。
「すいません、これで俺だけじゃなく先生たちのことも知られてしまって・・・。」
「いえいえ良いんですよ。いずれはバレることでしたし。」
「まあ俺はともかくコルベールのことはまだ分かってないだろうからな。連中も分かったところで、今の状態じゃあどうも出来ないしな。」
今後緊迫した関係になるトリステインとアルビオンでは、刺客を送り込むだけで一筋縄ではいかない。ましてやその暗殺に長けた人物はこちら側にいるのだから尚更である。
「そういえば・・・」
「どうしたのかね、ミス・ヴァリエール?」
「あの、ワルドのサーヴァント・・・ランサーが最後に変なことを言っていたんです。」
「変なこと?」
「確か、『残るは一人だ』って。」
「「!」」
ルイズの言葉を聞いた途端、コルベールだけでなくヴァロナまで目を見開いていた。
「それは・・・う~む」
「・・・・・」
「あ、あれ?お二人とも意味が分かっているんですか?」
「いやルイズ、そんなに難しい話ではないと思うんだが・・・」
架が若干呆れて言い、どうやら理解できてないのは自分だけと気付いたルイズは「え、え~と」と言いながら視線をアチコチに移している。どうやら本当に分かってないらしい。
はあ~、と嘆息しながらヴァロナが答えを示した。
「残るは一人。後一人で七人揃う。つまり俺とコイツを含めて六人のサーヴァントが既にこのハルケギニアに現界してるってことだろ。」
「・・・・・・えええええ!!!??ちょちょちょ待ちなさいよ!それって「「「(声が大きい!)」」」すみません・・・。」
数秒遅れてようやく理解したルイズが大声を上げた。そのままの声量で問い詰めようとしたら三人同時に「しーっ!」のポーズをとられ、しゅ~んと萎んでしまった。
「しかし、問題なのはその六人の情報をレコンキスタが握っているということですが・・・」
「もしかしたら、残りの四人ともそのレコンキスタの傘下にいるのかもしれませんね。」
「!そんな・・・」
コルベールが口にした可能性は正に最悪の状態である。
一人いれば一国の軍隊に匹敵するとされるサーヴァントが四人もいるとなると、このトリステインはたちまち侵略されてしまう。いや、侵略ならまだマシな方かもしれない。下手をすれば、トリステインの人間は全滅し兼ねない。
だが、この意見に対してヴァロナがポツリと言った。
「いや、それは多分ないとは思うがな。何せ奴らの―――」
「?どうしたんだ、ヴァロナ。」
「・・・いや、何でもない。まあでも四人もいれば今更セイバーを引き込もうとしないだろ。その可能性は低いってことだ。」
「あ、ああ。」
言いかけたところで、変にはぐらかした。架とルイズは続きを待ったが、ヴァロナはそれっきり話す気はなくなったようだ。
コルベールはそれを悲しそうな表情で見ていたが、仕切り直すように「さて!」と声をあげた。
「ともあれ、今は考えていても仕方がありません。ミス・ヴァリエールとカケル君は、ゆっくり休んで下さい。何か新しい情報が入れば、すぐにお二人にお伝えましょう。」
「は、はい。分かりました。」
「そういえばヴァロナ、例の件ありがとな。」
「いいさ、ただし貸しだ。覚えておけ。」
「わ、分かった。」
こうしてこの場は解散となった。
二人と二騎による会議が終了し、架たちが帰った後もコルベールとヴァロナは座って押し黙ったままだった。
「また、隠し事ですか?」
「・・・・・。」
やがて、静かにコルベールが話しかけた。が、ヴァロナは反応しない。
「昔から、貴方は隠し事ばかりですね。自分のこともマスターである私にさえロクに話そうとしない。」
「・・・・・。」
ヴァロナはコルベールの話に返事をしないまま。だが、長年の付き合いからか彼が無視しているようでちゃんと聞いていることはコルベールには分かっていた。
「・・・まだ、人間は嫌いですか?」
「・・・話さないのは話す必要がないと判断しているだけだ。」
ようやくヴァロナは答えた。だが、その声にはいつもの飄飄さはまるで感じない暗く沈んだものだった。
「それに俺は人間が嫌いってわけじゃない。ただ・・・」
――――信用していない
実験室にまた沈黙が降りた。どのくらい続いたのか分からないが、突然それを破ったのは部屋に近づいてくる第三者の走る足音だった。
「失礼します!ヴァロナさんいますか!?」
大柄な男子生徒が駆け込んでくると、それまで重苦しい空気が嘘のように霧散し、ヴァロナはニッコリと生徒に微笑みを向けた。
「おや、どうしたんですかステイックス?」
「男子寮で少し揉め事が・・・、とにかく一緒に来て下さい!」
「はいはい今行きますよ。」
慌てるステイックスを落ち着かせるようにゆっくりとヴァロナは答えた。「お願いします!」とステイックスは現場である男子寮に戻っていった。それに続くようにヴァロナもよいしょと立ち上がる。
「ではコルベール先生、私はこれで。」
「あ、ああ。」
自然な、しかし知るものには違和感が拭えない完璧な作り物の笑みをコルベールに向け、彼も部屋を出ていった。
「・・・つくづくあの切り替えの速さには感服しますね。まあ、命じたのは私なんですが。」
一人っきりになった部屋ではあ、とため息を吐くと、何もない天井を見つめながらポツリと呟いた。
「人間は信用できない、ですか・・・」
気が付けば、彼と出会って十数年。性格は多少マシにはなってくれたが、やはり本質はそう簡単に改善するのは難しかった。
それでも、彼は・・・
「だったらなぜ―――」
貴方はカケル君の頼みを聞いてあげたのでしょうか・・・。
「ランサー殿。」
「あん?」
ランサーが廊下を歩いていると、後ろから呼び止める者がいた。
金髪に眼鏡をかけた、白衣を着た男性である。優雅に微笑んだその顔は一見人がよさそうな雰囲気を醸し出している。
ランサーは男のことは知っているようだが、男がこの場にいることには意外に感じていいた。
「テメエか。珍しいな、こんなトコに来るなんてよ。」
「ええまあ。セイバーが現れたと聞いたので話を伺いに来たのですよ。」
見かけどうりの澄んだ声でニコニコと話しかける男。ランサーはそれに対し若干冷めた目で見つつもとりあえずで質問に答えることにした。
「ああいたぜ。トリステインの魔法学院にいやがった。」
「トリステイン、ですか・・・。」
「おお。しかも笑っちまったんだが、そこにはアサシンのヤツもいたんだよ。」
ランサーの愉快そうな報告に、白衣の男は驚いたようだ。
「ほう!よもや騎士と暗殺者が手を組んでいるとは・・・随分変わっているんですね、今回のセイバーは。」
「まあな。けど、中々面白そうなヤツだったぜ。って用件はそれだけか?」
「ええ、今回は主と一緒ではありませんので。ではこれで・・・。」
そう言って、男はさっさと踵を返すと歩いていった。その後ランサーも歩き出したのだが、「あ・・・」と何かに気が付くと、バツが悪そうに頬をポリポリと指で掻いた。
「あ~そういえば、セイバーとアサシンか組んでることを笑っちまったが、俺もあんま人のこと言えねぇんだったな・・・。」
言いながらランサーは背後を振り返える。
額にルーンを宿した白衣の男の姿が、ゆっくりと掻き消えていくところだった。
後書き
前回のエピローグと違い、今回はいろいろと残すことが多くなりました。これが後々に繋げられればと思います。(注・零水に計画性はありません)
ここまででこんな小説をお気に入り登録して下さった方、ありがとうございます!登録してる方もしてない方も、よろしければ感想や評価の方お願いいたします!
第三章ではいよいよあの羽衣やあのトレビア~ンなんかも!?(注・零水に計画性ry)
ではではよろしく!
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