必死にやれば
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2部分:第二章
第二章
「だからね。コロ助を呼んで」
「呼んで何かするのね」
「うん、思い切ったことをね」
お父さんはここでも思い切ったことと言いました。
「やってみるよ。ここはね」
「わかったわ。それじゃあ」
お母さんはお父さんのその言葉に頷きながら言葉を返しました。
「お父さん。御願いね」
「うん」
こうしてお父さんはコロ助にその思い切ったことをすることになりました。その次の日。朝御飯を食べたコロ助をお母さんが呼び止めました。
「あっ、コロ助」
「何?お母さん」
「今日はお父さんが遊んでくれるわ」
「お父さんが?」
「そうよ。だから朝御飯食べたらすぐに用意しなさい」
「お父さんがなんだ」
コロ助はお父さんが遊んでくれると聞いて少しだけ考える顔になりました。
「何をして遊んでくれるんだろう」
「何処かに行くそうよ」
「遊園地とか?」
「さあ、それはわからないけれど」
お母さんはわざとわからないといった顔をしました。
「それはね」
「そうなんだ。けれど何処かに行くんだ」
「だから。早く食べなさい」
お母さんはまたコロ助に言いました。
「いいわね」
「うん、それじゃあ」
まずはそれからでした。コロ助は朝御飯を急いで食べて外に出る用意をしました。用意ができてから玄関に行くと。そこにはもうお父さんがいました。
「それじゃあ行くぞ」
「うん」
お父さんはまずはコロ助の言葉に頷きました。
「行くぞ」
「それで何処に行くの?」
「お母さんも一緒だよ」
行き先は言わずお母さんも一緒とだけ言うだけです。
「それじゃあ行くか」
「はい、それじゃあね」
丁度ここでお母さんが来たのでした。こうしてコロ助はお父さんとお母さんと三人一緒に家を出るのでした。お父さんは家を出るとそのままコロ助を連れて行きます。そうしてやって来たのは。
「あれ?ここって」
そこは街のお池でした。皆はここで泳いだりします。猫が来た時にはここに逃げて泳いで向こうまで渡ることもあります。皆にとっては憩いの場でもあります。
「お父さん、どうしてここに」
お父さんに尋ねようとすると不意に後ろから押されました。コロ助はそれでお池に突き飛ばされてしまいました。
「うわっ!」
誰に押されたかはわかりませんでした。とにかくお池に突き入れられたのはわかります。お水の冷たい感触がコロ助を襲います。
「な、何これ!?」
お池に突き入れられたコロ助はその冷たいお水の中で叫びます。
「誰が・・・・・・お父さん!?」
慌てて岸辺に顔を向けます。
「お母さん!?」
お父さんとお母さんを探します。ところが。
お父さんはいませんでした。お母さんもです。二人は今さっきまでそこにいたのに何処かに消えてしまいました。コロ助はそれを見て唖然となりました。
「そんな・・・・・・何処に行ったの!?」
もがきながらお父さんとお母さんを探します。けれどやっぱりいません。その間にコロ助は沈みそうになります。彼は泳げないのですから。
「し、沈む・・・・・・」
沈んだらどうなるのかは彼もわかっていました。それで何とか浮かぼうとします。
もがいて浮かび上がろうとします。けれど中々上手くいきません。何とか浮かぼうとしますがそれでも浮かびきれません。このままでは。
「溺れる!?」
そのことが頭の中に浮かびました。
「溺れたら。それで」
死ぬかも知れないと思いました。死にたくない、何があっても生きたい、彼は思いました。それで何とか浮かぼうとしてやはりもがきます。
そうしてもがいているうちにでした。彼は浮かぶことができるようになりました。そのまま岸の方まで泳ぐことができました。
「た、助かった・・・・・・」
全身びしょ濡れでまさに濡れ鼠です。けれど彼は何とか泳いで岸辺まで辿り着きました。まだ自分が何ができたのかはわかっていませんでしたけれど。
「できたな」
それを見て言う人がいました。
「コロ助、泳げたな」
「そうね」
お父さんとお母さんでした。二匹は木の陰に隠れてそこからコロ助を見ていたのです。あえて姿を隠して見守っていたのです。
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