仮面ライダーゲイム
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第1話 仮面ライダーという存在
俺の名前は紫苑海(シオン カイ)。ごく普通の大学生だ。別に可愛い女の子とラブコメしてたり、非日常なバトルに巻き込まれていたりしていないごくごく普通の大学生だ。ゲームが趣味なゲーマーだが、VRゲームは実用化されていないから、それに関する事件に巻き込まれたりもしていない。
そうやって俺はずっと何事も無く日常を過ごして行くものだと考えていた。だがある日から、俺は予想もしなかった非日常に巻き込まれる事になった。
『さあ、変身して戦うよ!!』
俺の腰に巻き付いたベルトが女の子みたいな高い声で喋る。
「変身って、どうやるんだ?」
『そのメモリークリスタルを私、ゲイムドライバーに差し込んで!紫色のやつだよ!!』
腰のベルト、ゲイムドライバーがそう言う。俺は腰のホルダーから中央に電源マークの浮かんでいる紫色のクリスタルを出した。これを差し込むべきか悩みたい所だが、残念ながらそんな暇は無い。何故なら・・・
【まあいい。貴様ら纏めて消してやる!!】
俺の目の前には機械部品を寄せ集めて無理矢理人型にしたような怪人…敵が居て、後ろには俺の弟…守るべき者が居たからだ。
「行くぞ!変身!!」
俺はお約束の掛け声と共にクリスタルをベルトに差し込んだ。
何故こんな事になってしまったのか。それは数日前まで遡る事になる。
夕飯の時、小学生の弟の通うクラスに転校生がやって来た事を話した。
「本当に彼の自分勝手な行動には目にあまります。」
ここで、俺の家族について紹介しよう。まず弟“紫苑海里(シオン カイリ)”について説明しよう。小学3年生だが背が高く大人びており、ぱっと見小学校高学年に、場合によっては中学生にも見える。そして、俺の顔が普通なのに対し、こいつは結構な美形だ。だが、真面目な性格で容姿の良さを鼻にかけたりはしない。そして、真面目さからクラス委員長をしており、部活は剣道部に所属している。因みに、憧れの剣豪は宮本武蔵だ。
「そんなに自己中なのか、そいつ?」
「はい。訳の分からない事を言って高町さん達に迷惑をかけていました。」
「お前のクラスのマドンナ3人にか?」
次は俺の父さん。ゲーム制作会社の社員。見た目はいたって普通。サラリーマンの絵を描けと言われたら多くの人が父さんみたいな絵を描くと思う。多分、俺はこの人の血が色濃く出ているんだと思う。
「お父さん。表現が少し古いですよ。」
最後に母さん。めちゃくちゃ美人で、何故父さんみたいな平凡な男と結婚したのか不思議だ。海里は多分この人の血を色濃く受け継いでいるんだと思う。
「え!?今クラスのマドンナとか言わないのか!?」
「まあ、認識は合っていますけど。」
驚く父さんを海里がフォローする。そんな中、俺は海里に言った。
「そうか。でも、その子等には頼れるナイト様が居るだろ?」
「はい。竜がいつも撃退しています。」
竜と言うのは海里の親友の“内藤竜”の事だ。海里のクラスのマドンナ達ととは仲が良く、一緒に居る事が多い。
「まあ、それなら海里の負担も減るし大丈夫だな。」
「ええ。」
そして夕飯を食べた後、風呂を済ませた俺達は眠りについた。
俺も海里も明日も今日と何も変わらない1日が続くものとばかり思っていた。だが、そうはならなかった。
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夜の山の中。ここで1人の少年“内藤竜”があるモノと戦っていた。
「ぐあああああああ!!!」
騎士を思わせる衣服に身を包んだ竜は何かに弾き飛ばされて山の斜面に叩きつけられる。
「く、くそぉ・・・」
「どうだ!これが“最強オリ主”の力だ!!」
竜を弾き飛ばした存在が近付いてくる。月の光が逆光となってよくは見えない。分かるのは歪な人型のシルエットをしていると言う事だけだ。
「何が最強オリ主だ。どう見ても“怪人”じゃないか。」
シルエットに対して竜が吐き捨てるように言う。
「うるせえな。特撮の怪人の力で活躍するオリ主だって居るだろうが。要するにダークヒーローってやつだよ。」
「はっ。お前は悲しみを背負ったダークヒーローには見えないぞ。この化け物が。」
「てめぇ!もういい、消えろ!!」
シルエットの人物、怪人は左手から白いエネルギー弾を発射した。それは竜に命中し、彼を消し去って行く。
「ぐあああああああ!!!」
そして、竜は“存在そのもの”が消滅した。
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翌日の昼休み。俺は食堂で飯を食いながら、友人の高町恭也と話していた。こいつは海里のクラスのマドンナの1人、なのはの実の兄でもある。だから話題は自然と転校生の迷惑野郎の話になった。
「本当に、なのはの事が心配だ。」
「大丈夫だって。頼れるナイトの内藤君がついているんだからさ。」
「内藤?誰だそいつ?」
は?こいつ何言ってんだ?
「馬鹿。内藤君だよ。ほら、うちの弟とも仲がいい。お前の妹とその友達、クラスのマドンナのナイト様だって。」
「そんな奴居たか?」
「おいおい、しっかりしろよ。」
「どうしたの?」
俺が恭也に呆れていると、そこへ恭也の恋人で海里のクラスのマドンナの1人の姉でもある月村忍がやって来た。
「月村、聞いてくれよ。こいつ内藤君の事を忘れてんだぞ。」
「内藤君?恭也と同じ授業を取っている子の事?」
ああ。そう言えば居たな、この大学にも内藤って奴。って、そうじゃなくて!
「そっちじゃなくて、お前らの妹のナイト様の内藤君だよ。」
「すずか達のナイト様?そんな子居たかしら?」
「はあ?」
おいおい、こいつもかよ。
「お前ら2人してどうしたんだよ。妹の友達を忘れるなんてさ。」
「そうは言われてもな・・・」
「本当に知らないんだもの。」
俺はため息をつきながらメシを食うのを再開する。しかし俺は、この時既に異常が起こっていた事に気付かなかった。
大学の授業が終わり、俺はサークルに来た。俺が所属しているのはゲームサークル。ただ古いゲームをやるだけのゆるいサークルだ。当然、人数も少ない。
「やあ、やっと来たな。シオン。」
俺を出迎えてくれたのはここのサークルリーダーの“岡部鈴”さん、通称オカリン先輩。何故かいつも白衣に魔女のようなトンガリ帽子と言う科学と魔術の交差した珍妙な格好をしている。中々の美人だが、格好が珍妙な上、この歳で重度の中二病患者ときたもんだ。
「今日も機関の連中の妨害無く無事に来れたな。」
「機関の妨害はありませんでしたけど、変な事は起きましたよ。」
「ほお・・・」
俺がファ◯コンの電源を入れながらそう答えると、オカリン先輩が興味深そうにつぶやいた。
「一体何が起こったんだ?」
「恭也と月村が妹の友達の事を忘れていたんですよ。昨日までは覚えていたのに。」
「その友達と言うのは誰だ?」
「先輩にも話した俺の弟の親友、ナイトの内藤君ですよ。」
「ふむ。ナイトの内藤君か・・・」
「どうしたんですか?」
「確かに、私は君から弟の親友についての話をされら記憶がある。」
「でしょう。」
やっぱりあの2人がおかしかったんだ。そう俺は思っていたが、その次にオカリン先輩から出た言葉は理解出来ないモノだった。
「だが、その弟の親友が誰だったのかを思い出す事が出来ない。」
「はあ!?何を言っているんですか!?」
「本当だ。まるで私の中から内藤君の記憶が消えたのに、君が内藤君について話した事実のみが残ったような状態だな。なるほど、再び奴らが動き出したか。」
「奴らって、いつも言ってる機関とか言う奴ですか?」
「いや、それとは別だ。しかし、そうなら君は今日はもう帰った方がいい。」
「え?どう言う事ですか?」
「君の弟も君と同じ体験をしている可能性が僅かながらある。」
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「さて、行ったか。」
海が帰ったのを確認した後、岡部はある場所にケータイで電話をかけた。
「私だ。」
『やっほー、オカリンじゃん。どうしたの?』
返って来たのは陽気な少女の声だ。
「“レインカネーター”が現れた。既に犠牲者が出ている。」
『分かった。でも、どうして分かったの?』
岡部の要件を聞いて、相手の少女は先程までとは打って変わって真面目な声になった。
「たまたま私の後輩が犠牲者の知り合いで、“特異点”だっただけさ。彼はこの件に首を突っ込む気満々だ。」
『とか言って、そっちが誘導したんでしょ。』
「いや。私はただ彼の身の回りで起こっている事について小さなヒントを与えただけに過ぎんさ。それを聞いた彼が首を突っ込む事を決めただけだ。」
『そう言うのを誘導したって言うんだよ。』
「そうとも言うかもしれんな。とにかく、君には彼とその弟君の護衛を頼みたい。ついでに、彼ら兄弟のどちらかが君の“持ち主”にふさわしいかも確かめておくといい。」
『オッケー。それじゃ、また今度ね。』
そして、通話を終えると岡部はケータイを切ってつぶやいた。
「はてさて。運命の女神に選ばれ“救世主”となるのは彼か、それとも別のだれかか。」
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オカリン先輩の言う通り、俺はサークル活動を中段して早めに家に帰った。
「兄さん!!」
すると、海里が顔を青くしながら走って来た。
「海里、どうしたんだ?」
「竜が、竜が!!」
海里の様子から何やら只ならぬ事が起こったようだ。しかも、大学の方で散々話題になった内藤君絡みみたいだな。
「落ち着け。何があった?」
「竜が、消えたんです。」
「内藤君が消えた?どう言う事だ?」
「実は・・・」
海里はゆっくりと話してくれた。
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今朝、僕が登校した際、竜がまだ教室に来ていない事に気付きました。何かあったと思い、僕は竜と仲の良い高町さん達に聞きに行きました。彼女達なら何か知ってるかもしれないと思ったんです。でも・・・
『竜君?誰それ?』
高町さん達は竜が休んでいる理由はおろか、竜そのものを知らないと言っていました。最初は冗談かと思いましたが、本当に知らない様子でした。その後、他のクラスメイトや先生達にもききましたが、やはり竜の事を知らないと言ってました。何かの間違いだと思った俺はクラスの名簿を確認しました。そうしたら、無かったんです。竜の名前が。
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「父さんと母さんも、竜を覚えていなくて、本当に訳が分からなくて。でも、兄さんが竜を覚えていてくれて、安心しました。」
おいおい、マジかよ。小学校の方では内藤君を覚えていないどころか、内藤君そのものが消えていたのか?
「海里。実は大学の方でも、内藤君について知っていた奴らが内藤君の事を忘れていたんだ。」
「本当ですか!?」
「ああ。お前のクラスのマドンナの兄姉も、サークル先輩もだ。ただ、1つ気になる事がある。」
「気になる事?」
「サークルの先輩は確かに内藤君の事をわすれていた。でも、俺が内藤君について話した時の事は覚えていたんだ。」
「それじゃあ・・・」
「ああ。内藤君は完全に消えて忘れ去られた訳じゃ無い。海里、明日は内藤君と一緒に遊んだ子達に話を聞いて来てくれ。俺もマドンナの兄姉に同じような事を聞いておく。」
翌日の昼休み。俺は恭也と月村と話していた。
「そう言えば恭也。お前の家って何故か道場もあるよな。門下生とか居るのか?」
「お前、その質問2回目だぞ。」
「そうだっけ?」
本当は覚えているが、誘導するために嘘をつく。
「うちの道場は“母さん以外の”家族となのはの友達だけで使っているんだ。」
「へえ。で、そのなのはちゃんの友達って何人くらいが通ってる訳?」
「1人だけだよ。ほらあの・・・あれ?だれだったか?」
やっぱりな。恭也が言ってるなのはちゃんの友達って言うのは昨日消えた内藤君の事だ。
「忍、覚えているか?」
「分からないわ。でも、なのはちゃんとすずかの共通のお友達で、名前が思い出せない子が居るから、その子の事かも。」
皆、内藤君の事を完全に忘れた訳じゃ無いみたいだな。
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その頃、小学校の方では海里が竜が消える前日に竜と遊んでいた子達から話を聞いていた。
「君達はおとといサッカーをしていましたよね。」
「そうだけど、それがどうしたんだ?」
「その時ゴールキーパーをやっていた子について聞きたいのですが。」
「ゴールキーパー?そいつなら・・・あれ、誰だっけ?鈴木、知ってるか?」
「僕も分からないよ。」
「どうなってんだこれ?」
やはり、彼らもゴールキーパーの子、竜の事は忘れているが、竜と一緒にサッカーをした事は覚えているようだった。
「分かりました。思い出せたらまた教えて下さい。」
それを確認した海里は次の子達の話を聞きに行く。だが、彼は背後からその様子を覗き見している影に気付かなかった。
「どう言う事だ!モブどもはあいつの事を忘れてねえじゃねえか!!」
その正体は竜が消える前日に転校して来た少年“神機慎也”だった。彼は何故か腕にはめたブレスレットに話しかけている。
『私は言ったハズですよ。存在消去は不完全だと。』
すると、ブレスレットは埋め込まれた宝石を点滅させながら返事した。
「あれは、あの特異点って奴だけは覚えているって意味とばかり・・・」
『確かに、そう言う意味もありましたね。』
「どうすりゃいい?」
『決まっています。今からでもあの特異点を“消す”のです。』
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兄さんの言う通り、皆竜の事を忘れていたけど、竜と一緒に何かをした事は覚えていた。
俺は兄さんにこの事を伝える為に急いで帰った。今日、兄さんは大学の授業が少ないから早く帰って来る。だから少しでも早く兄さんに伝える為に走った。
「よお、委員長さん。」
その時、背後から声がかけられた。振り向くとそこには転校生の神機慎也が居た。
俺は彼を警戒する。
今回の捜査で、俺は彼には話を聞かなかった。何故なら竜が消えたのは彼が転校して来た翌日で、彼には竜を消す動機のようなものがある。だから俺は彼の事を真っ先に怪しんだ。だから、話を聞きに行くのは危険だと考えた。
「随分嗅ぎ回ってくれたみてえじゃねえか。」
この口ぶり。やはりこいつが竜を消した犯人か!?
「そろそろ目障りになって来たからな。お前には消えてもらう。」
神機がそう言うと、空が急に灰色になった。それと同時に奴の周囲に稲妻が発生し、奴の姿は一瞬で変化する。それは、機械部品を寄せ集めて無理矢理人型にしたような姿をしていた。体格も子どもから大人のものまで大きくなっている。どう見てもその姿は化け物だった。
俺は目の前に現れた化け物を見て、腰を抜かして動けなくなってしまった。
【そうだ。大人しくしていろ。】
化け物は右手に淡い水色の光を宿しながら近付いて来た。
俺も、消されるのか?竜と同じように。それで、クラスの皆から忘れ去られてしまうのか・・・
そう思っていた時だった。
ブォオオオオオン!!!
突然、エンジン音が響くと紫色のバイクが化け物を跳ね飛ばした。
【ぐああああああ!?】
バイクはかなりスピードを出していたようで、化け物はかなり遠くに吹き飛ばされる。
「大丈夫かしら?」
バイクに乗っている人物が話しかけてきた。それは、紫色のラインの入った黒いライダースーツ姿の女性だった。紫色の髪を長く伸ばして三つ編みにし、頭にはプラスねじの頭のような形の髪飾りをつけている。そして、凄く綺麗な人だった。ライダースーツの上からはそのスタイルの良さが伺える。
「はい、ありがとうございます。でも、あなたは一体・・・?」
「そうね。あいつらと戦う為の“道具”とでも言った所かしら?」
そう言って女性は化け物を吹き飛ばした方を見た。そこでは化け物が再び立ち上がっている。
「道具って、どう言う意味ですか?」
「私は探しているの。私を使って、あいつらを完全に倒す事が出来る人間を。」
【その姿・・・俺の結界に入って来た事といい。貴様、転生者か?】
俺と女性が会話をしていると、化け物が割り込んで来た。
「会話中に割り込むなんて、空気が読めないわね。」
【黙れ。俺の邪魔をするのなら、貴様も消す!!】
化け物は再び手に淡い光を宿した。そして、そのまま女性に殴りかかる。
「危ない!!」
俺は叫ぶが、女性はそれを避けるのではなく、左腕で受け止めた。
【馬鹿な!俺の力を受けて消えないだと!?】
「私はあなた達に対抗する為に生みだされた存在よ。その力への耐性を持っていて当たり前でしょう?」
【おのれ!!】
化け物は何も持っていなかった手に剣を出現させ、女性を斬りつけようとする。だが、女性も腰から刀を抜いてそれを弾いた。
【くそっ!】
すると、化け物はバックステップで大きく距離をとる。そして、両手に弓とドリルのように刀身の捻れた剣を出した。その剣を矢のように弓へつがえる。
「させない!!」
女性は直様化け物の懐に入り込み、弓を両断する。そして、返す刀で化け物を斬りつけたが、つがえようとしていた剣に受け止められた。
【てめえ!技の発動中に攻撃とか卑怯だぞ!!】
「その力の本来の持ち主なら、私に邪魔されないよう、上手く立ち回ったわよ。」
文句を言う化け物に対し女性はそう言うと、化け物の剣を弾き飛ばした。それに続けて化け物の身体を斬りつける。
【ぐあっ!?】
「さあ、トドメよ!!」
【おのれ!!】
すると、化け物は指の間に挟む形で3本のナイフを出し、それを女性の足元に投げた。それは女性の足には当たらず、地面に突き刺さる。
「これは!?」
しかし、女性はそれを見て危機感を覚えたのか、後ろに下がった。
【壊れた幻想(ブロークンファンタズム)】
すると、化け物が呪文のようなものを口ずさんだ。それと同時に地面に刺さったナイフが爆発。周囲が爆煙に包まれる。やがて、爆煙が晴れると化け物の姿は消えていた。
「大丈夫?」
俺を爆発から守る為に俺を抱きしめていた女性が言った。
「は、はい。」
「そう、良かったわ。」
そう言って女性は俺を放した。
「あの、あなたは、それとあの化け物は一体何なんですか?」
「知りたいのならついて来て。」
女性は僕にヘルメットを渡すと、バイクに跨った。俺は覚悟を決めてその後ろに跨る。
「それじゃあ、行くわよ。」
女性はバイクのエンジンをかけてバイクを発進させた。
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今日の授業を全部終えた俺は早く帰って海里と情報交換しようと思っていた。
しかし、俺は先輩に家まで誘われてしまった。最初は断ろうとしたが、海里も来ると言う事と、俺たちの知りたい事を教えると聞かされてついて行く事にした。
そして、到着した先輩の家は何と言うか・・・実に先輩らしい家だった。魔女でも住んでいそうな古い洋館に、何に使うのかどデカイパラボラアンテナなどのメカメカしいものが所々に付いている。
そんな屋敷に俺が唖然としていると、バイクが走って来る音が聞こえた。そして、屋敷の門の前で停車する。それに乗っていたのは美人のお姉さんと、我が弟の海里だった。
「無事に守り切る事が出来たようだな。」
「ええ。」
どうやらそのお姉さんは先輩と知り合いらしい。
「先輩、その人は誰なんですか?」
「彼女については君達の身の回りで起こった事についてと同時に話す。付いて来てくれ。」
そう言って先輩は屋敷の門をくぐった。お姉さんも先輩と並んでバイクを押して行く。俺たちもそれに続いていくと、小さなガレージまでやって来た。全員がその中に入ると、先輩はシャッターを閉める。
「さて、では案内しよう。私達の基地へ。」
そう言うと先輩はガレージの壁に隠されていたボタンを押した。すると、ガレージの床がエレベーターのように下がり始めた。
「何だこれ!?」
俺と海里が困惑していると、床が下がるのが止まった。そして、目の前に広がった光景は、まさにSFモノに出てくる秘密基地だった。
ど真ん中にあるレーダーらしき物が埋め込まれた円卓。その向こう側にある指令専用っぽいデスク。その他にもよく分からない機械がいっぱいあった。そして、指令専用席の反対側には窓が広がっている。その向こう側にあったのは、黒い戦闘機とその格納庫だった。
「どうだい?興奮したかな?」
唖然とする俺達に先輩が声をかけてきた。
「・・・オカリン先輩。あんた何者なんですか?」
一般人がこんな秘密基地や、戦闘機なんて持ってる訳が無い。
「ふむ、では教えてやろう。私は・・・狂気の魔導師、朱雀院狂三(スザクイン クルミ)だ!はーっはっは!!」
が、先輩から返って来た答えはよく先輩が口にしている中二病全開の名乗りだった。
「真面目にやりなさい!!」
「がふっ!?」
すると、ライダースーツのお姉さんがハリセンで先輩の頭をぶっ叩いた。
「痛いではないかネプテューヌ。と言うか、一体いつまで“そっちの姿”で居るんだ?」
「それもそうね。」
すると、お姉さんの姿が光に包まれた。それと同時に身体が縮んで行く。やがて光が収まると、そこにはパーカーとワンピースを混ぜたような服を着た女の子が居た。
「いや〜、疲れた〜。」
「「ええ!?」」
「あ、そうそう。まだ名乗って無かったね。私、ネプテューヌ。よろしく!!」
「お、おう。」
「それが、あなたの本当の姿なんですか?」
俺が唖然としている中、海里がネプテューヌに聞いた。
「う〜ん。残念だけど、こっちも仮の姿だよ。本当の姿は、これ!」
ネプテューヌはそう言って円卓に腰掛けた。すると、彼女の姿は今度はバックルの部分がメカになっているベルトに変化する。
『これが私の本当の姿“ゲイムドライバー”だよ。』
「何だよその仮面ライダーの変身ベルトみたいな名前と見た目は。」
『おお!鋭いねえ。そう、私を使えば“仮面ライダーゲイム”に変身出来るんだよ!!』
「まさか、俺に変身して怪人と戦えとでも言いたいのか?」
『そうしたいけど、それは君の人柄を見極めてからだね。』
「怪人と戦う所を否定しないって事は、マジで居るのか、怪人?」
「兄さん。それについて話しがあります。」
「どうしたんだ、海里?」
「一昨日来た転校生、神機慎也は怪人で、竜を消した犯人でした。」
「・・・は?」
おいおい、マジかよ。内藤君が消えた件で何かそいつが怪しいなあって思ってたけど、まさかの怪人だったとは。
「ネプテューヌさん、岡部さん。教えて下さい。神機は…あの化け物は何なんですか!!」
「では答えよう。この世界は今、狙われている。」
先輩が円卓に片手をつきながらそう答えた。
「君達は神の存在を信じるか?」
「え?微妙な所ですね・・・」
「だが、神は実在する。そして常にこの世界を管理しているんだ。」
何だか胡散臭い宗教みたいな話になってきたけど、先輩が言うとただ中二設定を語っているだけにしか聞こえないな・・・
「世界を管理する責任は重大だ。ゆえに、神々は厳しい掟を定めている。そして、掟を破った神は邪神とされ、世界の管理の任から外される事となる訳だ。」
「それが、あの怪人と何の関係があるんですか?」
「それは、奴らを生み出したのが邪神だからだ。」
何だって!?
「邪神は自分達を追放した神々に復讐する為、世界を破壊する存在である怪人“レインカネーター”を生み出して世界へと送り込んだんだ。」
「世界を破壊する為ですか?その割には大人しい気がするんですが。」
「どう言う意味だ、海里?」
「奴がした事は竜を消した事と俺を消そうとした事だけなんです。当然、これらも許される事ではありませんが、世界を破壊する事が目的なら、もっと派手に暴れると思うんです。」
確かにそうだよな。世界を壊すならもっとこう、重要な人物を消して、世界を混乱させるとかするんじゃないのか?って、ちょっと待て!?
「海里、消されそうになったってどう言う事だ!?」
「今日の帰り、俺は奴に襲われたんです。どうも竜の居た痕跡を探していた俺が目障りだったみたいで。ネプテューヌさんに助けて貰えなければ今頃消えていました。」
マジかよ・・・
「それに、あいつの性格上、例え相手が曲がりなりにも神であろうと、誰かの下につく事を良しとしない気がします。」
「鋭いな、君は。そう。レインカネーター自身に自分が邪神の手下と言う自覚は無いのだ。」
「ちょっと待って下さい先輩!どう言う事ですかそれは!?」
「邪神がレインカネーターを生み出す仕組みは、邪な心を持つ人間が死んだ際、その魂を回収してそれをコアにする事で生み出すんだ。そして、レインカネーター自身は怪人としての力を邪神から貰った自分が好き勝手するのに都合の良い力としか見ていない。」
「でも、そんな状態で邪神はどうやって目的を果たすんですか?」
「君達も気付いているだろう。レインカネーターの存在消去は不完全だと。」
確かに、皆消えた内藤君の事を忘れてたけど、内藤と何かをした事は覚えていた。でも、それとどんな関係があるんだ?
「レインカネーターに消された人間は最初から存在しなかった事になる。だが、消された人間が存在した痕跡は関わった人間の記憶として残ってしまう訳だ。人の記憶とは歴史。ゆえに存在しないと言う改変された事実と存在したという実際の歴史の間で歪みが生じる。レインカネーターが人を消す程に歪みは蓄積して行き、やがて世界は歪みによりねじ切れて崩壊する。」
は、話のスケールが大き過ぎてついて行けないぞこれ・・・
「そんな事をしようとしている化け物を、どうやって止めるんですか?」
俺が固まっていると、海里が聞いた。確かに、先輩の話だとその怪人を放っておくと世界が滅びる事になる。
「その為に生み出されたのが私達だよ。」
すると、ベルトから少女の姿になちながらネプテューヌが言った。
「神様達もただ邪神が好き勝手するのを放置している訳じゃないんだ。私みたいにレインカネーターをどうにかする力を作って対抗しようとしているんだよ。」
「神様が直接怪人に天罰を与えたりはしないのか?」
「そうしたいのも山々みたいなんだけど、神様達は大元の邪神の相手で手一杯なんだよね〜。」
「で、俺にはあんたを使って仮面ライダーになって怪人と戦って欲しいって訳か。でも何で俺なんだ?」
「それは、あなた達がレインカネーターに対抗出来る存在、特異点だからだよ。」
「特異点?あれか、仮面ライダー電王に出て来る良太郎みたいな・・・」
「それに近い物だ。野上良太郎が歴史の改変の影響を受けないように、君たちもレインカネーターの起こした改変の影響を受けない。ゆえに、レインカネーターを倒せるのは君たちだけだ。」
「でも、ネプテューヌさんは自分で怪人と戦っていましたよね?」
「うん。でも、あの姿は力を託せる特異点に出会えなかった時用のモノだから、完全に倒しきる事は出来ないんだよねえ。」
「どう言う事ですか?」
「私が倒しても、レインカネーターの魂は邪神の所に戻ってまたレインカネーターの材料にされちゃうの。でも、仮面ライダーが倒せばちゃんと輪廻の輪に戻して浄化する事が出来るんだ。」
「そうですか。」
「でもよ、俺が変身して戦うなんてそんな事は出来ないぞ。」
「別に強制はしないよ。今までだって私だけで戦って来たんだし。でも、しばらくは護衛をさせて貰うよ。」
「そ、そうなのか?」
てっきり変身しないのなら守ってやらないとか強制されるものだと思って俺は拍子抜けしてしまった。
「そう言う訳で、帰りは私が送るよ。」
そう言ってネプテューヌは再び大人のお姉さんの姿になる。すると、先輩が可能を止めた。
「待て。君のバイクでは2人を送るのは無理だ。私が車で送るから、君は後から付いて来てくれ。」
「そうだったわね。それじゃあ、お願いするわ。」
秘密基地から出た俺達は先輩の車に乗っていた。後ろにはネプテューヌのバイクがついている。ちなみに、先輩の車はいたって普通の青いスポーツカーだった。
「意外ですね。先輩ならもっと奇抜な車に乗ってるかと思っていました。」
「見た目で判断してはいけないぞ。」
確かに、人を見た目で判断してはダメだな。まあ、先輩の場合は奇抜な見た目通りの性格だけど・・・
「この車にはいざという時に色々なモノを仕込んである。」
見た目で判断するなってそっちの意味かよ!
「けど、結局先輩って何者なんですか。秘密基地の事もですけど、ネプテューヌと知り合いだったり、色々な事をしってたり。」
「だから言っただろう。私は狂気の魔導師、朱雀院狂三と・・・む?」
その時、急に周りが静かになった。今までは道路を走る他の車の音も聞こえていたのに、それが無い。
俺がその事を不審に思っていると、ネプテューヌが叫んだ。
「上から来るわ!気を付けて!!」
それを聞いた先輩はハンドルを切り、歩道に乗り上げる。すると、車道の方で爆発が起こった。
「何だあ!?」
俺は窓から顔を出して上を見た。すると、灰色の空で弓を構えた怪人が飛んでいた。
「兄さん、あいつです!竜を消したのは!!」
あいつがか。しかし、飛べそうな見た目じゃないのに、どうやって飛んでんだあいつは?って言うか、曇りじゃないのに何で空が灰色なんだ。
その時、先輩が呟いた。
「結界に取り込まれたか。」
「結界?何ですかそれは!?」
「魔導師が自分の存在を秘匿したり、戦闘で周囲に被害が及ばないようにしたりするのに使う魔法だ。脱出するのは不可能ではないが、それだと周りに被害が出る。この中でどうにかしなければならないな。」
「でも、空を飛んでる奴相手にどうするんですか!?」
「言ったハズだ。この車にはいざという時に色々なモノを仕込んであるとな!!」
すると、先輩はハンドルの中央のくぼみに丸い宝石のような物をはめ込み、右手をかざした。すると、車のトランクが開いて、そこから大砲のような物が出て来る。
「食らえ!!」
そして、大砲の砲口に魔法陣が展開され、そこからビームが発射された。
「すげぇ!?」
まさかビームが出ると思っていなかった俺はこれなら怪人を倒せるかもしれないと考えた。だが、怪人は自分の前に魔法陣を出し、それを盾にしてビームを防いだ。
「嘘だろ!?メカ系の怪人の癖にファンタジー系の技を使った!?」
「そう言う問題では無いでしょう!!」
俺の叫びに海里がツッコミを入れる。
その間も怪人は矢を放って来る。先輩は凄まじいドライビングテクニックでそれを回避しながらビーム砲で反撃。ネプテューヌも矢を避けながら秘密基地にあった戦闘機を模した銃を怪人に向かって撃っていた。
すると、怪人は今度は矢ではなく剣を取り出して弓につがえた。
【赤原猟犬(フルディング)!】
そして、必殺技みたいに名前を叫んでから発射する。
「不味い!!」
すると、技名を聞いた先輩の表情に焦りの色が浮かんだ。先輩はハンドルを左右に切って車を蛇行させる。だが、剣はまるで誘導ミサイルのようにぴったり車を追尾する。そして、ボンネットの上から右前輪に突き刺さった。
「くそっ!ハンドルが利かない!!」
先輩がそう叫んだ。やがて、車は電柱にぶつかった。幸い、全員シートベルトをしていたおかげで無事だ。
【ここまでだな。】
すると、怪人が地上に降りて来た。そして、弓を消すと両手に白と黒の中華風の双剣を持って近付いて来る。
「させないわ!!」
しかし、ネプテューヌが刀で怪人に斬りかかる。
【邪魔だ!】
それを怪人は右の剣で弾いた。
【女神のお前にはこいつが効くかもな!!】
そう言って怪人は武器を槍に変えた。
【神殺しの槍(ロンギヌス)!】
そしてそれをネプテューヌに突き込む。それを食らったネプテューヌは吹っ飛ばされ、変身が解けてしまった。
「ネプテューヌ!!」
「ネプテューヌさん!!」
【あれ?おかしいな。対神宝具のこれなら貫けると思ったんだが。まさかネプテューヌの姿をしているだけで女神じゃないのか?】
俺と海里が叫ぶ中、怪人は何かブツブツ言った後、俺たちの方に向き直った。
【まあ、あれならきっともう戦闘不能だ。】
「このっ!!」
すると、車から降りた先輩が何処からか機械的なデザインの杖を取り出した。そして、それと車のビーム砲から怪人に向けてビームを発射する。
【熾天覆う七つの円環(ローアイアス)!】
だが、二つのビームは怪人が展開した花弁のような形のシールドに防がれてしまった。
「1枚も砕けないか。傷付くな。」
【はっ、当たり前だろうが。熾天覆う七つの円環(ローアイアス)を破りたいのなら、宝具を用意する事だな。】
ポツリと呟く先輩に怪人はそう答えて再び歩き出す。だが、奴の前に小さな影が立ちはだかった。
「皆はやらせないよ!!」
それは、ネプテューヌだった。
【まだ動けたのか?邪魔だ!!】
「あいたー!!」
しかし、あっさり槍で俺達の所まで吹き飛ばされる。
「ネプテューヌ!大丈夫か!?」
「ははっ、何とかね。でも、もっかい変身するのはきついかな?」
そう言いながらもネプテューヌは立ち上がった。
「無理をするな!休んでいろ!!」
「そうは言っても、レインカネーターから人々を守るのが私の役目だからね。」
先輩が止めようとするが、それでもネプテューヌは怪人に立ち向かうべく歩き出す。
何をやっているんだ俺は!モトはベルトとはいえ、女の子が一生懸命戦おうとしているのに見てるだけなんて!!
何より、相手は弟の友達を消した奴なんだぞ!!
「おい、ネプテューヌ。今の状態でベルトになれるか?」
「へ?うん、なれるよ。」
「それで、俺が変身しても大丈夫か?」
「うん。私のダメージが変身後引き継がれる事は無いし、エネルギーの別だから大丈夫だよ。」
「わかった。じゃあ、ベルトになってくれ。後は俺が戦う!」
「あれ?急にどうしたの?」
「ベルトとはいえ、女の子に守られてるだけの自分が恥ずかしくなった。それと、海里の友達を消したあいつが赦せない。ただそれだけだ!」
「なるほど。嘘はついてないみたいだね。なら、合格!!」
そう言うとネプテューヌはベルトになり、俺の腰に巻き付いた。
【何だと!?】
それを見た怪人が驚いた様子で叫んだ。
『さあ、変身して戦うよ!!』
「変身って、どうやるんだ?」
『そのメモリークリスタルを私、ゲイムドライバーに差し込んで!紫色のやつだよ!!』
腰のベルト、ゲイムドライバーがそう言う。俺は腰のホルダーから中央に電源マークの浮かんでいる紫色のクリスタルを出した。
【まあいい。貴様ら纏めて消してやる!!】
すると、怪人は槍を捨てると両手に淡い光を宿して突っ込んで来た。
「行くぞ!変身!!」
俺はお約束の掛け声と共にクリスタルをベルトに差し込んだ。
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「行くぞ!変身!!」
兄さんは掛け声と共にクリスタルをベルトに差し込んだ。
『カツモクセヨ!!』
すると、ベルトから音声が流れて兄さんの身体はスーツで覆われる。
所々に戦闘機を思わせる意匠のある紫色のラインの入った黒いボディ。頭部には紫色の触覚のようにも見える角が生え、水色の複眼が輝いていた。
【何!?仮面ライダーだと!?】
「そう言う事だ。仮面ライダーの力、見せてやるぜ。」
驚愕する怪人に対して兄さんはそう言うと、先程までネプテューヌさんが使っていたのと同じ刀を構えた。
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刀を構えた俺はふとある事が気になってネプテューヌに聞いた。
「なあ、この刀と腰に収まってる銃って何て名前なんだ?」
『ネプセイガーとハードシューターよ。』
すると、変身後の声と口調で答えた。俺が変身しても性格変わるのか?でも、今はそれより・・・
「ネプ“セイガー”?普通そこはネプ“セイバー”じゃないのか?」
『それは“聖なる牙”って意味の“聖牙”から来てるんだ。』
「なるほど。」
【貴様!何だその姿は!?】
「何って、決まってるだろ。怪人(お前)を倒すヒーローだ!!」
【ほざけ!!】
怪人は白黒の双剣を構えて突撃して来る。そして、間合いに入った所で左右同時に振り下ろして来た。俺はそれをネプセイガーで受け止め、振るう事で弾き飛ばす。
【ぐあっ!?パワーが上がっているだと!?】
「食らえ!!」
俺は左手でハードシューターを抜くと、銃口を怪人に向けて引き金を引いた。怪人は直撃を受けて火花を散らす。
「凄いな。銃なんか扱った事無いのに当たるぞ。」
『当たり前よ。照準調整は私がしているのだもの。』
「それは助かるな。」
【くそお、よくも・・・】
すると、怪人は武器を双剣から弓に変えた。そして、ドリルのように刀身の捩れた剣を矢のようにつがえようとする。
「させるか!!」
俺はハードシューターの弾丸で弓を破壊した。やっておいて何だが、あんな細いのに当てられるなんて、凄いなネプテューヌは。
「そろそろ決めるぜ、ネプテューヌ。必殺技はどうやったら出せるんだ?」
『ベルトにあるエグゼドライブボタンを押すのよ。』
「これか!」
俺はベルトに付いたボタンを押した。でも・・・
《ブッブー》
ゲームで使用出来ないコマンドを打ち込んだ時のような音が鳴るだけで何も起きなかった。
「おい、ネプテューヌ!これどう言う事だ!?」
『まだゲージが溜まってないからよ。』
「ゲージ?」
『左腕のブレスレットを見てちょうだい。』
ネプテューヌの言う通り、左腕のブレスレットを見ると、そこには4段階のゲージが付いていて、今は1段階目の1/4まで溜まっていた。
『敵に攻撃すれば溜まるわ。特に、ラッシュ攻撃はよく溜まるわ。』
「何か、ゲームみたいだな。」
【隙だらけだ!!】
俺達が会話していると、怪人が双剣を持って突っ込んで来た。だが、その顔面に光弾が直撃した。
「何をしている!敵は目の前だぞ!!」
振り向くと、杖を構えた先輩が叫んでいた。
「すみません!それと、援護ありがとうございます!!」
俺は先輩に礼を言うと怪人をネプセイガーで斬りつけた。
【ぐあっ!?】
「まだまだあ!!」
俺は連続で怪人を斬りつけた。
【調子に、乗るな!このモブが!!】
すると、怪人は右手の剣を振り下ろして来た。だが、俺の左腕が勝手に動いてハードシューターの銃身でそれを受け止める。
「これは!?」
『レインカネーターに対抗する力を持っているとはいえ、あなたは戦いの素人よ。サポートは任せなさい。』
「助かる!」
俺は左腕を振るって剣を弾くと、再びラッシュを叩き込んだ。やがて、ゲージが1つ溜まる。
『もう大丈夫よ。』
「よっしゃ!」
俺は怪人を突き飛ばして距離をとるとエグゼドライブボタンを押した。
『さあ、ネプテューンブレイクで決めるわよ!』
「おう!!」
俺は背中に戦闘機のような翼を広げると、怪人の周りを高速移動しながら何度も斬りつける。その間に俺も怪人もどんどん上昇して行く。そして、ある程度上昇した所で離れて着地した。それにより、怪人は落下を始める。
「まだ終わりじゃないぞ!!」
俺はネプセイガーをクルリと1回転させて持ち直すと、飛び上がって怪人を下から切り上げた。それにより再び怪人は上昇して行く。俺はそれを追い越すと、上からライダーキックを怪人に叩き込んだ。
【ぐああああああああああ!!】
怪人が叫ぶ中、俺はそのまま怪人を地面に叩きつける。
【馬鹿な、この俺が・・・怪人系最強オリ主がモブの変身する仮面ライダーなんかにいいいいいい!!!】
最期にそう意味の分からない事を叫ぶと、大爆発を起こした。
「兄さん!」
すると、海里が俺に駆け寄って来た。
「やったんですね。」
「ああ。海里、内藤君の仇はとったぞ。」
「はい!」
俺は変身したまま海里の頭を撫でる。すると、先輩が言った。
「もう終わったとでも言いたそうな感じだが、これは始まりに過ぎないぞ。」
「始まり・・・?」
「ああ。おそらく、邪神はこれから何度もレインカネーターを送り込んで来る。それと対抗出来るのは仮面ライダーゲイム、君だけだ。」
「・・・俺はきっと、世界を守る完全無欠のヒーローになんてなれません。」
「そうか・・・」
「でも、俺や、家族、それに友達の周りくらいなら守って見せる。それでもいいなら、やります。」
「ああ。それで充分だ。」
こうして、俺は仮面ライダーになり、異世界からの侵略者との戦いが始まった。
続く
後書き
次回予告
「何か、レインカネーターって行動も能力もワンパターンだな。」
「ついに完成したぞ!レインカネーター探知機が!!」
「ハードジェッター、発進!!」
「女に、なった・・・?」
次回『次元世界と言う存在』
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