あの太陽のように
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3話
病室はもぬけの殻だった。
はぁ?
くっそあの野郎、また抜け出してサッカーしてんな?
「調子乗りやがってぇ…」
「あっ、風間さん!?」
「あ゛?」
「遊び来てくれたんですね!!というか…なんか不機嫌…?」
「てめぇ、どこ行ってたんだよ…」
「い、いや、どこも行ってませんよ?」
「ほぉ…?」
見え見えの嘘をつきやがる。
奴こと、雨宮太陽。
何故かこいつは俺に対し、病院を抜け出してサッカーをしているということを隠している。
全部知ってんだけどな…。
まぁ、詮索するのも面倒なので放置。
いじることは忘れないが。
「太陽、お前、頭のその葉っぱはなんだ?」
「えっ」
植木にでも突っ込んだのか、太陽の頭には青々とした葉っぱが乗っていた。
…どこぞのラノベの天然ヒロインじゃないんだぞ。
「え、えっと、これは…」
しばしの沈黙。
「そ、そういえば風間さん!!昨日テレビ見ましたか!?」
たまらず話題をそらした太陽。
いろいろ言うのもなんだか面倒になってきたため何も言わないでおく。
「見たよ。雷門優勝したなぁ。お前は負けたみたいだけど」
「つ、次勝負する時は必ず僕達新雲が勝ちます」
その目は真剣で、サッカーが好きで好きでたまらないようで、思わず俺は目をそらした。
「ま、せいぜい頑張れよ。俺は中継でも何でも見てるから」
「…やっぱり、外に出ることは出来ないんですか?」
「まぁ間違いなく無理だろうな。…1回でいいから普通に外…いや、何でもない。忘れてくれ」
「一つくらい、望んでもいいと思いますよ」
「は?何をだよ」
「俺が知らないとでも思ってるんですか。風間さん、ホントは、絶対口に出さないけど、サッカーがしたくてたまらないんじゃないんですか」
「言ったところで何になる」
太陽の言葉に、自然と口調が憤ってくる。
「…ねぇ、風間さん。風間さんは、雷門中の人に会ったことはありますか?」
「あるわけねぇだろ。お前俺のこと知ってて言ってるんだよな?」
「会ってみたい、ですか?」
「会えるわけねぇだろバカかお前」
「もし、会えるって言ったら、どうしますか?」
「…?」
俺が雷門中の奴らに会える?
何の戯言だ。無理に決まってる。不可能だ。
「信じもらえないですかぁ…。神童さんはここにいらっしゃいますけど」
「…は?」
「あれ、知らないんですか?神童さんはこの病院に入院しているんですよ」
…え。
何それ初耳なんだけど。
いや、怪我したのは知ってる。試合見てたし、でも、まさか。
「マジでここなのか」
「あ、後、霧野さんもよくここに来るみたいですよ。冬花さん情報です」
「え…。マジでか霧野!?お前嘘だったらぶっ飛ばすからな!?」
「ず、ずいぶん食いつきます、ね…。もしかして好きなんですか」
「あぁ」
「え」
一瞬太陽の後ろに雷が落ちた気がするが、気のせいだろうな。
「プレーが好きだ」
「え」
今度は花畑が見えた。
あれ、何なんださっきからこれ。ついに視力まで死んだか…?
「そ、そうですよね!うん、風間さんが、そんなのに興味を示すわけないし?だ、大丈夫大丈夫…」
「…どうした急に…。いや、そんなことより、神童拓人の病室はどこだ」
「え。会いに行くんですか?」
「それ以外にないだろ。嫌がらせするわけでもねぇんだから」
「ま、まさか、霧野さんじゃなくて神童さんのこと好きなんですか恋愛的に!?」
「…………」
え。
コイツ、今、ナンテイッタ?
「は、はぁぁぁぁぁああ!?てめっ、何馬鹿なこと宣ってんだ!?」
「じゃ、じゃあ一体何しに行くんですか!!」
「普通に話してみたいだけだよ!!」
「うーそーだー!!いつもの風間さん、面倒、の一言で一蹴じゃないですか!!」
「てめぇは俺のことどんなふうに見てんだ馬鹿野郎!!必殺技の編み出し方とか、学校生活とか、色々そーゆーの聞きに行きたいだけだ!!」
俺が怒鳴ると、ようやく太陽は落ち着いたみたいだ。
…ったく、馬鹿なこと言いやがって。
「わ、分かりました」
太陽はキッと顔を上げ一言。
「俺、風間さんの恋を全力応援します」
「何も分かってねぇ!?」
「大丈夫ですよ照れなくて。風間さんはツンデレだなぁ」
「お前マジでぶっ飛ばすぞ」
「同じ年でもあるんですから、頑張ってくださいね!!」
「消え去れバカ太陽!!」
「ぐはっ」
最後に一発太陽の腹にお見舞し、俺は太陽の病室を去った。
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