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炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師

作者:BLADE
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”狩人”フリアグネ編
  八章 「動乱の果て」

 ―――別にシャナはどこも変わってないよな?
 グラウンドのトラックを走りながら俺は考えていた。シャナにとって、そして自分にとっても二日目になる学校だが、前日と同様に教師殺戮ショーに様変わりしている事は言うまでもない。
 他力本願で非常に申し訳ないのだが、シャナに配慮させるより周りが慣れる方が数段難度が低い。
 一見、昨日と変わりのない平和な日常―――非常に物騒な話ではある、に見えるが俺には少し気掛かりな事があった。

 ――それは今朝の事である。
 俺の起床時間は一般的な高校生より早い……らしい。周りの事なんてよく知らないし、ここ数年は正義の味方の真似事をしていたから、世間一般の考えとはズレてるって自分でも認めてる。
 昨日の朝に投影しておいた木刀で、鍛錬をするつもりだったんだが、紅世の徒の襲撃は明方も警戒する必要がある。
 昨日の戦闘で、感覚に少なからず誤差が出ているのは確認しているが、補正する余裕は無かった。投影には時間がかかるから、おちおち鍛練なんてしていたら初動が遅れるしな。
 仕方がないから、昨晩投影した夫婦剣を手に持って俺はベランダから周囲を警戒する事にしていた。
 端から見たら、危ない物を振り回そうとしてる危険人物だったけど、ベランダ側の外壁で外には夫婦剣は見えてないし問題はないだろう。
 そんな感じで警戒をしていた訳だが、結局、敵からの襲撃はなかった。なんだかんだで登校時間も近くなってたし、シャナを起こしたんたが、その時に事件は起きた。
「おい、そろそろ学校に行く時間だぞシャナ」
 別に何も言わなかったし、言う気もなかったけど、一応ここで寝ている御仁は俺を守るべく俺の部屋にいる。明け方が危険だ――、と言ったのも彼女だ。
 それがなんで、俺が彼女の寝込みを襲われない様に警戒する羽目になっているかは、敢えて聞くまい。
 勢い良く布団を跳ね上げて、半身を起こすシャナ。寝ぼけた顔でこちらを見てくる。

 イカチャ………、いやシャナチャンカワイイデス。

 寝ぼけ顔のシャナはとても可愛らしかった。
 ぶかぶかのジャージを首元から埋もれる様に着て、長い髪を一つに纏めた姿は見掛けの年齢通りに見える。
 もう一度言うが、とても可愛らしかった。

 ―――勘違いしないで欲しいが、別に俺はそういう趣味じゃない。

 ただ一瞬、シャナをお持ち帰りしたい、って思っただけなんだからな。
 曲がりなりにも、俺の家な訳で作戦は図らずも成功しているが。間借りだけに。
 そのシャナ(寝ぼけ顔ver.)が眠たげな声で答えてきた時だ。
「………ん。何よ~、言われなくても分かってるわ……って!?」
 俺の体を見るなり、驚愕で目を開くシャナ。ついでに再び布団に潜り込んだのもシャナ。
 ――なんだよ、俺の体のどこかが変なのか?
 自覚出来る様な変化が無かったので理由は分からない。一応、身体に解析もかけたんだけどな。
 確かにコンマ数秒程は、投影時間は早くなった様ではあるけど、そんな事はシャナに分かる筈もないだろうしな。
 誓って言うが、朝だからって下半身に問題がある訳でもない。

 しばらくその様を眺めながら待っていたが、全く出て来る気配が無かった。
 別に昨日の事を怒っている訳ではないようだけど。
「もう時間だし、先に用意して学校に行くからな? 千草さんに見つからない様に出てくれよ」


 一応、そう声をかけて俺は登校した訳だ。
 そんな事が朝にあったので、なんだか気まずい状態にある。そして学校に来てからも特に話をする事もなく、現在四時間目。
 体育の授業は急遽、球技から無制限ランニングになった。恐らく、というか確実にシャナが原因だろう。
 走りながらため息が出る。朝からの一件もそうだが、現在の学校は安住の地ではない。危険に満ちた戦場なのだ。
 ちなみに事の張本人のシャナは、涼しい顔で走っている。全く、気楽なもんだな羨ましいよ。
 俺たち生徒の走行時間は既に授業時間の半ばを超えているが、シャナは最初と全く同じペースで走っていた。言うまでもないだろうが、最初から超ハイペースだよ。トロトロ走ってるならともかく、あのペースで走り続けてたら、陸上部からのスカウト間違いなしだな。
 まぁ、フレイムヘイズとして戦う日々を送ってきたシャナだ。この程度の運動なんて朝飯前なんだろうけどさ。
 無論、それは俺も同じではある。そもそも、こんなただ無駄に疲れるだけの意味のない運動でダウンする程、ヤワな鍛えられ方はされてないしな。だが、少しは加減っていうのを知った方が良いと思うよ。いや、マジで。
 どう考えても、この急な無制限ランニングは体育教師からのシャナへの当て付けなんだ。つまり、標的であるシャナが足を止めるか、終業のチャイムが鳴らない限り、このゴールのない長距離走が終わる事はない。
 クラスメートの皆には良い迷惑だろう。主に体力的な意味で。無論、俺にとっても良い迷惑だ。主に精神的な意味で。
 ちなみに俺はというと、シャナの後方3メートルの位置をついさっきまではキープしていた。
 シャナに追随していた理由は簡単だ。シャナが何かをしでかした時に、俺が即座にカバーに回らないと不味いだろ?
 だがシャナを警戒するあまり、俺はある女生徒の異変に気付くのが遅れてしまった。
 俺がその異変に気付いたのは、厄介な事に追い抜いた後だった。仕方がないので急いで加速してシャナを追い抜き、女生徒の前の位置から追いかける。
 これまでの俺のペースを考えると、露骨なペースダウンはマズい。それにいきなり急減速をしたら、後ろに目でも付いているのか、なんて言われそうだ。何せ、ずっとシャナを見ながら走ってたんだから、周りをキョロキョロしてなかったしな。

 ―――もう直ぐで追い付くから、それまで耐えてくれよ。

 そう祈りながら走るが、俺が女生徒に追いつく寸前、女生徒はトラック上にうずくまってしまった。
「間に合わなかった!」
 急いで俺が女生徒に駆け寄った所で、体育教師が怒鳴り声を上げる。
「吉田ぁ! 何をサボっとるか!!」
 お前の眼は節穴かよ! これのどこがサボってる風に見えるんだ!
 俺は吉田という女生徒を支えながら、体育教師に内心で毒づく。
 息を切らして胸を押さえる吉田の肩に手を当て、解析をかける。そのうち、続々とクラスメートが駆け寄っ てきた。
 どうやら吉田は普段から貧血などをよく起こすのだろう。解析の結果、体は丈夫な方ではなかった。
 大事には至っていないから良いものの、ペースを落とす事も出来ずに走り続けさせられていたら、こうなる結果は分かりきっている。
「お前ら、何を勝手に集まっとる!」
 怒声を上げながら歩み寄ってくる体育教師。俺の隣で吉田を心配していた女生徒が反論する。
「先生、一美を休ませてあげて下さい」
  他の生徒からも批難の視線が体育教師に浴びせられるが、肝心の体育教師はその視線も全く感じとれてい。
 それもその筈、彼の標的たるシャナはこの事態に動じる事なく、今も走り続けており、彼は憎々しげにそれを睨み付けているからだ。
「うるさい! そう言ってサボっていたら、いつまで経っても体力がつかんだろうが!」
 視線を戻した体育教師は吉田を介抱していた俺を押しのけてくる。そのまま吉田の腕を掴み、無理矢理引き起こした。
「お前がサボっとるから、皆が足を止めるんだ! 立て!」
「………っ!?」
 息をするのも苦しそうな吉田が、声にならない悲鳴を上げる。
 その姿を見て、カチンと来た。普通なら教師がまず、生徒の体調を心配する所だろう。
 思わず俺は体育教師を睨み付けていた。
 ―――例え自分の体調も不調でも、生徒の安否を第一に考える。藤ねえはそんな教師だった。それに比べて、目の前の教師ズラをした男はなんだ。ただシャナに痛い目を見せる為だけに、周囲の生徒を巻き添えにし、あろう事か体調不良を訴えている生徒に鞭を打つような真似をした。
 ―――それが、そんな事が教師のする事なのか!
 視線は体育教師から外さずに立ち上がる。お前は教師として一番やってはいけない事をした。愛の鞭と体罰は似て非なる物。月とすっぽん以上に異なる物だ。
 だが、俺に何が出来る?
 今の体育教師には何を言っても無駄だろう。返って逆上させてしまえば、火に油を注いだようなものだ。
「なんだ衛宮。俺に何か言いたい事でもあるのか?」
 相変わらず高圧的な態度で俺の方を向く体育教師。今、俺がいる場所は学校。奴と俺の間柄は、教師と生徒。この立場の差が腹立たしい。
 結局、俺は権力に屈しないといけないって事かよ!
 こんな悪行は許せない。いや、許して良い筈がない。
 もう知らないからな。運が良くて停学、悪くて退学かもしれないが構うもんか。こっちはどうせ高校レベルの学習なんてとうに終えてるんだ。この教師には、職務にあるまじき行為をした報いを受けさせてやる。
 だが、視線を強めながら体育教師に向けて一歩踏み出した時、予想外の事が起きた。

 ―――あの野郎、いきなり飛びやがった。

 あ…、ありのままに今起こった事を話すぜ。奴を許せないとたまらず一歩踏み出したら、教師がいきなり飛んだ。
 な… 何を言っているのか、分からねーと思うが、俺もなんで飛んだのか分からなかった。
 頭がどうにかなってるのかと思った……。気流操作系の魔術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。

 このネタはいい加減しつこいよな、俺。

 そんな具合に俺を含めたクラス一同、皆が一瞬呆然とした後、我に返って見た先には平井ゆかりことシャナが運動靴の底を見せて立っていた。
 という事は、体育教師はシャナに蹴られてすっ飛んだのだろう。魔術だとか超スピードなんて関係なしに単純な力業で。
 ほらな、もっと恐ろしいものだっただろ?
 ――全く、少し目を放したらコレだからな。
 事情が事情だけに仕方がないが、シャナから目を離したのはミスだったな。おかげで俺の頭も冷えたが。
 俺はどうするものかと頭を抱えるしかなかった。頭が冷えた代わりに、頭が痛いよ。大方、意味のない運動に我慢の限界だったんだろう。
 だが、シャナはふらついて倒れかけていた吉田をついでにしっかりと片手で受け止めてもいたので、自分の為だけでもないようだ。
 それ程、長くない付き合いの俺が言うのもなんだが、珍しい事もあるもんだな。
「さっきからずっと走ってしかいないけど。これは、一体なんの授業なのかしら?」
 そう言いながら、肩にもたれ掛かる吉田を見て、シャナは眉根を寄せる。
 吉田を心配して………る訳ないよな。なにもたれ掛かってんだ、って感じだろう。頼むから、そっとしておいてやってくれよ。仕方ないだろ?
 それにお前はどうせ授業の意味が聞きたいだけなんだ、なら矛先は吉田じゃなくて体育教師に向けておけよ。
 そう考えていると、シャナは案の定、俺の予想通りの質問をした。というか、俺もそう思ってたしな。
「無意味な訓練ね。無闇に体を動かすだけ、なんて疲れるだけで時間の無駄だわ」
「ひ、平井……!!」
 相変わらず、煽りに定評のあるシャナ。まぁ、毎回正論だから本人にとっては煽ってるつもりはないんだろうけど。それを聞いて、起き上がった体育教師の顔は、案の定怒りに染まっていた。
 しかし、シャナにはなんの効果もない。それが通用したら、俺だって苦労はしないんだ。
「この授業に意味があるのなら、説明してみなさい」
 シャナはさらに体育教師に問い正す。
 今更だが、シャナに吉田を預けてるのが凄く心配だ。なんというか、色々と危険過ぎる。
「おい……、シャナ。吉田さんをこっちに」
 こっちに寄越せと、小さくシャナに声をかける。シャナはこっちを見て、その後に吉田を見直す。あぁ、吉田が誰か分からなかったのか。
 吉田の胸のゼッケンを確認して合点がいったのか、シャナは肩に持たせかけていた吉田を、こちらに放って寄越してきた。
 おい、なんて渡し方だよ……。これじゃあ、シャナが吉田に追い撃ちをかけてないか?
 吉田を受け取り、声をかける。
「吉田、大丈夫か?」
 顔は青ざめていたが、吉田は僅かに頷く。良かった、今の追い撃ちで気を失ってはいないな。
 けど、どっちにしろ早く保健室に連れていかないとな………。
 受け取った吉田を、近くにいた女生徒に預ける。申し訳ないけど、今はシャナのカバーに回らないといけない。
 ―――必ず保健室に連れていくから、もう少しだけ待っていてくれよ。
 そんな俺の後ろでは体育教師が怒声を上げている。目を背けたい現実だよ、全く。
「平井、教師を足蹴にしよって。停学……、いや退学にしてやるぞ!!」
 猛り狂う体育教師とは対照的に、平然としているシャナ。どっちが年上か分からなくなくなりそうだ。
「私は、説明しろ、と言ったのよ。それともお前は、授業の意味の説明さえ出来ないのかしら?」
「分かっているのか、平井! これは問題行為なんだぞ!」
 説明だとか問題行為だとかどうでも良いから、まずはその前に会話をしろ二人とも。
 会話のキャッチボールなんてよく例えられるけど、アンタ等のはただの銃撃戦だ。相手を潰す気で話したって解決する訳ないだろ。
 それにだ、二人とも周りに俺達がいる事を完全に忘れてないか?
 シャナはそんな事は最初から気にしていないだろうが、特に体育教師さんよ。
 いっその事、後は自習にして別の場所でやりあってくれ。はっきりと言うが、観るに堪えないし、聴くにも堪えないよ。これも学生の職分の内だと思って我慢してるけど、忍耐にも限度がある。
 俺ですらそんな事を考えてるんだ、クラス一同はそろそろ限界だろう。
 そんな中、全く会話が成立しない状況に俺達と同様に飽々していたのか、とうとうシャナがしびれを切らした。
 シャナの眉が急に平坦になる。あれはヤバい、シャナは一発何かをお見舞いする気だ。しかも周りの生徒と体育教師は気付いてないだろうが、あの重心の乗せ方は踏み込みの姿勢だ。
 一息で懐に飛び込むつもりなのだろう。
 こうなったら止めようがない。うっかりあの二人の間に入ってた体育教師の身代わりになろうものなら、即ノックアウト間違いなしだろう。生憎、あの教師にそんな義理はないが。だが、せめて俺がフォロー出来るシナリオに持って行くしかないな。
 仕方がないので、俺はシャナに攻撃目標を指示する。
「顔以外を狙って殴らずに蹴れ!」
 攻撃行為自体の妨害をした訳ではなかったので、シャナは指示通りに蹴りを放ってくれた。
 多分、止めろだとか待てだとか言っていたら聞き入れてくれなかっただろう。
 シャナに再び蹴り飛ばされた体育教師は、放物線を描いて地面に激突する。
 ―――おいおい、封絶張ってないのに大丈夫なのか。
 俺は池の二の舞は御免だぞ。なんせ、俺は治癒魔術なんか使えないんだ。
「――やり過ぎだ、シャナ」
 なら、威力の調整位はちゃんとしてもらいたいものだ。シャナだって封絶を展開していない状態では治療は出来ないんだろ?
 まぁ一応、予定通り(?)の結果には持って行けたので、予め用意していた台詞をわざとらしい言い方で周囲の生徒にも聞かせる。
「危ないですよ先生。皆がランニングしてるトラックに、周りを確認しないで入ったら」
 それを聞くとシャナは怪訝な顔をする。大方、意味が分からないのだろう。なにせ、状況説明が無茶苦茶だからな。
 なら頼むから、何も言わないでくれ。話がこじれちまう。
 そこで、メガネマンこと池速人が、流石に坂井悠二と付き合いの長い友人らしく、一番最初に意図を理解したようだ。元から頭の回転も速いのだろう、こいつはありがたい。
 池も周りに言い聞かせるように大声で叫んだ。
「蹴り飛ばされても、仕方がないですよね!」
 それを聞いて佐藤も理解したようだ、クラスメートを煽るように続く。
「だよな! 平井さん足が速いから!」
 佐藤に続き田中も声を出す。ここまで来れば後は簡単だろう。
「そりゃ、急には止まれねぇわな!」
 田中が言い終えた所で、続々にクラスメートが声を上げ始めた。
 騒ぎは歓声のように上がり、トラックを包み込む。
 要はテ〇リス……はちょっと違うか。ぷよ〇よとかコラ〇スみたいな落ち物パズルゲームと同じ要領だ。
 この場にいる生徒は、皆一様に教師に対して不満を抱えていた。そりゃあそうだろう。巻き添えの形で延々と走り続けさせられた挙げ句、吉田を痛め付ける様を見せられたんだからな。
 なら、この集団を動かすのは簡単な事だ。全員を同じ目的で行動させるキッカケがあれば良い。
 俺が体育教師にかけた声は、実はクラスメート全員に向けて放ったメッセージだったのだ。
 ―――やるなら今しかない、ってな。
「――お、お前ら」
 体育教師は這いつくばった姿勢で、呪詛のような声を漏らしていた。どうやら大した怪我はしてないみたいだな。流石は体育の科目の教師なだけはある。池の様に受け身も取れない状況じゃなかったしな。
「さて――、仕上げと行くか」
 クラスメート一同の騒ぎに隠れながら、そっとシャナに近付いて質問する。
「シャナ、脅しは出来るか?」
 周囲の騒ぎで問題ないと判断したのか、アラストールがシャナにこっそりと言った。
「そうだな、金を得るときの方法でどうだ?」
「そうね……、アイツは確かに威嚇で黙りそうな顔をしてるわ」
 なんか、恐ろしい位の物騒なやり取りを聞いてしまった。
 なんだか心配になってきたけど、これはシャナがやらないと意味がないしな。
 俺が言うのもなんだが、体育教師さん。無事を祈るよ。
 再び歩き出したシャナを見て、クラスメートは再び静まり返る。
「お前、ちょうどトラックの上にいるわね」
 命の危険を察知したのか、シャナから逃げようと体育教師は地を這う。その様には、既に体育教師の威厳なんて物は微塵も残っていなかった。
 おいおい、そんな惨めに這いよれ! って具合に逃げてたら、我らがシャナさんが冒涜的に攻撃してくるぞ。
 そして、予想通り、這いながら逃走する体育教師の鼻先にシャナの脚が踏み落とされた。
 ――のは良いのだが、細くしなやかな脚からは考えられない音を立てている。見れば、しっかりと固められたトラックに、靴が沈み込んでいた。
 踏みしめた脚をシャナが上げると、そこには靴底型で五センチ程の深さの穴が空いている。
「だから……、やり過ぎなんだよ」
 とは言え本人には多分、自覚はないんだろう。彼女にとっての手加減のレベルをもう一段上げて貰うしかない。
 驚愕と恐怖に目を剥く体育教師。あの、パッと見て中学生かどうかも怪しい生徒の尋常ではない脚力を見れば当然だろう。
 同情するよ、なにせ俺も昨日の晩に同じ様な目に遭ったからな。
 だけど、アンタのした行いを俺は許す気はない。残念だが、最後の駄目を押させてもらう。
「危なかったですね先生。けど、今回は無事で済みましたけど、次は注意しないと危ないですよ」
 こう言うとき、あの教会の性悪神父と極悪シスターの真似が役に立つ。アイツ等は戦意を削ぐ所か叩き潰しに来るけどな。
 だが、相手がシャナだけで済まないぜ。俺が消えてしまうその瞬間までは、今日の様な横暴を許す気なんてさらさらないからな。
「分かった?」
 俺が教師に言い終えた所で、脇からシャナがとびきり凶悪な笑みと共に言った。
 良いタイミングだ。なんだよ、やれば出来るじゃないか。
 それにしても、あの可愛らしい見た目とのギャップ………、実に良いね!!
 教師を脅迫している今の状況を考えないようにしたら、端から見てる上ではこの上なく可愛らしいなぁ。
 普段から強気な女子のああいう笑顔は見慣れてるから、ちょっとした安心感を覚える位だ。言うまでもなく、あかいあくまの事だが。

 念の為にもう一度言うが、シャナが小さくて可愛らしいからではない。
 残念だが俺にそういう趣味はないからな。

 シャナ(DEATHスマイルver.)を見て体育教師は何度も全力で頷く。
 ここだ、と判断した俺は付け足すように訊く。
「もう、解散って事で良いですよね?」
 と言うか、解散にして欲しい。吉田を保健室に連れていきたいし。
「あ、後は……。じっ…自習だ!」
 そう言い捨てて、体育教師は逃げ去っていった。
 哀れ体育教師。変なトラウマを抱えてなけりゃ良いんだが、まぁ俺の知った事じゃないか。
 体育教師が去った後、今度こそ、完全無欠の歓声が爆発する。
 ――あぁ、俺達の勝ちだ。本当に助かったよ、皆。
「まぁ、こんなもんだろ。―――って、待てシャナ! 追わなくて良い!」
 走り出そうとしたシャナを引き止める。
 追撃無用。深追いはするなと言う。
「なんでよ、敵は潰せる内に潰した方が良いわ」
 本当に物騒な事を言うよ、このお嬢さんは。けど、今はシャナが二の舞にならないか心配だぜ、おれは。
「敵って………まぁ、ある意味で敵だったけどな。もう良いんだ。それにだ、シャナにとってはこれからの方が大変なんじゃないか?」
「なにが大変にな―――ッ!?」
 シャナは首を傾げるが俺が答える前に、クラスメートが俺達を押し包んだ。
 意味もなく叩かれたり、興奮した声で誉めそやされたり、嫌みなく冷やかされたりと、俺達は もみくちゃにされた。
 ―――何がって、こういう事だよシャナ。さっきシャナが言った所の敵とやらを俺達は撃退したんだ。これは―――、そうだな、祝勝会みたいな物だよ。
 けど……、こんな風に騒ぐのも久し振りだな。
 シャナは目を白黒させて、押し込む歓声と好意の触れ合いに翻弄されていた。こういった経験はあまりないのだろう。何をどうすれば良いのかも分からず、あたふたとしている。

 な? 体育教師を潰すよりよっぽど大変だろ。

 これも経験だ。目一杯やられてこい。
 さて、もみくちゃってのも悪くはない。けど、俺には用事があるからな。
 先にお暇をさせてもらうぞ。
「池、後を頼んでいいか?」
 丁度良く、頭を叩きに来た池を呼び止める。
「ん? 何を………。あぁ、分かった。後は任せろ」
 それだけで池は分かってくれたみたいだ。頭の回転が早くて本当にたすかる。
 そういえば、俺自身が意識してない内に平気で池って呼んでるな。
 坂井悠二の記憶がそうさせたのか、それとも頼りになる彼の人柄がさせたのか。
 ――まぁ、どっちでも良いか。
「皆、ちょっと通してくれ? 後は平井さんに任せるよ。田中、俺の代わりに池をぶっ叩くので我慢してくれ」
「おい、衛宮!?」
 人込みを掻き分けるついでに、腕を振りかぶっていた田中の攻撃対象を変更しておく。
「仕方ねぇな。それじゃ遠慮なく――っと!」
 すれ違い様に、ニッ、っと笑う田中。人込みから出た辺りで、池の断末魔が聞こえた気がしたけど、気のせいだな。
「吉田さんを保健室に連れて行くよ」
 吉田は輪の外で女生徒に介抱されていた。無理もない。あんな状態だったのに騒ぎに加わっていたら、逆に怖いしな。
「分かったわ、お願いね衛宮くん」
 吉田を膝枕していた女生徒から吉田を預かり、担ぎ上げる。
 おおっ、お姫様だっこ! なんて言葉が女生徒から聞こえてきた。その脇にいた女生徒達も、なにやらキャーキャー、っと声を上げている。
 何か変な事でもしたか、俺。だって横になってた吉田を背負う訳にもいかないだろ? もう一度立たせるなんて酷な事は俺には出来ないし。
 なら、横になってる体勢のまま、足と背中に手を回して抱えるしかないじゃないか。
 これでも、変な所を触らないように配慮はしてるつもりだったんだけど、女子から見たらかなり不味い所を触っちまったんだろうか。
 仮にそうだったとしても、不可抗力だよ。許して欲しいもんだ。第一、触っていたら触っていたで、吉田から何かしらのリアクションがあるだろう。一応、意識は有るみたいだし。
 マズイ事をしてしまってないかを確認しようとして、やっぱり辞めておいた。とにかく、今は吉田を保健室に連れていくのが先決だしな。

「衛宮くんって、体鍛えてたんだね。一美を軽々とだっこしてるし」
「なんだかんだで、さっきのランニングの間も平井さんについていってたわよ?」
「先生を言い負かすところとか、意外に頭脳派でもあったんだね。ちょっと格好良かったかも」
「なにアンタ。衛宮くんを狙っちゃうの?」
 キャハハ♪ と後ろで女子が盛り上がっているが、良く聞こえなかったので気にしないでおこう。
 吉田も体調不良だし、俺としても特に話す事がなかったので、終始無言で保健室に向かう。これまた坂井悠二の記憶ナビゲートだよりで。
 結局、彼女を保健室に運び終えた所で終業のチャイムがなった。


  ◇


「クラスメートと打ち解けれて良かったな」
 先程の体育教師との一件のおかげで、平井ゆかりことシャナはクラスメートから人気を集める事になった。
 どうやらあの後、女生徒がシャナの髪に櫛を通すという、心温まるイベントがあったらしい。当然、俺は保健室に行った後、他とはかなり遅れて着替えて居たので、シャナから聞いたのだが。
 まぁ特に騒動を起こす事なく、大人しくしてくれてたんなら良いんだけどな。
 俺はというと、吉田を保健室に運んだのは良かったのだが、担当がしばらく留守だったので、その間は保健室で吉田を見ていた。結局、保健室から出た時には、チャイムが鳴ってから少し経っていたという訳だ。
 そんなシャナとそんな出来事があったからか、体育の授業直後の昼休みだがクラスメートは半分方、教室に残っていた。
 流石に完全にクラスメート全員と打ち解けてはいないが、昨日から考えると大きな前進だと思う。
 ―――やっぱり昼休みの教室は賑やかに限るな!
 コンビニのおにぎりをかぶりながら考える。こう賑やかだと、どんなご飯でも美味しく感じれる物だ。決して、既製品を馬鹿にしている訳ではないが。
 ちなみに、なぜコンビニ製品なのかと言うと、昨日の悲惨な事件が原因で弁当を作り忘れてしまったのだ。朝も色々とあったしな。
 という事で、今日はコンビニに昼食を買いに行った訳だ。
 流石に二日連続で昼抜きは嫌だからな。
「それで、今日も夕方まで残るのか? 今日は授業もそれほど遅くはならないらしいし、この校舎は殆ど無人になるだろうけどさ」
 海苔を噛み砕いて、隣席の少女に質問する。手作りのしんなりした海苔のお握りも良いが、たまにはパリパリしたのも悪くない。
「夕刻までにここを出るわ。ちょっと厄介な相手だから、せめてこっちに有利な場所で戦わないと」
 シャナはというと、相変わらず美味しそうに、メロンパンを食べていた。
 食料袋も昨日と同様に膨れ上がっている。どれだけ買ってきてるんだか。
 大食い対決をしたら、セイバーと良い勝負をしそうだよなぁ。セイバーもそうだったけど、この体のどこにこれだけ入るんだ?
 片手で簡単に抱えられそうな細い腰を見て、そう思う。
「―――どこ見てんのよ」
 シャナが睨んでくる。
 その瞬間、昨日の悲劇がフラッシュバックしたので、身の安全の為に急いで目をそらす。
「――え゛ッ!? キ、気ノセイデスヨシャナサン。それより………、そう都合の良い場所なんてあるのか?」
 確かにこの街は大体捜索はしたが、それでも完璧とは言えない。候補に挙げれる場所はいくつかあったが、一体どこだろう。
「とにかく人のいない所よ。お前、他に人がいたらウロチョロして邪魔だから」
 他に人がいたら、自然に体が動いちまうからな。こればっかりは、俺もどうしようもない。
「確かに、部活もあるから学校は完全に無人にはならないからな。そこまで考えさせて悪いな」
 口調はともかく、曲がりなりにも俺に配慮してくれたので、素直に礼を言う。
「うるさいうるさいうるさい。私は私のやりたいようにやる、それだけなの!」
 乱暴にメロンパンを詰め込んだシャナは、コーヒー飲料のパックの口をいじりまわす。
 あれって類似品の中でも、特に甘い奴だよな。
 昨日、苦いコーヒーを無理矢理に砂糖で甘くして飲まされた当てつけか?
 あれでも十分過ぎる程、砂糖をいれたんだぜ? 昨日、シャナが最終的に飲んでたのはコーヒーは違う別の何かだろ。
 それにしても、口をなかなか開けれないのか? あっはっは、本当に可愛い奴だなぁ。
 そんな俺の思考知らずにシャナは続ける。知っていたら、逆に怖いが。
「せめて、お前の中身が分かれば、やりようもあるんだけど」
「そんなに妙な代物なのか?」
 確かに贄殿遮那は解析できたが、俺の中の宝具は解析できなかった。というより、プロテクトがかかってて、解析を妨害されてる感じなんだよな。
「うん。なんだか厄介そうな物っぽいのよね、アラストール?」
 アラストールが珍しく、返答を遅らせた。
「………うむ。中身を確認するには、まずもって貴様を消さねばならん」
 パックの口に未だ格闘するシャナは、少々イライラし始めながらただ内容を補足する。
「でも、宝具の質が分からないのに開けたら何が起こるか分からないの。前にも、それでヒドイ目にあったし」
 ヒドイ目とは、あくまでシャナにとってという事だろう。消した事はそれ程問題ではないらしい。
「おいおい、俺の安全はその程度のモノなのか?」
「うん、その程度のモノ」
 意地悪くシャナは言う。まぁ、どうせ消えちまう事を考えたら、さして問題ではないのも確かに頷ける。
「まぁ、別にどうでも良いんだけどな」
 なんとなく納得している自分もいるし、特に反論する理由もないので、サラリと流す。
「お前、自分が消えるって事実は全く気にしてないわね」
「どうだろうな? 確かに消えるのは嫌だけど、それ以前に俺は人を一人消してしまってるからな。そんな俺に文句を言う資格はないし、そもそもシャナに言った所でどうしようもないだろ?」
「………」
 そう言うと、シャナは見るからに機嫌を悪くした。
 ―――何か癇にさわるような事を言ったか、俺?
「諦めたの?」
 先程とは違う、責めるような声でシャナは問いかけてくる。
 油を注がないように、冷静で落ち着いた声で俺は返す。
「実はよく分からないんだ。生きるために足掻くべきなのか、当然の報いとして受け止めるべきなのか。でも、シャナやアラストールがいてくれるのは、凄くありがたいな。あぁ、それだけはハッキリと分かってる」
「……?」
 不可解な物を見る目でシャナは俺を見てくる。
「状況を共有してくれる相手がいるってのは、それだけで結構支えになるんだぞ?」
「私たちが支えですって?」
 シャナはせせら笑う。
 何が気に食わないんだ、シャナは。
「お前に終わりを運んできた者を、支えにするって言うの?」
 シャナの言葉で合点がいく。あぁ、そういう事か。
「別に終わりを運んできた訳じゃないだろ? シャナはただ本当の事を教えてくれただけだ。別にシャナが俺や坂井悠二を殺した訳じゃない」
 ハッキリと俺は否定する。
 なにせ坂井悠二を殺したのは俺自身だし、その坂井悠二をトーチにしたのはフリアグネだ。
 シャナが気負いをする必要はないと思うんだけどな。
 なんで自分から罪を背負おうとしてるんだよ、シャナ。
「ふん、同じ事でしょ」
「いや、違うな」
「同じよ」
「違うな」
「同じ」
「違う」
 言い合っている内に、いつしか俺たちは真正面から睨み合っていた。
 一体、どうしたってんだよシャナ。
「「………」」
 静かに、しかし花火が散りそうな対決を繰り広げてる俺達。
 すると、遠慮がちに小さく声がかけられた。
「……あ、あの…」
 何故かそこだけ息がピッタリとあった俺達は、睨み合いを一時中断し、声のする方に振り向く。視線の先には控えめな印象の少女が、真っ赤になった顔を伏せて立っていた。
 ほん少し前にランニング中に倒れ、シャナが結果として助け、俺が直接保健室に連れて行った、クラスメートの吉田一美だ。
 もう保健室から戻ってこれたらしく、顔色もさっきよりかなり良くなっているようだ。にしては、なんだか妙に赤いが。
「吉田、もう大丈夫なのか?」
 吉田はこちらに頷く。多分、肯定の意味だろう。そしてシャナに話し掛けた。
「そ……その。ゆ、ゆかりちゃん。さっき、体育の時間……あ、ありがとう」
 それはとても小さく、途切れ途切れの声だった。
 だが、今そこにいるのは俺との言い合いで不機嫌な我らがシャナさんだ。多分、言い合いの邪魔をされた捉えてるのだろう。それのやっかみも手伝った様で、ことさら無情に訊き返した。
「―――なんか用?」
 本当に社交性皆無だな!? 本当に斜め上の応対だよ。
「なんでそうなるんだ馬鹿。お礼を言ってくれてるんだから、質問するにしても、どう致しまして、って 返してからだろ」
「誰が馬鹿よ!」
 吉田とは正反対の強い声でシャナは言う。
「別に私は、私の邪魔をする奴を片付けただけよ」
「いや……。まぁ、そうなんだろうけどさ」
 確かにシャナの物言いがキツいのはよく分かっているつもりだけど、今のは完全に俺との言い合いのとばっちりじゃないか。
 ほら、気が弱そうな吉田は、どんどん小さくなってるだろ?
 この状況を打開するのは俺しかいないのか。吉田が気の毒で仕方がないしな。
 そこで、彼女が前に揃えている手の中に、小さな弁当箱がある事に気が付いた。
「えっと……。良かったら、昼飯でも一緒にどうだ?」
「え? あっ……。は、はい……!」
 そう言うと、吉田は顔をほころばせた。良かった、断られたら気不味いしな。
 俺は吉田の為に空いている席を寄せる。
「シャ……じゃなくて、平井。別に良いだろ?」
「別に………。断ってもそうするんでしょ。なら、好きにすれば?」
「あ、ありがとう……」
 吉田は小さい声ながらもシャナに答えた。ビックリする程、対照的な二人だな。
「お~い……」
 気を取り直して、おにぎりにかぶり付こうとした所で、聞き慣れた声に呼ばれる。
 見た所、吉田の後ろの方で池を始め、佐藤と田中が手をあげていた。
 どうやら、今まで事態を静観していたようだ。
 こうなったら、一人も三人も同じだな。そう考えて俺は苦笑しながら手招きをする。
 確かに吉田の相手がシャナと俺だけだと、吉田も辛いだろうし。一人でも多い方が気楽だろう。
 そういう訳で、新たに四人を加えて、昼食を再開する事になった。
 田中が大声で話して、佐藤が混ぜっ返し、池が締めて俺が補足する。俺としても友人は多い方が良いし、こういう風に話し相手が増えるのは素直にありがたい。
 吉田は会話には加わらないながらも、時々小さく笑い、弁当を食べていた。
 シャナはと言うと、食料袋からお菓子を次々と取り出しては、黙々と食べている。
 しばらくして、俺が会話から外れると、俺の服の袖を引っ張り文句をつけてきた。
「アラストールと話しにくい」
 俺がいなくなり、唯一の話し相手とも話し辛くなって寂しいのか、捨てられた子猫の様な目で訴えてくる。
 以外と、コイツは小動物系なのかもしれないな。だが、そこは心を鬼にしろ衛宮士郎。助け船を出してやる訳にはいかないだろう? なにせ、これも経験だからな。
「いいんじゃないか? たまには普通の人と話してみるのもさ」
「なんでそんな余計なこと」
「まぁ、そう言うなよ。さっき取り囲まれた時だって、まんざらでもなかったんじゃないか? 」
「訳が分からなかっただけよ」
 きっと今まで他人と触れあう時間が少なかった性で、そういった感情とどう向き合えば良いのか分からないのだろう。
「そういう所を直すためにも、やっぱり他人と接する必要があるな」
 という訳で、頑張れよシャナ。応援はしてるぜ?
「直す……? どういう意味よ」
 そんな具合で、顔を寄せあってひそひそと話し合う俺達。すると、それまで一言も話していなかった吉田が、初めて口を開いた。
「……ふ、二人とも。な、仲が良いんですね!?」
 いや、その反応は予想の斜め上だよ。俺達のどこが仲良く見えるんだ? 第一、吉田達が来るまで言い合いをしていたのを見ていただろう?
「なんでさ。良くないぞ?」
 俺はともかく、シャナは確実に仲が良いとは思っていないだろう。だからこそ、協力関係の為にも仲良くしたいんだ、俺は。
 そう俺は否定したつもりだが、微妙な視線が皆から向けられる。
「いや、良いぞ」
「うんうん、良いな」
「良いって、絶対!」
 三者三様に良いと言ってくる。お前らの目は節穴なんじゃないか?
「………なんでさ」


 その後も微妙な視線が止むことは無かったが、俺は昨日とは違って賑やかな昼休みを過ごす事となった。 
 

 
後書き
皆さま、お久しぶりです。
ようやく吉田さんが登場しました。
私は基本的にシャナ派なのですが、時間が経つと共に吉田さんに浮気しそうになる今日この頃。
こうして二次創作を書かせていただいていると、灼眼のシャナも時代を築いた懐かしい作品になりつつあると、しみじみ感じます。

いつも通り、誤字脱字や内容の不備がございましたらご一報をよろしくお願いします。
人に言っておきながら私自身は恥ずかしくて、他の作者様の作品になかなか感想を書く事が出来ないんですけどね(汗)

それでは、次回にまたお会いしましょう。 
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