戦国異伝
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第二百二十四話 帝との話その四
すぐにだ、近衛にこう申し出た。
「少し帝とです」
「お話をしたいでおじゃるか」
「真に恐れ多いことですが」
前置きさえして言うのだった。
「出来れば帝とお二人で」
「何と、帝とですか」
「はい、お二人でお話がしたいのですが」
「麿を入れても駄目でおじゃるか」
近衛は公家衆の筆頭、そして関白として信長に問うた。
「それは」
「口外を約束して頂けますか」
信長は強い声でだ、近衛にこうも言った。
「ここは」
「どうも相当なお話ですな」
「左様です」
まさにだ、その通りだというのだ。
「この国の裏側の」
「裏、とは」
ここでだ、近衛は。
ふとだ、その顔を強張らせてだ、信長に問うた。
「麿もまさかと思っていたでおじゃるが」
「ご存知でしたか」
「知ってはいないでおじゃる」
近衛は顔を強張らせてだ、信長に否定の言葉を返した。
「だから噂だとでおじゃる」
「思われていますか」
「しかしどうもこの国を治める者、強い力を持つ者は」
そうした者達はというのだ。
「ある者達と戦ってきたと」
「言われていますか」
「このことは関白である麿も噂であると」
思っていたというのだ。
「そうでおじゃったが」
「そう思いまして」
「ううむ、では」
近衛はここまで聞いてだ、そしてだった。
暫し深く考える顔になってだ、それから信長に言った。
「では、でおじゃる」
「はい」
「帝には麿からお話するでおじゃる」
「では」
「帝と二人で話されよ」
こう信長に言うのだった。
「話が話でおじゃる」
「では」
「まさか。噂は」
「それがしに確かには言えませぬが」
それでもというのだ。
「そうした気がしますので」
「では、でおじゃる」
こうしてだった、信長は。
帝と二人で会うことになった、近衛の言葉を受けて帝も決断された。そして内裏の奥深くにだ。信長は近衛により案内された。
「ここからがでおじゃる」
「はい、帝のですな」
「帝と皇室の方の中でも僅かな方だけが入られる」
「そうした場所ですか」
「麿もでおじゃる」
関白である彼もというのだ。
「そうそう滅多にはでおじゃる」
「入ることはですか」
「出来ぬでおじゃる」
そうした場所だというのだ。
「だから緊張しているでおじゃる」
「その様ですな」
「しかし話が話だけに」
それ故にというのだ、近衛も。
「お話をして」
「そのうえで」
「案内しているでおじゃる」
こう信長に言うのだった。
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